グラフィック2016.06.08

婚姻届をクリエイトしてまちを活性化 “立川市プレミアム婚姻届“

Vol.130
福永紙工株式会社 立川市 総合政策部企画政策課 福永紙工株式会社 代表取締役 三星デザイン 小林直弘さん、山田明良さん、三星安澄さん
複写式でふたりの筆跡を残すことで婚姻届を書く緊張感をそのまま保存、証人からのメッセージや記念日等を書き込んでふたりのこれまでをカタチに、ふたりの思い出の写真も飾れる、ちょっと特別な婚姻届が東京都立川市から発売されました。 「婚姻届のデザインを変えて、まちを活性化する」という革新的なアイデアは、なんと立川市役所の若手職員が中心となって発案されたといいます。 制作を担当したのは、立川市内で創業54年の紙の印刷・加工会社で、オリジナルブランド「かみの工作所」も展開する福永紙工株式会社。「かみの工作所」で長年、ディレクションを担当されていた三星デザインの三星安澄(みつぼしあずみ)さんがデザインを担当しました。 市役所、地元の業者、地元在住のデザイナーの三者がタッグを組んだプロジェクトについて、立川市 総合政策部企画政策課 小林直弘さん、福永紙工株式会社 代表取締役 山田明良さん、三星デザイン 三星安澄さんに、それぞれにお話を伺いました。 ※「かみの工作所」については、コチラの記事もご覧ください。 「クリエイティブ好奇心」 第98回 『かみの工作所』 ~町の印刷所が生み出す魔法のような紙作品とは http://www.creators-station.jp/curiousity/17825
 

■立川市 総合政策部企画政策課 小林直弘さんにお聞きしました

『立川市プレミアム婚姻届』

『立川市プレミアム婚姻届』は、立川市の若手職員が主体となって企画されたということですが、具体的にはどのようなことがきっかけとなって実現されたのですか?

立川市(小林さん) : 『立川市プレミアム婚姻届』は、20代から30代の若手職員がまちのにぎわいを創出していく地方創生事業を検討していく中で企画した事業です。背景には、「結婚を控えたカップルが立川市に来てくれるきっかけをつくれば、若い世代の来訪者が増え、立川市の魅力がもっと伝わるのではないか」といった想いがあります。

なぜ、婚姻届だったのですか?

立川市(小林さん) : 婚姻届は、本籍地でなくても戸籍謄本か戸籍全部事項証明書を添付すれば、全国の役所で提出が可能です。そこで『立川市プレミアム婚姻届』を購入するために、まずカップルで立川市を訪れ、提出する際、再び立川市を訪れていただくことで、立川の魅力を知っていただき街のにぎわいを創っていこうというものです。

『立川市プレミアム婚姻届』の特長は?

立川市(小林さん) : 特長はなんと言っても、婚姻届を記入した際の緊張感をそのまま残せる複写式であるという点です。保存用の台紙には通常の婚姻届にはない証人からふたりへのメッセージが書き込める欄や、ふたりが夫妻になるまでの歩みを綴ることができる欄も追加されています。 また、表紙の台紙部分に思い出の写真を貼れば、写真立てとしても利用できます。そのまま、玄関やリビングに置いていただくこともできますし、結婚式のウェルカムボードとしても使っていただけるデザインになっています。

制作の過程で、役所的に難しかったことはありますか?

立川市(小林さん) : 婚姻届自体は公文書になりますので、法令への適合や事務処理のしやすさなども考慮する必要がありました。その点も踏まえたうえで、若い世代の方に手に取っていただけるような、デザイン性が高い婚姻届を作り上げていく難しさがありました。 過度なデザインはせず、文字のフォントや色の変更、市松模様を施すといったことで、モダンな印象にデザインしていただきました。

「婚姻届のデザイン」を変えるというアイデア自体、とてもクリエイティブな発想だと思うのですが、デザイナーの三星さんや紙加工を担当した福永紙工さんといったクリエイターとのコラボレーションの中で感じたことはありますか?

立川市(小林さん) : 自分たちが考えた以上に魅力的な形で提案していただけるので、驚くと同時に、とてもうれしかったです。若手職員にとっては、自分達のアイデアが具現化するという体験はなかなかないので、いい体験だったとも思います

立川市役所には、お祝いスタンプと記念写真撮影コーナーがあるそうですが?

立川市(小林さん) : 立川市役所1Fに撮影コーナーとオリジナルスタンプを用意しています。婚姻届提出後には、手元に残った複写された台紙にスタンプを押していただき、それを片手にふたり仲良く記念写真を撮ることができます。平日はもちろん土日祝日も利用可。自撮り棒も用意しています。これらは立川市役所にしかありませんので、婚姻届提出の際は是非、立ち寄っていただきたいです。

『立川市プレミアム婚姻届』

■デザインを担当した三星デザイン 三星安澄さんにお聞きしました

婚姻届をデザインする機会というのは、そうそうないと思うのですが、いかがでしたか?

三星デザイン(三星さん) : 婚姻届のような公的なものが「デザインできる」ということに驚いたと同時に、人の幸せの瞬間に携われる喜びから、ぜひにとお引き受けしました。 実際のデザイン期間は3ヶ月ほどでしたが、市の職員の方々の溢れるアイデアや意見を集約して、デザインに落とし込んでいく作業は、とてもエキサイティングな時間でした。

最初にお話が来た時には、どんなオーダーだったのですか?

三星デザイン(三星さん) : 立川市に若い人がたくさん来てくれるような、婚姻届をデザインして欲しいというお話でした。複写の案は、すでに立川市さんからも出ていました。

「立川市さんからも」ということは、複写については、三星さんも考えていらしたのですか?

