ロケハンのチャンス

Vol.011
CMプロデューサー
Hikaru Sakuragi
櫻木 光

CMでもドラマでも映画でも、スタジオ外で撮影することをロケーション撮影と言います。
セットではなく外で撮影する場合、その場所にポイっといって撮影できることは
ありません。まずどんなカットをどこでどうやって撮影するかを事前に決めて本番に
向けて準備をする必要があるのです。

 

その準備のうちの一つ、場所をさがすという行為を「ロケーションハンティング」
略して「ロケハン」と言います。
ロケハンの簡単な説明をAIに聞いてみたら以下のような説明が出てきました。

ロケハンとは、ロケーションハンティングの略で、主に映像制作の現場で、撮影場所を探し、下見をすることを指します。具体的には、ロケ地の選定、撮影に必要な環境の確認、周辺環境の調査、撮影許可の取得などを行います。

ロケハンは、単に場所を見るだけでなく、当日の撮影を想定した詳細な下調べを含みます。例えば、天候による影響、撮影時間帯、機材の搬入経路、近隣住民への配慮なども考慮に入れます。

ロケハンの目的は、以下の3点に集約されます。

  • ストーリーやシーンに合った場所を見つける:脚本に描かれた世界観を表現できる場所を探します。
  • 撮影に必要な環境や機材を確保する:撮影に必要な電源、照明、アクセス、駐車スペースなどを確認します。
  • 撮影許可が取得でき、スケジュールや予算に合った場所を選ぶ:撮影場所の所有者や管理者と交渉し、許可を得る必要があります。

ロケハンをしっかり行うことで、撮影をスムーズに進め、より完成度の高い作品を制作することができます。

 

その通りです。
プロとしてAIよりももう少し細かくいうと、ロケハンにも段階があります。

 

まず、企画の内容がロケだった場合、その内容に沿ったロケ地をリサーチします。
プロダクションマネージャー(PM)の役割の場合が多いのですが、PMがインターネツトの
ロケ地紹介サイトを調べたり、ロケーションコーディネーター(ロケコー)というロケ場所探しのプロに依頼して、その内容に該当する場所が過去にないかどうかを調べます。そうやって広く集めた資料を持って演出家と打ち合わせをします。

 

演出家には、自分の頭の中に描いたコンテのイメージをそういった資料を元に具体的にしていく作業の行程でもあります。ここはあるとかないとか、もっとこういう場所がいいとか
演出家の希望を聞いて、またリサーチをします。それを何度か繰り返します。

 

次に、方向性が固まってきたら、PMかロケコーの人が、演出家の選んだ資料の場所をいくつか見に行きます。資料の写真を撮った時から、季節や、時間で見え方がずいぶん変わることがあるからです。現状の写真を撮って資料にします。プレロケハンと言います。

 

プレロケハンとは?とAIに聞くと

プレロケハンは、映像制作におけるロケーションハンティング(ロケハン)の前段階で行われる、主に制作スタッフによる下見のことです。候補地をいくつかピックアップし、写真や動画で記録して、演出の方向性や実現可能性を確認します。

 

そして、演出家にその現状の写真やビデオを見せて場所を絞り込みます。こことここね。

 

次に、その絞り込んだ数箇所を、演出家、カメラマン、ライトマン、美術などの
スタッフを連れて見に行きます。スタッフロケハンと言います。本格的なロケハンです。
この時点で、このカットはここで、こういうアングルで撮ろう。レンズはこれで。日の向きはこうだからこのカットは何時くらい。抜けにこういうものを置きたい。みたいなことを具体的に
決めていきます。

 

スタッフロケハンをAIに聞くと

スタッフロケハンとは、映像制作におけるロケハンの一種で、撮影候補地を絞り込んだ後、実際にメインスタッフ(監督、カメラマン、照明技師など)が現地を訪れ、撮影が可能かどうか、具体的な撮影プランを検討する作業のことです。

スタッフロケハンは、プレロケハンで候補地がいくつか挙がった後、より詳細な検討を行うために行われます。映像制作会社によっては、プレロケハンとスタッフロケハンをまとめて行う場合や、ロケハン自体を行わない場合もあります。

スタッフロケハンでは、以下の点などを確認します。

  • 画角:どのようなアングルで撮影するか、カメラの設置場所はどこにするか。
  • 照明:自然光の入り方、照明機材の設置場所、照明プラン。
  • 動線:キャストやスタッフの移動経路、機材搬入経路。
  • 天候:日照時間、風の影響、雨天時の対応。
  • その他:トイレや控室の有無、近隣への配慮など、撮影を円滑に進めるための環境。

スタッフロケハンの重要性

スタッフロケハンを行うことで、以下のようなメリットがあります。

  • 撮影の具体的なイメージを共有できる:
    実際に現地を見ることで、スタッフ間で撮影イメージを共有しやすくなります。
  • トラブルを未然に防げる:
    撮影現場の状況を把握することで、本番でのトラブルを未然に防ぐことができます。
  • 機材や人員の準備を効率的に行える:
    必要な機材や人員、撮影時間などを具体的に検討できます。
  • 予算内で撮影を完遂できる。
    撮影に必要な費用を正確に見積もることができます。

スタッフロケハンは、映像制作において、よりクオリティの高い作品を制作するために欠かせない重要な工程です。

 

