WEB・モバイル2023.09.06

仙台で「面白れぇ事やろうぜ!」。半導体畑を歩んだ代表、若手クリエイターを支援するワケ

仙台
匠ソリューションズ株式会社 代表取締役社長
Masami Iwamoto
岩本 正美

創業当初からものづくりを基盤とした多角的経営に取り組み、面白いことに挑戦し続ける仙台の匠ソリューションズ株式会社。10周年の2017年には企業理念を「面白れぇ事やろうぜ!」に変更し、クリエイターの自立支援を行う「杜の都ものづくり大学」を開校しました。半導体開発事業、女性用ナプキンの製造事業なども展開する同社が考える「面白れぇ事」とは?代表取締役社長の岩本 正美(いわもと まさみ)さんに伺いました。

半導体業界の経験生かし、ものづくりの面白さを若者へ。ジャンルの異なる三つの事業柱

御社の事業内容について教えてください。

弊社の事業は、大きく分けて三つあります。一つはメイン事業の半導体の設計で、仙台と新横浜の二拠点で主にLSI(大規模集積回路)の研究開発とお客さまの受託サービス、小型GPUボードを使ったAIの研究・開発に注力しています。もう一つは女性用布ナプキンの開発とECサイトで販売を行うジェランジェ事業部です。
そして、新たに始めた事業の「杜の都ものづくり大学」は、クリエイターさんを支援する事業で、全国的にも少なく仙台ではほとんどありません。主なターゲットは若手のクリエイターさん。学校を卒業してクリエイターを志した場合、企業に就職する方がほとんどだと思いますが、多様性の時代を考えると、卒業後すぐに個人事業主としてビジネスをやる選択肢があってもいいと思います。ただし、クリエイターを仕事として収益を得るには、法律や税務の知識なども必要なので、そういう面も含めてサポートしていきたいですね。さらにクリエイターさん同士の情報交換の場として、新たなシナジーを生んでもらえたらうれしいです。
本格的に活動したい方には、我々のジェランジェ事業部に関わってもらい、広告やプロモーション、専用サイトの立ち上げの方法、作品の見せ方、写真の撮り方などを支援します。

22年3月にオープンした「杜の都ものづくり大学」は、仙台でものづくりを楽しむクリエイターを支援するためにつくった事業ということですが、この事業を始めたきっかけ、思い、準備について教えてください。

私は社会人になって数十年、半導体業界に関わってきて、弊社は最先端と思われている半導体の設計に携わっていますが、日本の半導体市場は年々衰退しているのが現状です。
特に若い人に半導体という電子工作の面白さを知ってもらうきっかけの場としてつくりたかったというのが理由の一つです。
また、ジェランジェ事業部の要である縫製の業界も高齢化が加速して、若い人たちが縫製を学ぶ場ややる機会が少なくなりました。半導体の技術や縫製といったものづくりを衰退させないためには、若い人たちに興味を持ってもらうことが大切です。実際にものをつくる喜び、達成感を若い人に実感してほしくて始めました。
準備はめちゃめちゃ大変でした。JR仙台駅から徒歩圏に約70坪の場所を借りて、エアコンもトイレもない骨組みだけの建物からリノベーションしました。国の事業再構築補助金をもらえて実現が加速しましたが、一部、自分たちで壁やペンキを塗ったり棚をつくったりもして。計画してから公開までは1年半以上かかりました。

成長が認められ、お客さまを喜ばせることが「面白い」につながる

御社の理念「面白れぇ事やろうぜ」「360°Smile Company」について、御社が考える「面白れぇ事」とは、どのようなことでしょうか。

自分が取り組んだことで成果を出して成長を実感し、その成長を認めてもらえることですね。一番難しいのは、お客さまを喜ばせることですが、それができれば「面白い」につながります。
お客さまに仕事を頼まれて言われた通りにやっても「ありがとう」にしかなりません。お客さま自身が気づかない、本当に必要としているところを掘り下げて提供していくのが我々の仕事。そこまでやってお客さまが本当の感謝を伝えてくれる、それが面白いにつながっていく、それをつくりたいと思っています。

御社にはジェランジェ事業のように社員の意見から生まれた事業がありますが、このように新しいことに挑戦していく会社なのでしょうか。

ジェランジェ事業部は、当時事務員だった女性たちからのアイデアがきっかけです。それから、事業をするために必要なことを教えて、時間をかけて事業として成立しました。お金を稼ぐサポートの側にいる事務員さんでも、アイデアを出せばお金を稼げることが証明できて、とても良かったと思っています。
そんなふうに我々は社内ベンチャーも支援していますし、独立して新たなベンチャー企業をつくることも応援しています。弊社を踏み台にしてここから巣立っていってほしいと思っています。

