映像制作会社が考える「思いやり」仕事術

東京
株式会社YELLOW MARCH 代表取締役
Sayaka Machi
町 明香

テニスやゴルフをはじめとしたスポーツ中継の映像制作を得意とする株式会社イエローマーチ。代表取締役の町明香(まち さやか)さんは、大きな実績を挙げるに至った両輪は、自らを守る前向きな考え方と、他者への思いやりにあると語ります。 黄色が好きで、職場の床や置物、私物のバッグまでイエローなそんな町さんに、ご自身のキャリアと現在の事業、将来の展望を語っていただきました。

ポジティブな考え方は、自分を守るよろいにもなる

映像制作に興味を抱いたのはいつ頃でしたか?

私は北海道出身なのですが、幼い頃の唯一の楽しみがテレビだったんです。4:3比率のブラウン管の向こうに、私の知らない世界が広がっている。その世界のことを知りたいと思ったのが、業界を志すきっかけでした。

起業に至るまでのキャリアをお聞かせください。

高校卒業後に上京して映像系の専門学校を出て、赤坂の制作会社でアシスタントディレクターを8年ほど勤めました。その頃は激務で家に帰れない日も珍しくなく、20日間連続でお風呂に入れないようなこともありました。

どれだけ頑張ってもディレクターを任せてもらえず心身ともに辛い日々でしたが、「今、人より多く経験を積んでおけば、10年後は大きな差となるはずだ」と、未来を見据えて現状をポジティブに捉えていました。

起業を決意したきっかけは何だったのでしょうか。

「自分が取ってきた仕事なら、自分でディレクターをできる!」というシンプルな理由です。とはいえ、そんな思いだけでは会社経営がうまくいくはずもなく…。そこからは、経営者としてやっていくためのノウハウを学びながら再び時期を待ちました。その間には、大きな挫折も味わいましたが、さまざまなご縁に恵まれ株式会社MOGの設立にいたりました。

MOGという社名は、「真面目に(M)・思いやりを持って(O)・頑張ろう(G)」の頭文字です。そのビジョンは、社名がイエローマーチとなった今も「Let’s do our best with consideration」として、そのまま残しています。

映像制作の世界は競争が激しそうなイメージがありますが、なぜそうした業界において思いやりをビジョンとして掲げたのですか。

私と同じような考え方を持つ方たちと思いやりを持ってつながり、共にモノづくりができたらいいなと思ったんです。もちろん競争は激しく、成果を上げるのはとても大変ですし、私はエリートでも、天才肌でもありません。そんな自分がこの業界でやっていけているのは、もしかしたら「話しかけやすそう」「仕事を任せやすそう」だからかなと。

経営者の中には、確固たる自信や築いてきた地盤があるゆえに、高圧的な態度になってしまいがちな方もいらっしゃいますが、私はその方法で戦えるタイプではありません。でも、仮に成果が出なくても「この人ともう一度一緒に仕事がしたい」と思ってもらえれば、次のチャンスが得られることもあります。

これからはテレビ番組とネット配信が共存していく時代

現在の事業内容をお聞かせください。

主軸となるのはもちろん映像制作です。テニスやゴルフなど、テレビで放送されるスポーツ中継をとりわけ得意としています。2019年の夏は、大学スポーツ協会(UNIVAS)さんと組んでインカレの配信映像の撮影も手掛けています。

今日は水球、明日はホッケー…と、撮影する競技が多岐にわたってハードな日々でしたが、「本気で競技と向き合う選手たちが生むドラマの感動は、プロフェッショナルもアマチュアも関係ないのだ」と実感しました。

技術コーディネートや機材レンタルも手掛けているとのことですが。

昔は「映画の方が格上で、テレビはその下」というような風潮もありましたが、今日はネット配信が映画のポジションに収まりつつあると感じています。とはいえ、テレビが凋落するというわけでもなく、これからは両者が共存していかないといけないだろうと。

ユーチューバーや動画配信をする若い子たちはスマートフォンでパッと撮影して公開、配信することが多いですよね。その手軽さが悪いわけではないのですが、弊社の技術コーディネートなどでもっとよい機材に触れてもらって、撮影・配信を行う際の選択肢を増やしてあげられたらいいなと思っています。ただ、機材レンタルの現状は取り引きのあるお得意さまがメインで、規模としてはそこまで大きくはありません。

