映像2024.02.07

小芝風花が着物でレッツタップダンス!映画に地域がリンクして広がる

Vol.60
『レディ加賀』 監督 / プロデューサー
Toshiro Saiga / Toru Murata
雑賀 俊朗 氏 / 村田 徹
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『カノン』(2016年)で、金鶏百花国際映画祭・国際映画部門 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀女優賞の三冠を達成した雑賀俊朗監督が、再び石川県を舞台に撮ったハートフルエンターテインメント『レディ加賀』。

加賀温泉にある老舗旅館の一人娘樋口由香は上京してタップダンサーを目指すも挫折。実家に戻り「女将ゼミナール」に通い、厳しい女将修行に励んでいくことに……。

真っすぐひたむきにがんばる新米女将・樋口由香を演じるのは小芝風花。由香や新米女将たちが魅せる加賀友禅姿でのタップダンスをはじめ、母子のぶつかり合いや成長物語、美しい加賀の町並みなど見どころ満載の本作。雑賀監督と村田徹プロデューサーに、誕生秘話や地域で作る映画で大事なことなどを聞きました。

地域で作る映画は地域と一緒の方向を見ることが大事

雑賀監督と村田プロデューサーは、金沢を舞台にした映画『カノン』(16年)でタッグを組まれていますよね。

雑賀監督:村田さんとは今回で2度目です。私は、石川県志賀町を舞台にした映画『リトル・マエストラ』(’13年)を撮ったことがあり、もう1作撮って“石川三部作”にしたいと思い、話をさせていただきました。実はこの作品の種は『リトル・マエストラ』を撮影しているときに生まれています。石川県で撮影をしていたらいたるところで、加賀温泉郷で働く女性PRグループ“Lady Kaga(レディー・カガ)”さんのポスターや動画を見かけたんですよ。動画は、加賀温泉郷で働く女性たちが和服を着て駅前に並んでいるという映像で、それを見ているうちに、“Lady Kaga”のみなさんが踊ると面白いなと思うようになり、いつか撮りたいと思っていて……。とはいえ、それはあくまでもその時に感じたことで、頭の奥底にあったのですが、今回、加賀市にスポットを当てるという話になったときに、ぜひ“Lady Kaga”さんをテーマに映画を作れないかと思い提案しました。

加賀市にスポットを当てることになった理由は?

村田プロデューサー:『カノン』を制作しているときに北陸新幹線が開通し、かなり盛り上がった経験があったので、今回も新幹線の延伸と映画の企画を組み合わせれば地元も盛り上がるだろうと考えました。映画を使って地元の観光プロモーションもできればという思惑があり、舞台を加賀市に決めたところもあります。

映画と観光プロモーションは相性がいいのでしょうか?

雑賀監督:富山で、『カノン』を撮っていたときに、『おおかみこどもの雨と雪』(12年)のイラストが描かれたラッピングバスが街を走っていたんですよ。聖地巡礼バスを市が月に2回出していると聞いて、その時にあらためて映画の力を感じましたね。映画には、上映後もその舞台に足を延ばしたくなるほどの力がある。『おおかみこどもの雨と雪』は、その時公開から3年ほど経っていましたが、映画を観た人の中ではまだ映画が生きているんですよ。最高なことだと思います。
村田プロデューサー:“聖地巡礼”や“コンテンツツーリズム”という言葉が作られるなど、十数年前から映画を観た方が作中に出てきたシーンや食べ物に興味を持ってくださるということが、ある程度、世の中に浸透してきました。そこで、地域創生のために映画をうまく活用したいという地域の方と地域に密着した映画を作りたいと思いました。地域と作り手が一緒の方向を見て作品を作るというのは、そう難しいことではないと思っています。

今回、加賀市を舞台にする上でこだわった点を教えてください。

雑賀監督:(撮影地については)お任せしますと言っていただきましたので、最初に決めたのは、加賀市にある3つの温泉のいいとこ取りをすることです。その結果、いい配分でそれぞれ舞台になっていると思います。

気をつけた点としては、地元にべったり寄り添いすぎた観光プロモーションを作品の主軸にしないこと。海外も含め他の地域の方にとって、あまりにも地域を押しつけると純粋に映画を楽しめないというか……。加賀市民ではない人が観ても、楽しめることが大事だと思います。そのためにも当たり前に物語が大事で、普遍性がある、多くの方が感情移入できるストーリーにしています。地域の魅力をスパイスとして入れつつ、物語の面白さで魅せる映画になったと思います。

