小芝風花が着物でレッツタップダンス!映画に地域がリンクして広がる
『カノン』(2016年)で、金鶏百花国際映画祭・国際映画部門 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀女優賞の三冠を達成した雑賀俊朗監督が、再び石川県を舞台に撮ったハートフルエンターテインメント『レディ加賀』。
加賀温泉にある老舗旅館の一人娘樋口由香は上京してタップダンサーを目指すも挫折。実家に戻り「女将ゼミナール」に通い、厳しい女将修行に励んでいくことに……。
真っすぐひたむきにがんばる新米女将・樋口由香を演じるのは小芝風花。由香や新米女将たちが魅せる加賀友禅姿でのタップダンスをはじめ、母子のぶつかり合いや成長物語、美しい加賀の町並みなど見どころ満載の本作。雑賀監督と村田徹プロデューサーに、誕生秘話や地域で作る映画で大事なことなどを聞きました。
地域で作る映画は地域と一緒の方向を見ることが大事
雑賀監督と村田プロデューサーは、金沢を舞台にした映画『カノン』(16年)でタッグを組まれていますよね。
加賀市にスポットを当てることになった理由は?
村田プロデューサー:『カノン』を制作しているときに北陸新幹線が開通し、かなり盛り上がった経験があったので、今回も新幹線の延伸と映画の企画を組み合わせれば地元も盛り上がるだろうと考えました。映画を使って地元の観光プロモーションもできればという思惑があり、舞台を加賀市に決めたところもあります。
映画と観光プロモーションは相性がいいのでしょうか?
今回、加賀市を舞台にする上でこだわった点を教えてください。
気をつけた点としては、地元にべったり寄り添いすぎた観光プロモーションを作品の主軸にしないこと。海外も含め他の地域の方にとって、あまりにも地域を押しつけると純粋に映画を楽しめないというか……。加賀市民ではない人が観ても、楽しめることが大事だと思います。そのためにも当たり前に物語が大事で、普遍性がある、多くの方が感情移入できるストーリーにしています。地域の魅力をスパイスとして入れつつ、物語の面白さで魅せる映画になったと思います。
小芝風花さんの説得力があるタップにセリフはいらない
普遍性のあるストーリーを意識したとのことですが。
成長していく主人公・樋口由香を演じたのが小芝風花さんでした。
今回はタップダンサーという役どころで、タップダンスを踊れることがかなり重要でしたが……。
ラストはセリフではなくタップダンスで物語を引っ張っていました。これは小芝さんのタップダンスがなければ成立しなかったですよね。
作品の中で登場する着物姿のタップダンスシーンをNFTで販売されるそうですが。
映画を俯瞰して見るプロデューサー目線は、監督にとっても大事
観光プロモーションやダンスのNFTなど、映画を取り巻くものにも付加価値が出てきたということですか?
映画に付加価値を持たせていくには映画を俯瞰して見ることが大切になってきますね。
本作を作る上で、加賀市や加賀にかかわっている方々のバックアップも大きかったと思います。
着物でタップを踊るというキャッチーな映像はみなさんの協力があってこそ撮影できたんですね。着物で踊るというアイデアは斬新ですね。
映像が言葉を飛び越える瞬間を意識して作品を作る
本作は第10回シルクロード国際映画祭のコンペティション部門にノミネートされましたね。
常に世界を意識して映画づくりをされているのですか?
