今、熱いの!? esports についてまとめてみた

Vol.31
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
第31回目のコラムです。今回のテーマはesportsについて。実はコラムを執筆中の現在、シンガポールではThe Olympic Esports Series というIOC(国際オリンピック委員会)主催の大会が開催されています。「よく耳にするし、なんとなく知っているけど、実際あまり詳しくない」esportsの世界について深掘りし、読者の皆様にお届けできればと思います。

 

■今回のThe Olympic Esports Series にはどんなタイトルが参加している?

今回のThe Olympic Esports Seriesは、IOCが認めた公式のゲームタイトルのプレイヤーを、各国から招待して開かれる大会で、2023年6月22日~25日の期間に第1回目としてシンガポールで開かれました。私も実際に観戦をしに行ってきて生の臨場感や白熱した熱気を感じてきました!
当日は野球競技としてコナミのパワプロでの対戦が行われており、現場はファンや関係者が熱狂していました。正直、どんなものかと疑問を抱いていた私にとって良い意味での裏切りにあった感覚でした。とにかく大人数で盛り上がっていましたし、写真を載せられないのが悔しいですがセガやカプコンといった日本のゲーム企業も体験ブースを出展していました。ソニックやストリートファイターで有名な彼らのゲームを子供たちが楽しんでいる姿を見て勝手に誇らしくなりました。他にも競技に採用されているゲームタイトルを体験できるブースがたくさんあり、老若男女が楽しんでいた印象です。こういった体験を通じてきっと正式なオリンピック競技として採用された時にはより大きな注目を得るでしょう。

公式ウェブサイトの情報から、今回登場する10個の競技およびタイトルをまとめてみました。()内がゲームタイトル。
アーチェリー(Tic Tac Bow)
サイクリング(Zwift)
セーリング(Virtual Regatta)
ダンス(Just Dance)
チェス(Chess.com)
テコンドー(Virtual Taekwondo)
テニス(Tennis Clash)
モータースポーツ(Gran Turismo™)
野球(WBSC eBASEBALL™パワフルプロ野球)
シューティング(Fortnite)
 

■よく聞くけど結局“esports”ってなに?

esportsは、エレクトロニックスポーツの略で、名前の通りコンピューターやコンシューマーゲーム機などの電子機器で行う対戦ゲームのことです。ただし、esportsって聞くと「ん?だからつまりテレビゲームのことだよね?」とか「スマホゲームのことだよね!知ってるよ」くらいに思っていた私のような人が他にもいるかもしれませんが、違いました!もっと奥深いのです!

実際に今回のイベントにて感じた一つの大きな進化が、コントローラーやスマホだけでなく“フィジカル”を使うスポーツ性の高いゲームがesportsとして登場していたことです!(あれ?もっと前からあった?)たとえばテコンドーが競技タイトルの一つなのですが、プレイヤーは道着を着用した上で、VR機器を装着しバーチャルのアリーナで対戦相手と勝負をしています。

Copyright: IOC/ Lionel Ng

Copyright: IOC/ Lionel Ng

以下の動画が公式サイトにアップされていたので、ぜひチェックしてみてください!
https://olympics.com/en/video/taekwondo-olympic-esports-series-finals-virtual-taekwondo-singapore

そのほかにも、セーリングやサイクリングなどもバーチャルの世界でフィジカルを使って競技しています。

Copyright: IOC/ Lionel Ng

また今回の競技タイトルには含まれていませんが、実際のオリンピック競技にあるゴルフや他の格闘技も今後可能性は十分ありますね!

一方で、テニスやアーチェリーなどの競技はスマホベースでの勝負でした。
「テニスやアーチェリーはVRで再現できそうなのに」と思ったのですが、まだ競技レベルとして採用できるゲームタイトルが育っていないのでしょうか。それとも別の理由が・・・。イベントでは技術の進歩やゲーム開発をするクリエイターのレベルアップを感じることができた一方で、課題やさらなる可能性を想像できました。

Copyright: IOC/ Lionel Ng

■シンガポールでのesports人気について調べてみた!

