深掘りシンガポール~クリエイターエコノミー#3~

Vol.18
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいしじゅんや)です。
いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
第18回目のコラムも引き続き、クリエイターエコノミーという文脈でいくつか書いていきたいと思います。知れば知るほど奥が深いクリエイターと取り巻く世界!

ビジネスにおける“クリエイティブ“
”そのクリエイティブ自社制作?発注?“

実は今、このコラムを日本で執筆しています。約二年ぶりに一時帰国が叶い、久しぶりにたくさんの方にお会いしたり、新たな出会いがあったりしました。そんな中、あるスタートアップの経営者と“そのクリエイティブって自社制作しているの?それとも制作会社に発注しているの?”という話になりました。
改めて「クリエイティブ」という言葉を考えてみると、日本では、特にビジネスとかコーポレートの文脈で話される「クリエイティブ」は広告クリエイティブを指すことが多く、主に広告自体や広告素材となる静止画や動画、グラフィックイメージ、ウェブサイト、LPなどのことを指しているという認識なのですが、シンガポールで話す際は“Creative”というだけでは伝わらない、という感覚が浮かびました。
ということで、今回は日本の「クリエイティブ」とそれに対応するシンガポールで言う“Creative”を比較して見ていきたいと思います。まずは日本国内で言うクリエイティブとは具体的にどんなモノを指して話されているのでしょうか。すこし以下でまとめてみました。

・オフライン:コマーシャルフィルム(CM動画)、プロモーションビデオ、チラシ、ポップ、ポスター、パンフレット、リーフレット、駅内大型広告
・オンライン:テキスト、バナー、動画(実写、アニメーション)、コピー(ライティング)

上記のような、主に広告クリエイティブやブランディング向けのクリエイティブが多く、またそれ以外にも、映画やゲーム、アニメ、空間デザインやグラフィック、現代アートや古典芸能、伝統工芸といったものまで含まれます。今回は広げ過ぎると読みづらいかもしれないので、特に「広告やブランディングなどビジネス要素の強いクリエイティブ」を切り取って、シンガポールのそれと比べていきたいと思います。

■シンガポールにおけるクリエイティブ
日本と異なる部分、同じ部分

それでは次にシンガポールで言うところの「クリエイティブ」についてみていきましょう。クリエイティブは“Creative”と直訳できますが、ワードとして出てくるのは、“advertising creative” や ”branding creative”、“Illustration”、”Creative Contents”などで、これらが文脈的に「クリエイティブ(広告)」に近い意味をもつものかと思います。ハイコンテクストな日本語でのコミュニケーションに比べ、ローコンテクストな英会話ではより具体的に固有名詞を指していく方が合っています。

A: What do you make corporate contents as advertising creative?
B:We made a viral video for branding recently. That video is like film-look where we let a famous comedian and an actress dance in the center of Shibuya Crossing road.
A:Wow, that sounds dope!

思い付きで会話文を作ってみましたが、つまり最初のAが話している一文は「どんなクリエイティブを作っているの?」とも意訳できると思います。

■実際に流れている広告クリエイティブ
インフォマティブなWebサイト

ここまで広告クリエイティブの定義だったりワードだったりに触れて解説をしてきたのですが、実際に「どんな広告クリエイティブがシンガポールでは使われているの?」と気になった方もいらっしゃると思います。

クリエイティブのタイプを、情報を伝えることにフォーカスしたインフォマティブ広告と、ストーリーからイメージに共感してもらって伝えていくストーリーテリング広告に分けてみました。
まずは情報の多いインフォマティブな広告クリエイティブから。以下はそれぞれのECモールのサイト。こまかなインターフェースに違いはあれど、それは各社の考え方の違いで国の違いというか文化的な大きな違いは無いように私は思いました。

日本のECモール:楽天
https://www.rakuten.co.jp/

シンガポールのECモール:Shopee
https://shopee.sg/

調べてみて面白かったのは、シンガポールはECサイト上で行われるセールとその広告の数が日本に比べてとても多いことです。日本の楽天は調べた限り、あまり積極的なコマーシャルは流していないようでしたが、シンガポールは、「5.5」や「10.10」といった毎月のゾロ目の日や、旧正月などのシンガポールの祝日、サイバーマンデー、ブラックフライデーといった世界的なネット商戦が活発になる日に大型セールを企画し、すべてにコマーシャルを打っています。そのシンガポールShopee*のコマーシャルの一つがこちら。

*ShopeeはSEAグループという大企業の一社で、シンガポール国内では2大ECモールの一つです。(もう一つはLazada)

ストーリーから共感を促しメッセージを伝えるストーリーテリング

非常にインフォマティブな広告クリエイティブが展開されているシンガポールのコマーシャルですが、日本は昨今、ストーリーテリング(ストーリーがあり感情をゆさぶるような)コマーシャルが多く制作され流されていますね。下記は生命保険会社のコマーシャル。私はこのコマーシャルを観るといつも感動して涙しそうになります。

日本の生命保険のCM

シンガポールや他の東南アジア諸国でも、ストーリーテリングの広告クリエイティブは最近増えてきています。次の動画は、シンガポールの生命保険会社のコマーシャル。ストーリーはありますが、全体的に暗いイメージとなっています。「逆に」グサッとくる内容ですが、生命保険への加入を訴求するという意味ではこれも一つの正解なのかなと感じました。

シンガポールの生命保険のCM

 
実際のサイトやコマーシャル動画を取り上げていったのですが、日本とシンガポールでの「広告クリエイティブでの違い」は明確にあるようです。これらのクリエイティブ以外にも両国ともに年間で多くの作品が世に出ていますが、そのクオリティの差も明確にあると思っています。クリエイティブは非常に深く、まだまだ学ぶことはたくさんある私ですが、それでも日本の方がより多くのクリエイティブが生まれていると感じますし、消費者の気持ちを汲んだり、利用者の意見を聞いたり、流行も取り入れるなどして、より良いクリエイティブが作られているように思います。

まとめ

今回のコラムはいかがでしたでしょうか?広告クリエイティブという観点で日本とシンガポールのクリエイティブについて書いてみました。「クリエイターエコノミー」というワードが盛んに議論されていますが、日本だけでなくシンガポールのクリエイター、ASEAN中のクリエイターのプレゼンスを高めるためにクリエイターに熱く向き合っていきたいと気持ち新たにしています。

さて、少しだけ告知というかアナウンスです。フェローズシンガポールは今期3期目を迎えます。その目玉として「フリーランスで活躍するシンガポール国内のクリエイターへ向けたプロジェクトマッチング」のサービスをローンチ予定です。「もしも」シンガポール在住の「イケてる」コンテンツメイカー、クリエイターをご存じであればご紹介ください!

また将来的な展開として、日本人クリエイターのシンガポールでの活動を応援することで、「日本とは異なる場所に自分のコンテンツが露出する」ということを実現させていきたいと思っています。その素敵な瞬間を想像し、ビビッときた方がいらっしゃればご連絡いただけると嬉しいです。

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
Twitter:@junya_oishi
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