プロジェクションマッピングに注目!

Vol.88
プロジェクションマッピング協会 会長 michiさん
建造物をスクリーンに見立ててダイナミックな映像を投影する「プロジェクションマッピング」が、新たな表現手法として注目を集めています。2012年9月の東京駅の完成記念イベントで、駅舎を舞台にしたプロジェクションマッピングが行われたことは、大きな話題となりました。そこで今回は、プロジェクションマッピングのコンペティションを実施した「逗子メディアアートフェスティバル」の仕掛人・michiさんにインタビュー。プロジェクションマッピングの魅力や、制作へのチャレンジを考えているクリエイターへのメッセージをお聞きしました!

子どもたちが気軽にアートと触れ合える 逗子メディアアートフェスティバル

逗子メディアアートフェスティバルは、3回目の開催になりますね。

もともとは小学生の子どもたちに今のアートに接してほしい、喜んでもらいたい、という思いから始まりました。「アート」は美術館などに行かなくては触れることができない、という特別なものではなく、もっと距離を近づけたい、身近なものにしたい、と考えて活動しています。今年は逗子全体をキャンバスに見立てた「まちなかメディアアート」というテーマ企画で、小学校、お花屋さん、カフェなど、20カ所以上でアートに触れ合える場を展開しています。また、若い学生や子どもたちに参加してもらいながら新しいアートを作っていこう、という試みで、多くのワークショップも開催しています。

逗子の市民や子どもたちが、様々なアートをいろいろな場所で、気軽に体験できる仕掛けになっているんですね。

この活動の理解が進んできて、市民の方々の協力も増え、ありがたいことに年々規模が拡大しています。その中でも逗子小学校をスクリーンにした「プロジェクションマッピング」は、初年度からこのイベントの目玉企画になっています。

逗子小学校がスクリーンに! 国内外から約20作品が集結

試写を拝見しましたが、ごく普通の小学校を舞台にダイナミックな映像が展開されて、すごい迫力ですね。衝撃的です。

ありがとうございます。逗子市長や逗子市の教育長の方も、初めて見たときに驚いてくれて「ぜひ子どもたちに、この衝撃を体験させたい」と、心強いサポーターになっていただきました(笑)そして子どもたちが描いた絵をプロジェクションマッピング作品として上映しているんですよ。校舎に落書きできるなんて、子どもたちにとってはワクワクする体験です。光の落書きですから残らず消せて、誰も苦労しませんから、自由に描けます(笑)

今回はコンペティション形式で、作品を募っています。

1分の尺を決めて、プロジェクションマッピングの作品を募集しました。日本はもちろん、アメリカやカナダ、フランスやインドネシアなど、国内外から約20作品が集まりましたので、公募形式の初年度としては上出来の結果だったと思います。まだ新しい手法ですから、これから私たちの想像を超える表現が出てくるのではないかと、ワクワクしているんですよ。

映像と空間が融合 想像を超えた驚きを与えられる

そもそも、michiさんがプロジェクションマッピングに興味を持たれたのは、どんなきっかけがあったのでしょうか?

学生の頃から、映像と立体的な空間を組み合わせた表現に興味があり、試行錯誤しながら活動していました。その後ロンドンで暮らしていたとき、建物の立体的空間を生かした映像表現に出会い「やられた!」と悔しくなりましたね(笑)これこそが自分がやりたかったことだと思い、日本に帰国して右も左も分からない状態ながら周りのクリエイターに声をかけ、スクリーンとなる場所を探していたところ、逗子小学校との出会いがあり、2年前に日本初のパブリックショーを開催することができました。

もともと映像と空間を組み合わせた表現に興味があったんですね。

立体的空間を使った映像表現を自分自身でやって来ていましたし、プロジェクションマッピングの様な表現は以前からあったのですが、最近になって「プロジェクションマッピング」というネーミングで独立したジャンルとして確立してきましたね。東京駅のイベントが決定的だったと思います。

これだけ注目を集めている理由は、どこにあると思いますか?

リアルな建造物とバーチャルな映像が融合する、これまでになかった表現なので、人の想像を超えた部分があり、驚きを与えられる、ということが大きいと思います。想像を超えることで、ますます想像力をかき立てられる、ファンタジーを実現できる夢のある表現ですよね。マニュアル社会となっている日本では希有な存在だと思っています。

チャレンジしやすい環境を提供 意外に低い制作へのハードル

レセプションイベントで登壇した若いクリエイターのみなさん

とてもダイナミックで魅力的な表現ですが、制作するのはハードルが高そうに感じますね・・・。

スクリーンが建造物と巨大なので、制作はものすごく大変なイメージがあると思うのですが、意外にそんなことはないんですよ。CGの知識が多少あれば、コンペにチャレンジしやすいと思います。まだまだ未開拓の表現があると思いますし、制作ツールも確立していないので、自由度が大きいです。今回のコンペでは、わずか2日で初めてのプロジェクションマッピング作品を仕上げたチームもあるんですよ。

わずか2日で!驚きです!!

ホームページやFacebookから、建物の写真やテンプレートなどの情報をダウンロードできるようにしているので、初めてチャレンジしたクリエイターの方々も「意外にすんなりと作れた」と話してくれました。プロジェクションマッピングの特性として、応募の段階ではプレビューができないので不安になるかもしれないのですが、まずはやってみて欲しいですね。初めて見て衝撃を受けるのと同じく、作ることも体験してみて初めてわかることが多いと思います。

初めて作ったクリエイターが多いとは思えないほど、今回の作品はどれも感動しました!

今回は初めてのコンペで、誰にとってもチャレンジで試行錯誤しながら作って応募してくれたと思うのですが、そんな中でも日本ならではのアニメーションを使った作品があったり、アジアらしいエキゾチックな色使いの作品があったり、私にとっても新たな発見がありました。今回のイベントはインターネットで世界中に配信していますし、プロジェクションマッピングの注目度も高まっているので、来年はより作品が増えレベルも上がるることを期待しています。楽しみですね。

普及と人材育成を目的にした 「プロジェクションマッピング協会」を設立!

【インタビュー対象者】
michiさん (石多未知行さん)
映像・空間演出家
プロジェクションマッピング協会 会長

michiさんとプロジェクションマッピングの今後の展望を教えてください。

ヨーロッパではすでに広告やイベントはもちろん、観光客誘致にも使われています。日本でもプロジェクションマッピングは一過性のブームに終わらず、夢のある表現として残っていってほしいと思っています。そのため、クリエイターが中心となり、自治体との連携を重視した普及や人材育成を目的にした「プロジェクションマッピング協会」を設立しました。まだ始まったばかりですが、これからもプロジェクションマッピングに取り組むクリエイターを増やし、息の長い活動をしていきたいと考えています。若いクリエイターの皆さん、ぜひプロジェクションマッピングにチャレンジしてください!

取材/2012年10月12日 取材・文/植松

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