村田プロデューサー:監督自身がロケハンをして、映画にとってベストな場所を選んでいます。結果的に、映画を観た方が加賀市を訪れたいと思ってくれたらうれしいです。

小芝風花さんの説得力があるタップにセリフはいらない

普遍性のあるストーリーを意識したとのことですが。

雑賀監督:若い人に共感していただきたいと思って、ストーリーは主人公の成長物語になっています。また、女将さんとして成長していくなかで、母娘関係の修復も大きなテーマです。しかも女将さんとして成長していくのは主人公だけではなく、周りの登場人物全員なんですよ。タップを通じて、女将として日本のおもてなしとは何かを考えて成長していく人間ドラマとして楽しんでいただきたいです。

成長していく主人公・樋口由香を演じたのが小芝風花さんでした。

雑賀監督:小芝さんはシリアスな作品はもちろん、コメディー系の演技もできる方です。東京でうまくいかず落ち込んでいる由香がだんだん元気になっていく姿をうまく演じてもらえると思いました。本当に由香そのものでしたね。

今回はタップダンサーという役どころで、タップダンスを踊れることがかなり重要でしたが……。

村田プロデューサー:小芝さんをはじめ多くの方がタップダンス初心者だったので、クランクインまでの9カ月、みっちり練習していただきました。ただ、最初はどこまでできるか不安な気持ちがなかったと言えばウソになります(笑)。
雑賀監督:今回、北野武監督の『座頭市』(03年)で、和風タップダンスを監修したHIDEBOHさんに振り付けをお願いしました。いろいろお話をして、とりあえずベースとなる基礎をきちんとやっていこうという話になり練習に入ってもらいました。普通の方だと数カ月かかるところ、小芝さんは1週間でマスターしたんです。それには驚きましたね。小芝さん演じる由香の母親役の檀れいさんは、宝塚歌劇団出身で踊りはクラシックから日本舞踊までさまざまなジャンルをやられてきている。その檀さんが、「タップダンスが一番難しい」とおっしゃっていた。小芝さんは、中学生までフィギュアスケートをやられていたので体幹が鍛えられていて、運動神経が抜群な上、見えないところで練習をしていたからマスターできたと思います。小芝さんの努力家な一面にかなり助けられました。

ラストはセリフではなくタップダンスで物語を引っ張っていました。これは小芝さんのタップダンスがなければ成立しなかったですよね。

雑賀監督:実は、台本では由香の思いを小芝さんの声で伝えるモノローグがあったのですが、彼女がタップダンスを踊る姿を見て、それは止めました。踊りに説得力があるので、なくていい。作中のダンスの重要性を理解し努力してくれた。小芝さんに由香を任せてよかったです。

作品の中で登場する着物姿のタップダンスシーンをNFTで販売されるそうですが。

村田プロデューサー:映画でNFTの商材を販売する例は少ないのですが、今回、チャレンジしてみようということになりました。作中のダンスシーンもいろいろバリエーションがあって面白いというのが大きな理由です。映画の中ではダンスの間にお芝居が入っていますが、NFTで販売するシーンの方は純粋にダンスのみを楽しめるコンテンツになっています。
雑賀監督:ミュージカル映画などにある歌唱部分だけピックアップできるものや、昔よくあった映画のサントラ盤みたいな感じです。かなりバリエーションのあるダンスなのでぜひ楽しんでいただきたいです。
村田プロデューサー:ダンスと言えば、加賀市では本作にちなんで「レッツタップダンス」という市民参加企画を行っているんですよ。2024年3月16日の北陸新幹線「加賀温泉駅」開業イベントに向けて映画のストーリーを再現する企画です。このように映画という枠を超えて世の中に広がっていくことは、映画にとって本当に幸せなことだと思います。

映画を俯瞰して見るプロデューサー目線は、監督にとっても大事

観光プロモーションやダンスのNFTなど、映画を取り巻くものにも付加価値が出てきたということですか?

雑賀監督:今の世の中、映画を一つのコンテンツとして扱っていくことが大事になってきているので、私たちもとりあえずやってみようという精神でトライしています。作品そのものも大事ですが、その周辺からも盛り上げていければと思っています。

映画に付加価値を持たせていくには映画を俯瞰して見ることが大切になってきますね。

雑賀監督:僕は映画を観客として観たとき、エンドロールまで楽しみたいと思うタイプなんですよ。たいやきだとしっぽまであんこが詰まっているというのが理想で。それを考えると映画を俯瞰して見る、プロデューサー目線は非常に大事だと思います。世界の映画祭に参加して海外の監督たちと話すと、特にアメリカ系の監督はプロデューサーを兼ねている方が多い。そして、撮って終わりではなく、そこから先、どうやったら多くの人に観られるかをきちんと考えているんですよ。そういう方と触れ合って、あらためて俯瞰して作品を見ることの大切さに気づかされました。作品は自分にとって子どもみたいなものなので、大きく成長できるように完成した後もエネルギーを注ぎ込んでいきたいです。
村田プロデューサー:監督と作品の関わり合いに関しては、監督によっては作品の内容だけに集中される方もいますし、さまざまだと思います。今回、雑賀監督からは、宣伝も含めてたくさんのアイデアをいただいて、ディスカッションができたことでいい作品が作れたと思っています。
雑賀監督:この作品を観た方だけではなくかかわってくださった方にも喜んでいただけるものになっていればと思います。