シンガポールにおけるeスポーツは、年々人気が高まっているようです。プレイヤーやイベント、関連組織も増えています。

シンガポールは、eスポーツのインフラ整備に積極的な投資を行っていて、例えば2019年には、シンガポール・スポーツハブがeスポーツイニシアチブを立ち上げ、専用のトレーニング施設やeスポーツアカデミーを提供しています。これにより、志を持ったプレイヤーやチームの育成が支援されています。
またシンガポールには、活気ある競技シーンがあります。年間を通じて、Dota 2、League of Legends、Counter-Strike: Global Offensive(CS:GO)などの人気ゲームをカバーするトーナメントやリーグが開催されています。こういったイベントや大会が開催されていることにより露出や認知度も高まり、さらに高みを目指すゲーム愛好者たちがプロプレイヤーを目指すきっかけを作っているのでしょうね!

さらにシンガポールでは、eスポーツを将来の職業として認識し、それに関連した教育プログラムを導入しているんです。Nanyang PolytechnicやRepublic Polytechnicなどのいわゆる“専門学校”では、ゲームデザイン、eスポーツマネジメント、eスポーツ起業などを専攻する学位やコースが提供されており、ゲーム業界で就職したい学生が多く通っています。実はフェローズシンガポールでゲーム関連の求人を掲載すると上記の学校の在学生や卒業生から応募があったり問い合わせがあったりします。日本のゲーム企業は人気ですし、一方で欧米系のゲーム企業も有名タイトルに関われたりするので人気があります。
私はシンガポールに3年間住んでいますが、ショッピングモールではゲーム関連のガジェットを販売する店舗をよく目にします。またVRゲームを体験できるゲーミングカフェ、eスポーツバーもあってシンガポールでのゲーム人気の高さを感じることができます。

■シンガポールでも人気があるesports界隈。そして今回のオリンピックシリーズから見えてきそうな今後の展望は?

Copyright: IOC/ Lionel Ng

以上のようにシンガポールで、インフラへの投資→競技者の育成→esportsコミュニティ開発→esports人口増加というエコシステムが進んでいけば、今後もesportsは持続的に成長していきそうですね。またこのエコシステムの中からいくつかのゲームタイトルで人気プレイヤーやチームが生まれてくるとさらに人気に拍車がかかりそうです。
シンガポールは東南アジア、そしてアジアと欧米をつなぐような地理的な立地にも恵まれているので、国際大会を招致することにも長けているでしょう。またesports自体は既存のスポーツ競技との関連性も高いので、これまで現役で活躍してきたプロスポーツ選手がesportsの競技大会やイベントなどに参加するようになればそれまでの既存ファンやコミュニティを引き連れてくることが予想できますし、可能性としては“esports産業“としてさまざまなビジネスチャンスや地域貢献を産むような一つ産業に発展する期待もできるでしょうね。

別の視点にはなりますが、日本のクリエイターがシンガポールのゲーム産業の発展に関わっていける可能性があるかどうか、と言えば答えはYesだと思います。実際、いくつかのローカルのゲーム開発企業と繋がりがありますが、彼らが作っているゲームは日本のようなクオリティではないなと感じます。一方で、歴史や文化も異なる彼らが作るゲームタイトルを一概に「クオリティが低い」と断ずることは間違っていると感じます。一概に”ゲーム“と一括りにできないほど、現代にはさまざまなタイトルがあるし、PCやコンシューマーゲーム機、スマホと複数のハードがある中で適した”質“を模索して発表しているのが各ゲームパブリッシャーたちだと思います。私が興味があるのは、長い歴史を持つ”日本“のゲームクリエイターと歴史は浅いがゲーム人気のある”シンガポール“のゲーム企業が交わることによって新たなイノベーションが生まれる未来です。そこに関われたらと思い最近は越境でのクリエイター紹介にも力を入れています。

■最後に

当イベントはIOCの主催する正式なイベントではありましたが、実際にesportsがオリンピックに登場してくるのは2028年の大会からではないか、というニュースがあります。どうやらまだ正式に決まってはいない様子でしたが今回、シンガポールで開かれたThe Olympic Esports Seriesの盛り上がりを見るにつけきっと近い将来に実現するのだろうと確信しています。現地の観戦を通じて私自身がesportsの潜在能力を体感できたように、このコラムの読者の皆様にも機会があれば一度”現場“を体験して欲しいなと思います。

 

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

 

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
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また、Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.では、フリーランスのクリエイターがリモートワークでプロジェクトを受注できるサービスを始めました。その名も「Fellows Creators」。例えば日本人がシンガポールの案件を、シンガポール人が日本の案件を、といった形でクロスボーダーに案件の受発注ができるようなサービスを目指しています。
詳細はこちら▽
https://fellow-s.com.sg/fellows-creators/

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