ミッション20 この際、捨てよ!

ミッション20
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

<はじめに>

非常事態宣言の最中、今回の指令はステイホームでできることですが、個人的にはかなりの難題。幼い頃から押入れの狭いスペースにおもちゃを持ち込んで基地を作るのが好きな性格。大人になってからもずっと、床から天井近くまで積み重なった本や書類に囲まれての書斎(※書斎ビフォー 写真①②)と、他人の目にはゴミ屋敷にしか見えないであろう溢れた荷物のリビング(※リビングビフォー 写真③④)でくつろぐのがラクチンなタイプなので、いわゆる断捨離には自信がありません。しかし、これから生活が大きく変わるのは間違いないでしょうからこれを機に一気に暮らし方を変えてみるのもアリよりのアリな気がします。よし、思い切り捨ててみます!

書斎ビフォー

写真①

写真② 

リビングビフォー

写真③

写真④ 

<まずは読みまくる>

僕はわかりやすく道具から入るタイプでして、しかも平成ならぬ昭和型。何を始めるときもまずは本屋さんを頼ります。とは言ってもさすがに最近はネットやユーチューブのチェックも怠りません。特に今回、この分野の第一人者である世界のこんまりこと近藤麻理恵さんのこんまりメソッドについては、以前図書館で借りた「人生がときめく片付けの魔法」(サンマーク出版)の記憶とユーチューブの「こんまりちゃんねる」(https://m.youtube.com/channel/UCBy-BFf7XO7wCfwVAC_tBig)から情報を得ました。それからこんまりさん以降、ブームにもなったミニマリストの佐々木典士さんの「ぼくたちに、もうモノは必要ない。」(ワニブックス)や主婦ミニマリストの筆子さんの「1週間で8割捨てる技術」(KADOKAWA)や「書いて、捨てる!」(大和出版)等々計10冊(※写真⑤)をじっくり読んで研究しました。因みにこんまりさんによれば、片付かない人には次の5つの特徴があるそうです。

①家族のせいにする人
②自分流に片付けてしまう人
③そもそも片付ける気がない人
④人任せ
⑤言い訳ばかりでスタートしない人

以上の5つですが、今の僕に限ると①は家族のいない独り身ですし、②は自分ではやり方がわからないですし、③はヤル気になっていますし、④も誰にも任せられないですし、強いて言えば⑤は仕事の忙しさのせいにする傾向はありますがリモートの現在はそれもないのでどれにも当てはまりません。つまり案外片付く人なのかもしれないと妙な期待が膨らみました笑。

写真⑤

<こんまり派とミニマリスト派>

こんまりさんのやり方は世界中で知られていますので僕が説明するまでもないですが、 最大のポイントは物を一つづつ手に取って「ときめくかときめかないか」で残す残さないの判断をすることです。この「ときめく」というワードが共感を呼んだのですね。コトバの力を感じます。また、こんまりメソッドでは残したモノの収納法も注目されました。ただ処分の仕方は捨てずに売ったり譲ったりです。もちろんリサイクルの観点からも経済的にもよくできた手法ですが根っからのめんどくさがりな僕にはやや高いハードル。
一方後発の面々は、こんまりさんの方法を意識はしながら、いずれも独自の境地で物を捨てていきます。特にミニマリストの方々はこんまりさんと違って潔く捨てます。捨てます捨てますこれでもかと捨てまくります。中でも「ものを捨てることが三度の飯より大好きな捨て変態」を自称する漫画家のゆるりまいさんに至っては卒業アルバムも捨ててしまいます。これには佐々木典士さんですら驚かれていましたが、誰かが持っているものは捨てるということだそうです。どうしても必要になった場合は持っている人にお願いして借りればいいそうです。目から鱗が剝げ落ちました。

<捨てる順番>

片付けのプロ達はみな片付ける順番が大事だと言い、これはほぼ共通でした。
①衣類→②キッチン→③本類→④書類→⑤小物・雑貨類→⑥思い出の品の順です。
僕の場合、②のキッチンに関しては持っているのは鍋とやかんが一つだけ。まな板やフライパンでさえありません。基本365日全食外食で自炊の経験がないので何も必要ないのです。食器はもらい物の丼やグラスがいくつかはありますが、ふだんは紙コップと紙皿なので②キッチンの片付けは不要。
さらに⑤の小物類もあまりなく、無印良品で買った保管用の箱2個に収めておしまい。なので①衣類→②本類→③書類→④思い出の品の4段階で片付けることにしました。

<まずは洋服>

下着は別として他の衣類は自分の好きな二つのブランド(コムデギャルソンとアディダス)以外のものを全て処分。さらに好きなブランドのものもこの一年で一度も袖を通さなかったものは捨てることにしたらハンガーラックが一つまるまる空いたのでそれも分解して捨てました。下着はパンツと靴下は毎日一枚の計算でお気に入りの7つを残してあとは処分。ただTシャツは思い入れのあるものが多くてなかなか捨て切れませんでした。でもここで躊躇するのは負けな気がして長年連れ添ったロンTを処分(※写真⑥⑦)。この決断に1時間、想像以上に前へ進みません。

写真⑥

写真⑦

<帽子について>

僕は知ってる人は知っている(当たり前か!)帽子マニアでして(その件に関しては別コラム「とりとめないわ 第18話」)、今回に限らず一年に20個処分していますので、帽子についてはここではあえて触れません。

