グラフィック2026.08.26

1300の企業と100の学校に信頼されてきた創刊48年、致知出版社のぶれない流儀

東京
株式会社 致知出版社 取締役
Keiko Fujio
藤尾 佳子

人のあり方を説く「人間学」を礎として、2026年に創刊48周年を迎えた月刊誌『致知』。発行元である株式会社 致知出版社の取締役・藤尾 佳子(ふじお けいこ)さんは、会社に流れる「感謝と感動」の理念に、共感してくれるクリエイターを求めているといいます。
雑誌や書籍の制作、さらに、企業や学校に向けた『致知』を軸とした勉強会にも取り組む同社のあらましや編集哲学、理想とする人材像などを藤尾さんに聞きました。

父が託してくれた書籍をきっかけに転職

藤尾さんはいつ頃入社されたのでしょうか。

2007年に、社会人2年目で転職しました。2026年の7月で20年目となります。弊社の『致知』は2026年で48周年ですが、私が入社したのは29周年の年でした。

転職を決断された背景をお話しいただけますか。

前職は大手総合食品メーカーで、大学時代の就職活動でなんとなく選んだ会社だったんです。社会人1年目の頃、『致知』の創刊から携わり、編集長として『致知』を毎月発刊する傍ら、社長として会社経営に当たっていた父(現在、代表取締役を務める藤尾秀昭氏)から、大手のインターネット金融グループを統括するSBIホールディングスの代表取締役兼会長である北尾吉孝さんの著書『何のために働くのか』を手渡されました。
そこに「働くことは“傍(はた)を楽にする”こと、つまり社会のために働くことである」と書いてありました。すなわち、そばにいる人たちを楽にして、誰かの役に立つことだという教えです。北尾さんの著書には「あなたは何のために働きますか」「これからの人生をどのようにしていきたいですか」という問いかけもあり、前職が「仕事は楽だけど、社会人ってこんな感じでいいのかな」と考えていたタイミングで、「致知出版社で経理の仕事をしないか」と相談を受け、社会人2年目の7月に転職しました。

現在、藤尾様は取締役を務めていらっしゃいますが、それまでのキャリアも教えてください。

当初は経理担当者として入社しましたので、仕訳入力からここでの仕事がスタートしました。今も、本業は経理責任者で、決算業務などを担当しています。2016年ごろ、出産を機にいったん経理の業務を離れたのですが、その後は戻り、『致知』を広めるための活動にも関わってきました。
その過程で新たに立ち上げたのが、2019年に創刊した致知の別冊『母』です。役員会で「お母さんたちに『致知』を広めるために『母』という別冊をつくりたい」と訴えたら創刊が決まり「思いの強い人が編集長をやった方がいい」という全役員の後押しを受けて、私が編集長になりました。世の中のお母さんたちに『致知』の理念を伝えるため、毎号のコンセプトやテーマの設定、構成などに関わっています。

雑誌に限らず「仕事や人生」への気づきを

先述した『致知』は、御社にとっての柱である印象を受けます。創刊の経緯を教えてください。

父や創刊当時を知る方々から聞いたかぎりの話ではありますが、当時の代表が「いつの時代でも仕事にも人生にも真剣に取り組んでいる人はいる。そういう人の心の糧になる雑誌を作ろう」として、立ち上げたと聞いています。今も、その理念は変わりません。

毎号、著名人や社会的な功績をあげていらっしゃる方々のインタビューが数多く収録されていますが、編集方針をお聞きしたいです。

登場される方々の選定では、まず、創刊の理念に合致するかどうかを考えています。さらに、大切なのは「一つの道を極めながら歩んできた方」です。ほかのメディアで取り上げられた、めざましい功績を挙げたなど、表面的な背景ではなく、世に知られていない方であっても「一つの道をコツコツと歩んできた方」に、お声がけしています。
創刊当初は取材対象となる方を探すのは大変だったと父から聞きましたが、今では、編集部員からの提案はもちろん、ご登場いただいた方を介して他の方をご紹介いただく機会もあり、ありがたいです。