本作を作る上で、加賀市や加賀にかかわっている方々のバックアップも大きかったと思います。

村田プロデューサー:自治体だけではなく、企業を含め多くの方々にご協力いただいてできた作品です。本作が誕生するきっかけとなった“Lady Kaga”さんも、“レディカガ”をタイトルとして使用することに快く了承いただきました。本作で小芝さんをはじめとした女将たちが来ている加賀友禅も、「小粋なきもの倶楽部」という石川県にあるNPO団体の全面協力のもと着物の提供だけでなく着付けまでしていただきました。
雑賀監督:着物が濡れてしまうシーンがあるのですが、そのシーンで着る衣装の加賀友禅も地元の呉服屋さんが快く貸してくださったものです。売り物にはならなくなってしまうため普通はあり得ないことで、本当にありがたいことです。あらためて映画は一人で作れるものではないと気づかされました。

着物でタップを踊るというキャッチーな映像はみなさんの協力があってこそ撮影できたんですね。着物で踊るというアイデアは斬新ですね。

雑賀監督:『座頭市』の中で、和服でタップをしている姿を見て、いつか和と洋の融合をしたいと思っていました。なかでも加賀友禅など華やかな着物に注目したのは、『リトル・マエストラ』で上海国際映画祭に行ったとき。監督の私ではなく着物姿の妻の前にカメラの行列ができて(笑)。着物の魅力的にあらためて気づかされました。海外を見渡すとここまで柄や色が多種多様な民族衣装はそうないんですよ。どうもそこに魅力があるようで。日本ならではの着物に世界的なエンターテインメントであるタップダンスをプラスすると、より華やかで目を見張るものになる……。まぁ、ダンスする方は大変ですけど(笑)。普通にタップダンスを踊るより、3倍は大変だったと思います。その甲斐あってか、シルクロード国際映画祭でも、多くの方に斬新で面白いと褒めていただきました。これはかなりうれしかったです。

映像が言葉を飛び越える瞬間を意識して作品を作る

本作は第10回シルクロード国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされましたね。

雑賀監督:世界から集まった約1000本の中の20本として選ばれたということですから、これを聞いたときは非常にうれしかったです。実際に現地で上映会に参加したのですが、最後はスタンディングオベーションになって。海外でもウケたことは自信になりました。

常に世界を意識して映画づくりをされているのですか?

雑賀監督:配信のプラットフォームも増えてテレビドラマやアニメの需要も増えてきてはいますが、それでもやはり、いまだに世界に垣根がないのは映画だと思います。日本だけで終わらず、海外でも上映、配信されて多くの人に観てもらえる。そういう発展の仕方は映画ならではで、近年作ったものは基本、世界に出しています。

海外の映画祭では、映画の力を感じるんです。日本映画の弱点は語学にあって……。やはり英語圏の作品の方が多くの人が観やすい。ただ、日本語のような、話せる人が少ない言語を使っている物語でも人の心の機微など普遍的に世界に伝わる作品もあるんですよ。映像が言葉を飛び越える瞬間というか。そういうことを意識して作品を作ることが大事だと思っています。

村田プロデューサー:プロデューサーの立場から言うと、出資金の回収という意味でも世界を見据えることは大事です。世界配信も含めて稼いでいく。映画はお金がかかるものなので、世界を含めてどうやって多くの方に見てもらうかを意識して作っています。

最後に映画を作る上で大事にしていることを教えてください。

雑賀監督:一つは、普遍的な物語が展開される中で、必ず“今”を入れることです。今回、コロナ禍があった後の“今”の加賀温泉を見ることができると思います。女将志望者に海外の方や水商売から転身する方が増えてきているので、そうした実態もリアルにきちんと描いています。

もう一つは、自分が作るからには自分の経験したことを入れたいと思っています。そのためにはいろいろな経験をしていくことが大事。最近の若い人は人生最短距離で進んでいくことが良しとされていますが、人生ってそんな簡単なものではないです。なぜ?と思ったり、悔しいと思ったりすることもたくさんあると思いますが、それもすべて映画に活かせられます。だから、とりあえず効率を考えずトライすることが大切だと思います。