<つぎに本類>

ざっと数えて2000冊以上。積ん読も多くて半分も読んでいません。とはいえ本は自分を示すアイデンティティでもあるので捨てにくいのも事実。どれを捨てるかかなり悩みました。そこで今回はときめくかではなく、未練があるかどうかで判断。もう一度同じ値段を払っても欲しい本は残しました。結果、500冊を捨てることにしました。ということはまだ1500冊は残ってしまいます。そのうち未読のものは約500冊。人生の残り時間を考えるとそれらを全部読むとは思えないので、いっそすっきり捨てようかとしましたが印をつけて1年後までに読まなかったものを捨てるに変更しました。

<そして書類>

本以上に難儀だったのがこの書類関係です。 ファイルに入れたものはもちろんノートやスクラップそして書き散らかした紙の束(※写真⑧⑨)。どうすることもできない量です。特に職業柄これまで書いた原稿(主にコピーライティング)は捨てにくい。データを信じてないわけではないですが、性分なのか書いたものは必ず紙でも残しています。しかしこの際なのでエイヤ!と捨てる決心はしました。が、そこからなかなか手が動きません。とりあえず愛着のあるノート類は保管箱に入れてみました。そしてバラで書いたコピーの山は一枚一枚確認して、心がモヤモヤしたものだけをお気に入りのノートに書き写してから処分です。気が遠くなるというか触れてしまいそうな作業が丸二日続きました。

写真⑧

写真⑨

<最後に思い出の品>

片付けの達人たちによればこれが一番やっかいだそうです。確かに捨てにくそうだなぁ。BUT僕はアクセサリーや時計等には無関心で一つも持っていませんし、趣味は相撲や落語を観に行くくらいでコレクションはほとんどありません(ある意味本や雑誌はコレクションかもです。それとクリアファイルとシールは集めていますけど、これはさほど嵩張(かさば)りません)ので思い出の品の大半はこれまた紙類。写真と手紙(メールの出力)です。特に写真は高校時代新聞部で撮っていたものからの膨大な量。スマホにした5年前まではインスタントカメラ(つまり写ルンです)を常に持ち歩いてパシャパシャしていたのでハンパない数です。で、どうしたか。保管箱にジャンジャン入れて蓋をして仕舞いました。これに限ってはごめんなさい。いずれ捨てるにしてももう少し時間が必要です。

<さよなら、ちゃぶ台>

そんな中、今回一番気持ちを奮い立てて捨てたのはちゃぶ台です。40歳を超えて東京に転職したときからの15年来の付き合い。 このちゃぶ台の上で沢山のコンビニ弁当を食べ数百もしかすると数千の缶ビールを飲んで夜を明かしたことでしょう。今回の断捨離企画のシンボルとして粗大ごみで400円かけて処分しました(※写真⑩⑪)。

写真⑩

写真⑪

ここまでやって、今回のミッションはひとまず終了。断捨離後の書斎(※書斎アフター 写真⑫⑬)とリビング(※ リビングアフター 写真⑭⑮)は共にスッキリしましたが、片付き過ぎてどうも落ち着きませんね(苦笑)。

書斎アフター

写真⑫

写真⑬ 

リビングアフター

写真⑭

写真⑮

さてそんなこんなで約一ヶ月、ひたすら片付ける日々の中でいくつかフシギなものが出てきました。何か見つけては手が止まるという片付けあるあるみたいなものですが、それにしても何だこりゃ?です。

<何だこりゃ?その1>マスク

本棚の裏から数年前仕事で中国に行ったときにお土産で買ったマスクが数枚出てきました(※写真⑯)。布製です。絶対に無許可(それが面白くて買った気がする)でしょうが、せっかくなので使おうかなと思っています。

写真⑯

<何だこりゃ?その2>同じ本

これまた本棚を整理する途中、全く同じ本をしかも3冊も発見しました(※写真⑰)。「どうらく息子(尾瀬あきら著)」(小学館)、「自分を好きになる方法(本谷有希子著)」( 講談社)、「記憶スケッチアカデミー(ナンシー関著)」(カタログハウス)です。コミック(どうらく息子)の場合はビニールがかかっているので店頭で平積みされていると新刊だと間違えることがときどきあるけど、他の2冊はなぜ2回買ったのかわかりません。

写真⑰

<何だこりゃ?その3>謎のサイン

書斎の勉強机の引き出しも片付けていると、中から色紙が一枚出てきました(※写真⑱)。為書きはなく、日付もざっくり2015冬とあります。まるで覚えがありません。ふだん仕事でタレントさんと会うときもサインをもらうことはありませんし、この数年でサインをいただいたのは大好きな落語家さんだけです。スマホの画像検索で調べましたがわかりませんでした。記憶が抜け落ちているのかもしれません。一体どなたから貰ったのでしょう。2015年の冬に戻ってみたいです。

写真⑱

<何だこりゃ?その4>恥ずかしい過去

これは押入れの奥から出てきたお菓子の缶々(※写真⑲)。かなり年季が入っています。その中にあったものを見て顔が真っ赤っかになりました。この時期に発熱はダメです。高校時代の彼女に書いたラブレターの下書き。なぜ取って置いたのでしょう。見ちゃいられません。

写真⑲

<捨てることで見えてきたもの>

今回の探検隊はこれからの僕の暮らしを変えていくいい練習になりました。ありがたい 機会でした。人生とまでは言いませんが人生観の一部が明らかに変わりました。それで三日に一度の外出の際に生まれて初めてレンタサイクルを試してみました(※写真⑳)。いいシステムじゃないですか。なぜ今まで利用しなかったのでしょう。そして電動自転車って、スゲーッ!!自分の脚がまるでエンジンみたいでした。まだまだ新しい発見が未来にはいくらでもありそうです。

僕の師匠の仲畑(貴志)さんが1983年に書かれた「異常も、日々続くと、正常になる。」というコピーがあります。まさに今の時代を暗示したかのようなコピーだとこの頃強く思っています。

写真⑳

プロフィール
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP