人との出会いとつながりに感謝しながら、目の前の課題を解決する喜び

京都
AG株式会社 代表取締役
Eiji Iwatani
岩谷 瑛司

自社開発した動画ソフトを生かしてクライアントの商品アピールや売り上げアップを実現している、京都の動画ベンチャーAG(エージー)株式会社。映像関連事業やインターネット販売などを手掛けており、なかでも、ユーザーがパソコンやスマホなどで動画を見ながら商品を購入できる「ViC(ヴィック)」と、京野菜などの食材を使った料理レシピを動画で紹介するメディア「choice(チョイス)」を事業の柱としています。

代表取締役の岩谷瑛司(いわたに えいじ)さんは、証券会社で営業経験を積んだ後、2013年に20代後半の若さで会社を立ち上げました。お話を伺うと、周囲の人たちの支えやつながり、そして感謝の思いに成功の秘密が隠されている印象があります。“Alive Greatful(感謝して生きる)”の頭文字から取ったという社名にも象徴されています。そんな岩谷さんに、これまでの歩みや仕事にかける思いなどについて伺いました。

社長賞3回獲得の極意は「まずは夫人の信頼を得ること」

会社立ち上げまでの経緯をお聞かせください。

岩谷さん:

学生時代に、若手経営者の活躍ぶりなどをテレビや本で見聞きするうちに、漠然と「自分で仕事がしたい」という思いが湧いてきていました。そのときは手に職をつけて職人になるのでも、お店を開くのでも良かったんです。

修行と言いますか、まずはサラリーマンとして人生経験を積もうと決めていたこともあり、2007年に大学を卒業後、4年半証券会社で営業職をしました。就職先に証券会社を選んだのは、経営が学べて人脈もできると思ったからです。

入社2年目までは営業成績が全然ダメだったのが、3年目になると種まきをしていたお客さまからの引き合いが相次いで営業トップになったんです。社長賞を3回とったことも大きな自信につながりました。

社長賞をいただくほどの結果を出せた秘訣(ひけつ)は?

岩谷さん:

個人営業を担当していた奈良県には、大阪の中小企業で社長をされている方が多くお住まいで、日中はご夫人の応対になるのですが、いきなり「商品を買ってください」ではなく、まずはたわいない話から始めて時間をかけて信用を得るように心掛けましたね。

その後、課題や要望に「こんな方法がありますよ」と応える流れで。2年がかりで地道な種まきをしてきましたが、3年目に入って徐々に契約が取れて、別のお客さまを紹介していただける好循環が起きた感じです。

会社設立に至ったのはなぜでしょうか?

岩谷さん:

入社4年目に法人向け営業に転向しないかと誘われたんです。営業としてのやりがいを感じていて、このまま続けようかかなり悩みましたが、やはり学生時代を思い返して起業を目指そうと会社を退職しました。

働きながら開業資金も蓄えていたので、起業に必要な会計や税務について勉強しながら充電を経て、趣味で集めていた海外の珍しい時計やカメラをインターネット販売する個人事業を、2012年秋にスタート。軌道に乗ってきたので翌年9月に法人化させました。

AG株式会社の設立になるわけですね。販売事業に加えて映像分野に進出されたいきさつ教えてください。

岩谷さん:

当時は自社サイトのほかに、大手ショッピングサイトでも販売展開していましたが、商品がどれだけ素晴らしくて限定感があるかを記載しても、買い手にはなかなか伝わりにくいなと感じることが多かったんです。

今はライブ配信やストーリーなど動画に触れる機会も多いですが、当時は通信環境も良くなく、動画サイトもエンタテインメント系のコンテンツが多く、EC(電子商取引)サイトで動画の導入はコストがかかることから、画像と文字情報だけでの購買体験が主流でした。

1年間販売をやってみて、このまま続けるのも経営的には悪くないと思っていましたが、社会に役立つような自社オリジナル商品やサービスを作って提供したいという思いも出てきていました。この課題を解決するには映像が効果的だと着目し、ユーザーがECサイト上で動画を見ながら商品理解を深めて購入できないかを考え始め、商品プロモーションツール「ViC」を開発するに至ったのです。

自社サービス「ViC」と「choice」を事業の柱に

課題から誕生した「ViC」について、詳しく教えてください。

岩谷さん:

「ViC」とは、動画の中に写真や文字情報や動画などを埋め込むことで、動画を見ながら商品購入ができるサービスです。

ユーザーは動画に登場している気になるアイテムをタップ(再生中にタップ可)すれば、商品の質感や素材の詳細まで見ることができます。このツールを活用すると、ネットショップで起こる買い手と売り手の溝が減って、商品のアピールや売り上げアップにつなげられるんです。

このソフトは、ベンチャー企業支援施設「京都リサーチパーク」で紹介されたエンジニアを含む数人のチームで共同開発しました。知り合いの紹介で、脚本家・映画監督の作道雄(さくどう ゆう)さんから映像撮影のアドバイスをもらえたのもありがたかったです。2015年にKDDIのベンチャー育成支援プログラム「ムゲンラボ」に採択され、2016年にはアクセラレーションプログラム「OSAP」(大阪市)に採択、2017年には京都市スタートアップ支援ファンドより出資を受けるなど、営業やプレゼンをするたびにビジネスモデルと技術力に評価をいただけました。

最初に大きな手応えを感じたのはどのサイトでしょうか?

