ゲームへのほとばしる熱意。“アカホシ”こと谷田優也氏が願うeスポーツの未来像

Vol.194
ウェルプレイド・ライゼスト株式会社 代表取締役
Tanida Yuya
谷田 優也

近年、ゲームを競技として楽しむeスポーツが注目されています。2021年4月にゲーム総合情報メディア「ファミ通」が発表した統計(※)によると、2020年の日本国内eスポーツ市場規模は前年比9%増の66.8億円に。2024年には180億円規模にまで拡大するとも試算されています。

将来のオリンピック正式競技化を望む声もありますが、大会運営にかかる賞金の取り扱い方など様々な課題があるのも事実です。その現状や将来性はどうなのか。eスポーツ大会の企画・運営、人材教育などを手がけるウェルプレイド・ライゼスト株式会社の代表取締役・谷田優也(たにだ ゆうや)さんにお話を伺いました。

※引用出典:「ファミ通」

 

ストリートファイターのザンギエフに学んだ人生訓

まず、谷田さんのゲーム歴から教えてください。

1982年生まれでその翌年がファミコンの発売だったので、3歳の頃からですかね。自然とゲームで遊んでいました。物心付いたときにはすでに、たくさんのソフトに囲まれていて。

小学校、中学校でもゲーム機で友達と遊ぶのが当たり前で、ゲームセンターにもよく足を運んでいました。

そのお話だけでも、ほとばしるゲーム熱を感じられます。

ありがとうございます。高校時代、放送委員会でゲームにまつわる企画をやったこともあるんですよ。昼食時に「家で余っているソフトがあれば、僕がみんな預かります」と放送したことがあって。地道に告知し続けていたら、1200本ほどのソフトが集まったんです。

預かったソフトのエンディング集を作るため、実際にプレイしてビデオテープに録画しました。今ならば動画サイトで公開するのに向いている企画でしたね。1200本ぜんぶ、あいうえお順に紹介してみたかったんですけど、整理する作業もなかなか辛くて。ファミコンゲームの『仮面ライダー倶楽部 激突ショッカーランド』(1988年発売 /バンダイ)辺りで、後悔しました(笑)。

想像するだけでしんどそうです(笑)。前身のウェルプレイド株式会社を共に設立した髙尾恭平(たかお きょうへい)さんとは格闘ゲームの対戦で知り合ったとお聞きしました。その出会った渋谷のゲームセンターでは“ザンギエフのアカホシ”としても名が知られていたそうですね。思い入れもお聞かせいただけますか?

そうですね。ロシア出身のプロレスラーという設定のキャラクター「ザンギエフ」に出会ったのは『ストリートファイターIV』でした。

このキャラはプレイヤーの実力差をひっくり返しやすいので惚れ込んだんですよ。クセがあるので、10回中9回は負けるリスクもある。でも、残り1回が大会であれば勝利をつかめる。つまり夢のあるキャラクターなんです。

ザンギエフから学んだこともありますね。物事は何でもひっくり返せると知りましたし、はなから無理だと感じることでも無理ではなくなるはずだと。

事業を始めてからも“彼”と共に歩んだ経験は、今も自分のなかに残っています。

 

ゲームがどれほど上手くとも「対価」を得られない現実



2015年11月、前身のウェルプレイドを立ち上げたきっかけは何でしたか?

プレイヤーとしてゲームが好きだったのはもちろん、実体験から「eスポーツを支えてみたい」と考えたのがきっかけでした。

『ストリートファイターIV』をやり込んでいた当時は、アニメやゲームのIP(※)を活用するための会社で働いていました。そのときにゲームセンターで熱心に遊んでいたプレイヤーたちを見たのが大きかったです。

私より上手なプレイヤーもたくさんいて、みんな誰よりも強くなりたい思いで一生懸命にプレイしていたんですよ。ただ、話を聞いてみるとゲームにかける時間以外はアルバイトに費やしていたり、毎日の生活がギリギリという人もいて……。

努力を重ねて結果も出しているのはすごいことなのに「世の中の対価に見合っていない」と思ったんです。

ちょうどその頃、海外でeスポーツが流行っている話を耳にしたんですよね。日本ではまだその言葉を聞く機会がなかった時期ですが、これからきっと流行ると確信を持って。将来的に、日々汗を流しているプレイヤーたちを支えられればと思い会社を設立しました。

※IP=知的財産権、ゲーム業界ではゲームタイトルやキャラクターを表す

設立当時はeスポーツの認知度はおろか、プロゲーマーという言葉すらメジャーではなかった印象です。それでもなお、日本での可能性を感じられたのはなぜでしょう?

