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失敗は学びの宝庫 信じて進めば道は開ける

京都
株式会社インターナショナルパブリックアート 代表取締役 八木 仁 氏
株式会社インターナショナルパブリックアートはセレクトショップをメインに、アート制作、Web制作、音楽制作、アーティスト手配、カメラマン手配など、さまざまな事業を手がける会社です。人から「一体何をしている人なの?」と聞かれることが多いと話す代表取締役の八木 仁(やぎ じん)さん。多彩な事業展開の背景には、失敗を重ねながらも、常に諦めず、前に進もうとした八木さんの努力がありました。アーティストであるお母様の影響でアートが身近にあったという八木さんの現在に至るこれまでの人生と、今後の展開についてお聞きしました。

幼い頃からアートが身近に

株式会社インターナショナルパブリックアートは、もともとお母様が立ち上げられたとお聞きしました。

はい、母は八木マリヨという環境芸術家で、『縄』をテーマにした立体造形作品やパブリックアートなど多様な芸術表現による作品を制作し、国際的に活動しています。「人と人のつながり、人と地域のつながり」を生み出す環境芸術、つまり広場や公園、建築の公共スペースに、大型のパブリックアートを制作するため、また主に公共事業を請け負うために、そのアーティストである母が、土木建設業の資格を取得して1989年に設立したのが今の会社です。その頃、僕はまだ子供で、もちろん運営には関わっていませんでしたが、国内だけでなく海外での作品制作の手伝いやパブリックアートの現場に行ったことは良く覚えています。

そうです。母の展覧会へ行ったり、母が制作するインスタレーションやパブリックアートに関わったり、海外へもたくさん同行しました。アートと触れあい、どんなことも創意工夫することは楽しかったのですが、自分が特別な経験をしているという感じではありませんでした。20代初めまではアートに関わる環境が普通だと思っていたくらいですから。今思えば、特別な経験をさせてもらったと、母が開拓した業績やバイタリティーに偉大さを感じています。このようにアートが身近にあった影響で、僕自身もロンドンの大学院生時代から、インターラクティブアート(※1)のプロジェクトリーダーになるなど、多様なアート作品やWeb制作、サウンドデザイン、楽曲作りなどに関わってきました。それから、ミュージシャンとして活動していた時期もあったんですよ。

※1 観客を何らかの方法で参加させる芸術の一形態。インタラクティブアートは、作品とそれを見る人の対話によって形成される。観客(参加者)は作品とのエージェンシー(作用できる能力)を持ち、作品のコンテキストに参加することを求められている。すなわち、インタラクティブアートの作品はインタラクション(相互作用)をもたらす。

友達の手伝いからショップ経営へ

取り扱いブランド

自然な形でアートと関わってこられたのですね。しかし、今、御社の業務はセレクトショップがメインとお聞きしました。どのようにして、今の形態になったのでしょうか?

ロンドンの大学にいた時に、たまたま日本から買い付けに来ていた友達の仕事に関わったのがきっかけです。その時初めて、海外の商品を輸入して販売する仕事があることを知り、日本に未入荷の衣服をその時のパートナーとセレクトし、オンラインショップで販売しようと試みました。通常であれば、結果を出すまでに時間を有すると思うのですが、幸運にも2週間くらいで売れ始めて、1カ月で200万円もの売り上げになりました。
その後、東京に住まいを移すタイミングで、知り合いから原宿を代表するブランドの「milk(ミルク)」を紹介していただき、原宿系の衣服を中心に扱うようになりました。

お母様の会社に関わるようになったきっかけを教えてください。

ショップ事業を別会社で立ち上げても良かったのですが、経理を一本化し、一緒にやったほうがお互い有益な経営ができると考え、2009年に株式会社インターナショナルパブリックアート、ショップ事業部として立ち上げ、同期に代表取締役に就任しました。

どん底からの再起。大切にしたのは「信じて前に進むこと」

ショップ事業としては順調な滑り出しですね。そのまま、今に至ったのですか?

ショップ事業を立ち上げてすぐに、リーマンショックが起きて、その2年後に東日本大震災が起きました。まさに日本全体が落ち込んだ時期だったので、リアルに売り上げも急降下。事業が一気に悪化し、借金まで抱え、精神的にも参ってしまって、まさにどん底でした。
それでも、お客様からの予約は多少なりともあって、事業を辞めるわけにはいかず、維持していくことで必死でした。気がつけば、自分の部屋は在庫であふれ、その在庫とともに寝るような生活を送っていました。

その後、どのようにして現在に至ったのでしょうか?

