「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その⑥ ~アニメ音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~

Vol.18
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
映像業界40年 おやじプロデューサーのひとり言
関田 有應

こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー
シニアプロデューサー 関田有應(せきたゆうおう)です。

18回目のコラムは「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その⑥
~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~

今回も私のアニメ制作における音楽プロデューサーとして、
キャラクターが歌うキャラクターソングへの想いと、拘りのお話をさせて頂きます。

今回のお話は、アルバム制作にかけた想いのお話です。
私がプロデューサーをさせて頂いたアニメ番組の視聴者は、未就学・就学向けアニメという事もあり、
季節や行事などを盛り込んだお話作りを行っていました。

日本は四季があり、その月毎の行事があります。
もし、12か月の行事に合わせたキャラクターソングアルバムの制作をして楽曲を作ったら、子供たちは一緒に歌ってくれるのかな。
そんな思いから1年間の行事をテーマにしたキャラクターソングアルバムの企画を立てました。

日本語ロックの先駆者と言われているバンドがあり、
そのメンバーのお一人だったミュージシャンが「カレンダーソングス」というアルバムを制作し発売しています。
恋愛や想い、季節をテーマにし、月々の12曲で構成されたアルバムです。
大人向けのカレンダーソングスのアルバムがあるなら、子供向けのカレンダーソングスのアルバムがあってよいのではないか。
むしろ子供たち向けに今まで無かったことの方が不思議な気持ちに、そんな想いから、この企画を立ち上げました。

レコード会社のディレクターに「カレンダーソングス」のアルバム制作をしたい!
ついてはコンセプトはこのような方向でと相談させて頂いた時に、
スクールカレンダーとセットでのCDにする事を提案してくださいました。
どうしても、曲に気持ちが入ってしまう私の気持ちを汲んで、
一人でも多くのお子さんが手に取りやすい、
親御さんが購入しやすいCDとしての付加価値を付けてくれたのです。

レコード会社のディレクターは売れるCDを制作し商品化するプロフェッショナルです。
今思えば、いつも私の作りたい表現したいキャラクターソング・番組の世界を理解し、
思いを汲んで下さり、商品化した時に、いかに多くの枚数が販売出来るか!
制作者の思いを発売・販売側として、どのように仕掛け、プロモーション、宣伝を行う事で、
商品販売数を伸ばす事が出来るのかをいつも考えて下さっていたのだと、
今更ながらですが改めて思いました。

アルバムは1月から12月までの12曲+番組のオープニング曲、計13曲で構成することとしました。
番組がスタートして2年目で企画したアルバム制作でしたので、新曲としては4曲の楽曲制作、
それとすでに楽曲になっていた曲はフルサイズにしてアルバムに収めました。

すべての楽曲に思い入れがありましたが、特に1月新年を迎える曲、
12月のクリスマスソングに強い思い入れがありました。
1月の曲のコンセプトは、
「新年を迎え、新たな気持ちで冒険し大活躍、好奇心をってこの1年を過ごそう」です。
作詞家にコンセプトをお伝えし、
作曲・アレンジジャーに曲のイメージをからコード進行までを含む楽曲イメージをお伝えしました。

皆さん、またか!
と、思われた事でしょう。

実は12月の曲に選んだ「クリスマスソング」楽曲制作は番組放送開始直後に制作した楽曲で、
私の想いのすべてを山のように語りお伝えした実績があったからです。

子供たちにとってのクリスマスはケーキやチキンを食べるだけではありません。
サンタクロースからのプレゼントを心待ちにしている。
欲しいプレゼントをお手紙に書いて、大きな靴下の中に入れておいてクリスマスツリーに飾ります。

私の友人の未就学児童の可愛いお嬢さんは、
サンタクロースがプレゼントを届けてくれた時にと、
ミルク、クッキーとありがとうのメッセージカードを用意し、
トナカイさんも、お腹が空いているいるからと、自分でニンジンを切り、
家の居間に飾ってある2mのクリスマスツリーの足元に置き、クリスマスイブを過ごしていました。

