プロダクト2021.12.08

バンドも営業もすべての経験が糧になる!誰もが簡単にものづくりを楽しめる喜びづくり。

新潟
株式会社VIVA 代表取締役
Munetaka Komoro
小師 宗貴
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スーパー缶バッジメーカーから始まり、今では世界でひとつのさまざまなオリジナルグッズを制作する会社へ。

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オフィスは新潟県三条市の『三条ものづくり学校』内にあります。

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2014年3月に閉校した南小学校をリノベーションして、三条のものづくり事業の拠点となっています。

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現在20を超える企業が入居中。大きな黒板にチョークで書かれた館内MAPもノスタルジックな雰囲気を演出。

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オフィスの教室の前では、マスコットキャラクターのVIVAさんののぼりがお出迎え。

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さまざまなオリジナル缶バッジが、リーズナブルに小ロットから発注できるのが嬉しい。

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缶バッジだけなく、さまざまなオリジナルグッズの制作をしています。特にサッカーなどスポーツ系グッズは得意!

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マグカップなどオリジナルの記念品なども相談できます。

ライブやイベントで記念に買い求めるアーティストオリジナルの缶バッジやTシャツなどのグッズ。さらには企業の販促ノベルティグッズから神社で売られるお守りまで、約300アイテムの中からオリジナルグッズを作ることができる。それが新潟県三条市の株式会社VIVA。

代表取締役の小師宗貴(こもろ むねたか)さんは元バンドマンで、音楽業界の挫折を経て会社員、そして起業家へ。一見つながらないように見えるこれらの遍歴が、実は今の事業にすべてつながっている――。人生の経験が全部有益なものになることを証明するストーリーです。

 

音楽の成功を夢見て挫折。でもバンド時代の経験が起業のきっかけに

缶バッジやオリジナルグッズの企画・製造というと比較的ニッチな産業ですが、小師さんがこの業界に入った経緯を教えてください。

13歳でドラムを始めて、バンドがしたくて高校卒業と同時に上京しました。当時は本気で、音楽でメシを食っていこうと考えていました。そのような時に出会った仲間と組んだロックバンドが、全国ツアーを行うことになり、缶バッジやTシャツなど、オリジナルグッズを作ってライブ会場で販売するようになったんです。

本気で取り組んでいたバンド活動も紆余曲折あり、25歳でバンドの道は諦め、地元に戻って会社員になるのですが、その時にバンドマンだった頃に使っていた缶バッジを作る機械でお小遣い稼ぎを始めたのが最初です。

25歳ですっぱり音楽の道を断ったんですか?

当時は現在メジャーで活躍しているバンドと一緒にライブをやったりもしていたんですよ。でも結婚なども考えて新潟にUターンしました。

荷物をまとめて、まさにその東京から新潟へ帰る引越しの道中、カーラジオから当時一緒に演奏していたバンドの曲が流れてきて……。あの時は運転しながら泣きましたね。人生で一番惨めでした。

それでUターン後は、工作機械部品の営業職に就き、5年くらいやって2011年頃から「1万円でも稼げたらいいな」という気持ちで缶バッジを作り始めたんです。すると昔の音楽仲間から注文が入るようになって、さらにアニメーションの会社からも発注が入るようになって。

始めて半年くらいで、20時ごろ会社から帰宅して、22時から注文のメールを返して、24時から4時まで製造するような生活になったんです。そこで会社員を続けるよりチャンスがあるのではないかと考え、2012年、脱サラして34歳の時に個人事業主として独立しました。

ひとりで営業を始めて、どうやって顧客を増やしていきましたか?

