【新作映画情報】『瞽女GOZE』10月23日公開

東京
映画プロデューサー
【新作映画情報】Vol.09
村田徹

映画「瞽女GOZE」は、「最後の瞽女」といわれた新潟県三条市出身の故小林ハルさんの生き様を描いた作品です。

「瞽女(ごぜ)」とは、親しく瞽女さんと呼ばれ、三味線を奏で語り物などを唄いながら、各地を門付けして歩く「盲目の女旅芸人」のことです。
幼い頃から親方と呼ばれる師匠に預けられ、瞽女として生きていくために厳しく芸を仕込まれたそうです。

江戸時代まで全国各地に瞽女が存在したといわれており、瞽女たちの手によって津軽三味線の素地が伝えられたとか。
明治期には、越後・新潟にだけ残り長岡地区と上越高田地区の二つの集団が存在していました。

私は、この「瞽女(ごぜ)」という方々の存在を知りませんでした。
盲目の女性たちが、生涯を全うするだけでも大変だった時代に、厳しい修行が待つ道(人生)を選ぶことしか出来なかった、彼女たちの存在を知るキッカケとなったこの映画に、まずは感謝を申し上げたいと思います。
後世に残すべき文化遺産ともいえる素晴らしい作品です。

 

【あらすじ】
生後3ヶ月で失明したハルは2歳のとき父を亡くし、盲目の為に7歳で瞽女の道へ。
それまで優しい母であったトメは、瞽女になった瞬間から心を鬼にしてハルを厳しく躾けるようになります。
それは、母親が子を思う深い愛情からでした。
母親の優しさに気がつかないまま、8歳でフジ親方と共に初めて巡業の旅に出ますが、病が悪化したトメはこの世を去ってしまいます。
死別の時、ハルは自分を虐めた鬼である母親に、涙を流すことはありませんでした・・・

なんとも辛く悲しいお話です。
この映画は新潟県を舞台にしており、とても美しい自然や風景を背に物語が繰り広げられます。
春夏秋冬の美しさは、この映画の大きな見どころですが、そんな世界で繰り広げられる厳しい躾や修行のシーンは、目を覆いたくなるほど残酷なものでした。

彼女たちは、雪原を歩き峠を越えるつらい旅を、杖を頼りに続けつつも、村人の喜んでもらえる芸を披露することに生きがいを見出していました。
幼い時から師匠の下で厳しい修行を続け、独自の掟としきたりの中で、強固な絆で結ばれ、世間の差別・偏見に対して身を寄せ合いながら盲目という障害を克服して生きてきたのです。

小林ハルさんは、1978年に国の「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」として選択された無形文化財の保持者として認定され、1979年には黄綬褒章も授与されています。

 

瀧澤正治監督は、小林ハルさんの生き方に強く心を打たれ、映画化を目指されたそうです。
構想から17年、小林さんの「難儀な事をやるのが本当の仕事」「苦は楽のタネだよ」の言葉を支えに、くじけず、諦めずに、作品を完成させました。
この作品に関わる全ての方の思いが詰まった作品ではないでしょうか。

小林ハルさんを演じた主演のお二人、吉本実憂さん、川北のんさん(子役)が素晴らしいです。
幼少期を演じた川北さんは、瞽女が旅をする時は、吹雪く極寒の中でも足袋を履かないことから、同様に裸足に草履姿で撮影を乗り切り、監督や撮影スタッフを驚かせたそうです。
吹雪の中で撮影された瞽女歌の修行シーンは、観る側がドキュメンタリーではないかと思うほど、リアリティのある圧巻のシーンになっています。
またお二人とも、独特な言い回しのある瞽女歌を、歌詞を覚えるだけでも大変なところを短期間で習得。
吉本さんに至っては三味線も習得し、吹き替えなしで演技に臨んだだけでなく(当たり前ですが目を瞑って弾いています)、吉本さんの演奏(音源)をそのまま劇中に採用したというのですから、驚くしかありません。
(私も津軽三味線を習っておりますので、この凄さが分かります・・・私は一向に上達しませんがw)
お二人の、この映画にかけた「女優魂」に、是非ご注目ください。

 

そして、さらに私が注目したのは、盲目の役を演じられた女優の皆さんでした。
以前、盲目の女子高生が主人公の「ちょき」という映画にプロデューサーとして関わらせていただきました。
その彼女は事故で視力を失い、目が開いた状態で見えないという設定でした。
この場合、目線の方向や眼球を動かさないといった、演技の難しさがありました。

【参考記事】
映画で地域の魅力を発信 和歌山の小さな街のせつない恋の物語「ちょき」
http://www.creators-station.jp/interview/curiousity/30611

「瞽女GOZE」に出演する、主人公をはじめとする皆さんは、全てにおいて目を瞑ったままの演技が求められています。
そこで気づいたのは、目を瞑っていることで全く表情が分からないということ。
「目は口ほどにものを言う」ということわざがあるように、女性の魅力でもあり、演技の中で大きな役割を占める「目」が使えない訳ですから、演技を成立させるために相当な苦労があったと思われます。
見えないだけでなく、相手を見ずにセリフを交わさなければならない訳です。

女優の皆さんが、どのような工夫をして演技に臨んだのか、そんなことも意識しながら映画を観ていただくと、また違った映画の楽しみ方に繋がるかもしれませんね。
是非、ご覧いただきたい作品です。

 

『瞽女GOZE』
10月23日(金) シネ・リーブル池袋 他、順次国内公開

出演:渡辺美佐子 吉本実憂 川北のん 
   渡辺裕之 中島ひろ子 小林綾子
   綿引勝彦 左時枝 田中健 
   冨樫真 鈴木聖奈 嶋田久作
   宮下順子 草村礼子 国広富之    
   寺田農 本田博太郎 小林幸子 
   奈良岡朋子(語り部)  

原作:最後の瞽女 小林ハルの人生(著者 桐生清次 文芸社刊)
原作・監修:最後の瞽女 小林ハル 光を求めた一○五歳(著者 川野楠己/NHK出版)
脚本:加藤阿礼、椎名勳、瀧澤正治
監督:瀧澤正治
音楽:まついえつこ
制作:株式会社キッズ
特別協賛:三条市
支援協力:上越市、胎内市、メトロガイド
後援:BSN新潟放送
配給:エムエフピクチャーズ株式会社

https://goze-movie.com/

©2020映画 瞽女GOZE 製作委員会

プロフィール
映画プロデューサー
村田徹
映画プロデューサー ㈱フェローズ コンテンツマネジメントセクション マネージャー/映画「スパイの妻」2020年10月16日公開/映画「滑走路」2020年11月20日公開/「ブルーヘブンを君に」2021年公開予定/映画「恋のしずく」2018年10月公開/映画「カノン」 2016年10月公開/映画「ちょき」2016年11月公開/短編映画祭「フェローズフィルムフェスティバル学生部門」/東京在住・石川県金沢市出身

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