東日本大震災をきっかけに、地元の京都に戻りました。事業は相変わらず発砲塞がりでしたから、なんとか打破できないものかと、事業計画を立てて、再起を図りました。とにかく、おもいつくことは恐れずチャレンジしましたね。
Web サイトの写真の見直し、服ごとに厳選したモデルを起用し、イメージ作りを大切にしました。一方、家賃を見直し、撮影は自分で担当しました。経費削減にはそれしか考えられなかったんです。当時、様々なレンタルスタジオを借りて撮影していました。スタジオの利用が多くなり経費もかかっていたので、いっそ作ってしまおうと専用のスタジオを作りました。利用していないときはレンタルスタジオとして貸し出して、家賃の補填になるようにしました。今ではレンタルが増えて黒字化しています。また、僕自身の撮影ライティングやカメラ撮影の技術もあがり、カメラマンとしての仕事も多くなってきています。
1年後、スタジオと同じ敷地内にある大きなスペースが空いたので思い切って、今までマンションですべて賄っていた事を移行する決断をしました。家賃が少し高かったので、これもシェアオフィスとして運用しようと考えましたが、結局思ったような形にできませんでした。それでそのまま初のリアル店舗、サロンとして作り直しました。在庫倉庫兼ショップとして兼用しているので、人件費も削減できました。
失敗を重ねながらも、その失敗が別の形で前に進むきっかけとなりました。最近、2011年に立てた事業計画を見返したのですが、2017年の部分を見ると今に至るまでの数字がほぼ計画通りに進んでいたのです。ショップもたちあげたし、ブランド化もできました。計画を綿密に立てて、信じて行動すれば、自然と叶うものなのかもしれません。自分でも驚いているところです。

お客様の満足を最優先し、追求したい

自宅をアーティストレジデンスとして、アートに関わる海外の方にレンタルしている。

今ではセレクトショップ以外にもたくさんのお仕事をされていますね。そのお仕事について教えてください。

さまざまなことを思い描いて、それを実行していくことは僕の根底にあるものです。思い立ったら、すぐに行動している状態です。撮影スタジオを作ったこともしかり、アーティスト手配や音楽制作を請け負うなど、すべて自分が経験してきたからこそ、仕事として責任を持って展開できるのかもしれません。
2015年に中古物件の民家を購入し自分が住んでいる家をアーティストレジデンスとして、アートに関わる海外の方にレンタルしていることもその一つです。
最初はオランダの有名なアーティストが京都で滞在先を探しているとのことで、家を貸したことがきっかけでした。場所は北白川にあり、見晴らしの良い立地と緑に囲まれた日本家屋の造りなので、雰囲気が京都らしいと喜んでいただきました。その後、家をリノベーションして、インテリアを変え、庭に枯山水の庭や苔庭を作るなど、空間作りにこだわり、アーティストレジデンスとして運営していく事に決めました。枯山水や苔の植え込みなどの作庭は、自分で試行錯誤しながらスキルも向上しました。自分で何でもやることも楽しいのですが、最近はプロに任せることも大事だと改めて思うこともありました。(笑)
下手にやってやり直しになったりしていたのでプロにしっかりやってもらう事もとても大事です。

先日、中国のトラベルジャーナリストの方がいらっしゃって、滞在した様子をSNSで掲載してくださったようで、それがなんと13万ビューを達成して、その後、海外のアーティストの方がたにたくさんお越しいただいております。

事業形態が増える中で、一貫して大切にしていることは何でしょう?

お客様の満足を最優先し、常にそれを追求することです。Webであればお客様が見やすいサイトにするという当たり前のことから大切にしています。
アーティストレジデンスにおいても、季節に咲く花や木を植えたり、日本を感じていただける空間を作ったり、いつ来られても満足していただけるように努めています。やはり、喜んでいただけることが一番うれしいです。
そのためには、アルバイトをはじめスタッフの意見も大切にしています。自分にはない発想をもっているので、とてもありがたい存在です。僕自身はやりたいことに挑戦し続けたいので、将来的にはショップ事業は信頼できるスタッフに任せたいと思っています。

恐れず行動することが、成長への鍵

挑戦を続ける八木さんの原動力は何ですか?

思いついたことをとりあえずやってみることですね。人から「向いてない」とか、「一人でやるのは無理だよ」と言われることもあるのですが、それは自分で実際にやった上で判断したいと思っています。もちろん、失敗することもあります。しかし、それはすべて学びにつながり、改善点が見え、一歩前へ進むことができるのです。こういうことを率先してやっていたら、最近、成長している自分をリアルに感じることができます。
結局、やったことはすべてつながっていくんだと思います。何をやっても、続けていくものと、止めてしまうものが出てくるのであれば、初めから制限してしまうのはもったいないと思うんです。やりたいと思ったら自然とそのビジネスについて調べ始めるそうしたら色々と繋がっていく繋げられていくんです。
時代はまさにマルチな時代です。一つの事だけで勝負出来る人はとても羨ましいですが、僕の場合は複数の魅力を持ち合わせてやっと勝負が出来るというか、総合力でカバー出来ていければいいなと思っています。そして、その結果、点と点を結び、弊社の原点である「アート」と「社会」を結ぶような仕事ができればいいなと思っています。まさにインタラクティブアートですね!