そして、それは年を取っても変わりません。最近なんて、時代の移り変わりが早いので、昔の経験則は通用しないことが多いです。先人たちが伝えてくれることも大事ですが、まずは自分でトライしてビルドしていく。これが、これから映画を作る上で必要だと思います。

村田プロデューサー:プロデューサーとして、作った作品が劇場に足を運んでくれる方にきちんと届くようにすることが大事だと考えています。どんなに崇高なものを作ったとしても、観る人がいなければ意味はないので。また、今回のように地域創生の手段として、地元の方としっかり連携を取り、協力して、一緒に盛り上がることでヒットに結びつくと思います。かかわった方が幸せになれる映画を目指して、これからも映画にかかわっていきたいです。

取材日:2023年11月30日 ライター:玉置 晴子 映像撮影:村上 光廣 映像編集:浦田 優衣

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『レディ加賀』

ⓒ映画「レディ加賀」製作委員会

2024年2月9日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー
2月2日(金)石川県先行公開

出演:
小芝風花 松田るか 青木瞭 中村静香 八木アリサ 奈月セナ 小野木里奈 水島麻里奈
佐藤藍子 篠井英介 森崎ウィン
檀れい

監督:雑賀俊朗
脚本:渡辺典子 雑賀俊朗
プロデュ-サー:村田徹 藤田修
主題歌:眉村ちあき「バケモン」(トイズファクトリー)
製作委員会:
サーフ・エンターテイメント フェローズ ポニーキャニオン basil
ミライ・ピクチャーズ・ジャパン JR西日本コミュニケーションズ
ポリゴンマジック アークエンタテインメント ねこじゃらし SDP
トイズファクトリー ウィルウェイ レアル おさかな
特別協賛:加賀市 特別協力:北國新聞社 後援:石川県・金沢市
配給:アークエンタテインメント
©映画「レディ加賀」製作委員会

公式HP:ladykaga-movie.com
公式Twitter:@ladykaga_movie
公式Instagram:ladykaga_movie

ストーリー

新米女将たちがタップダンスチームを結成⁉
前代未聞の町おこしプロジェクトの結末は――

樋口由香(小芝風花)は、加賀温泉にある老舗旅館「ひぐち」の一人娘。小学生の時に見たタップダンスに魅了され、上京してタップダンサーを目指したものの現実はうまくはいかず、夢を諦めて実家に戻って女将修行を始めることに。幼馴染で同じく新米女将であるあゆみ(松田るか)と一緒に老舗旅館の女将の朋子(佐藤藍子)が講師を務める「女将ゼミナール」に通い始めた由香は、東京からやってきた元ナンバーワンキャバ嬢の麻衣(中村静香)や日本の伝統文化に興味があるカトリーヌ(八木アリサ)など、さまざまな事情を抱えながら女将を目指す面々と出会いを果たし、一緒に厳しい女将修行に励んでいくことに…。

映画「レディ加賀」は石川県を応援しています。
本作配給収入の一部(5%)を義援金として石川県に寄付いたします。

プロフィール
『レディ加賀』 監督 / プロデューサー
雑賀 俊朗 氏 / 村田 徹


雑賀俊朗監督(Toshiro Saiga)
1958年生まれ、福岡県北九州出身。テレビ番組やドラマの演出、プロデュースを経て、01年『クリスマス・イヴ』で劇場映画監督デビュー。『チェスト!』(08年)では,角川日本映画エンジェル大賞受賞、香港フィルマート日本代表に。『リトル・マエストラ』(13年)は上海国際映画祭の日本映画週間に招待。『カノン』(17年)は中国のアカデミー賞と言われる金鶏百花国際映画祭・国際映画部門において 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀女優賞の三冠を達成した。22年には、自身の地元である北九州市を舞台に『レッドシューズ』を制作。カナダのモントリオール・ファンタジア国際映画祭に正式招待された。

村田徹(Toru Murata)
チーフプロデューサー
株式会社フェローズにて、17年より映画関連事業を担当。ヴェネチア国際映画祭に銀獅子賞を受賞した『スパイの妻<劇場版>』(20年)、『滑走路』(20年)、『ブルーヘブンを君に』(21年)、『峠 最後のサムライ』(22年)、『ファミリア』(23年)などにかかわる。
24年2月公開の『レディ加賀』では、チーフプロデューサーを務める。
フェローズフィルムフェスティバル学生部門(FFF-S)や若手映画作家応援プロジェクト「FFF-S BEYOND」のプロデュースなど、学生監督の育成・サポートする事業に従事している。

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