WEB・モバイル2026.07.01

「作り込みすぎない」開発で、人に寄り添う。楽天イーグルス案件を手がけた女性エンジニアの挑戦

仙台
株式会社meguru 代表取締役
Sonomi Takahashi
高橋 そのみ

「システムは、使われてこそ意味がある」。そう語るのは、仙台で30年以上のキャリアを誇るエンジニアである株式会社meguruの代表・高橋 そのみ(たかはし そのみ)さんです。かつて楽天イーグルスの大型ビジョンシステムの先駆的な導入に携わった彼女は、技術以上に「人とのつながり」を大切にしています。50代で独立し、現在は中小企業のIT活用支援や女性のキャリア支援に奔走する高橋さん。彼女の歩みと、その哲学に迫ります。

「作り込みすぎない」のがエンジニアの誠実さ。現場の違和感を解消するシンプルさの追求

これまでのキャリアと、仙台で独立されるまでの経緯を教えてください。

文系出身ながら新卒で東京のシステム開発会社に入社し、そこで初めてプログラミングやシステム開発を学びました。その後、一度は故郷の新潟へ戻り結婚しましたが、配偶者の転勤で仙台へ。この地が、私の挑戦の舞台となりました。
30代は個人事業主としてシステム開発やIT講師として活動。そこから知人の会社で10年ほど修行を積み、株式会社meguruを立ち上げたのは50代になってからです。「もっと早く会社を作っていれば」と思うこともありますが、この長い道のりがあったからこそ、技術以上に「人のつながり」の尊さに気づけたのだと感じています。

現在の「作り込みすぎない」という開発スタイルに至ったきっかけは?

長年エンジニアとして現場に立つ中で、特に「事務職の方々の切実なニーズと、完成したシステムとのズレ」を何度も目の当たりにしてきました。
一生懸命開発したシステムを納品しても、「思っていたものと違う」「使いにくい」と言われてしまう。なぜそんなことが起きるのかといえば、エンジニアが「技術」に走りすぎてしまうからです。「すごい機能を作ろう」と張り切るあまり、機能過多で操作が複雑になり、現場の「シンプルに使いたい」という要望と乖離(かいり)してしまいます。
この経験から、私は「作り込みすぎないこと」を最も大切にしています。技術的な自己満足ではなく、本当に必要な機能を見極め、シンプルで心地よい体験を提供すること。それこそが、現場に寄り添うエンジニアとしての誠実さだと思っています。

女性が「キャリアを諦めない」社会を。仙台を女性エンジニアが輝く「希望の地」へ

株式会社meguruを設立された経緯や、その背景にある想いについて教えてください。

長年、男性主体のIT業界で、女性エンジニアとして過小評価や役割の制限に悔しい思いをしてきました。才能ある女性たちが、出産や育児などのライフイベントを機にキャリアを諦めざるを得ない姿も数多く見てきました。
50代を迎え、「自分は人生を懸けて何を成し遂げたいのか」と改めて自問したとき、たどり着いた答えが「女性がキャリアを諦めずにエンジニアとして働き続けられる場所をつくること」でした。私が先頭に立って道を切り拓くことで、社会に新しい風を吹き込みたい。そんな不退転の決意で「meguru」を設立しました。

なぜ仙台で起業されたのでしょうか。地域との関わりについて、特別な想いはありますか?

新潟出身で東京でのキャリアを経て仙台へ来ましたが、もともと縁があったわけではありません。むしろ「誰も自分を知らない土地で、一人のプロとしてどこまで勝負できるか試したい」という挑戦心がありました。
そんな私がこの地に根を張る大きなきっかけとなったのが、長年お仕事をいただいている楽天イーグルスとのご縁です。父が愛した野球の世界に関われていることは、今でもこの地で踏ん張るための大きな活力になっています。
現在、東北・仙台のIT業界は女性エンジニアがまだ少ないのが現状ですが、それは大きな「伸びしろ」でもあります。この地で私が成功事例となることで、「仙台からでも、女性がクリエイティブに輝ける」という希望を証明していきたいですね。

30年の経験でひも解く「システムのリフォーム」。AI時代だからこそ光る、人に寄り添う設計力

現在の事業内容について教えてください。特に大切にされている取り組みは何でしょうか?

私が得意としているのは、「既存システムの改修」です。前任者がいなくなりブラックボックス化したものや、使い勝手が悪くなったシステムを紐解き、最適に作り直す技術は、あらゆる現場を見てきた私ならではの付加価値だと自負しています。
また、AIの台頭にともない、「SNS投稿自動生成AI」や「デジタルサイネージのコンテンツ開発ツール」など、現場の負担を軽減する自社プロダクトも展開しています。
一方で、私が大切にしているのが「人間にしかできない領域」です。AI時代だからこそ、最後は「対人間」の深い理解力が差別化の鍵になると考えています。

「人間にしかできない領域」を大切にされているとのことですが、具体的に教えてください。

一般的な開発は仕様書どおりに進めることが重視されますが、私たちは徹底した「伴走型」のスタイルをとっています。大切にしているのは、とにかく「聞く・確認する」というプロセスです。
お客さまの中には、「何に困っているのかをうまく説明できない」「エンジニアにどう相談していいかわからない」という方が多くいらっしゃいます。だからこそ、私は細かいことでも何度も確認するようにしています。
お客さまに寄り添って、一つひとつ丁寧にすり合わせていく。この積み重ねこそが、エンジニアの思い込みを排除し、本当に使いやすいシステムを実現するための最短ルートだと感じています。

人生を変える「武器」としてのICT。楽天イーグルスでの転機から、次世代への支援へ

これまでに手がけたプロジェクトの中で、特に印象に残っている事例を教えてください。

2010年に手がけた、楽天イーグルスの「球場ビジョンへのリアルタイム成績表示システム」です。当時、国内でも先駆的な試みだったこのプロジェクトは、かつて講師を務めていたときの教え子からの「先生しかいない!」という一本の電話から始まりました。
開幕までわずか3ヵ月。本来なら1年はかかる難題でしたが、私を頼ってくれた教え子の想いに応えたい一心で、冷や汗をかきながら開発に挑みました。
個人事業主ならではのスピード感でなんとか完遂できたこの経験は、その後の受注拡大につながり、私のエンジニア人生における最大の転機となりました。

現在は女性のキャリア支援にも力を入れていらっしゃいますが、その背景にはどのような想いがあるのでしょうか?

ICT(情報通信技術)のスキルは、女性が場所や時間に縛られず、人生の自由を手に入れるための「最強の武器」になると確信しています。
私自身、かつて転勤族の妻として自身のキャリアを諦めた経験がありました。変化の速い世の中では、一度仕事を離れると再挑戦が困難です。だからこそ、細くてもいいから「キャリアの糸を手放さないでほしい」と伝えたい。
「もっと自由になっていいし、貪欲に輝いていい」。meguruが、女性たちが自立して歩み続けるための「追い風」のような場所になることが、私の経営者としての何よりの願いです。

仙台から広がる「温かな循環」。身近な味方として、ともに悩み、歩む未来へ

今後、meguruをどのような会社にしていきたいとお考えですか?

私は、中小企業や個人事業主の皆さまにとって「一番身近な味方」であり続けたいと考えています。大規模なシステム開発ではなく、「業務のここを少し効率化したい」「SNS運用を現実的に進めたい」といった、日々のちょっとした困りごとに伴走し、解決していく存在です。
社名の「meguru」には、社会における良い循環に加え、「女性の人生のサイクル(循環)」という意味を込めています。現在は、信頼できる女性クリエイターたちとチームを組んで活動していますが、互いのライフステージを尊重し、支え合っています。そんな温かな循環を、この仙台から広げていくのが私の理想です。

一緒に働くパートナーやクリエイターには、どのような資質を求めますか?

一番は「感じたことをきちんと言葉にできる人」です。単なる雑談力ではなく、疑問や違和感、自分の意見を遠慮なくぶつけ合える関係を理想としています。
また、自分の正解を押し付けるのではなく、システムの向こう側にいる「人」を想像できることも不可欠です。「お客さまはどう感じているか?」と常に相手の立場に立って考えられる方となら、きっと良い仕事ができると信じています。

最後に、これから一歩を踏み出したい方や、自分らしい働き方を模索している方へメッセージをお願いします。

「最初から完璧を求めなくていい」とお伝えしたいです。私自身、会社を設立したのは50代になってからです。早く結果を出そうと焦るよりも、小さな一歩を積み重ね、転びながら学んでいく方がずっと糧になります。
私がこの業界に入った頃は、キーボードすら叩けず、理系の同期との差に愕然とする毎日でした。それでもコツコツと2年続けたとき、上司から「君が一番頼りになる」と言ってもらえた。その喜びが私の原点です。
今はAIで簡単に答えが出る時代ですが、だからこそ「自分の頭で悩み、試行錯誤するプロセス」を大切にしてください。その道のりの先に、あなただけの「自分らしい働き方」が必ず待っています。

取材日:2026年5月12日 ライター:今野 なつ

株式会社meguru

  • 代表者名:高橋 そのみ
  • 設立年月:2022年5月
  • 事業内容:SNSツール開発・IT顧問・デジタルサイネージコンテンツ制作・システム開発・保守・ICT講座、DX支援・WEB制作・ECサイト制作
  • 所在地:〒980-0021 宮城県仙台市青葉区中央4丁目2-9 ネオブレイクスルー仙台4F
  • URL:https://meguru-woman.net/
  • お問い合わせ先:https://meguru-woman.net/contact/

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