アイデアが出ない。ならば!
パソコンを開く。資料を見る。コーヒーを飲む。考える。「……出ない」。
もう一度考える。「……やっぱり出ない」。
こうなると、つい「もっと考えなければ」と思ってしまう。
みんなどうしているのだろう? 世界の一流クリエイターたちを調べてみました。
結論から書くとアイデアに煮詰まったとき「もっと考える」ということをしていませんでした。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
ジョブズは歩いた
スティーブ・ジョブズは歩くことを好んだそうです。伝記を書いたウォルター・アイザックソンによれば、重要な話をするときほど、会議室ではなく歩きながら話すことが多かったといいます。ジョナサン・アイブ(iMac、MacBook、iPod、iPhone、iPadなどApple製品のインダストリアルデザインを担当)との会話も歩きながら。ライバルのビル・ゲイツともよく散歩していたそうですよ。
ベートーヴェンも歩いた
ベートーヴェンも散歩を好みました。散歩には鉛筆と五線紙を持って出かけ、浮かんだ音楽のアイデアを書き留めていたといいます。作曲家なのだからピアノの前に座っていればよさそうなものだけれど、彼にとっては歩くことも作曲の時間だったのでしょう。
「考える場所」を変えると、頭の中の景色も変わるみたいですね。
村上春樹は走った
村上春樹は長年にわたってランニングや水泳を生活の中に取り入れ、そのことを著書『走ることについて語るときに僕の語ること』にも記しています。頭が煮詰まったら身体を使う。すると頭の中に少し余白ができる。アイデアというものはその余白に入ってくるものなのかもしれません。
ダリは寝た
眠りに落ちる直前の状態を創作に利用したのが画家のサルバドール・ダリ。椅子に座って手に鍵を持ち、眠りにつく。手の力が抜けると鍵が落ち、下の皿に当たって音がする。その音で目を覚まし、眠りと覚醒の境目に浮かんだイメージを記録するのだとか。
ダリは「アイデアを考える」のではなく「アイデアが出てくる状態」を強制的につくっていたわけです。
デヴィッド・リンチは静かにした
映画監督のデヴィッド・リンチは創造性について「魚」の話をしたことがありました。「小さな魚なら浅いところにいる。大きな魚を捕まえたければ、もっと深く潜る。」そのためにリンチが実践しているのが瞑想だったそうです。ダリと似ていますね。
マヤ・アンジェロウはホテルに逃げた
作家のマヤ・アンジェロウは、ホテルの部屋を借りて執筆することがありました。理由は電話やテレビ、家事など日常の誘惑からいったん離れるため。これは私もビジネスホテルのデイユースプランで何度かやったことがありますけれど、場所を変えるだけで頭の中のスイッチも切り替わります。
ポール・マッカートニーは夢を見た
名曲「イエスタデイ」のメロディは夢から目覚めたときに頭の中に残っていたというのは有名な話。自動でつくれるところがさすが天才。
ちなみにその時はまだ歌詞がなかったので、とりあえず仮のタイトルと歌詞をつけたそう。
タイトルは「Scrambled eggs(スクランブル・エッグ)」。
♫「Scrambled eggs, oh my baby how I love your legs(スクランブル・エッグ~、ああベイビー、君の脚が大好きだよ)」
ぜひビートルズで収録してほしかったです。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
歩く。走る。寝る。瞑想する。場所を変える。夢を見る。
こうして見ていくと、みなさんいったん「考えること」から離れているようです。
「アイデアが出ないから、もっと考える」ということをしていない。「考える状態そのものを変えている」ふうに見えます。
アイデアは力ずくで捕まえるものではなくて、こちらが油断したときに向こうからやってくるものかもしれません。
煮詰まったらパソコンや本を閉じて、まずは椅子から立ち上がりましょうか。
参考文献および資料
・スティーブ・ジョブズ:Walter Isaacson著『Steve Jobs』
・ベートーヴェン:公式記念館ベートーヴェン・ハウス(ドイツ)の記録
・村上春樹:『走ることについて語るときに僕の語ること』文藝春秋社
・サルバドール・ダリ:Scientific Americanの記事(Scientific American)
・デヴィッド・リンチ:著書『大きな魚をつかまえよう/Catching the Big Fish: Meditation, Consciousness, and Creativity』
・マヤ・アンジェロウ:The Paris Review インタビュー「The Art of Fiction No. 119」(The Paris Review)
・ポール・マッカートニー:The Beatles公式サイト(The Library of Congress)