海外の映画祭では、映画の力を感じるんです。日本映画の弱点は語学にあって……。やはり英語圏の作品の方が多くの人が観やすい。ただ、日本語のような、話せる人が少ない言語を使っている物語でも人の心の機微など普遍的に世界に伝わる作品もあるんですよ。映像が言葉を飛び越える瞬間というか。そういうことを意識して作品を作ることが大事だと思っています。
最後に映画を作る上で大事にしていることを教えてください。
もう一つは、自分が作るからには自分の経験したことを入れたいと思っています。そのためにはいろいろな経験をしていくことが大事。最近の若い人は人生最短距離で進んでいくことが良しとされていますが、人生ってそんな簡単なものではないです。なぜ?と思ったり、悔しいと思ったりすることもたくさんあると思いますが、それもすべて映画に活かせられます。だから、とりあえず効率を考えずトライすることが大切だと思います。
そして、それは年を取っても変わりません。最近なんて、時代の移り変わりが早いので、昔の経験則は通用しないことが多いです。先人たちが伝えてくれることも大事ですが、まずは自分でトライしてビルドしていく。これが、これから映画を作る上で必要だと思います。
取材日:2023年11月30日 ライター:玉置 晴子 映像撮影:村上 光廣 映像編集:浦田 優衣
『レディ加賀』
ⓒ映画「レディ加賀」製作委員会
2024年2月9日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー
2月2日(金)石川県先行公開
出演:
小芝風花 松田るか 青木瞭 中村静香 八木アリサ 奈月セナ 小野木里奈 水島麻里奈
佐藤藍子 篠井英介 森崎ウィン
檀れい
監督:雑賀俊朗
脚本:渡辺典子 雑賀俊朗
プロデュ-サー:村田徹 藤田修
主題歌:眉村ちあき「バケモン」(トイズファクトリー)
製作委員会:
サーフ・エンターテイメント フェローズ ポニーキャニオン basil
ミライ・ピクチャーズ・ジャパン JR西日本コミュニケーションズ
ポリゴンマジック アークエンタテインメント ねこじゃらし SDP
トイズファクトリー ウィルウェイ レアル おさかな
特別協賛:加賀市 特別協力:北國新聞社 後援:石川県・金沢市
配給:アークエンタテインメント
©映画「レディ加賀」製作委員会
公式HP:ladykaga-movie.com
公式Twitter:@ladykaga_movie
公式Instagram:ladykaga_movie
ストーリー
新米女将たちがタップダンスチームを結成⁉
前代未聞の町おこしプロジェクトの結末は――
樋口由香(小芝風花)は、加賀温泉にある老舗旅館「ひぐち」の一人娘。小学生の時に見たタップダンスに魅了され、上京してタップダンサーを目指したものの現実はうまくはいかず、夢を諦めて実家に戻って女将修行を始めることに。幼馴染で同じく新米女将であるあゆみ(松田るか)と一緒に老舗旅館の女将の朋子(佐藤藍子)が講師を務める「女将ゼミナール」に通い始めた由香は、東京からやってきた元ナンバーワンキャバ嬢の麻衣(中村静香)や日本の伝統文化に興味があるカトリーヌ(八木アリサ)など、さまざまな事情を抱えながら女将を目指す面々と出会いを果たし、一緒に厳しい女将修行に励んでいくことに…。
映画「レディ加賀」は石川県を応援しています。
本作配給収入の一部(5%)を義援金として石川県に寄付いたします。
雑賀俊朗監督(Toshiro Saiga)
1958年生まれ、福岡県北九州出身。テレビ番組やドラマの演出、プロデュースを経て、01年『クリスマス・イヴ』で劇場映画監督デビュー。『チェスト!』(08年)では,角川日本映画エンジェル大賞受賞、香港フィルマート日本代表に。『リトル・マエストラ』(13年)は上海国際映画祭の日本映画週間に招待。『カノン』(17年)は中国のアカデミー賞と言われる金鶏百花国際映画祭・国際映画部門において 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀女優賞の三冠を達成した。22年には、自身の地元である北九州市を舞台に『レッドシューズ』を制作。カナダのモントリオール・ファンタジア国際映画祭に正式招待された。
村田徹(Toru Murata)
チーフプロデューサー
株式会社フェローズにて、17年より映画関連事業を担当。ヴェネチア国際映画祭に銀獅子賞を受賞した『スパイの妻<劇場版>』(20年)、『滑走路』(20年)、『ブルーヘブンを君に』(21年)、『峠 最後のサムライ』(22年)、『ファミリア』(23年)などにかかわる。
24年2月公開の『レディ加賀』では、チーフプロデューサーを務める。
フェローズフィルムフェスティバル学生部門(FFF-S)や若手映画作家応援プロジェクト「FFF-S BEYOND」のプロデュースなど、学生監督の育成・サポートする事業に従事している。