最初のうちはバンド仲間に作ってもらったWebサイトからの注文が中心でした。でも2012年頃から“待ち”の姿勢では難しくなってきて、2013年頃からは自らアポを取って営業を仕掛ける法人営業に切り替えました。

元々営業畑出身なのでアポを取るのは得意で、好きなアーティストの事務所に営業をかけて、そこからどんどんさまざまなアーティストのグッズを任されるようになったりして。中には誰もが知っているような大物有名アーティストのグッズも複数担当させていただき、行動することでチャンスの広がりを感じました。今も音楽は好きですし楽しいですね。

 

誰もが簡単にものづくりを楽しめる環境を作りたい

VIVAのポリシーを教えてください。

誰もが簡単にものづくりができる環境を作りたい、という思いで事業を展開しています。「ものづくり」というと、職人の世界の話で、厳しく難しいイメージがあります。地元の燕三条地域は金属加工を中心とした職人の街で、簡単には参入できないイメージも強いです。

でも私が目指しているのは、“かっこいいもの”を誰もが簡単にたくさん作れる世界。VIVAなら一種類のデザインで缶バッジからTシャツ、タオル……さまざまなグッズを作れます。

確かに、ものづくり=専門性の高い職人の世界、というイメージはありますね。

デザインの世界はカタカナの専門用語も多くて、一般の人が気軽に何か作りたいと思っても、正直ハードルは高かったりします。実際に僕もバンド時代にTシャツを作ろうとして、「テンプレート」とか「イラレ」とか言われて意味が分からず、制作を断念したことがありました。

そんな状況が嫌なので、VIVAは、おじいちゃんやおばあちゃんも分かるような、誰もが気軽に制作を楽しめる場所にしたいんです。特に缶バッジは型も作らず、手軽に小ロットで複数のデザインが作れて、自由度が高いので昔から人気ですね。

缶バッジ1個とっても、後ろのフックだけでも10種類を超え、サイズも6種類。ひとつひとつ丁寧に教えていただきました。

そんなVIVAの事業内容を教えてください。

缶バッジ事業部、オリジナルグッズ事業部、デザイン事業部、イベント企画事業部、スポーツ推進事業部に分かれています。

缶バッジとオリジナルグッズの制作は基幹事業で、約300アイテムくらい対応しています。

お客様がアイテムを指定する発注は少なく、イベントの趣旨やターゲットに合わせて適切なアイテムをVIVAから提案することが多いです。有名ミュージシャンやアイドル、夏フェス、アニメのグッズなどを多数手掛けています。

生産に関しては、狭い業界だからこそ、同業他社との連携も大切だと思っています。こういったオリジナルグッズ制作においては、それぞれ持っている機械のサイズや種類・性能により強みも変わってきます。持ちつ持たれつ、頼れることはお願いし、逆に助けられることは協力することで業界としての連携力も増して、いろいろなお客様のニーズに応えられると考えています。

フェスなどだと大量の注文もあると思います。生産体制はどのように組まれているか教えていただけますか?

昔はひとりで営業・受注・製造・発送までやっていましたが、今はスタッフがいるのでとても助かっています。けっこう無茶な量のオーダーもありますが、現場がしっかり対応してくれるので甘えていますね。スタッフも好きなアーティストやアニメの仕事が入るとテンションが上がるみたいで(笑)。

外注でお願いしている障害者施設の方々もそれは同じようで、職員の方から「みんなVIVAさんの仕事は一生懸命やってくれるんですよ」という話を聞くと嬉しいし、助けてもらってありがたい限りです。

 

先を見据えた事業展開で、コロナ禍のピンチを乗り越える

他の3事業についても教えてください。

個人ではデザインができない人が多いので、要望をお聞きして、提携するデザイナーにイメージを具現化してもらうデザイン事業部。そして缶バッジ作りのワークショップなどを行うイベント事業部。

以前、親子向けに缶バッジづくりの無料ワークショップを行なったんです。そこで小さい子が人気キャラクターのシールを持ってきて「生まれたばかりの妹に缶バッジにして、あげるんだ」という話を聞いたりすると感動しますね。そして「VIVAカップ」というサッカーの大会を開いたり、サッカー業界の有名人やサッカーそのものを盛り上げている人を招いて、クリニックを開催するスポーツ推進事業部があります。

コロナ禍で多くのイベントが中止に追いやられています。影響は大きかったのではないですか?