電子書籍がどれだけ普及しようとも、紙の雑誌や書籍は決してなくならないようなものでしょうか。長年テレビ業界の最前線におられる身として、ネット配信の隆盛はどう見ておられますか。

時代の流れはそちらに傾きつつありますよね。弊社はスポーツ中継に強いということもあり生放送を得意としていますが、さらにご縁に恵まれたこともあり、2019年に設備投資して機材を一通り導入しました。

今夏は先ほどお話したインカレや、大坂なおみ選手が優勝した全米オープンテニスなどで忙しくなってしまい手が回っていないのですが、少し落ち着いたらバランスを取ってネット配信にも力を入れていきたいと考えています。

ハリウッド映画の撮影に参加されることもあるようですが、どういった経緯があったのでしょうか。

会社を設立してすぐの頃、「私はまだ特撮のことが全然分かっていない!」と思い、ハリウッドに1カ月ほど行ったんです。コネクションが何もないのであちこちに体当たりでメールを送ったところ、声をかけてくださったのが、日本の”戦隊もの”のスピリットを持ったアメリカ生まれの特撮ヒーロー「FUJIYAMA ICHIBAN(フジヤマイチバン)」を手掛ける「SAMURAI ACTION STUDIO」でした。

ミチ・ヤマト監督に気に入っていただけて映画の撮影をお手伝いしながら、「この番組を何とか日本に持っていけないものか?」とやりとりを重ねていたら、さまざまな話が舞い込むようになりました。特に芸能プロダクションである株式会社レッド・エンタテインメント・デリヴァー代表の新堀和男(にいぼり かずお)さんと直接お話できたことは、ハリウッドに行ったことで得られた最大の収穫でした。

チャンスが訪れたときに飛びつけるパワーを養う

職場の環境作りで心掛けていることはありますか?

現在、20代から70代まで、12人の正社員・契約社員が在籍しています。周囲への思いやりが根底にあるので、従業員間のコミュニケーションがとても活発ですね。「若い子は年長者をリスペクトし、年長者は若い世代の柔軟な発想力を尊重する」そういう関係がおのずと築けています。

先のハリウッドでのお話のように、私自身、興味があるものは採算を度外視してでもやってしまうことがあるからか、社風は自由な方だと思います。もし時間を持て余すなら、ゲームの実況動画でも、地下アイドルの密着でも、興味があるものを何でもやってほしい。すぐには採算が取れないとしても、それで力を付けてくれるなら、長い目で見れば会社にとってプラスですので。

公式サイトでは採用情報も掲載されてます。御社が望む人材像は?

まず、周囲への思いやりを持てる人であることでしょうか。スキルや技術はいくらでも教えられますが、そうしたマインドはなかなか教えられず、本人が自発的に思ってくれるかによるところが大きいと思います。

次に、競争相手は他者ではなく自分だと思ってくれること。自分のやりたいことを形にしていくことは、決して簡単ではありません。ですので、自分に甘いようではやっていけません。今の自分を乗り越えることを目標にして、決して諦めなければ人は必ず成長しますので、そういう考え方の人がいいですね。

最後に、将来のビジョンをお聞かせください。

自分が現場に立ちたい一心で立ち上げた会社ですので、個人的には一分一秒でも長く、従業員の皆と一緒に現場に立ち続けることです。また、私は過去に十分な準備ができておらず、起業することを断念した経験がありますので、「身の丈に合っていないことは焦らず時期を待つべきだ!」という考えを持っています。無理な背伸びはせず、あくまで流れに身を任せ、かつ、チャンスが訪れたときにはしっかり飛びつけるパワーを身に付けておく…それが重要だと思っています。

これからも「Let’s do our best with consideration」の精神を忘れず、ご一緒した方たちに「”イエローメンバー=イエローマーチのスタッフ”はいい人ぞろいだな、また一緒に仕事したいな」と思ってもらえる会社にしたいです。イエローメンバーといっても、撮影現場に向かうときに黄色でコーディネートをしていくのは私だけなんですけどね(笑)。

取材日:2020年9月1日 ライター:蚩尤

株式会社イエローマーチ

  • 代表者名:町 明香
  • 設立年月:2013年5月(株式会社MOG)
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:映像制作、技術コーディネート、機材レンタル、グローバル・エンターテインメント
  • 所在地:〒106-0031 東京都港区西麻布1-4-20 ワルトハイム西麻布501号
  • URL:http://www.y-mog.com/
  • お問い合わせ先:上記HPの「CONTACT US」より

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