東京に揉まれ、選んだ“自由”。“ロジカルな企画×想像の外側”を描く映像制作で選ばれる存在へ
建設・土木コンサルティングの世界で設計や計画に携わりながら、夜は映像制作を続け、休日は海外でカメラを回す。そんな二重生活を送る中で生まれた価値観が、福岡の株式会社CRAFT5の始まりです。自由に働く人々への憧れ、そして「企画力で勝負するクリエイティブ」への確信。同社代表・大谷 拓也(おおたに たくや)さんに、創業までの物語と、未来のクリエイティブ戦略を伺いました。
土木コンサルから映像の世界へ。反応を得られる喜び

映像の世界に興味を持ったきっかけは何でしょうか?
もともと私は土木コンサルタントの会社で、設計や計画、調査などに携わっていました。全国展開の会社で、就職と同時に出身地の福岡から東京へ。4〜5年ほどの間、公共事業に関わる仕事の中で、調査の一環としてドローン撮影を担当したことがきっかけで、映像の世界に足を踏み入れました。触れてみると驚くほど奥が深く、おもしろかったんです。そこからのめり込んでいきました。
土木コンサルの仕事は忙しそうなイメージがあります。のめり込むような時間はどのように捻出されたのでしょうか?
仕事は9時から18時まであり、もちろん残業もありました。仕事の後、家に帰って映像の勉強や撮影の練習。休日は海外へ行き、カメラを持って撮影する、そんな生活を続けていましたね。
当時は「表現することの楽しさ」を確かに感じていましたし、映像を見せるとすぐに反応がありますよね。「すごい」とか「きれい」とか。土木コンサルの仕事で得られなかった感覚で、それが何よりうれしかったです。というのも土木コンサルだと企画提案してから形になるまで、数年、数十年とかかるため、完成品を見て感動しているお客さまの姿に出会うことがなかなかないんです。
東京で揺れた価値観。福岡で会社を立ち上げる決意
土木コンサルの仕事を辞めることに抵抗はなかったですか?
東京での生活で大きな転機になることが2度ありました。1度目はコロナ禍に、社会科見学のような気持ちで、Uber Eatsの配達員として働いていたときのことです。六本木・西麻布の高層マンションなどへの配達が多くあり、そこで驚くべき光景を目の当たりにすることになりました。インターホンを押すと、3歳くらいの男の子が出てきて約1,500円の現金を支払いました。単価が500円、配達手数料が1,000円ほどだったと思います。こんなに小さい男の子がアイス一つに1,500円もかけているという現実に、価値基準を揺さぶられ、お金の尺度が相対化されました。これを「焼き芋アイス事件」と私の中で名付けています。(笑)
2度目は、ある日秋葉原で路上ライブをする若者を見かけたときのこと。その人の身なりは決してきれいではありませんでしたが、全力で歌っていてとても幸せそうに見えました。お金は稼いでいなくても、自分のやりたいことを自由に続けている。その姿に強くひかれ、「自由さ」を感じました。
この2度の経験で価値観を揺るがされました。お金がすべてじゃない、自由になりたいと。そのような思いから、起業を選択しました。
企画力と表現力を武器に。映像から広告、広報まで領域を拡張

現在の事業内容について教えてください。
映像制作を軸にしながら、近年は企画やSNS広告、パンフレット制作など、領域を広げています。写真撮影やWeb制作も行っていますよ。
さらに今後は「サイネージそのものを所有する」という展望も持っています。制作会社として“つくる側”だけでなく、メディアの“オーナー側”になり、企画・制作・発信を一気通貫で提供できる体制をつくりたいと考えています。
CRAFT5の強みはどこにありますか?
「企画と表現を両輪で回せること」です。特に自治体案件では企画を高く評価いただくことが増えており、クリエイティブの根幹である“表現方法”が強みだと感じています。
映像の分野において、表現だけではなく、企画力・提案力があるかということが必要となっています。企画はロジックが必要で、言葉に落とし込む力が求められます。前職で自治体を相手にしてきた経験が、資料化や論理構成に役立っています。クリエイターが苦手とする部分をカバーできるのは、私の特徴・強みかもしれません。
表現において私は「想像の外側を行く」ことを意識しています。これにロジックを組み合わせることで、新しいアイデアに説得力を持たせる──それがCRAFT5です。
HPに“日本のモノづくりと伝統工芸がクリエイティブの土台”とありますが、具体的な意味合いについて教えてください。
日本の職人技術には「99→100」の世界があると思っています。一般の消費者が気づくかどうか、ギリギリの差を詰めるようなこだわりです。クリエイティブも同じで、「0→1のひらめき」よりむしろ「1→99を積み上げること」が本質だと感じています。
クラフトマンシップとクリエイティブの両方を大切にする姿勢が、CRAFT5という社名にもつながっています。
案件との出会いは“つながり”と“企画力”。SAGAサンライズパークでの挑戦
大手企業との仕事はどのようにつながったのでしょうか?
ユニクロの案件はアーティストのつながりからオファーいただきました。また、展示会に出展していると、その場でお声がけいただくことも多く、DX展示や採用イベントの映像制作につながったこともありました。
SAGAサンライズパークの制作や広報業務について教えてください。
以前のPR動画は“プロアスリートのための施設”というイメージが強く、一般の方が寄りつきにくい状態になっていました。「日常的に訪れたい場所」というコンセプトが必要だったため、私たちは“かっこよさ”より“親しみ”を重視した企画を提案しました。
求められているのは“大濠公園のように気軽に集まれる場所”。だからこそユーモアや温度感を大切にし、日常の中に溶け込む映像表現を意識しました。

「つくるだけの会社」では終わらない。企画・メディア・広告まで一気通貫の組織へ
今後どのような会社にしたいと考えていますか?
最終的には、制作だけでなく、企画、広告、メディア運営まで一貫して手がける会社にしたいと思っています。クリエイティブ一本では会社として弱い部分もあります。大切なのは技術とビジネスの両方を備えること。「クリエイターを守るためにも、ビジネスの力が必要だ」と考えています。
一緒に働くクリエイターに求めるものは?
私は「クリエイター色が強すぎるクリエイター」はあまり好みません(笑)。こだわりは大事ですが、バランス感覚がもっと大事。吸収して、柔軟にアウトプットできる人と働きたいです。
それぞれ専門性を持ちながら、領域の壁をきれいに分断しない。少しずつグラデーションのように重なることで、組織は強くなると思っています。

最後に、クリエイターへのメッセージをお願いします。
AIの発展で、映像やデザインは“簡単にできる人”が増えています。だからこそ、これから求められるのは“バランスで勝負するクリエイター”です。技術だけでも、センスだけでも成り立たない。柔らかさ、ロジック、そして人との関係性──そのすべてを含めて仕事になります。
突き抜けることもいいけれど、それだけではきついことがある。だからこそ、自分らしいバランスの取り方を磨いてほしい。「クラフトするように、クリエイティブを積み重ねる」──それがCRAFT5の考える未来のクリエイター像です。
取材日:2025年11月7日 ライター:田口 有香
株式会社CRAFT5 / CRAFT5 Inc.
- 代表者名:大谷 拓也
- 設立年月:2023年8月4日
- 資本金:1,000,000円
- 事業内容:映像制作事業/写真撮影事業/Web制作事業/ブランディング事業/動画メディア運営事業
- 所在地:〒810-0001 福岡県福岡市中央区天神5-4-15 テンジン5丁目アパートメント3F
- URL:https://craft5-inc.com/
- お問い合わせ先:092-600-2803 /