収益の柱だった缶バッジやキーホルダーなどは、ライブやイベントがなくなったために、大幅減収となりました。ただ、2017年から力を入れてきた他のアイテムで売れ行きが好調です。ちゃんと缶バッジの次の柱を準備しておいてよかったなと思います。

缶バッジから始めたオリジナルグッズ制作も
今では約300種以上のアイテム数に。

これまでに転機があったら教えてください。

2013年前後が大きな転機だったと思います。それまで個人事業主でやっていましたが、「法人ではないから別のところに発注する」などけっこうきついことを言われていた時期で。それで法人化を決め、そうすると缶バッジ一本じゃダメだと思って、タオルやキーホルダーなどのアイテム数を増やしたオリジナルグッズの取り扱いを始めました。

当初はいろいろと増えていったオリジナルグッズを1つの総合サイトで販売していましたが、キーホルダーだけの単独Webサイトを作りました。

一口にキーホルダーと言っても、うちでは11種類も取り扱いがあるので、目的に合わせて、見やすく、分かりやすいことが、「誰でもものづくりを楽しめる」ことにつながるのではないかと考えました。

そこから、ノベルティグッズの販売サイトなど、他にもいろいろと細分化していく中で、以前よりも売り上げが5~6倍くらいまで上がったものもありました。

Webサイトを作る際には、隣に事務所を構えるエムズグラフィックさんにイラストを描いてもらったり、そのグッズに合わせたWebサイトの雰囲気を演出してもらったりと、いろいろと工夫をしていただきました。デザインやクリエイティブの持つ影響力、人に届ける力は本当にすごいですね。

私はできないことは徹底的に人に任せます。営業は経験があって得意とするところですが、デザインはできないので、エムズグラフィックさんには助けてもらっています。

 

行動力と人のつながりが、事業を生み育ててくれる

御社は今後、どのような展望をお持ちですか?

まずワークショップは、ものづくりを体験して喜んでもらいたいという思いがあります。これこそ将来への布石とも考えていて。参加してくれた子どもが、いつか「VIVAで働きたい」と思ってくれたら嬉しいですよね。

今後の展開としては、2020年から制作・販売し始めた御朱印帳に期待しています。これから先は寺社仏閣にも、人が戻ってくるのではないかと読んでいます。

ワークショップやイベントも早く開催されるようになってほしいですね。基本的にはあまり遠い未来を見過ぎずに、現状と歩幅を合わせながら事業展開をしていきますよ。

元々はバンドマンとしての成功を夢見ていた小師さん、現在はいかがでしょうか。

本当に新潟に戻ってきた時は惨めだったけど、あれがあったからこそある程度のことは乗り越えられるようになりました。

またバンドを辞めてから歌謡曲とかは聴けても、ずっと聴けなかったメロコア。それを最近息子が聴き出したんですよ。それで最近、10数年ぶりにドラムを再開して、バンドメンバーを募集して……また音楽もやりますよ!

これから地方でクリエイティブ業界を目指す人にアドバイスをお願いします。

若い時に影響を受けた人の言葉ですが、「時間はただじゃないよ」ですね。いつも「バンドやりたい」って言いながら具体的な行動を起こしていなかった僕にかけられた言葉で、「いいメンバー探しているっていう割に行動してないよね? 時間はただじゃないよ」って言われて、そこから動いて実際にメンバー集めて……くすぶっている状態から目が覚めました。

一度バンドを辞めて20年以上経った今も、行動の指針にしています。行動しないよりも、行動して失敗したほうが絶対いい。

そして「人」です。お小遣い稼ぎで缶バッジ屋を始めるためにWebサイトを作ってくれたのも、さっき話した連携しているオリジナルグッズの同業他社というのも、実はみんな昔の音楽仲間です。だから音楽をやっていなかったら絶対僕は今ここにはいません。人とのつながりと行動力で、大概のことはできるんじゃないかと思います。

取材日:2021年09月15日 ライター:丸山 智子

株式会社VIVA

  • 代表者名:小師 宗貴
  • 設立年月:2014年12月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:オリジナルノベルティグッズ製作、販売
  • 所在地:〒955-0844 新潟県三条市桜木町12-38 三条ものづくり学校103号室
  • URL:https://viva2011.com/index.html
  • お問い合わせ先:0256-46-0012

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