建築×経営の「くふう」で社会を豊かに。設計・コンサルの枠を超えた挑戦とは
建築設計と経営コンサルティングを融合し、新たな価値を創出する福岡県のくふうパートナーズ株式会社。代表取締役の飛髙 規史(ひだか のりふみ)さんは、建築設計に携わる中で「経営のくふうが、建築の未来を変える」という信念を持ち、企業や地域の課題を解決する事業を展開しています。設計の枠を超え、経営支援、申請サポート、さらには神社との融合まで、幅広い視点で建築と社会をつなぐ同社。その挑戦の軌跡と未来の展望について伺いました。
設計と経営の視点を融合し、独自のポジションを確立
会社を設立するまでのキャリアを教えてください。
もともと、店舗設計の会社で10年ほど営業を経験しました。その後、独立して建築設計・建設・工事を担う会社を立ち上げ、約10年間、社長として経営に携わっていました。 その後、2019年にくふうパートナーズ株式会社を設立しました。
2回目の起業なんですね。1回目の起業についてはどういったタイミングだったのですか?
22歳のときに「金持ち父さん貧乏父さん」(筑摩書房)という本を読んだのがきっかけで、将来的に裕福になるには資産を自ら築く必要がある、いつか起業しようと思っていました。
ある朝、目覚めたときに「今だ!」って急に思って、即行動しました。当時の同僚や上司には相談していなかったので驚いていましたが、自分にとっては22歳のころから無意識にタイミングを見計らっていたのだと思います。
最初に入社した会社に10年、1社目を起業して10年で、くふうパートナーズを立ち上げられたのですね。設立するきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
「建築のプロであるクライアントは、必ずしも設計に関する申請や経営のプロではない」ということを感じていました。塗装業者や内装業者といった職人の方々は、技術に関しては一流でも、設計に関する申請や会社経営などにおいては試行錯誤しながら事業を運営しているケースが多いんです。そんなクライアントに寄り添い、お困りごとをサポートできるのではないかと考えたんです。「申請と経営の両面から企業を支援できる会社を作りたい」と思い、設立しました。
なるほど。くふうパートナーズ設立前にご経験された店舗設計の営業や建築に関する会社経営などの知識をすべて生かす集大成のような会社ですね。
はい、おっしゃるとおりです。私自身、社長として10年間、経営のノウハウを培い、現場の事情も深く理解し、また設備や設計申請もとてもスムーズにできるようになってきました。
なぜ「くふうパートナーズ」という社名に?
「くふう」には、知恵を絞り、新しい価値を生み出すという意味があります。今、ここにあるビジネスを“くふう”することで、進化させたいという思いで、「くふう」を社名に入れました。建築設計だけでなく、経営や事業運営においても、クライアントとともに「くふう」を重ねながら、最適な解決策を導き出したいと考えています。
建築設計や工事などの現場を理解しているからこその経営コンサルと申請サポート
建築や設備設計の知識がある「くふうパートナーズ」ならではの経営コンサルティングの仕事内容を詳しく教えていただけますか?
金融の計画や、工事を行う際の人員配置、材料発注先などといった細々したことに相談の乗り、経営のサポートをしています。実際にこれまでのつながりから取引先を紹介したり、人員を手配したりもします。
申請のサポートとはどういったことでしょうか?
建築においては、さまざまな申請が必要となっています。例えば、建物の使用用途を変更する際には、役所に申請しなければなりません。この「確認申請」を請け負っています。とても細かくて大変な作業になるのですが、これまでの経験から、設備や建物の設計において知識があるので、設計事務所と協力してスムーズに行うことができます。
用途変更を積極的に行っている設備設計が得意な設計会社が少ないので、とても喜んでいただいています。
実際にお仕事の依頼は以前のつながりからが多いのでしょうか?
はい、トータルでこの業界に20年ほどいるので、以前の取引先などからの依頼はとても多いですね。
新しいお客さまとの出会いはありますか?
「あの人、確認申請を得意としているよ」ということが評判となって、新しく店舗出店する企業とつながることも多いですね。
また確認申請の依頼を受けたことからスタートして、「設備設計もできるんですか?」とか「経営の相談に乗ってください」などということもあります。できることが多いからこそ、「ついでにこっちも」という感じで、さまざまな面で頼りにしていただけてとてもありがたいです。
「建築×経営」を軸に、AIを用いて新たな可能性を探る
建築のこだわりや、他社との違いは何ですか?
私たちは、建築を単なるデザインではなく「経営資源」として捉えています。いくらかっこいい店舗デザインだったとしても売上が上がらなくては意味がないんです。
例えば、店舗の設計では「売上が上がる動線設計」、オフィスの設計では「生産性が向上する空間づくり」を意識しています。
設計の段階で売上や生産性を想像するのは容易ではないと思いますが……。
そうですね。人の動きに関してはデータをとって分析するなどAIを活用します。
また、クライアントに想像してもらいやすくするために、従来の図面や模型にだけで説明するのではなく、アニメーションや3Dビジュアルを活用したプレゼンテーションも行っています。クライアントが直感的にイメージしやすいよう工夫しています。
次に目指すは、「神主」。設計から地鎮祭まですべてを網羅する
現在、ご近所の神社で氏子総代を務めているとお伺いしました。
昨年から自宅の近くにある老松神社で氏子総代を務めています。もともとは社会貢献のつもりでした。氏子さんたちの高齢化によって総代を務める子人がいなくて困っていると聞いたことがきっかけです。
神主の資格取得を目指しているのですか?
はい。将来的には現在総代を務めている神社の神主さんから推薦状をもらって、神主になるための通信制の専門学校に通うつもりでいます。
総代をしていたところから神主さんになるなんて、よっぽど神社が好きになられたのですね。
神主を目指すのは、建築の仕事にもつながるんです。実は建築と神社は、昔から密接な関係にあります。特に、地鎮祭や家の清めなど、建築の節目には神事が関わることが多いです。そのようなことまでくふうパートナーズにご依頼いただけるようになるといいと思っています。
「くふう」で社会を豊かにする新たな挑戦
これからどのような人と一緒に働きたいと考えていらっしゃいますか?
「自分は間違っている?」という問いかけをできる人がいいです。つねに「くふう」をしてもらいたいですね。
設計士さんとも連携していると伺いましたが、どんな方と連携されていますか?
はい。現在はわりと固定の設計士さんたちに依頼することが多いのですが、どんどん新しい方にもお願いしたいと思っています。特に若い世代、30代、40代の設計士さんともつながりたいですね。
これからの事業展開についてどのように考えていますか?
私たちは「くふう」を通じて、暮らしや経営をより豊かにすることを目指しています。今後は、デジタル技術やAIを活用した建築・経営支援にも力を入れ、よりスマートな空間設計や省エネ建築の推進を図ります。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
建築は、人々の暮らしや経営に大きな影響を与えます。私たちは、設計やコンサルティングを通じて「くふう」を提供し、社会全体を豊かにすることを目指しています。今後も、新しい価値を生み出し続ける挑戦をしていきますので、ぜひご注目ください。
取材日:2025年3月13日 ライター:田口 有香
くふうパートナーズ株式会社
- 代表者名:飛髙 規史
- 設立年月:2024年5月
- 事業内容:建設業関係企業における経営コンサルタント、建築確認等に伴う設計及び申請業務、建設業向けDX活用支援など
- 所在地:〒810-0042 福岡県福岡市中央区赤坂1丁目8-23-5F
- URL:https://kufupartners.com/
- お問い合わせ先:092-332-2013