そんな姿を見ていた私たち大人は、大人の考えや既成概念を押し付けてはいけない。
子供たちの豊かな感性や思いを否定してはいけない。
それが情操教育につながるのなら。
それが豊かな感覚・感性を養うきっかけになってくれれば。
毎月の行事を通して、子供たちが楽しみに!ワクワクしてくれれば!
これが「カレンダーソングス」を作りたかった私の本当の想いです。

無茶な企画をお願いして「カレンダーソングス」は商品化CDにさせて頂きました。
レコードメーカーのディレクターのアイデアと、
音楽プロデューサー、制作者の想いをひとつにして、制作したのがこのCDアルバムです。
正しくプロの仕事です。

「このおやじの拘りは止まらないし、だったら最後まで付き合うか」というのが、
音楽制作にお付き合い頂いた制作者の皆様の本当のお気持ちだったと思います。

おかげさまで、アルバムの売れ行きも好調でした。
子供の時に信じていた事が、モノ心が付き、大人になっていくと忘れてしまう。
それまで自分たちの真実だったこと、信じていたことを忘れていく。
信じて抱いていた心ですら記憶からなくしてしまい、否定するようになる事もある。

私は、子供の頃の想いを忘れてしまい、現実だけを信じるクリエイターより、
子供の頃に感じた想いとか、感動を忘れずに抱き続けているクリエイターの方が魅力的だと思います。
それは思考の幅を広く持つ事により、豊かな感性、思考する力と発想力につながるからです。

子供目線で楽曲制作を考える。
目に見える事だけが真実ではないと、子供の時に信じていたことを、大人になっても、
自分の心の中で持ち続ける。
サンタクロースは実在すると思って楽曲制作を行うか、
実在しないと思って楽曲制作を行うか。
この事は人に強制する事でも、される事でもありません。
クリエイターの思考力です。

私の音楽を支えて下さる音楽制作にかかわったクリエイターの皆様ですが、
「子供の頃、サンタクロースがいつ来てもいいように、起きて待ってたんだけど、
いつも寝てしまい、朝になるとプレゼントが届いていたんだよね。
だからいつもあえなくて残念な気持ちだったんだ」
と大人になっても言う方々ばかりです。

感性豊かな、知性的な表現が出来るクリエイターの皆様だからこそ、
このようなアルバム制作が行えたと感謝しています。

「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その⑥
~アニメ音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~
今回はここまでです。

クリエイターとして歩み始めたアシスタントプロデューサー君。
コンテンツ制作はひとりでは作ることは出来ません。
想いを形にする事の難しさは、自分の努力でしかありません。
プロデューサーは人脈とスタッフとの信頼関係が命です。
志を高く持ち、自分の選んだ道を迷うことなく真っ直ぐに進んで下さい。
そして素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。

ここまで読んで頂き有難うございました。
それではまた次回。
*株式会社フェローズは日本動画協会の会員です。

プロフィール
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
関田 有應
(せきた ゆうおう)大学を卒業後、テレビ局直系制作会社に入社。 企画、番組制作、イベント映像、PV、VP制作を行い、その後CM制作を中心に実写業界でのキャリアを積み、大手出版社グループでデジタルコンテンツ系の映像・音楽制作。 子供向けアニメ作品を中心とした、テレビシリーズ・OVA・劇場版・音楽制作・マーチャンダイジングと、キャラクタービジネスの世界で製作プロデューサーを行う。代表作は、平成の名物キャラと言われる主人公がハムスターのアニメ作品 株式会社フェローズにて アニメセクションの立ち上げを行い、現在はマーケティングセクションにて全国の映像系学校でのセミナー講師やキャリアアドバイザーを行っている。 息子も大手広告代理店直系の制作プロダククションのPM「親子鷹」である。※無類の音楽好きで、40年ぶりに大学時代のバンドを復活。活動中。

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