偶然と必然が織りなす「フォトグラファー」という生き方。ゼロから始めたクリエイティブへの挑戦
ふとした思いつきからプロカメラマンへの道を歩み始めたという、株式会社STUDIO THYME(スタジオタイム)の代表取締役兼、フォトグラファーの難波 契介(なんば けいすけ)さん。9年間の修業を経て、2018年にフードスタイリストの篠沢千鶴さんと独立。料理撮影を強みとして活動する難波さんに、これまでの歩みとこれからの目標を伺いました。
高校生で芽生えた「クリエイティブ」へのあこがれ
カメラに興味を持ったきっかけを教えてください。
高校生のときでした。将来を考えたときに、漠然とクリエイティブな仕事をしてみたいなと思い、「写真もいいかもしれない」と軽い気持ちで興味を持ったことが最初です。それまではカメラなんて触ったこともなかったんですけどね。
フォトグラファーとして働くためにどのようなことをされたのですか?
高校を卒業して、新潟デザイン専門学校に進学。卒業後はご縁をいただき、新潟市内にあった写真スタジオ「スタジオユー」に入社することになりました。当時はフィルムからデジタルに移行した時期で、会社では多少フィルムの仕事もありましたが、基本的にはほぼデジタルでしたね。
“見て覚える”アシスタント時代。手探りで身につけた撮影の基礎
そこから修業が始まったのですね。
はい。アシスタント生活が始まりました。当時は「見て覚えろ」の世界。撮影の段取りなんかはまったく教えてくれないので、失敗ばかりで、いつも怒られていました。基本的に何もできないところから徐々に仕事を覚えていく、そんな世界でした。
プライベートではどのような研鑽(けんさん)をされていたのですか?
会社のスタジオはほぼ物撮り専門だったので、自分の表現の幅を広げようと、プライベートでは風景を撮るようにしていました。今もそうですが、当時からフランスの著名な写真家であるアンリ・カルティエ=ブレッソンの写真が好きでしたね。写真で瞬間を切り取る面白さは、その方の作品から学んだのかもしれません。
運命が導いた、独立への道。料理に関わる撮影が強み

独立はいつから考えていたのですか?
実は独立はまったく考えていませんでした。会社に勤めて9年ほど経ったころ、会社の代表が病気になり、会社の存続を検討した結果、社員それぞれが独立することになりました。そこでフードスタイリストとして会社に所属していた篠沢千鶴さんと一緒に、2018年に「STUDIO THYME」を始めることにしました。そこから2025年に法人化したところです。
新潟には多くのフリーのフォトグラファーがいます。ほかの方とどのような点で差別化を図ろうと考えましたか?
フードスタイリストとフォトグラファーというコンビで、しかも前職ではスタジオワークばかりだったので、基本的には料理に特化しようと考えました。カタログの制作なども含めて、企画の段階から入らせていただき、可能な限り、こちらから提案も行わせていただくようにしています。
社名「STUDIO THYME」に込めた想いは?
僕がハーブ好きだったことから、ハーブの一種である「THYME(タイム)」を入れました。2人でいろいろと案を出しあったのですが、料理にも関連するし、これがいいよねということで(笑)。
料理の撮影というとどのようなお仕事が多いのですか?
百貨店さんやメーカーさんのカタログ制作の撮影が多いですね。ほかには宣材写真や新商品紹介のための写真撮影もあります。

「作り込みすぎない」プロの判断力。見る人の“心の動き”を大切に制作
スタジオワークをするうえで心掛けていることはなんですか?
引き際です。スタジオワークとなると、作り込もうと思えばどこまでも作り込めます。キリがないといえばキリがないんです。特にカタログ撮影だったりすると多くの商品を撮影しなければなりません。だからこそ、ギリギリの境目を見極めることが必要ですし、クライアントが求めるクオリティにどれだけ早くたどりつけるかが大事になってきます。
そのために、篠沢と綿密に打ち合わせを行って、完成イメージを事前に共有することは大切にしています。もちろん、その礎となるクライアントとの打ち合わせも十分に行っていますよ。だからこそ、撮影自体は意外なほど短いです。事前が7割、撮影2割、編集1割という感じですかね。
篠沢さんとのチームで動くことの難しさはどこにありますか?
お互い意見が異なる点に尽きますね。基本的に私はフォトグラファーで、彼女はフードスタイリスト、それぞれの立場で意見を言い合うため、なかなか意見が一致しません。でも、とにかく話し合って、それぞれの考えを共有したうえで、最終的にはその論点がどちらの分野に属するかで判断します。スタイリングに関することを話しているのであれば決定権は彼女に、写真的なことであれば私に、という決め方で整合性を取っています。
クライアントとの打ち合わせにはどのようなスタンスで臨まれていますか?
まずは、今回の撮影で、写真が何のために使われるのかを丁寧に伺うようにしています。先ほどのように、弊社の場合、宣材写真が多いことから、基本的に売上向上を目的にしていることがほとんどです。そのうえで、どう見えることで売上増につなげるかを提案できるようにヒアリングするようにしています。「おいしそう」なのか、「作ってみたい」なのか、「贈ってみたい」なのか…写真を通して、見た人にどのような感情を抱かせたいかをご提案しています。
クライアントに提案していた絵と異なる絵が撮影時に浮かぶことはありますか?
あります。「こちらのほうがいいかもしれない」と撮影中にひらめいた場合は、現場判断で篠沢と連携して、制作を進めます。10年以上の付き合いですし、お互いに多くの経験と知識を持っているので。もちろん、事前にクライアントにはそういったことも想定して提案していますよ。
感謝の言葉が何よりの報酬。AI時代に「人が写真を撮る意味」とは
この仕事をしていて、うれしいと思った瞬間はどのようなときですか?
感謝されるのはすごくうれしいですね。「この写真で売上が上がった」なんて教えていただいたときは特にうれしいですね。基本的に納品をもって完了することが多いのですが、稀にフィードバックをくださる場合があります。自分たちでもその後の反応を調べることはあるのですが、実情は分からないじゃないですか。だからこそ、教えていただけるとうれしい。「売上を伸ばす」という目的に自分たちの写真が貢献できたことを実感する瞬間ですね。
生成AIも発達してきている昨今、人が写真を撮ることの意味、価値はどこにあると思いますか?
生成AIの発達はめざましいと思いますが、写真とは、そもそもの性質が違うと思っています。写真は記録であり、生成AIの作り出したものは絵。“現実”か“仮想”か。写真は“現実”だからこそ価値があり、時間を経てよりその意味が生まれてくるものだと思っています。
素材の色を最大限に生かす。同じ目的に向かう仲間とともに

写真の補正時に心掛けていることは?
そのものの色を大事にすることですね。フィルターをかけるようなことはできるだけしないで、ナチュラルな、目で見た色を出すようにすることを心掛けています。
どういったクリエイターと一緒に仕事をしたいですか?
価値観が合う方がいいですね。単なる作業として仕事をするのではなく、同じ目的に向かい、時には意見をぶつけ合いながらも、ともに作品を作り上げようとする姿勢で仕事に臨める人。そういう人と一緒に仕事をしていると、楽しいんですよね。
取材日:2026年5月18日 ライター:コジマ タケヒロ
株式会社STUDIO THYME
- 代表者名:難波 契介
- 設立年月:2025年7月
- 事業内容:食品・店舗・商品などの撮影業務
- 所在地:〒950-0086 新潟県新潟市中央区花園1丁目6-13 マルヒロビル3F 303
- URL:https://studiothyme.co.jp/
- お問い合わせ先:025-385-7754
- MAIL:






