WEB・モバイル2026.04.15

少しの工夫で「できる」になる。技術を味方に、未来へ“早く”到達する社会づくり

大阪
合同会社 知的・自転車 代表社員
Koki Shikata
四方 宏樹

「徳のあふれる社会創造を実現する」をステートメントに掲げ、システム開発やデザイン制作、多文化共生を見据えた仕組みづくりまで幅広く展開する大阪の合同会社 知的・自転車。「技術の力で未来への到達を加速させる」という思いの原点や、事業で大切にしていること、そして未来への展望について、代表社員・四方 宏樹(しかた こうき)さんにお話を伺いました。

「デザインって、面白そう」。子どもの頃の経験をきっかけにクリエイティブの道へ

立ち上げまでのキャリアをお聞かせください。

父は、広告代理店でコピーライターや企画の仕事をしていました。子どもの頃、父の仕事仲間の事務所に遊びに行かせてもらうことがあり、Macの使い方を教えてもらうなかで「デザインって、面白そうだな」と、自然に興味を持つようになりました。そして、中学受験の合格祝いに、父からMacを買ってもらったことをきっかけに、自分でもデザインをするようになりました。
20歳の頃、アルバイト先で知り合った演劇関係の人たちから「公演のチラシを作ってほしい」と頼まれ、物は試しとおもい制作。いざ作ってみたら予想以上に好評でした。そして、そのチラシをクリエイター系派遣会社に持ち込み、在阪テレビ局の関連会社を紹介いただいたことがきっかけで採用が決まりました。

情報番組のテロップやフリップ、スタジオにあるモニター画面のデザインをしました。事件や速報が入れば、15分でデザインを仕上げなければならないような、時間に追われる現場でした。テレビ業界には「ざんない」という言葉があります。あってはならない、という意味です。限られた時間でも「ざんない」品質ではないものを納品する必要がある。決して楽な環境ではありませんでしたが、社会人としての仕事の進め方はここで鍛えられました。

会社設立までにも、多岐にわたり仕事をされてきたとお聞きしました。

「いつか東京に行きたい」という思いも抱えながら、テレビ業界に勤めていました。そして、20代後半で退職をした矢先、東日本大震災が起こり、東京行きは一旦見送りとなりました。
周囲の人たちに、仕事を辞めたことを伝えていると「手伝ってほしい」と声がかかるようになりました。デザイン、Web、動画など要望があれば、何でもやる。気がつけばフリーランスになっていました。派遣として企業に入ることもありましたが、いわゆる「会社に属さない働き方」の期間は、結果的に長くなりました。
そうした流れの中で、UPLIFTを立ち上げ、さらに2021年に新たな事業基盤として、合同会社知的・自転車を設立しました。

制作で欠かせないユーザー視点。「どれだけ役に立てたか」が指標になる

現在の事業内容について教えてください。

システムやアプリの開発、動画・Webコンテンツ制作を行っています。企業の社内システムや、業務を効率化するツールの開発を手掛けています。
制作にあたっては、QCD(品質・価格・納期)を重視しています。より良い製品を、納得感のある価格で、きちんとお届けする。そのバランスを大切にしながら、サービスを提供しています。

システム・アプリ開発に力を入れて取り組まれているのですね。

システム・アプリ開発は、父にMacを買ってもらってから、独学で続けてきました。そして、この分野では「どれだけお客さんの役に立てたか」が求められます。ごまかしは通用しませんが、その分の手応えがあります。
お客さまが「システム改善で残業が減った」「システムを入れ替えて、本当によかった!」と笑顔で言ってくださると胸がいっぱいになります。

Web制作において、大切にしていることは何ですか?

紙、動画、Webを比べたときに、見た目だけなら「同じデザイン」と思われがちです。ところが、「紙・動画」と「Web」では、クリエイティブの考え方が根本的に異なっていると考えています。
紙や動画は、固定された見え方をするメディアです。一方でWebは、ユーザーの操作によって見え方が変わります。Webを、スマートフォンで見るのか、パソコンで見るのか。縦か横か、拡大するかしないか。そうした条件によって、表示は常に変化します。
この前提を理解せずにWeb制作をすると、表示が崩れたり、文字が見切れたりします。紙や動画でできていることが、そのままWebでもできるとは限りません。だからこそ、表示の違いや使い勝手まで含めてWeb設計をするのが大事だと考えています。