個人では手に入れにくいビジネスに必要な施設と設備が24時間365日使える

「杜の都ものづくり大学」の設備や活用例を教えてください。

「ものづくり大学」には、フリースペースやミーティングルーム、プライベートルームのほか、電子工作スタジオ、撮影スタジオ、DIYスタジオなどものづくりに特化した六つのスタジオがあります。会員登録せずに利用できる場所もありますが、登録をすれば24時間365日利用できて機材や設備は使い放題です。
活用例としては、会員登録済みのクリエイターさんが企画した教室で、錫(すず)を使ってトレイやお猪口(ちょこ)などをつくる教室、犬の服をつくる教室、アロマの教室などがあります。ソーイングスタジオにはロックミシンとか特殊なミシンなども揃っていて使い方も教えています。ソーイングスタジオでコスプレの衣装をつくって、撮影スタジオで動画を撮影するといったケースもありました。防音のプライベートルームでは動画の配信やオンラインミーティングで利用する方もいます。
3Dプリンターを持っていても活用できずに眠っている企業が多いと思い、3Dプリンターを活用できるまでを教える基礎的な講座も複数回開催しています。
利用者からは「これはできますか」「こういうものを用意してほしい」といった相談や要望の方が多いですね。

作品の価値を見出すためのECサイトの構築と情報交換の場づくりを目指す

今後の会社のビジョンと、それに向けての具体的な取り組み 、これから挑戦したいことなどを教えてください。

「杜の都ものづくり大学」では、クリエイターさんの作品を販売する専用のECサイトを立ち上げたいです。クリエイターさんは作品づくりに注力してもらい、我々が作品の最大限の価値を見出すようにプロモーションをかけて、欲しい方に適正価格で提供する、そういう安売りじゃないECサイトの運営をこれからやっていこうとしています。
もう一つ、私の方に「こういうことはできませんか」という弊社の事業とは関係ない依頼や相談がたくさんあるので、そういう仕事情報をクリエイターさんに発信して、やりたい人が手を挙げてくれるようなコミュニティの場もつくり始めています。

夢持つ人を「応援して成長させたい」。東北の気質を生かした事業化支援に力

仙台のクリエイターの支援を通して仙台に貢献するということですね。

私は宮城県生まれで地元への思い入れはあります。真面目で寡黙で黙々と作業する東北の気質はものづくりに合っていると思いますし、こだわりをもって質の高いものをつくるところは、もともと文化として持っているので、そこを生かしていきたいです。ただ、良いものをつくってもプロモーションができなくてうまく事業化できないと収入につなげられないですし、法律や税関係など守るべきことが沢山あるので、そこを支援できたらと思います。
仙台市に拠点を置いて支援していきますが、例えば関東で有名なクリエイターさんが講師として仙台に来て生徒を広げたいといったことがあれば活用していきたいですし、さらに需要が高まれば、各拠点につくっていくこともあると思います。

スタッフさんに求めること、アドバイスしていることがあれば教えてください。

「失敗は成長のもとだから恐れるな」ということです。失敗して何故こうなったんだろうと自分を責めると、せっかくの成長する機会を逃してしまいます。ものづくりは失敗の積み重ね。反省を次に生かして、もっといいものにつなげていこうとスタッフには話しています。

どのような人材を求めていらっしゃる のでしょうか。

能力は磨けば光って培われていくものなので求めていません、一番はやる気です。将来を見据えて、こう成長したい、こういうことをやっていきたいという強い思いがある人、夢を持てる人にはぜひ来てほしいですね。そういう人と話をすると私もわくわくして、この人を応援して成長させたいと思うのです。私のモチベーションはそこにしかないです。

仙台のクリエイターさん へのメッセージをお願いいたします。

言葉だけでは伝わらないこともあるので、まずは「杜の都ものづくり大学」に見に来ていただきたいです。きっといろんなアイデアややりたいことが出てきますし、もし悩んでいることがあれば私を含めてスタッフが親身に相談にのります。ぜひ一度、施設を見に来てください。

取材日:2023年7月18日 ライター:佐藤 由紀子

匠ソリューションズ株式会社

  • 代表者名:岩本 正美
  • 設立年月:2007年2月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:受託・製品の販売 / 女性用ナプキンの製造・販売 /ものづくり大学運営URL
  • 所在地:〒980-0014 仙台市青葉区本町1-12-12 GMビルディング2F
  • 電話番号:022-342-1888
  • URL:https://takumi-solutions.com/
  • お問い合わせ先:https://mm-fablab.com/form/

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