広告やマーケティングの観点で、目的や課題を達成する映像作りを追究する

大阪
株式会社y4create 代表取締役
Yoji Yamaguchi
山口 洋次

左から、日並拓也さん、栗田ゆうきさん、(代表取締役)山口洋次さん、澤田竜一さん

企業向けPVやテレビCMから、SNS広告、アーティストのMVまで幅広く手掛ける映像制作会社、株式会社y4create(ワイフォークリエイト)。企業が抱える課題をしっかりと理解したうえで広告効果のある映像作りを追究しています。代表取締役の山口 洋次(やまぐち ようじ)さんは、バンド生活一筋だった27歳のとき、意を決して映像制作の世界へ飛び込み、5年半後の2016年には現在の会社を立ち上げました。最近は音楽情報番組の配信もスタートさせて勢いが増す一方です。山口さんにこれまでの歩みや仕事への思い、今後の展望について伺いました。

元バンドマン、27歳で未経験の映像制作業界へ

会社立ち上げまでのキャリアをお聞かせください。

高校時代から27歳まで、インディーズバンドのギター&ボーカルとして活動に明け暮れる毎日でした。音楽だけで生活できることが目標でしたが、20代半ばになるとメンバーが就職や結婚、出産などでバンドを離れていったのを機に、仕事と音楽の両輪でやっていくのは難しいものだと思って、自分もスパッと辞めることにしました。

バンドでは作詞や作曲も担当していたので、クリエイトすることを仕事にできたらと思ったんです。なかでもYouTubeでいろんな動画に触れるうちに、これまでやってきた音楽経験も生かせそうだと思い、MVなどの映像制作に興味を持ち、27歳で初めて就職活動を開始。東京も含めて30社以上は受けましたが、ほぼ書類の段階で落とされて…。年齢はいっているし、制作の経験もない、ソフトにも当然触れたことがない。既に結婚していましたが、給料の額は関係なく探し続けた結果、ある映像制作会社に拾ってもらえたのです。

良かったですね。採用された決め手は何だったと思いますか。

元気と熱意に尽きるでしょうね。年齢的にもこれを逃がしたら後がないと思っていましたから、音楽番組のAD(アシスタントディレクター)として働き始めて、試用期間中に覚えられることはすべて覚えてやろうと、とにかくがむしゃらに雑用や調べものもこなすうちに、数カ月後には1分半程度の映画やPVの紹介コーナーを任されるようになりました。

映画ならば要点を1分半で伝えるナレーションを作り、当てはまる映像を入れて、その映画が面白く見えるように抑揚をつけて見せる簡単な編集作業ですが、最初の頃は夜通しかかって…。今となってはいい思い出です。それに毎回違う外部ディレクターが担当していて、番組の作り方や指示の出し方の違いを知ったことで、早い段階から「自分がディレクターになったらどうするか」と考えながら動けたことは大きかったと思います。

昼は営業、夜に制作。会社の看板がなく一人で活動を続ける大変さ

その後、フリーランスになった経緯をお聞かせください。

入社2年目に、企業PRやテレビCM、人材採用や商品紹介などを扱う広告関係の部署が社内に立ち上がり、自ら志願してディレクターになったんです。当初から収支の管理を任され、アシスタントがいないので自分で下準備をしたり、広告代理業務としてテレビ局への営業など制作以外に何役もこなすなかで、広告やマーケティングの知見も得ていきました。

最新の業界知識を吸収したり、さまざまな外部クリエイターと接してきたことが刺激となり、しだいに社内でも発言力が高まっているのを実感していました。ただ、当時の自分はそれで天狗になっていた部分があり、今から思えば「組織の中で仕事をする」意味を履き違えていたんでしょうね。結果的に会社とすれ違い、離職することになって。30代に入っていたので、それを機に一人でやるしかないと思い至りました。

フリーランスで大変だったのはどんなことでしたか。

退職後、個人事業主として2年間動きましたが、新規顧客を探すのが一番しんどかったです。自分では仕事が獲れなかったので、クラウドソーシングに登録して仕事を探しながら、株価を見てこれから上向きそうな業種に絞って会社をリストアップして、電話で企業PRやCM制作の営業をしていました。同じ電話営業でも、バックボーンのある会社組織と始めたばかりのフリーランスとでは相手の反応も全く違う。

1日100件かけても会ってもらえるのはせいぜい1桁で、「今までは会社の看板で仕事ができていたんだ」と痛感しました。クラウドでは仕事が獲れても低価格で、ケーブルテレビの30分番組で5万円とかの世界でした。それでも食べていくために数をこなして実績を作ろうと昼間に営業して、夜に制作する生活を続けていました。終日休みなんてことはなかったですね。

どのように顧客を獲得して、法人化に至りましたか。

SNSでの発信を見たお客様から依頼が入ったほか、友人に紹介された洋菓子店は広告やテレビCMを展開したいと、個人である自分に何千万円もの予算をポンと預けてくれたんです。当時の売り上げを元手に、自社ホームページを作ったり、事務所を借りたりして環境を整えていきました。

その後、SNSや制作したホームページを見た前職の先輩や後輩が、一緒に働けたら楽しそうと言ってくれたときにふと考えたんです。40歳になってもこのまま一人で同じように活動を続けるのは限界があるなと。それに、仕事の契約締結においても個人ではなく会社としてやっていく必要性を感じていたので、2016年には社員を雇うことを前提に法人化しました。

