「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その⑤ ~アニメ音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~

Vol.17
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
映像業界40年 おやじプロデューサーのひとり言
関田 有應

こんにちは。
フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー
シニアプロデューサー 関田有應(せきたゆうおう)です。

17回目のコラムは「アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その⑤
~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~

今回は私のアニメ制作における音楽プロデューサーとして、キャラクターが歌うエンディングソングへの想いと、拘りのお話をさせて頂きます。
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アニメ番組のエンディングソングって、わりとゆったりした曲が多く、オープニングは派手目に、エンディングは控えめにする事が一般的かと思います。
私がプロデューサーをさせて頂いたアニメ番組制作では、BGM(劇伴奏音楽)制作部分で色々なお願いをさせて頂きました。
1クール目のエンディングソングは諸事情から、私が参加する以前からすでに制作にはいっており、曲も歌手も決まっておりました。
ですので、最初に制作されたエンディングソングには、あまり関われませんでした。
そんな中で、私の拘りがさく裂したのは、新エンディングソング制作が決まった時からです。

レコード会社の会議室に、レコード会社プロデューサー、ディレクター、宣伝担当、作詞家
作曲家の皆様にお集まり頂き、私が思う新エンディングソングのコンセプトをお話させて頂きました。
「めちゃめちゃポップで明るくて元気が出る楽曲」をエンディングソングにしたい!
子供たちは1週間頑張って学校に行き、お勉強をしています。
嫌な事も良い事も金曜日に、このアニメ番組を見て頂き、エンディングソングを聴きながら、歌い踊りながら、楽しい土日を過ごしてほしい。
番組のエンディングソングを一緒に歌って踊って楽しんで。
そして、月曜日からまた元気よく1週間を過ごそう。
これが私の想い、エンディングソングのコンセプトとしてお伝えしました。
土日の朝帯の番組でも、まだエンディングソングはバラード系が多かった頃に、金曜日の
18時30分放送のアニメ番組のエンディングを「元気ソング」にしたいと言い出したプロデューサーは少なかったようです。

楽曲は、サンバのリズム、ラテン系のアレンジにして、フォィッスル・スチールドラム・アコースティックギターなども加え、
純正和音の明るいメジャー系サウンドの「超元気ソング」の方向でコンセプトを決めました。

それと、もうひとつ、歌詞の内容に入れたかったエッセンスをお話させて頂きました。
「みんなお友達。仲間なんだよ。」ということ。
「喧嘩したってすぐに仲直り出来るんだよ!」
「みんなで手をつないで大きな声で笑おう!」
「世界中のお友達と仲良く楽しく! 」
このようなキーワードを盛り込んだ作詞です。

しかしそれだけだと何か普通な気がして、ものたりない気がしていました。
思いついたのが、曲の間奏の間に「はやくち言葉」を入れる。
それも「超高速はやくち言葉」!
じつはキャスティングした声優の方で、「はやくち言葉」が本当に上手くて得意で、センス抜群の声優さんがいました。
その方にお願いしていたキャラクターは、もじもじくんでのんびりと話をするというキャラクターの設定でした。
とても「はやくち言葉」が出来るなんて思えないキャラクターが!
なんと「超高速はやくち言葉」をする!

これだ!と思いました。

子供たち驚くだろうな。
きっと頑張って超高速はやくち言葉をみんなでマネして遊ぶんだろうな。
子供たちが一所懸命マネをして、失敗して、大笑いしながら何度も練習して競って歌う姿が目に浮かびました。
さっそく作詞家に意図をお伝えして、入れられるだけの言葉を入れて、息つぎ無しの「はやくち言葉」を、間奏の間に差し込みました。
曲を歌うのはもちろん主役のキャラクターと出演キャラクター達です!
レコーディングの時に、歌と合わせて収録を行いましたが、声優さんはキャラクターの声で、
「超高速はやくち言葉」を息つぎもせず、見事にリクエストに応えて下さいました。
流石プロの声優です。
凄い!