ジョブズの言葉を社名に込め。「知的・自転車」で未来を加速させる

開発中のサービスについて教えてください。

現在、二つの自社サービスを開発しています。
一つは、利用規約やプライバシーポリシーを管理するためのシステムです。複数のサービスを運営する企業では、改訂履歴や公開日の管理、弁護士との共有など、運用負担が大きくなります。また、コンプライアンス意識の高まりで、法務管理の重要性も増しています。そうした業務をまとめて管理できるように、テナント型(※複数のユーザー・組織でシステムを共有できる仕組み)のシステム開発を進めています。
もう一つは、経費処理を効率化するサービスです。レシートを撮影すると、設定したルールに基づいて勘定科目まで自動で仕分けます。同様のサービスはすでに存在していますが、中小企業やフリーランスの方にも、より使いやすいように設計中です。こちらは、年内のリリースを目指しています。

社名「知的・自転車」に込めた思いを教えてください。

スティーブ・ジョブズの「Bicycle for the Mind(知的自転車)」から着想を得ました。ジョブズのこの言葉は、1970年代にアメリカで行われた研究が参考にされています。研究の内容は「人間は体ひとつだと、どの動物よりも移動効率が悪い。ところが、自転車を使えば移動効率がトップになる」というものです。そうしてジョブズは、コンピューターを「人の能力を拡張する道具」と捉えました。
また、ジョブズの有名なエピソードに、Macの起動時間を5秒短くするため、発売直前まで改良を重ねたという話があります。たった5秒でも、何千万台と使われれば、膨大な時間になる。その短くなった時間の分だけ、人は次の出来事に早く向かうことができる。つまり、未来がほんの少し早く訪れる、という考え方です。
私自身の事業も、この思想を軸に展開しています。未来への到達を加速させる「知的・自転車」を、社会に届けていきたい。そんな思いを社名に込めています。

「できなかった」を「できる」に。進歩の力で、新しい社会を創造する

社名「知的・自転車」のように、実現化に向けて加速をつけたい取り組みはありますか?

社会課題の各分野で、関係者の方々と一緒に、解決に向けて取り組んでいます。
まず、外国人居住者向けの「やさしい日本語」です。「やさしい日本語」とは、外国人にも伝わりやすいよう、難しい漢字や単語を避け、一文を短くするなどの工夫をした日本語のことです。行政サイトではすでに言語選択肢として導入されています。しかし、一般のWebサービスや企業サイトでは、まだ十分に普及しているとは言えません。自動変換できる仕組みづくりを進めています。
次に、読字障害(ディスレクシア)の方に向けたシステム設計です。どこを読んでいるのか分からなくなるなど、困りごとの現れ方はさまざまです。下線を入れたり、文章の始まりに目印を付けたりなど、読みやすい文章になるように取り組んでいます。
最後は、外国人向けのWebページ制作です。実はWebページ内の日本語を、外国語へ翻訳するだけでは不十分だと感じています。言語によって読む方向や文章量が異なるため、翻訳後にデザインが崩れたり、操作しづらくなったりするからです。ミドルネームの有無や数字の扱いも異なります。多文化共生の観点からも、言葉・見た目・使いやすさを含めた上で、設計を考える必要があると感じています。

ステートメント「徳のあふれる社会創造を実現する」と掲げられていますが、ここにおける「徳」とは、どのような考え方でしょうか?

自分の取り組みを言い換えていく中で、この言葉に行き着きました。もし、私が大きな資本を持っていたとしても、すでに世の中にある業種と同じことはしないでしょう。それは、ほかの誰かが担ってくれているからです。私が大切にしているのは、今までにない形で価値を生み出せるかどうか。そこに「徳」があると考えています。

これからの展望についてお聞かせください。

BtoB向けの自社サービスを軸に、事業を広げていきたいと考えています。あわせて、事業運営全般を担ってくれる仲間の採用にも力を入れたいです。求めているのは、事業を1から10へと拡大していける人です。これまで、数字の責任を持って判断してきた経験をお持ちであれば、分野は問いません。考えを言語化し、共有しながら、一緒に事業を育てていける方と働いていきたいです。
技術の進歩によって、社会のスピードは確実に速くなっています。私は、その流れ自体を一面的に否定することはできないと感じています。Macの起動時間を5秒短くするのと同じように、文字の見せ方を少し工夫するだけで、読めるようになる人がいる。外国から来た人が、日本語で仕事を進められるようになる。進歩によって、これまでできなかったことが、できるようになります。
その可能性を常に意識しながら、「そこに徳はあるのか?」と自分に問い続け、事業を進めていきたいと考えています。

取材日:2026年2月4日 ライター:大野 佳子

合同会社 知的・自転車

  • 代表者名:四方 宏樹
  • 設立年月:2021年6月
  • 資本金:30万円
  • 事業内容:動画・Webサイトの制作、システムの開発・運営、クリエイターに対する教育支援。それに付随する一切の業務
  • 所在地:〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1丁目2-2 大阪駅前第2ビル12-12
  • URL:https://b4m.co.jp/
  • お問い合わせ先:https://b4m.co.jp/contact

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