目的のないまま映像だけをカッコ良く作ってもPRはうまくいかない

現在の事業内容と、同業他社と比べた強みをお聞かせください。

企業向けPVやテレビCM、MV、Web広告など映像制作を幅広く手掛けています。特に企業や商品PRを得意としており、品質はもちろんのこと、クライアントの目的や課題を捉えたうえで広告効果を高める映像作りを追究しているのが他社にない強みです。クライアントからは「こんなものが作りたい」という演出希望ありきで、目的がない制作の相談が入るケースが非常に多いんです。

例えば、商品説明がしたいのにカッコ良く見せるだけでは意味がありません。クライアントがどこにその映像を使いたいのか、何を目的としているのかをしっかりヒアリングしたうえで制作に入るように心掛けています。そのために自分たちも分かる範囲でマーケティングや市場調査を行いながら、その商品や企業について勉強する必要があるのです。

また、目的に沿ったカッコいいWeb動画ができても、載せているホームページのデザインが不釣り合いなケースもよくありますので、当社では受注をいただく際に、予算からホームページの改修にも割り振るようにご提案します。他社はここまで言わないと思います。単に映像さえ作れば良いのではなく、目的を踏まえてトータルで考えることがPR成功につながるのです。

最初に企画を提案する段階が肝心のようですね。

そうですね。企画や台本コンテの骨子をいかに相手と共有できるかが大切です。絵を描いたりもしますが、仕上がりのイメージまでは先方にも伝わらないことが多いので、テスト撮影をするようにしています。ロケハンの際に実際のタレントと背格好が似ている代役のスタンドインを呼んで、演技も付けて動画をいろいろと撮って、つないでみるんです。テストではいくらでも試せるので、そこから精査されたカットを、本番では時間をかけていかに質が高く撮れるかに注力します。

優秀なディレクターを輩出し続ける会社でありたい

これまでに手掛けた映像で印象に残っているものは何でしょうか。

ディレクターの澤田 竜一(さわだ りゅういち)が、2019年に宣伝会議の「ブレーンオンライン動画コンテスト(BOVA)」で協賛企業賞を受賞したことです。別の会社でのAD歴7年だった彼は、入社したての前年にも応募したんですが、作品を見比べるとクオリティが雲泥の差で。1年の間にノウハウを伝えて、僕も含めて一緒に考えて、当社のワークフローに沿って仕事をやってきた集大成が作品に表れて、受賞が決まったときはとても感慨深かったです。

若いスタッフにはどんなことを求めていますか。

求めるのは元気だけ。特にあいさつが元気であれば相手も変わるし、うまく事が運ぶものなんです。スタートアップの会社こそ、そうした基本が大切ですから、仕事のこと以前に伝えなければと思っています。

最近、独自の音楽情報番組の配信も開始されました。今後の展開はいかがですか?

メジャーと比べると表現の場が少ないインディーズバンドやライブイベント事業者を応援しようと、インディーズ音楽情報メディア「D.I.G(Digital Innovative GIG:ディグ)」をこの夏に立ち上げました。今は関西で活躍するアーティストやライブハウス関係者などを招いたトーク番組や生配信ライブを先行配信しています。

インディーズファンを中心にじわじわと認知されており、さまざまなコンテンツを拡充させた音楽情報アプリの立ち上げに向けて準備中です。タイアップをはじめビジネスの広がりの可能性に期待しています。

会社の今後の展望についてお聞かせください。

優秀なディレクターを輩出し続ける会社になることですね。僕は性格的にプロデューサー向きだと思っているんです。数字やロジカルシンキングも好きですし。ただし、自分が日本一のディレクターであっても、そのノウハウを伝えられなければ繁栄しない。優秀なディレクターを育てる会社であれば、誰が入っても辞めずにやり抜いて、後にフリーランスとしてステップアップする可能性がある。先ほどの澤田の例でさらに確信しています。

スタッフには「クリエイターとしてやっていきたいならば、30歳までに独立することを視野に入れるように!」とよく言っています。東京と違って大阪には “渡り歩く”ステップとしての制作会社がないので、当社がそうなれれば良い人材が来るだろうし、僕らにも刺激になると思うんです。スタッフが独立して社長を務める子会社をたくさん作っていくことも、ライフワークにしたいです。

映像クリエイターを目指す人にメッセージをお願いします。

若手と熟練のクリエイターの違いはセンスに差があるわけではなく、センスやアイデアを「具現化する力」に尽きます。いろんな人の思いが混ざったものをいかに自分色に具現化できるか? そこに注力して技術が磨ける会社を選ぶことが.非常に重要です。だから僕自身も 前職では非常に良い会社選びができていたなと後になって思っています。試行錯誤しながら技術を体得して、自分のスタイルを確立できる環境に身を置けたことに本当に感謝しています。

取材日:2020年10月6日 ライター:小田原 衣利

株式会社y4create

  • 代表者名:代表取締役 山口 洋次
  • 設立年月:2016年9月
  • 資本金:100万円
  • 事業内容:広告代理店業、映像制作、web制作、アートデザインワーク、VR、SNS広告など
  • 所在地:〒564-0062 大阪府吹田市垂水町3-35-11 山泉江坂ビル4F
  • 電話番号:06-6155-8110
  • URL:https://y4create.net/
  • お問い合わせ先:上記URLの「CONTACT」より

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