クールが変わり、新エンディングのアニメも新しくして、キャラクターが踊るアニメ動画も制作し、子供たちが一緒に歌って踊れるようにしました。

狙いどおり。
曲が完成してエンディングソングで流れ始め、その反響は大きく、評判も、視聴率も上がりました。
CDも売れました。

私の想いは、子供たちが一所懸命「超高速はやくち言葉」をまねして、楽しんでいる姿を思い浮かべる事です。だって楽しいじゃないですか。
だってみんな頑張るじゃないですか。
しかし、あの早口言葉は相当練習しても簡単にはマネできないスピードだよなぁ。

アニメ制作において、作り手は視聴者(子供たち)の顔を見る事が出来ません。
視聴率や、売れている商品から判断する事だけです。

商品化(CD化)された楽曲は番組をはなれ、一人歩きを始めいろいろなシーンで使用されて行きます。
良い楽曲は人の心に届きます。
そして楽曲を聞いていた頃の自分を思い出して下さいます。
子供の頃の楽しかった思い出や、色々な出来事も曲と一緒にオーバーラップします。

たとえ子供向けのアニメ、エンディングソングであっても、本気で拘って制作していれば、時代が変わろうがその曲は受け継がれて行きます。

2019年・関西のガス会社のテレビCMで、その楽曲のアレンジ版が起用されました。
とっても素敵なテレビCMです。

プロデューサーの仕事は、コンセプトを決めて、その想いをプロのスタッフの方々にお伝えして、形にしていく事がクリエイターとしての仕事です。
能力の高い、抜群のセンスをお持ちの、素敵な作曲家、作詞家のみなさんとの出会いと、共に同じ方向を向いてコンテンツ制作を行えたこと。
今の時代でも色あせない楽曲制作に携われた事に本当に感謝しています。
ありがとうございます。

いくつになっても忘れない、心に残るキャラクターソングを制作する。
それが音楽プロデューサーとしての仕事の醍醐味で有り喜びです。

しかしよくまあ、わがままで拘りのかたまりの私にお付き合いくださったなあ!
めちゃ振りしまくりました!
関係者の皆様。
本当にありがとうございます。

アニメ番組制作者が語る制作エピソード!」その⑤
~アニメ制作における音楽の役割と重要性・制作者のこだわり~

今回はここまでです。
次回も、音楽のお話をさせて頂こうと思っています。
お楽しみに!

クリエイターとして歩み始めたアシスタントプロデューサー君。
音楽も映像も良いものはいつの時代でも受け入れて頂けます。
志を高く持ち、自分の選んだ道を迷うことなく真っ直ぐに進んで下さい。
そして素敵なプロデューサーになって下さい。
「がんぱれ」
先輩シニアプロデューサーとして心より願う事です。

ここまで読んで頂き有難うございました。
それではまた次回。
※株式会社フェローズは日本動画協会の会員です。

プロフィール
株式会社フェローズ マーケティング セクション 兼 アニメセクション アドバイザー シニアプロデューサー
関田 有應
(せきた ゆうおう)大学を卒業後、テレビ局直系制作会社に入社。 企画、番組制作、イベント映像、PV、VP制作を行い、その後CM制作を中心に実写業界でのキャリアを積み、大手出版社グループでデジタルコンテンツ系の映像・音楽制作。 子供向けアニメ作品を中心とした、テレビシリーズ・OVA・劇場版・音楽制作・マーチャンダイジングと、キャラクタービジネスの世界で製作プロデューサーを行う。代表作は、平成の名物キャラと言われる主人公がハムスターのアニメ作品 株式会社フェローズにて アニメセクションの立ち上げを行い、現在はマーケティングセクションにて全国の映像系学校でのセミナー講師やキャリアアドバイザーを行っている。 息子も大手広告代理店直系の制作プロダククションのPM「親子鷹」である。※無類の音楽好きで、40年ぶりに大学時代のバンドを復活。活動中。

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