デザインとシンガポール #1

Vol.23
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
第23回目のコラムです。前回まではブロックチェーンについてシンガポールや日本、そして世界の現在地をご紹介しましたが、今回から数回にわたってシンガポールのデザインについてご紹介できればと思います。シリーズ1回目はWebデザイン。あなたはどんなデザインを想像しますか?それでははじめに、シンガポールとデザインの歴史について話していきたいと思います。

■シンガポールとデザイン

まずはシンガポールのデザインの歴史について紐解いてみたいと思います。参考にしたのは先日訪れたNational Design Centreで開かれていた “Fifty years of Singapore Design”展です。

1970年代後半から1980年代初頭にかけてシンガポールは経済大国として台頭してきたのですが、この経済的成功の背景にデザイン産業の形成があったようです。多国籍企業がデザイン研究開発に参入するなどし、インダストリアルデザイン(工業デザイン、工業製品のデザイン)に注目が集まるようになりました。空の旅が盛んになると、シンガポールは観光立国となり、レクリエーションが盛んになりました。経済成長とともに新しいライフスタイルへの需要が高まり、芸術、文化、ファッションの分野も盛んになりました。また、豊かな暮らしに伴い、個人住宅や商業施設の市場も拡大し地元のデザインハウスや建築事務所が急成長しました。まさにこの時代がシンガポールのクリエイティブの興りなのでしょう!

1985年以降シンガポールは、貿易と投資において世界に門戸を開きました。政府主導で市場競争力のある新製品を生み出すツールとして、企業に対してデザインを推進したのですが、これが火つけ役となり外国人建築家やグローバルなアイデアを受け入れ、現在に至るまでの近代的な都市作りの一歩を踏み出しました。

2000年代に入りシンガポールのデザイナーたちはよりグローバルに活躍するようになりました。世界からの評価を得る中でローカルデザインのアイデンティティを確立しながら、より大きな市場を開拓する自信をもつようになりました。デザイン部門を発展させ、国の価値提案を強化し、経済成長と生活の質の向上に貢献するためにDesign Singapore Councilが設立されたことも、シンガポールのクリエイティブ産業を発展させる大きな要因の一つです。

■世の中の“デザイナー”

「デザイナーを探しているのですが・・・」とフェローズのエージェントはクライアント企業の採用担当者から相談を受けることがしばしばありますが、その度に「御社であれば〇〇デザイナーですよね?」と確認をします。これはデザイナーといっても様々な領域のデザイナーがいるからです。グラフィックデザイナー、Webデザイナー、CGデザイナー、ファッションデザイナー、ゲームデザイナー、UI/UXデザイナー、DTPデザイナー、エディトリアルデザイナー、空間デザイナー、とパッと思いつくだけでもこれだけあります。また企業によってはさらに分岐したり、または統合させたりとキリがありません。

シンガポールの転職市場やフリーランス市場で切り取ってみると、グラフィックデザイナーやWebデザイナーの求人をしている企業が多く、転職サイト大手のJobStreetでは過去30日間で投稿された“デザイナー”職でグラフィックデザイナーが約12,000件と多く、WebやUI、UXデザイナーもそれに続いて多いです。

■ではシンガポールのWebデザインの特徴って?

今回は、シンガポールのWebデザインの特徴を見ていきましょう。コラムを書き始める前に数名の登録デザイナーやマーケターに聞き取りをしてみたところ、シンガポールのWebデザインの特徴は「よりデザインがスッキリしている」「ユーザー目線で無駄な情報が少ない」「どんなプロダクトか一目瞭然」といった意見が出ました。うん、確かに私もそう思います。実際に私がシンガポール発のデジタルビジネスカード “One Good Card”を購入した際にも決め手は彼らの作ったLPがとても分かりやすかったからです。


One Good Card トップページ(https://onegoodcard.com/

また最近シンガポール発のファッションブランドに個人的に注目していまして、ECサイトのデザインはかなり良いです。以下はアイウェアのO+とアパレルのLove,Bonitoのサイトです。


O+ トップページ(https://o.plus/

Love,Bonito トップページ(https://www.lovebonito.com/sg

芸術系のカレッジのWebサイトも彼らの見せたいクリエイティブさを出しつつもすっきりと案内してくれるデザインになっているように思います。


LASALLE College of the Arts トップページ(https://www.lasalle.edu.sg/

またB2B関連で言えば、InVideoというクリエイティブ系スタートアップを是非紹介したいと思います。モバイル版もすっきりしていてユーザー目線でUXも強く意識されているデザインな印象です。


InVideo トップページ(https://invideo.io/

個人的な印象を話してきましたが、実際にシンガポールのWebサイトデザインを請け負う企業やフリーランスは何をデザインのポイントとしているのでしょうか。調べてみたところいくつか共通するキーワードが見つかりました。

1)Real and high-quality image, not stock photography
いわゆる有料/無料のストック画像を使わないで、サービスや商品を示すことのできるリアルでハイクオリティな画像使うこと。もちろん画像以外には動画だったりモーショングラフィックスだったりもするけど別のサイトでも使われそうな平凡なデザインのものを極力使用しないようです

2)Layout that always shows what your service or product is
常にあなたのWebサイトがどんなサービスや商品を見せようとしているのかが一目でわかるレイアウトデザインであること。無関係なコンテンツや注意をそらしてしまうコピーライティングの多用はそれがクリエイティブだとしても効果的ではないようです

3)Text or image for CTA
CTAとはCall to actionの略であり日本語で言えば行動喚起、つまりWebサイトに訪れた人に対して起こしてほしいアクションへ導くテキストや画像のこと。これがとても重要でありとても難しい要素の一つだという意見が多くありました。

まとめ

シンガポールのデザイン史、デザイナーの種類、そしてWebサイトデザインのテイストや具体例を挙げてまとめてみましたが、次回はグラフィックデザインや建築デザインに関して取り上げたいと思います。またフェローズシンガポールに登録しているデザイナーの紹介もしていきたいと考えていますのでぜひお楽しみに!

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

参照元:

https://designsingapore.org/national-design-centre/fifty-years-of-singapore-design-exhibition/
https://www.webimp.com.sg/web-design/best-website-designs-in-singapore/
https://www.oom.com.sg/everything-you-need-to-know-about-web-design-and-development/

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
Twitter:@junya_oishi
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