48周年を迎えた『致知』を軸に、企業向けの社内木鶏会(もっけいかい)や、学校向けの学内木鶏会、さらに、研修やセミナーの事業も手がけていらっしゃいます。

当初は、お客さまの声から派生していきました。ある企業の経営者の方が「社員のみなさんにも読んでほしい」との思いから『致知』を社内で配ったんですが、社員の方々に読んでいただけず「どうすればいいか」と相談を受けたんです。その後、経営者の方と私たちの話し合いで、企業向けの「社内木鶏会」が立ち上がりました。
いずれの場所であっても、変わらず『致知』の記事を「仕事や人生にどう生かすか」がテーマとなっています。会では、参加者全員が4人1組のチームを組み『致知』の感想を伝えるほか、「美点凝視」といって、感想を発表した方の“いいところ”を、他の参加者が伝える時間もあるんです。おかげさまで口コミによって広がり、現在では約1300社の企業と約100校の学校で取り組んでいただいています。

理念「感謝と感動」に共感する人材を求めて

御社で働くクリエイターの方々は、どのようなお仕事に関わっていらっしゃるのでしょうか。

多くは、雑誌に関わる人材です。取材の企画から記事の完成まで、すべて社員が担当しています。企画した本人の意思を、記事に反映させることを大切にしているためです。デザインは外部に委託していますが、雑誌全体の編集上の判断は、すべて編集部が担っています。

社員構成も教えてください。

新卒入社と中途採用が半々です。全社としては、20〜25%ほどが雑誌の編集職を含むクリエイティブ系の人材で、書籍も年間20点ほど刊行しており、一部、書籍の編集を担う人材もいます。

採用活動では、どのような点を重視されているのでしょうか。

出版社ですので編集職を希望する方が比較的多いんですが、私たちが求めているのは、『致知』を広めること、会社をよりよくすることに貢献してくださる人材です。大事なのは、弊社にある「感謝と感動」の理念に、共感していただけるかどうか。雑誌や書籍を通して、読者の方に「この本に出会ってよかった」と思っていただけるような一冊を作る意図を理解してくださる方かどうかを、書類選考や面接では重視しています。

社内では、どのような教育制度があるのでしょうか。

編集部では毎週の進捗確認があり、雑誌では、毎月の校了後に業務上の振り返りを行っています。また、弊社内でも「社内木鶏会」を取り入れており、社内での交流を図っています。毎月1回、部署や役職、社歴の異なる社員が一堂に会して、4人1組のグループを作り、『致知』の感想、自分のバックグラウンドや仕事への思いなどを、共有しています。
私も参加していますが、入社数年の若手社員から、刺激を受けるときもあるんです。日頃は見えない考え方や人それぞれの原点にふれる貴重な機会であり、会社全体のつながりを生む場にもなっています。

人のあり方を説く「人間学」が根底に

企業として、今後の展望はいかがでしょうか。

会社自体は54期目を迎え、『致知』は今年の9月で48周年を迎えます。私たちは『致知』を日本で一番読まれる雑誌にしたいという目標をずっと掲げています。一過性で販売部数を増やすのではなく、定期購読の月刊誌として『致知』を通して、心を磨く習慣を持つ人を増やしたいという思いが背景にあるんです。
雑誌の存在をより多くの方々に認知していただき、自分の心を“整えながら”生きようとする人たちが増える社会を、弊社としてはめざしています。

目標を掲げる御社、そして、柱となる『致知』の根底には「人間学」があるそうですが、「人間学」とは、どのようなものでしょうか。

人間学とは「過去にも未来にもたった一つしかないこの尊い命をどう生きるのか」を探究する学びです。一人ひとりが、たった一度しかない唯一無二の自分という人生を、命を輝かせて生きてほしい。そのことに気づいていただけるよう祈りを込めて私たちは月刊誌『致知』を発刊し続けています。

その理念にも共感してくれるであろう、将来一緒に働く可能性のある人材の理想像も教えてください。

やはり、われわれの理念に共感してくださる方です。「人間学」を広める仕事に意義を見出し、人生をよりよくしていくことに喜びを感じてくださる方が理想です。そうした方々と共に、新たな展開やサービスを生み出せたらうれしいですし、出会いを楽しみにしています。

取材日:2026年6月16日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社 致知出版社

  • 代表者名:藤尾 秀昭
  • 設立年月:1973年8月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:月刊『致知』の編集・発行、各種書籍の刊行、各種セミナーの開催、CD、DVDの制作・販売
  • 所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4丁目24番9号
  • URL:https://www.chichi.co.jp/
  • お問い合わせ先:03-3796-2111

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