人間が本当に大切なことに時間を使える社会へ。異色のキャリアから挑むフィジカルAIの可能性

宮城
ベアリーズ株式会社 代表取締役
Kensuke Yabuki
矢吹 健輔氏

防衛技術関係、大手ファストフードチェーン、大手ITベンチャーなど、さまざまな業界で経験を積んできたベアリーズ株式会社の代表・矢吹 健輔(やぶき けんすけ)さん。現在は宮城県大崎市を拠点に、画像・映像認識の技術を生かしたフィジカルAI「Bearmo-AI(ベアモAI)」や、出店業務をAIで自動化する「ベアリーズ百貨店」を展開しています。AIが人の暮らしや仕事をどう変えていくのか。技術を「実際に人の役に立つところ」まで届ける、矢吹さんの挑戦に迫りました。

防衛関係、ファストフード、ITベンチャー……異色のキャリアの先にあった起業

これまで多様なキャリアを歩んでこられたと伺っております。まずは起業に至るまでの経歴を教えてください。

最初は防衛関係の技術分野で働いていました。当時は現在ほどITの職種が細かく分かれていなかったため、「エンジニア」「技術者」と呼ばれていました。現在でいえば、システムエンジニアに近い仕事です。

その後、IT以外の仕事も経験してみようと、大手ファストフードチェーンに転職しました。しばらくは店舗勤務でしたが、IT分野での経験を評価していただき、入社から約6カ月で本社へ異動しました。

本社では、それまで外部へ委託していたシステムの内製化やレジシステムの改修、ネットワーク、サイバーセキュリティ関連の業務など、幅広い業務に携わりました。

その一つが、ドライブスルーの高度化です。当時、店舗で一つの大きな課題になっていたのが商品の渡し忘れでした。ナンバープレートや車種などの情報と注文を結びつけ、どの車に何を渡したのかを確認できるような仕組みをつくりました。

ITから離れてみようと思って転職したものの、半年ほどで再びITの世界に戻ってきた形になりました。

その後、ITベンチャーやコード決済サービスの会社にもいたそうですね。

ITベンチャーでは、本当にさまざまな仕事を経験しました。例えばインフラや情報システム、セキュリティといった、いわゆる会社の基盤を支える仕事です。

その後は、コード決済サービスの会社で営業に携わりました。机の前に座っているだけではなく、人と会ったり体を動かしたりする方が性に合っているようで、営業の仕事は、とても楽しかったです。

起業を決めたきっかけについて教えてください。

実は、もともとは起業したいという気持ちはありませんでした。その考え方が変わったのは、ITベンチャーにいた時です。ディープラーニング(深層学習)の発展を目の当たりにした時、「この技術は、これから社会を大きく変えるかもしれない」と感じました。だからこそ、自分自身で可能性を追求し、事業として形にしてみたいと思ったんです。それが起業のきっかけです。

自然豊かなところで起業したいと、出身である宮城県大崎市で起業することにしました。

ベアモAIとベアリーズ百貨店がもたらす恩恵

ベアモAIのサービスについて教えてください。

目で見て言葉で考えるベアモAIは、ChatGPTなどのような「文章を読むAI」ではなく、「カメラやセンサーを通して現実を見るAI」です。一般的にはフィジカルAIと呼ばれます。

単にモノを見分けるだけでなく、その場の状況まで読み解けるのが特徴です。例えば道路の監視では、単に車を見つけるだけでなく「白い車が猛スピードで危険な状態で通り過ぎた」という文脈まで正しく理解できます。

この高い判断力を生かして、ベアモAIはロボットや自動運転車両といった「動く機械の脳」の役割を果たします。現実の映像から瞬時に状況を判断し、機械を安全に動かせるのが大きな強みです。

これまで私が長年取り組んできた、画像・映像認識の技術の延長線上のものです。ファストフード店のドライブスルーで「車を見る」技術に携わっていた経験を、AIによって現実世界を認識する技術に生かしました。

「ベアリーズ百貨店」について教えてください。

「完全にAIで制御できるECサイト」です。一般的なECサイトの場合、商品登録や在庫管理などは手作業で行います。しかし、ベアリーズ百貨店は商品登録からメール対応、サイト制作に至るまでAIで自動化しています。そのため、出店者は煩わしい作業をする必要がありません。

ベアモAIが「現実を見るAI」なら、ベアリーズ百貨店は「仕事を効率化するAI」といえるのかもしれません。

主に二つのAIサービスを展開されているということですね。AIは社会においてどのような役割を果たすと考えていますか?

AIの役割は、「人間が考えなければならないことを減らす」ことだと考えています。現代社会では、仕事だけでなく、家事や育児、買い物など、同時に大量の情報を処理しなければいけません。いわゆる「マルチタスク」です。

私自身も経営者として、事務作業をしながら開発をして、営業もします。家に帰れば、家族との時間があります。仕事では三つも四つも役割があり、さらに家庭に戻れば別の役割へ切り替えなければいけません。しかし、人間が処理できる情報には限界があります。

だからこそ、人間が本当に大切なことへ時間や意識を使えるように、AIにも情報処理を引き受けてもらう必要があると思っています。そのような社会が実現できるよう、弊社がその一翼を担える存在になれたらと思っています。

AIの会社だからこそ、「家庭や日常を大切にできる人」と働きたい

御社の研修体制について教えてください。

流行しているツールの使い方だけを学ぶような表面的な内容ではなく、原理から理解してもらうように研修メニューを構築しています。

AIのサービスやツールは、次々と登場しては変化していきます。原理を理解していれば、新しいツールが登場したときにも、その仕組みを応用して使いこなせますし、AIが出した結果を鵜呑みにせず、自分で考えながら適切に活用できるようになるからです。

目先のツールを使えるようにするのではなく、変化し続けるAIに対応できる力を身につけてもらうことを大切にしています。

最後に、一緒に働きたいと思う人物像について教えてください。

「AIという分野を一から学びたい」という意欲のある人です。ただ、そのうえでさらに大切なのは、自分の生活や家庭のことまで、きちんと考えられる人だと思っています。

AIの仕事は、とにかくマルチタスクになりやすいんです。だから、仕事だけに集中してしまうと、家庭やプライベートとのバランスを崩してしまうこともあるのです。私は、AIの技術を身につけることと同様に、自分の生活をきちんと守れることが大事だと考えています。

フィジカルAIは、言語を扱うAIと比べても、成果が出るまでに時間がかかる分野です。「実際の生活の中で、本当に人の役に立つのか」を考えながら、一つずつ成果を積み重ねていかなければなりません。

ですから、通販やカメラ、ドライブレコーダーのような、日常生活に近いところからフィジカルAIを形にしていこうとしています。研究や技術開発だけで終わらせるのではなく、実際の暮らしの中で使われ、人の役に立つところまで見据えて取り組んでいく。そうした姿勢に共感し、長い時間をかけて技術を社会に届けていくことに挑戦したい方に、ぜひ来てほしいですね。

取材日:2026年8月28日 ライター:安齋 慎平

ベアリーズ株式会社

  • 代表者名:矢吹 健輔
  • 設立年月:2021年2月
  • 資本金:310万円
  • 事業内容:AI・ソフトウェア関連およびECサイト運営
  • 所在地:〒989-6153 宮城県大崎市古川七日町10-2
  • URL:https://varies.world/
  • お問い合わせ先:https://varies.world/contact-form/

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