生成AI映像制作をプロ品質へ スムージースタジオが挑む動画制作の新領域と市場開拓
動画・映像制作の現場において活用が広がる「生成AI」。コスト削減や作業の自動化といった面に注目が集まる中で、生成AIを単なる省力化ツールではなく「表現力を最大化するための武器」と考え、市場を開拓しているのが、株式会社スムージースタジオです。今回は代表取締役の高橋大河さんに、創業の経緯やAI映像制作における独自の強み、ブランディングの思想など、生成AI時代におけるクリエイティブの本質と未来の展望を伺いました。
大学在学中の起業とハッカソンでの手応え

まずは会社立ち上げまでのキャリアについてお聞かせいただけますか。
大学時代は個人で映像制作を行っていたのですが、その流れの中で、大学のつながりから「AIを使ってサービスを作ろう」というイベント(ハッカソン*)に参加する機会がありました。
そのハッカソンでは、自分を含めた4人のチームでAIを活用したゲームを開発し、賞をいただきました。
賞を取ったこと自体もうれしかったのですが、それ以上に「この4人のメンバーが集まったら、どういった形であれ何かしらのサービスを作ったり、事業を起こしたりできるのではないか」と直感し、大学在学中に会社を立ち上げました。
*ハッカソン:「ハック(Hack)」と「マラソン(Marathon)」を合わせた造語。ITエンジニアやデザイナーなどがチームを組み、決められた短期間(数時間から数日)に集中してソフトウェアやアプリを開発し、その成果を競い合うイベント。
会社設立を意識したのはなぜでしょうか。
メンバーは僕のほかに、エンジニア、デザイナー、もともと映像をやっていて幅広く動けるメンバー(現在はCMOとしてマーケティングを担当)という構成でした。
当時はちょうど大学3年生で、周囲が就職活動を意識し始める時期に僕から声をかけたこともあり、「この素晴らしいメンバーが一緒に事業を始められる箱を早く作らなければいけない」という使命感のようなものを感じました。
「すごくやりたい事業があって、そのために起業した」というよりは、「とにかくこの4人で挑戦するための箱を作ろう」という思いが先でしたね。思い立ってから2週間後には、法人登記を完了させていました。
ゲーム開発から「生成AIプラットフォーム」へ

起業当初は、どのような事業からスタートされたのでしょうか。
最初は、ハッカソンで受賞したようなゲーム事業を伸ばしていく選択肢もありました。しかし、外部からの資金調達を行わず、自己資金で回せる範囲からスタートしました。ゲームを自社で開発して世に出し続けるには、当時の会社の体力では足りないだろうと判断したんです。
ちょうどそのころはGPT-3(※)などが出てきた時期で、AIが話題になりつつあるタイミングでした。「この段階でAIを絡めたアクションを起こす」ということは決めていたので、ゲーム以外の選択肢としてAIを法人でも使えるようなプラットフォーム事業を立ち上げることにしました。
※GPT-3:OpenAIが開発した、人間のように自然な文章を作る大規模な言語モデル。
僕個人としては昔から映像制作を手がけていましたが、この4人が集まってわざわざ従来の映像制作会社をやる意味はないと考えていたのです。結果としてこの「AIプラットフォーム開発」と「個人の映像制作ノウハウ」の二つが存在していたことが、後の大きな事業シフトへとつながっていくことになります。
現在のメイン事業である「生成AIを活用した映像制作」には、どのようにシフトしていかれたのですか?
文字の生成AI(LLM)から少し遅れて、画像を動かしたり映像を生成したりするAI技術が発展してきました。直近の1年半から2年ほどで、ようやくプロの鑑賞に耐えうるような映像が出力できるようになってきたのです。
技術的な可能性を感じつつも、まだ事業としては踏み込めていなかった時期に、以前からお付き合いのあった会社から「AIを使って映像って作れないの?」というご相談をいただきました。これが大きな転機です。
当時はまだAIが出たばかりのタイミングで苦労もあったのではないでしょうか。
ノウハウも少なく、手探り状態でした。「どうやったら面白い映像になるか」「どう作れば人に感動や影響を与えられるか」を試行錯誤しながら制作を進めました。
最初の案件は、数万人規模が参加する大型イベントの演出用映像(合計8本・各6分程度)でした。巨大な会場の大画面に流れる映像だったのですが、完成した映像を見た一部の観客が「これAIを使って演出しているんだ!」と気づいて写真を撮り、X(旧Twitter)にポジティブな投稿をしてくれたのです。それも1人ではなく、数十人以上。
リアルな反響を見て、「新しくて面白いものを作れば、世の中は反応してくれる」という手応えを強く感じました。 そこから現在の映像制作事業へと大きく舵を切り、社内リソースの8割近くを映像制作関連に割いています。
人の手を加える「10割のクオリティ」へのこだわり