最後に、今後の展望について教えて下さい。

今、母が2つほどのプロジェクトを行っていてそのサポートをしたいと思っています。一つは社会芸術ともよばれる、みんなで作るパブリックアートプロジェクトです。2014年ニューヨークでのプロジェクトでは、オノヨーコやバックミンスターフラーなどのアート作品が多くあるロングハウスリザーブという庭園美術館の協力で、100人ほどのコミュニティーの人々、色々な肌色の違う人たちや老いも若きも皆と一緒に、17mの長さの4本の布チューブをらせん状に撚り合わせ、大きな縄の塔のモニュメントを制作しました。なにぶん高さ10mの大きな縄の塔を作るのですから、僕は大勢の参加者の心を一つに合わせて、モチベーションをあげ、しかも楽しんでもらえるように導くための音頭とりをやりました。みんなで心をひとつにして作り上げるので、出来上がったときの達成感は凄いですよ。初めは知らない人同士で、消極的だった人も次第に笑顔になって一生懸命に力あわせて、新たな絆、心の繋がりが生まれました。国や人種や文化の違いを超えて理解しあい、分かちあい、協力しあい、笑顔になれる体験。『一本の糸は弱くてもより合わされば強い縄になる。汝(な)と我(わ)が感動を通して一つに繋がる体験が、世界の平和への道のりとなれば』とこれこそ母が求めたパブリックアートの形だと感じました。このモニュメントは2014年から今年2017年までの三年間の展示予定でしたが、みんなで作った心の絆の証や平和への思いがこめられたエネルギーが伝わるのか、子供たちはじめ地元で愛され、コンサートやダンスイベントなどモニュメントの周りに人が集まりシンボリックな平和の場所になりました。
メッセージのある作品が設置されることにより人が集まり、地域のよりどころになる。まさにこれがパブリックアートの神髄です。
実はこのようなプロジェクトは京都でも行いました。京都市役所前広場に高さ11m、2万着の古着Tシャツで綯った縄の塔モニュメントを建てました。
制作に関わった人は延べ1万2千人。最終日には多くの人が見守るなか、点火して燃やしました。みんなで作り上げた作品が炎となって燃えあがり、消えてなくなることで、鮮明に心に残るモニュメントになったと思います。神戸阪神大震災の後にも、同様の縄の塔、鎮魂の縄を建ち上げました。それぞれ紹介したプロジェクトはアーティストとしての母が自ら開拓し説得し成し遂げたアート作品です。この平和への縄プロジェクトは国連関連や世界人権財団関連などからもオファーがあるのですが、国内でもオファーがあれば、どこへでも伺いたいですね。みんなで一つのことに向き合い、思いを分かち合うこと、その喜びこそ社会芸術の本質なのです。地域や仲間、社員の結束を固め、より良い社会、環境を目指すのに是非おすすめです。

もう一つは「ガルボ」という前衛イタリアンデザインの先駆者とともに八木マリヨがイタリアでデザインした照明器具の販売です。「ガルボ」は1970年代に現代イタリアグッドデザインに選ばれ、東京国立近代美術館のコレクションにもなっており、糸状カーテンで幻想的な空間を演出する照明器具です。今年春、イタリアミラノサローネで、伝説の起業家デイーノガビーナが起こしたインテリアブランドが復活し、巨匠デザイナーの名作と並んで「ガルボ」の復刻版が発表されました。その歴史的なブランドの日本代理店を弊社にという話が来ています。

取材日:2017年8月22日 ライター:7omoya

株式会社インターナショナルパブリックアート

  • 代表者名:八木 仁(やぎ じん)
  • 設立年月:1989年12月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:パブリックアート事業から 、ショップ事業、ECサイト運営、ホームページデザイン、Photo Studio経営、アーティスト手配、カメラマン手配など
  • 所在地:〒604-8812 京都府京都市中京区壬生相合町67-1 NSビル2F
  • お問い合わせ先:電話)075-354-6928
  • URL: http://ipasdc.com
    ルークアンドステラセレクトショップ: http://www.lukeandstella.com/
    LSスタジオ: http://lsstudio.jp
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