The Line を歩こう!(前編)
そういえば東京オリンピックってどうなってるの?
先日WHO(世界保健機関)もCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)が今年いっぱいで終焉する見込みは現実的ではないと発表したばかり。モヤモヤしながらニュースをみれば、聖火リレーは予定通り今月の25日に行われる様子。
ここで9年前のロンドンオリンピックにタイムトリップ!
当時、聖火リレーは約2ヶ月をかけ、西の果てのランズエンド岬から1,000あまりの市町村を巡り開会式会場の五輪スタジアムへと届けられました。その後クラウドファンディングにより、聖火リレーの最終ルートであるロンドンのストラッドフォードのスタジアムからグリニッジのThe O2間に、屋外アートを巡るアートトレイル「The Line」が2015年に設けられました。
そこで今回と次回の2回に分け、聖火リレーのように五輪スタジアムへ向かって、みなさんと「The Line」を歩いてみたいと思います。
The O2は、私のスタジオからテムズ川沿いに歩いて2.2マイル、約3.5km。天気もいいし、ロックダウンのおかげで歩くことになれたので往復でちょうど良い散歩。早速歩いて行くことに。
まずテムズ川沿いに目に入るのはこちらのテムズバリア。
アートトレイルとは関係ないのですが、観光名所にもなっている貝のような形をしたテムズバリアは、1974~1984年にかけて建てられたテムズ川の洪水制御装置。
緊急時に制御装置が回転し、普段は水面下に隠れている遮蔽板が現れて、水を塞きとめるようになっているそう。
30分ほど歩くとロープウエイが見えてきます。
第103回でも出現していますが、今回はテムズ川を境にその対岸になります。
そして、左手にはThe O2のドームが。ドーム沿いを南から時計回りに歩いて行きます。
あっ流れ星!?(に見えるかなあ…。)
地面に突き刺さっているのは35メートルの逆さまの送電塔!確かに流れ星(Shooting Star)に見えなくはないかも。
西、北、東へと湾曲したテムズ川に囲まれたグリニッジ半島はかつてヨーロッパ最大の石油やガス工場を誇るエネルギー産業の中心地でした。
現在も周辺に残るまたは近年解体されたビクトリア時代建造のガス工場などの歴史を象徴しているそう。
作品はNo.12:Alex Chinneckの「A Bullet from a Shooting Star、2015」。
テムズ川沿いへ戻ります。すると「Here 24,859」と書かれた交通標識が。
グリニッジ天文台といえば、世界標準時の軸「子午線ゼロ」のグリニッジ子午線があるので知られています。
でもわざわざ天文台に行かなくとも実際は子午線ゼロ地点、あちこちにありますよね。
そして実はここも「子午線ゼロ」地点。数字が40,000とあればピンと来るかもしれませんが、24,859マイル(40,000キロ)は地球一周の距離。この標識を一歩跨げば地球一周したのも同然?
作品はNo.11:Thomson & Craigheadの「Here、2013」。
川岸でくつろぐカモメなどを横目にテムズ沿いを進むと、大きな船が現れます。あれ、でもこの船なんか変?奥行きがない?!輪切りにされた船は、海事都市として栄えたグリニッジの歴史のほんのスライス。作品はNo.10 : Richard Wilsonの「A Slice of Reality、2000」こちらは旧ミレニアムドーム(現The O2)が建てられた際に、委託された作品です。
ロープウエイが遠方に見えてきて、The O2のドームぐるりと一周したのがわかります。ダンサーがストレッチしているような作品?ショップのマネキン人形を原型に使い、伝統的な肢体のブロンズ彫刻のスタイルにベビーピンクをプラスした、No.9 : Gary Humeの「Liberty Grip、2008」
霧の中央に浮かび上がる人影?宇宙から降ってくる小さな粒の量子であるニュートリノはあまりに小さいため人間の身体をかるく素通りして地球丸ごとでさえ通り過ぎることも。量子物理学者Basil Hileyとの会話から生まれた作品は、No.8:Anthony Gormleyの「Quantum Cloud、2000」こちらもミレニアム、西暦2000年を記念して委託された作品。
さて、最後は空中散歩へ。いよいよロープウエイでテムズを渡ります!
コロナの感染の心配があるし、他の人と狭い車両を共有するのはちょっと…という危惧をいだいていたもの、エミレーツラインの乗り場はガラガラ。
セミの抜け殻のように空っぽの車両が次から次へとやってきます。
その一台に乗ると窓には「Listen to The Line: Sanko-time Larry Achiampong」という表示が。
こちらはNo.7のSanko-timeで、Larry Achiampongのサウンドアート。
昨年2020年に設置されたばかりの最新の委託作品です。
テムズ川の歴史にロンドン博物館のオーラルヒストリー(口述歴史)に加え、グリニッジにある小学校でのワークショップなどを交えた作品で、往復20分の空の旅に合わせて作曲されています。
それではみなさんも一緒にこちらのリンクから「Greenwich to Royal Ducks >」をクリックしてさあ出発!
まず、直下にGormleyの作品が見え、だんだん小さくなっていきます。
UFOのようなThe O2の背後には新興の金融街カナリー・ワーフ、その先には古くからの金融街シティが望めます。
すれ違う向かいのロープーウエイ車両に「Hello!」
それでは次回、向こう岸で会いましょう!