ブルックリン発、革新的な未来の「美きのこ」栽培とは?

Vol. 52
FIND IT. LOVE IT.
Sayuri Fujii
藤井さゆり

秋の代表的な食材といえばきのこ。きのこは年間を通していつでも食べられますが、秋になるとやっぱりきのこのメニューが食べたくなりますよね。きのこは低カロリーで栄養価も高いですし、​​アメリカではベジバーガーとして、ハンバーガーパティの代わりにジャンボマッシュルーム(ポートベロ)が使われることもよくあります。

 

ということで今回は、ブルックリン発、テクノロジーを使った屋内農場できのこを栽培・生産するSmallhold(スモールホールド)をご紹介します。

 

 
 
 
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以前に、テクノロジーを使った屋内農場で日本品種のいちごを栽培するスタートアップOishiiをご紹介しましたが、Smallholdも屋内農場でオーガニックきのこの栽培を行っています。アメリカのきのこの90%はペンシルベニア州で栽培されており、スーパーマーケットでよく見かけるものは、日本でいわゆるマッシュルームと呼ばれている白い(もしくは茶色)ボタンマッシュルームという品種。通常プラスチックで包装されており、収穫から店頭に並ぶまでに平均10日はかかります。

 

こうした状況を変えようと取り組み、2017年にアンドリュー・カーター氏とアダム・デマルティーノ氏​​が、ブルックリンの輸送コンテナでキノコを栽培し始めたことがSmallholdの始まり。二人は輸送コンテナを使ってニューヨークのレストランや食料品店へ新鮮なきのこの供給を開始し、その後、ホテルやレストランに設置できるきのこ栽培のための屋内ミニ農場を急速に拡大​​させました。この屋内ミニ農場は、庫内できのこが栽培されるために空調制御された自立型ユニットで、ホテルやレストランの厨房、スーパーマーケットの一角などに設置可能。ガラスドアを開ければすぐに新鮮なきのこを入手できるという仕組みです。

 

 
 
 
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画像内右:ブルックリンの食料品店に設置されたSmallholdの自立型ミニ農場

 

さらにSmallholdは、新鮮なオーガニックきのこをより多くの人々に供給するため、ニューヨーク、ロサンゼルス、テキサスで大規模屋内農場を開設。これらの屋内農場では、きのこの収穫量、味、色を最適化するために、農場内のパラメータを調整し、栄養豊富なきのこが栽培される気候がコントロールされています。

 

以下の動画は、屋内農場内と収穫から梱包、店頭に置かれるまでの様子。

 

How Smallhold Farms Cultivates Rare Mushrooms for NYC Restaurants — Vendors – Eaters

 

また、廃棄副産物(木材産業から出るおがくず)できのこを栽培し、堆肥化可能な段ボールで梱包、他のきのこ農場と比べて年間二酸化炭素排出量が低いことも特徴。しかも、消費期限が短いきのこを生産できるため、Smallholdではボタンマッシュルーム以外の品種を生産しています。

 

それでは、Smallholdが栽培する「美きのこ」をご紹介していきましょう。あまり日本でも見かけない品種もあります。※商品説明はsmallhold.comから引用。

 

Blue Oyster Mushrooms​​(青ヒラタケ)

形が牡蠣に似ているということでオイスターマッシュルームと言われるようになったひらたけは、まいたけやしめじに少し似ていますが違う品種です。この青ひらたけは、丈夫で吸収性や噛みごたえがあり、炒め物からパスタまであらゆる料理に合い、食感と大きさが肉の代替品として理想的なきのこです。

 

 
 
 
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Yellow Oyster Mushrooms​​(黄ヒラタケ)

色鮮やかな黄色のひらたけは、繊細で柔らかく軽い​​食感が特徴で、どんな料理にも使えるきのこです。

 

 
 
 
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Lion’s Mane Mushrooms​​(ヤマブシタケ)​​