三星デザイン(三星さん) : お話をいただいて、まず、複写が出来たらいいねという話はしていました。 複写については、立川市さんから、是非加えたいという要望がありましたので、実際に複写されたとして、その後、その書類は家の中でどのように保管されるのだろうかということを検討しました。そこで、ただ複写しただけでどこかにしまって保管するのではなく、それが写真立てになって部屋に飾れれば、その後の生活の中に溶け込んでいくのではないかという方向へと広がっていきました。そして、それを飾るシチュエーションや時間が経つにつれどうなるかを考えるなかで、サイズや仕様などが具体的になっていきました。

ふたりの思い出や証人からのメッセージは、とてもうれしいアイデアですね?

三星デザイン(三星さん) : ふたりの思い出やメッセージを書き込む欄は、自分たちだけの婚姻届にするための余地として組み込みました。このあたりのアイデアは市の職員の人たちや自分の家族との話から生まれてきた案ですが、複写される保存用の書類をデザインした際、生まれた余白のスペースを利用して、枠をデザインしました。

真っ白な台紙に、明るいピンクとオレンジが施されたデザインについては?

三星デザイン(三星さん) : まず、真っ白な台紙は、結婚式のイメージから。また、余白にはふたりの思い出など好きなことを書き込んで、自分たちだけの婚姻届へとカスタマイズして楽しんでいただきたいと白を選びました。そのため、余白を多く取っています。ピンクやオレンジの明るい色合いを選んだのは、持っていてうれしくなるような楽しいイメージにしたかったからです。

今回のプロジェクトで困難だったことや、発見したことはありますか?

三星デザイン(三星さん) : 公的な仕事であるため、制約が多いように感じますが、実際はそのようなことを実感した機会はとても少なかったように思います。このようにプレイヤーの多い案件だと、個々の意見の相違から中庸なものへとアイデアがずれることが多いですが、ディスカッションの時間を多めにとっていただき、また互いに敬意を持ちながら話しあうことできたので、ほぼ提案通りに最終案まで進めることができました。

■印刷・加工を担当した福永紙工株式会社 代表取締役 山田明良さんにお聞きしました

立川市役所内にある記念写真撮影コーナーにて、記念撮影が可能。

立川市役所内にある記念写真撮影コーナーにて、記念撮影が可能。

 

今回、立川市の「婚姻届のデザインを変える」というアイデアを聞いて、どう思われましたか?

福永紙工株式会社(山田さん) : すばらしい発想だと思いました。お役所からのご依頼というと、とかく安さや早さが求められ入札によることが多く、私たちのような小さな印刷所では太刀打ちできません。弊社は 立川市で創業54年の印刷加工会社ですが、10年前から多くのデザイナーと協働して「かみの工作所」や「テラダモケイ」というオリジナル製品を企画、製造、販売する取組みを続けております。今回、デザインやクオリティを重要視してオファーいただき、弊社の活動を地元、立川市さんに評価していただいたと、大変光栄に思っています。

『立川市プレミアム婚姻届』で、福永紙工さまが、こだわったポイントについて教えてください。

福永紙工株式会社(山田さん) : 紙の特殊加工と立体的な表現です。 婚姻届は、ずっと大事にとっておくもの、ずっと残るものです。高級感、特別感を出すため、台紙部分に1.5mmほどのしっかりした厚紙を使用、3色の箔押しを施し、型で打ち抜くという かなりインパクトのある加工をしました。箔押しというと、金とか銀とかを思い浮かべるかと思いますが、顔料箔といってピンクやオレンジの色の箔を施しました。プリントではなく、箔押しにしたことで、色の発色が良く高級感、特別感が増しました。

立川市役所のこの取り組みについて、地元の企業として感じたことはありますか。

オリジナルスタンプ

福永紙工株式会社(山田さん) : 立川市役所の若手プロジェクトチームと地元在住のデザイナー、地元の製造会社の三者が、それぞれの得意分野を持ち寄り フラットな関係性で話し合いブラッシュアップして完成できたことは とても有意義なことと感じます。 最終的には、市役所に撮影コーナーやスタンプを用意したり、情報を楽しく伝えるためのホームページやSNS等のプロモーションにも携わらせていただきました。ただ物を作って納めるだけでなく、『立川市プレミアム婚姻届』を購入した人に、それを使って喜んでもらうための施策まで関わらせていただき、立川をアピールし、地元を盛り上げるという目標に少しでも近づけたのではないかと思います。

 

取材日:2016年5月27日、31日 取材 : クリエイターズステーション編集部

『立川市プレミアム婚姻届』 価格 1,000円

『立川市プレミアム婚姻届』

販売場所

『立川市プレミアム婚姻届』は、立川市役所・立川市内ホテル(結婚式場)などで販売しています。 くわしくは、立川市ホームページの『立川市プレミアム婚姻届』ページをご覧ください。

  • 立川グランドホテル(立川市曙町2-14-16)
  • ルーデンス立川ウエディングガーデン(立川市泉町935-1)
  • ホテル日航立川 東京(立川市錦町1-12-1)
  • パレスホテル立川(立川市曙町2-40-15)
  • ポプラ立川市役所店(立川市泉町1156-9 立川市役所1階)

お問い合わせ

 立川市プレミアム婚姻届担当 TEL:042-523-2111(代表) E-mail:kikakuseisaku@city.tachikawa.lg.jp

立川市プレミアム婚姻届 http://tachikawacity-premium.jp/

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