アメリカで開催されている世界屈指のゲーム大会「Evolution Championship Series」のパブリック・ビューイングを企画したのが大きかったです。

夜通しで13時間、現地と日本を繋いで中継を行いました。渋谷の会場で約120人が熱狂してくれて。当時「やってみた」などでおなじみの動画投稿サイトでは、すでにゲーム実況動画が多く配信されていました。そんななかで、リアルな現場でもプレイするだけではなく「ゲームを見たい」と思う人たちがいると確信を持てたんです。

現在はeスポーツの大会運営やセミナーなどを通した教育事業など幅広く手がけていらっしゃいます。谷田さんはどういった役割を持っていらっしゃるのでしょうか?

まずはクライアントの渉外役ですね。そしてプレイヤーやインフルエンサーなど、ゲームに関わる人たちと会社をつなげる新しいコミュニティ作りも、注力している部分です。SNSでは“アカホシ”として様々な人たちと交流しています。

格闘ゲームやRPGであったり、そのジャンルを好きな人たち同士のコミュニティはあります。ですがジャンルを超えて関わり合う機会は限られているんです。種類によって、それこそカードゲームとモバイルゲームでは住む世界が違う印象もあって。

2019年から運営しているゲームコミュニティ「ゆるふわeスポーツ座談会」で少しずつ形ができあがってきました。

 

ゲームが悪いのではなく物事の“バランス”が大切

 

eスポーツはまだ黎明期の印象です。業界に関わる一人として「eスポーツの定義」をどう考えていますか?

広義には「電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称」(一般社団法人 日本eスポーツ連合会より)とされていますが、現実的に、はっきりとした区切りを付けるのは難しいと考えています。

例えば、格闘ゲームでどちらが強いかを競い合うだけではなく、RPG『ドラゴンクエスト』シリーズで誰が早くクリアできるのかを競うのも、見方によってはeスポーツになりうる。個人的には曖昧でもいいと思っているんです。ただ、単純に「ゲーム大会」ではなくeスポーツと呼ばれ始めたことで、間口が広がったと感じています。

海外では数十億円もの賞金をかけた大会も開催されています。言葉を替えるだけでアスリートのような努力を重ねるプロゲーマーの存在が認知されるようになり、関心を持ってくれる方々も増えました。

ゲームの楽しみ方はもともと千差万別です。結果としてその選択肢がさらに増えたのも、eスポーツが世間に与えたポジティブな影響だと考えています。

日本でeスポーツが盛り上がり始めたのはいつだと思いますか?

2018年に一般社団法人 日本eスポーツ連合会をはじめ関連団体が相次いで設立されたのは、転換期だったと思います。将来のリアルスポーツ最高峰の大会で、正式競技化されるのを見越して、社会が動き始めたのがその年でした。

2019年からはeスポーツ甲子園「STAGE:0」が開催されるようになりました。高校生の大会にも世界的な企業がスポンサーに付いたのは大きな変化です。弊社で企画した大会でも大手飲料メーカーさんがイベントへ協賛してくださったときに「ようやく耳を傾けていただける時代になった」と感動しましたね。

スポーツ界では選手を企業がスポンサードするのが一般的です。プロゲーマー界でもそうした動きがみられるようになったのは、近年の流れだと思います。

プロゲーマーに憧れる子どもたちも増えてきました。一方、子どもたちのゲーム利用時間を1日1時間とする「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」が2022年4月から施行されるなど、ゲームに対して厳しい意見もあります。そうした声に対しては、何を思いますか?