日本でもあまり見ない品種の「ヤマブシタケ」。英語名は「ライオンのたてがみ」と言われる通り、白くてフサフサの毛で覆われたきのこ。柔らかく海綿状なので、細切りにしたりプレスしてステーキにしたり、餃子のようにスープに入れるのがおすすめ。​​カニやロブスターの代用品としても使われます。

 

 
 
 
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Trumpet Mushrooms(エリンギ)

日本でもよく料理に使われるエリンギ。茎は太く肉厚、噛みごたえがあり、縦に切ってソテーしたり、輪切りにして筋を入れてグリルしても絶品。肉の代替品として詰め物やポットパイ、さらにはホタテ貝などのシーフード料理にも使えるきのこです。

 

 
 
 
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Maitake Mushrooms(マイタケ)

日本の食卓でもお馴染みのマイタケは、繊細で羽のようなきのこであり、どんな食事にも素朴な豊かさを加え​​ます。炒め物、リゾット、ピザ、マッシュルームソースにぴったりで、フライパンで焼いてカリッと仕上げても美味しいそうです。

 

 
 
 
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Shiitake Mushrooms(シイタケ)

日本できのこの代表格と言えばシイタケ。アメリカでも一般のスーパーマーケットで必ずシイタケは置いてあるほどポピュラーなきのこです。調理すると繊細な食感から肉厚な食感まで変化するため、ポットローストからスープ、カクテルまであらゆる料理に最適。

※シイタケの商品画像はこちらから見られます。

 

Instagramには美味しそうなきのこのレシピがたくさん投稿されています。

 

豚肉の代わりにヤマブシタケを使ったベトナムのサンドイッチ「バインミー」のレシピ。 

 

 
 
 
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お次は肉の代わりにエリンギを使った「エリンギカツカレー」。

 

 
 
 
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こちらは地中海の国々で食べられているフィロパイのレシピ。パイの中身には色んな種類のきのこが使われています。

 

 
 
 
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なんと“シイタケ入り”のラム酒カクテル「Umami Grog​​」。塩味の効いたバナナパン?のような味わいだそうです。​​

 

 
 
 
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その他にもInstagramには面白い投稿があります。

 

コンセプチュアルアート集団(Smallholdの友人たち)が作った「きのこラジカセ」。ラジカセはきちんと機能するそうです。

 

 
 
 
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ホラー漫画「うずまき」に登場する黒谷あざみをフィーチャーした投稿。

 

 
 
 
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マンハッタンのイーストビレッジにあるホテルThe Satndardのバーで提供された「Umami Mami」カクテル(写真2枚目)。カクテルには、Smallholdのヒラタケを注入したビターズ(カクテルの風味づけに使われる苦味酒)が使われ、ヤマブシタケがガーニッシュにあしらわれています。

 

 
 
 
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現在では、ニューヨーク、カリフォルニア、テキサスの3つの州で従業員115名を擁する会社となり、全国500か所以上の店舗にマッシュルームを販売するほどに拡大。Smallholdは最も急速に成長している新鮮なきのこブランドです。​​

 

今年3月には、Fast Companyの「The 10 most innovative companies in agriculture of 2023​​」にも選ばれています。

 

創業者のアンドリュー・カーター氏とアダム・デマルティーノ氏​​。

 

 
 
 
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いかがでしたでしょうか?Smallholdは革新的なテック企業であると同時にクリエイティブですよね。これからもアメリカで革新的な試みを行っている企業をご紹介していきたいと思います!

 

(参考)

Smallhold.com

Los Angeles Times – The fungi future is here — at an urban mushroom farm just south of downtown L.A.

Forbes – The Future Of Fungi: Smallhold Sets New Standards For Farming With B Corp Certification

Fast Company – The 10 most innovative companies in agriculture of 2023

プロフィール
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藤井さゆり
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。
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Instagram: @foxylilly

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