岩谷さん:

2016年にパルコのショッピングサイトに導入されたときです。動画の中で女性が使っているペンケースやリュックサックをクリックすると、仕様や素材アップなどの詳細情報が見られて実際に購入できる仕組みで、高い反響を得ました。

新規営業は私も独自に行いますが、パルコのような大手企業ですと直接アプローチするのはとても難しいもので、支援いただいている先やクライアントなどから紹介いただくことが多く、喜びもひとしおでした。

今の取引先の8割くらいは紹介じゃないでしょうか。銀行から取引企業を紹介いただいたり、「こういうことに困っている企業があるけれども、紹介して良いですか」といった形で広がったり。人とのつながりが本当にありがたいなと感謝しています。

次に「choice」についてもお聞かせください。

岩谷さん:

2017年8月から始めた、「ViC」の技術を適用した料理動画メディアサービスで、 「ママの『食についてもっと知り、料理をもっとうまくなりたい』をかなえる」がコンセプトです。

「食材の調理方法を動画で教えてほしい」という、お客さまの声がきっかけでした。でも、ソフトを作って納品するだけだとただの映像制作会社になるので、作ったコンテンツを大手プラットフォームで一般ユーザーに配信しようと思いました。また、これまでの映像撮影のノウハウを生かした商品を開発提供したい思いもあり、自社コンテンツとして配信事業も始めました。

今後はクライアントのニーズに応じて「ViC」を適用し、調理で使っている食材や食器が購入できるようにバージョンアップしたいと思っています。「choice」のレシピ動画は、FacebookYouTubeで公開されており、2020年4月にはFacebookフォロワー数が25万人を突破しました。海外版も日本食や日本文化に興味のある外国の方に評判いただいています。

クライアントが抱える課題に、着実に応えたい

最近、生産者さんと共同で野菜の宅配事業も始められたとのことですが…。

岩谷さん:

それは、妻の茉里(まり)が担当しています。

茉里さん:

私は京都市伏見区にある農家の「宮本ファーム」さんの米粉商品の動画レシピを制作しているのですが、今年(2020年)は新型コロナウイルスの影響で野菜の販売先が休業するなど流通量が激減してしまいました。野菜の移動販売や量り売りも検討されましたが、多品種栽培の生産をしながらではその時間も取りづらいとのこと。

そこで、野菜の宅配サービスのご提案をしたところ、先方もとても喜んでくださって実施することになりました。「宮本ファーム野菜セット」の電子版チラシを制作、知人などに配布したところ計35件の注文を受けました。日頃より、食品ストアの店長さんやスタッフの方から、販促に困っている農家さんや野菜販売業者さんを紹介いただくことも結構あるので、これからもノウハウを蓄積しつつ、宅配セットを継続して行いたいと考えています。

岩谷さん:

動画制作をきっかけに野菜宅配へと話が広がりましたが、生産者と一体となって課題解決に向けて動いていくことが大事で、売り上げアップに向けて推進していきたいですね。

今後の展望についてお聞かせください

岩谷さん:

「ViC」と「choice」の両方を課題解決の手段として、私たちにしかできない拡販をしていきたいですが、あくまでもクライアントやユーザーが感じる課題やニーズに合わせることが優先だと思うので、それらに寄り添った形で解決手法をご提供したい。映像制作に限らず、Webサイト制作、ポスターやチラシのデザインなども行っているのはそれが理由にあるからです。

また、これまでは早期の新規上場を目指してやってきたところがありますが、結婚して子供もできたせいか、より地に足をつけて、まずは京都をはじめ関西圏でクライアントが抱える課題に真摯(しんし)に向き合って解決できるよう、これまで以上に地域密着や人とのつながりを大切にしていきたい。

目の前のお客さまの課題を解決することで自分も成長できる喜びがあります。体制を整えるために、社員もですが映像関係に詳しいパートナーも増やしていって、近い将来には再び上場の目標も掲げて拡大していきたいと思っています。

取材日:2020年5月28日 ライター:小田原 衣利

※オンラインにて取材

AG株式会社

  • 代表者名:代表取締役 岩谷 瑛司
  • 設立年月:2013年9月
  • 資本金:1100万円
  • 事業内容:映像企画・編集・制作事業、映像関連システム開発事業、動画メディア事業、動画マーケティング事業、ホームページ制作・チラシ、ロゴ、ポスター制作、物販事業
  • 所在地:〒600-8413 京都市下京区烏丸通仏光寺下ル大政所町680-1 第八長谷ビル Mesh KYOTO 2階
  • 電話番号:080-3777-1065
  • URL:http://aginc.co.jp/
  • お問い合わせ先:info@aginc.co.jp

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