当たり前かもしれませんが、何か一つだけに集中するのではなく、いろいろな物事をバランスを取りながら吸収するのが大切だと思っています。

私には1歳からiPadを触らせてきた子どもがいて。いま年長なんですけど、朝起きて家を出るまでにゲームをやりたがります。

そこで私は「ちゃんと準備をしたらゲームをやっていい。そうじゃなければダサい」と言っているんです(笑)。この言い方が効くんですよ。すると子どもはゲームをやるために朝の準備を自分なりに工夫し、効率化するようになるんです。

ゲームから直接学んでいることもあります。うちの子は火や水の特性を『ポケットモンスター』で覚えました。ゲームでは火や水というモンスターのタイプで相性があり、勝ち負けが決まりますから。さらに『ポケットモンスター』からかけ算も覚えたんですよ。算数にも役立つのかと感動しましたね。

このように子どもへいい影響を与える具体例はあるものの、基本的にコンテンツはどんなものでも賛否両論です。マイナスの声が聞こえてくるのは仕方がない面もありますね。

私は厳しい意見は逆に重要視していて。例えば100人いて5人しかゲームを肯定しなかったとして、自分がゲーム好きの側であれば、サイレントマジョリティー側の意見に耳を傾けるのは大事だと考えています。

 

未知数のeスポーツ界にはまだまだ可能性がある



谷田さんからみて、日本のeスポーツ界の現在地はどの辺りでしょうか?

頂上が10合目だとすると、2合目から3合目の印象です。ゲーム自体、サブカルチャーから一歩進んでプレイヤーが増え、さらに「見て楽しむ」という人たちも増えてきました。それこそコロナ禍の影響だったとも感じています。

ただ見る人たちを熱狂させられるプレイヤーたちが、対価を得られているかといえば必ずしもそうとは言えないのも現状です。

2021年は「STAGE:0」の参加校が1960校となりましたが、高校野球のように履歴書や面接で「甲子園へ出場しました」と伝えても、就職に有利なるような状況にはまだなっていません。

ゲームのために努力を重ねてきた人たちの価値を、当たり前のように社会が認めるようになってようやく、5〜6合目へたどり着いたと言えるようになると思います。

eスポーツの完成形という山の10合目の絵は見えていますか?

いろいろと想像していますが、例えば、テレビで当たり前のようにeスポーツの大会が行われて、他のスポーツと同じように「eスポーツ進学」といった選択肢が生まれるのは一つの未来で。

音楽でいう「FUJI ROCK FESTIVAL」や「SUMMER SONIC」のように、毎年恒例で大規模な大会が開催されるのも夢があっていいかなと。

将来、リアルスポーツの世界大会の正式種目に採用された暁には、空港で選手団を見送りたいですし、感動もひとしおでしょうね。

2021年の東京大会で初採用されたスケートボードのように、金メダルを取るヒーローが出てくれば、eスポーツプレイヤーに憧れる子どもたちがさらに増えると期待しています。

最後にお聞きします。eスポーツ業界を支える立場として今後、どのように貢献していきたいですか?

やはりさらに業界を盛り上げていきたいと思いますね。eスポーツのキーワードでビジネスの可能性を広げるのが、目下のミッションです。

例えば配信にしても、プレイヤーとゲームメーカーのいずれもが収益を得られる状態を目指すのはその一つ。

最近、有名配信者の切り抜き動画に「Content ID」というものを紐付けて、大元の動画チャンネル主と拡散している方の双方で収益を得られる仕組みが導入されています。これをeスポーツにも応用したいんです。

ゲーマーでプロとして生計を立てられている人はほんの一握りで、努力を重ねて誰よりも特定のゲームについて上手いのに、稼げていない人たちもいる。そういった人たちの頑張りがもっと多くの人たちへ伝わり、そしてこの文化を支える(ゲーム)メーカーの収益にもつながり、関わるすべての人が幸せになれる未来のために尽力していきます。

私が会社を作るきっかけになったゲームセンターに通うプレイヤーたちのように、日々ゲームに全力で取り組んでいる人たちを「eスポーツの総合商社」として、後押ししていくのが自分たちのやるべきことなのです。

 
 
 

取材日:2021年12月7日
ライター:カネコシュウヘイ スチール撮影:小泉真治 ムービー撮影:加門貫太 ムービー編集:遠藤究

 

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プロフィール
ウェルプレイド・ライゼスト株式会社 代表取締役
谷田 優也
1982年生まれ。東京都出身。IPコンテンツプロデューサーなどを経て、2015年11月に前進のウェルプレイドを設立。2021年2月、eスポーツ・エンターテインメント企業のライゼストとの合併を経て、ウェルプレイド・ライゼストの代表取締役へ就任。前身企業を共同で設立した、同社の代表取締役・髙尾恭平氏とは『ストリートファイターIV』をきっかけに知り合う。かつて渋谷のゲームセンターでは“ザンギエフ使いのアカホシ”としても名を馳せた。

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