AIっていろいろご存知なんですねえ。その通りですよ。

 

ロケ撮影と言っても、簡単ではなく、こういう工程を経てやっとロケ地が決まる。
ということになります。ロケ地が決まった後。PMの本当の出番はここからだとされています。

 

ロケ地の実際の使用許可。値段の交渉、警察署に出す道路使用許可。ガードマンの手配。
近隣の住民への説明や挨拶。苦情の予想と対応策。機材の置き場所の確保、お弁当や飲み物の手配。出演者の控え場所の準備、クライアントや代理店の居場所作り。駐車スペースの手配、各車両の出入りの順番と配置。不慮の事故のための病院の確認と手配。医療スタッフの手配。熱中症や感染症の対策。現場のテントや撮影隊のベースの設置と準備。
天気予報のチェックと雨対策。天気予備の日の手配。機材の雨や熱対策。
などなどPMには山ほどやることがあります。これをロケコーと手分けしてこなしていく。

 

優秀なPMはこういうことを、決まった後にやるのではなく、すでにロケハン中、そのロケ地の付帯条件としてチェックしながらやっています。ロケ地の見栄えが良くても、値段が高い、とか、車両が入っていけない、などの嫌な条件が出てくることがあるからです。
リスクとコストを考えてロケハンはするものです。

 

こう書いていくと、ロケハンだけでめちゃくちゃ大変なんですが、僕が思う、特にPMのロケハンのポイントはプレロケハンにあると思っています。

 

演出家もカメラマンもいない段階でロケ地を探しているときに、PMが考えるべきこと。
それは「このコンテなら、俺が演出家だったらこのカットはここでこう撮ったら面白い」という気持ちで場所を探す。ということです。
ここはこういう場所でした、と、広いアングルで写真やビデオを撮るのも必要ですが、
そこの場所で、このアングルだったらこういう切り取り方をしたら面白いですよ。
かっこいいですよ。という提案を常にできるかどうかだと思うのです。それを考えながらロケハンすると、一見どうってことのない候補地に隠れた魅力を発見できるかもしれません。見に行ったロケ地に常に優劣がつけられるし、演出家の気持ちもわかってきます。
そういうことを言ってくるPMのオススメのロケ地は見に行ってみたくなるのが演出家です。演出家はそういうことに考えの及ばないPMを好きにはなりません。

 

仕事仲間で仲よくしていただいている有名映画監督のYさんから聞いた面白い話があります。

 

Yさんは今でこそ有名監督ですが、下積みの頃、当時人気絶頂だった新進気鋭のIさんという映画監督の下で助監督についていたことがありました。ある映画に公園のシーンがあって、I監督はY助監督に「公園を探してきてくれ」とロケハンの指示を出したそうです。Y助監督は、5箇所くらいの公園を見に行って、自分が演出するならこの公園がいい。という場所を見つけたそうです。

 

ロケハン資料を5箇所分作り、普通は一番良かった場所を一番上に持ってきて監督にプレゼンするもんですが、1番と4番を入れ替えて監督にプレゼンした。
つまり4番目にいい場所を1番目として提出した。

 

さて、I監督はどういう判断をするだろうか?と試してみたそうです。I監督は、ざっとその資料を確認して、これが一番いいんだろ?という感じで一番上にある4番目にいい場所、Y助監督が大して良くないと思う場所を選んで決定を出した。
「そんなことでいいのかよ?わかってねえなあ」と思ったそうです。

 

で、その公園での撮影当日。カメラワークや役者に演技をつけているIさんの演出を見てびっくりしたそうです。自分がいいと思って想像していた場所と演出方法よりも、自分がいいと思わなかった場所でI監督がつけている演出の方が格段に面白かったからです。
うひゃー、すげえなあ。この人にはまだ叶わないなあ。と思ったそうです。

 

この話は今でもいい作品を出し続けているI監督の凄さを物語っていますが、もっといいのはそのY助監督が、自分の演出の考えを持って、静かに師匠に戦いを挑んだところにあります。そうあるべきよね。と思いました。

 

助監督と名の付く人、プロダクションマネージャー、そういった演出家と直接
対峙をする役割のひとは、自分ごととしてどんどんそうやって演出家に戦いを挑んだほうがいいと思うのです。
しつこくやってそのレベルが低いと話も聞いてもらえなくなるかもしれないけど、そのあたりは気を遣いながら、演出家の邪魔にならないように勝負所を探して挑戦してみればいい。
演出家がはっと何かを気づくような挑戦をするべきです。

 

そもそもそういう創ることがしたくて田舎から出てきたんでしょ?
言われたことをこなすだけで、それもできずに叱られてばかりだと面白くないでしょ?
と思います。ロケハンにはその辺りのチャンスがいっぱい含まれているんだよ。
そう思います。

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
自分の関わった仕事の案件で、矢面に立つのは当たり前と、体と気持ちを突っ張って仕事をしていたら、ついたあだ名は「番長」。 52歳で初めて子どもを授かったのでいまや「子連れ番長」。子連れは、今までとは質の違う、考えた事も無かった様な出来事が連発するような日々になったけれど、守りに入らず、世の中の不条理に対する怒りを忘れず、諦めず、悪者だけど卑怯者にはならない様に生きていたいと思っております。

日本中のクリエイターを応援するメディアクリエイターズステーションをフォロー!

TOP