速いぞ。

番長プロデューサーの世直しコラムVol.14
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光
 

月日の経つのは、本当に速いですね。 真面目に、1年の過ぎ去り方があっという間です。

今年も始まったばかりなのですが、きっとあっという間に終わるでしょう。年末に掃除しながらつぶやくんですよきっと。「今年も早かったなあ」と。 テレビCMの仕事をしていると、ちょっとだけ先取りしているせいか、季節感も違います。まだ寒いのに暖かい時期の商品のCMを作っているし、暑いときに長袖の衣装を着せたりしていますね。

学生のころの夏休みなんか、すごいまとまった時間だったような気がしますが、今の1ヵ月はそうとう短く感じます。 このコラムも書いていて、提出したと思ってもすぐに次の締め切りがやってきます。編集の清水さんから「そろそろいかがですか?」みたいな題名のメールがくるたびに、どきっとしますし、「もうかよ?」とも思う。

ある説によると、人間が1年という単位を意識し始めるのは6歳のときらしいです。小学校に入学したとき。1年経つと2年生になる。1年のスケジュールが組まれていて、定期的に自分の成績をつけられて、決まった時期に休みが入る。そのファースト体験が、6歳なんですね。僕は、それが時間の感覚の基準になっている気がします。

覚えているのは小学校の夏休み。40日も休みがあって、これといってやることもなく、途方に暮れたことがあります。何していいかわからず、1日中外で真っ黒になって遊びほうけていました。ラジオ体操に出るために朝6時に起きて校庭に集合して、お昼までさえもかなりの時間と感じたのを覚えています。

時間の感覚は、自分の生きてきた時間との対比で、感じるスピードが変わるんだと思います。 つまり、基準となっている6歳のころの1年は人生の1/6だった。1年が、人生に占める割合がすごいでかい。だからとても長く感じるんです。だけど、今年40になる僕の中では、1年は1/40の比率でしかないということです。そう考えると、小学校1年生のころから比べると、7倍近いスピードで時間が過ぎていくことになります。7倍。6歳のころの1週間が今の1日だ。そりゃあ速く感じますよね。 で、ついでに言うと加速度的に時間の過ぎるのが速くなっていくってことですね。これからも。

10年前は何をしていたかと思い返したら、愕然としました。

10年前の1998年の今ごろは、長野で冬季オリンピックが開かれていました。開会式の日はロケでハワイにいて、たまたまハワイのスーパー/ダイエーでテレビ中継を見ていたら、伊藤みどりが卑弥呼の格好で出てきて、それが滑稽で笑っていたら、周りのアメリカ人もげらげら笑っていたあのオリンピック。すごく鮮明な記憶。 SMAPの「夜空ノムコウ」がヒットしてたころ。iMacが発売になり、松坂大輔が甲子園でノーヒッターで優勝して、X-JapanのHideが亡くなって築地の本願寺のお葬式にすごい行列ができていた。サッカー/ワールドカップのフランス大会に初めて日本代表が出た。和歌山で毒入りカレーの事件が起きて、カレーを食べるのが怖くなっちゃったこともありました。この年にアメリカの支社に出向になって、春にLAに引っ越した。そのビザのために取り直したパスポートが、もうすぐ期限切れになります。 つい最近の出来事だと思ってたのに、10年も経っちゃった。なんか切なくなってきたぞ。29歳から30歳になる年で、「やだなあ、もう俺も30かよ」と思っていたのに、もう40です。そう言っているうちに、50になっちゃうんだろうな。

そう思うと、時間がとても大切に思えてきます。人生なんかあっという間なんだなあ。10代のころにこのことに気づけばよかった。浪人して受験に失敗して、また1年勉強か?と思った2浪目スタートのあの途方もなく長い1年の感覚は何だったんだろう?新入社員のころの、永遠に下っ端で暮らしているような感覚は幻だったんだろうか? こんなに時間が速く過ぎるのならば、やっておかなきゃいけないことを早くやっておかないと何もできなくなっちゃうぜと、焦ります。

「時間は大切だ」という意味が、おっさんになってわかってきました。 だから、特に若者たちにも声を大にして言いたいですね。時間を無駄にするんじゃねえと。引きこもっている奴は、今すぐ抵抗をやめて出てきなさい。そんなことやってる場合じゃないぞ。なんかしろ。 俺も走らなきゃ。まだまだやり残したこと、やってないこと、死ぬまでにやらなきゃいけないことがいっぱいある。いかん。時間が足りないかもしれない。とにかくがんばろうと心に決めた、40直前の2008年の冬であります。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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