最近では生成AIで画像や動画を作る個人や企業も増えていますが、その中で御社の「強み」はどこにあるとお考えですか。
多くの人にとっては「AIでここまで作れれば十分すごい」と思える8割の出来栄えでも、プロのクリエイターから見れば「これではまだ世に出せない」というラインが存在します。その8割の素材を、人の手と最新の技術を組み合わせて「10割の完成度」まで引き上げる判断力と技術力こそが、弊社の最大の強みです。
僕たちが対峙しているのはBtoB(法人)のクライアントであり、Web CMやテレビCM、ブランディング動画など、高いクオリティが求められる領域です。クライアントがなぜ個人や自動生成ツールではなく弊社に依頼してくださるのかといえば、それは「プロの品質まで確実に引き上げられるから」にほかありません。
弊社の制作プロセスでは、生成AIが出力した素材に対して、ほとんどすべての過程で人の手が入ります。例えば、AIが生成した画像や映像素材に対して、クライアントの実際の製品と細部が微妙に異なるといった不整合があれば、Photoshop、After Effects、Premiere Proなどの従来からプロの現場で使われてきたツールや手法を用いて、人の手で緻密に修正・調整します。また、構成や企画の段階でも「AIの良さが生きる見せ方」を計算して組み立てています。
エンジニアリングとクリエイティブの両方が求められる現場だと思いますが、社内のチーム体制や情報共有はどのように行われていますか?
弊社では、クリエイティブディレクターやクリエイターだけでなく、AIモデルの検証やエンジニアリングを担当するメンバーも兼任する形で関わっています。
AIのアップデートスピードはすさまじく、2週間前まで最新だったツールが、今日には時代遅れになることも珍しくありません。そのため、常に流動的なプロセスの中で「今、何がベストな手法か」を試し続ける必要があります。
社内には「AIクリエイティブのオタク」が多く、常に新しいツールを探求して、それを検証し、「すごい映像ができた!」と面白がれるメンバーが集まっています。
弊社の働き方は週2日出社・週3日オンラインというスタイルなのですが、オンライン環境下でも社内のサーバーのチャットツール上で日常的に情報共有が行われています。社内SNSのような感覚で、実験結果やプロンプトのノウハウがリアルタイムでガンガン共有される環境が整っていることが、組織全体の対応力を支えています。
クライアントのニーズと表現の可能性

依頼してくるクライアント側は、生成AIに対してどのような期待を寄せているのでしょうか。
一番多いのはやはり「コストメリット」や「納期の短縮」への期待です。実写のロケ撮影や大がかりなセット設営に比べて、コストを抑えつつ短い期間で制作できるのではないか、という点ですね。また、「最新技術を取り入れている先進的な企業」として話題性やPR効果を狙いたいというニーズもあります。
生成AIだからこそ可能になる映像表現の面白さとは何ですか?
実写映像と真っ向から勝負して置き換えるのではなく、「生成AIだからこそできる表現」を追求できる点です。
例えば、実写撮影では、海外ロケや特殊機材、CGの緻密な作り込みなどに多額の予算が必要となるようなスケール感のある映像や、抽象的・幻想的な演出も、生成AIを活用することで現実的な予算枠の中で形にすることができます。
また、AIにプロンプトを入力して生成する過程で、制作側も意図していなかったような斬新な構図や表現が出力されることがあります。「このAIの出してきた表現、めちゃくちゃ面白いから採用しよう」というような、AIとのコラボレーションによる偶発的なクリエイティビティが生まれるのも面白いところですね。
「安売り」ではなくトップブランドとしての認知へ

今後の会社の展望や目指したい姿についてお聞かせください。
将来的なビジョンとしては、「生成AIを使った映像制作と言えば、スムージースタジオだよね」という第一想起を業界内で確立したいと考えています。
現在、生成AI映像に特化した制作会社はまだ世の中に多くありません。だからこそ、僕たちが市場を開拓し、業界のトップブランドとして認知を広げていきたいです。
業界内での立ち位置として、特に重視していきたいスタンスはありますか?
「AIを使っているから安く作れます」というコスト面だけの訴求は、会社として絶対に行いたくありません。「生成AIを使うことで、これまでにない面白いものが作れる」「予算の中で、ここまでハイクオリティな表現ができる」という、クリエイティビティとクオリティの価値で選ばれる会社でありたいと思っています。
「安価な代用品」としてAIを使うのではなく、プロの技術と情熱を掛け合わせることで、人に感動や影響を与える作品を作り続ける。このスタンスと哲学をブレさせずに持ち続け、会社をさらに大きく成長させていきたいですね。
取材日:2026年7月21日 ライター:徳永 卓司
株式会社スムージースタジオ
- 代表者名:高橋 大河
- 設立年月:2023年7月
- 資本金:100万円
- 事業内容:生成AI専門映像制作、「AIビジュアルチーム」サービス、生成AIプラットフォーム「Universal AI」、生成AIコンサルティング
- 所在地:〒141-0021 東京都品川区上大崎二丁目13番35号 ニューフジビル803
- 公式サイト:https://smoothiestudio.co.jp/
- 生成AI専門映像制作サービスサイト:https://smoothiestudio.co.jp/ai-video/
- お問い合わせ先:https://smoothiestudio.co.jp/contact/






