WEB・モバイル2022.05.11

社内報もデジタル化が主流に!? 見直されるインナーブランディングとクリエイターのあり方

Vol.203
glassy株式会社 代表取締役
Taichi Kudo
工藤 太一

ペーパーレス化やDX化推進により、これまで紙媒体が主流だった社内報もデジタル化が進んでいます。「テレワークなどの新しい働き方が普及する今、あらためて社内コミュニケーションの価値が見直されている」というのは、glassy株式会社の代表取締役・工藤太一(くどう たいち)さん。
glassyは、採用ブランディングで培ったマーケティング力やクリエイティブ力をもとに、社内報をはじめとするインナーブランディング支援事業を展開。大手企業を中心に100社以上の顧客を抱えるクリエイティブカンパニーです。2021年6月には新たなデジタル社内報サービスの提供を開始し、注目を集めています。 今回は工藤さんに、デジタル社内報のメリットや活用方法、クリエイターとして社内報のコンテンツ作りで大切にしていることなどを伺いました。

社会の変化で増すコミュニケーションの重要性

デジタル社内報のお話を伺う前に、インナーブランディングの重要性についてお聞きします。社内コミュニケーションの活性化はなぜ必要なのですか?

理由の一つとして、会社と社員の関係性の変化があげられます。とくに2010年以降、終身雇用や年功賃金制度が当たり前だった団塊世代が定年を迎え、次の世代へのバトンタッチが急務となりました。ところが、そうした次世代の人たちは、終身雇用の概念が希薄であり、加えてビジネスのグローバル化や、M&Aの推進で異なる価値観を持った社員が一緒に仕事をする機会が増えています。このような背景から、必然的に「個人の働き方」がフォーカスされるようになりました。

会社としては優秀な人材に残ってほしい一方で、社員としては会社に所属している価値が薄れ、ロイヤリティが低下する傾向にある。つまり、会社からの遠心力(外へ飛び出す力)が働くようになったのです。そうした社会的変化によって、企業が優秀な人材を確保して事業を維持発展させるため、社内コミュニケーションを活性化して社員のエンゲージメントを高めようという気運が高まっているのだと思います。そのツールの一つとして、再び注目を集めているのが社内報というわけですね。

社内報のようなインナーブランディングツールは、採用や企業ブランディングにも活用できるのでしょうか。

少子化によって若手人材の総量が減り、優秀な人材の獲得は日本の大手企業のミッションになっています。ミレニアル世代やZ世代を採用していくためには、会社のブランド力や生涯賃金などの条件だけでなく、社会的意義が重視されるようになりました。そのため、企業のパーパスを明確にしたインナーブランディングツールは、採用ブランディングにも活用されるケースが多い印象です。
また、今は企業ブランディングにおいて積極的に自社メディアを運営する企業が増えています。影響力のある個人がSNSで簡単に情報発信できるようになった一方で、フェイクニュースという言葉もよく耳にするようになり、正しい情報を判断するのが難しくなっていると感じます。そこで、自社メディアなど企業自身が世の中に対して本当に伝えたいメッセージを発信できるツールの必要性が高まっていると思いますね。

デジタル社内報のメリットは主に3つ

工藤社長が社内報の制作を始めたきっかけを教えてください。

当社はもともと、企業の採用戦略を作ったり、採用にエントリーした学生の向けのコンテンツ制作など、採用ブランディング事業からスタートしました。その頃は新入社員の離職率が非常に高い時代で、優秀な人材に定着してもらうことが企業としても喫緊の課題でした。そこで社員に向けてメッセージを伝えるため、社内報の制作を始めたのがきっかけとなり、現在のコーポレート・ブランディング事業につながりました。
また、リモートワークの普及やDX推進などにより、コミュニケーションの主な場がデジタルに移りつつあることから、コミュニケーションTech事業を立ち上げました。インナーブランディングに関わるイベントプロデュースと合わせ、これら3つが当社の主な事業となっています。

そもそも、デジタル社内報とはどういったものでしょうか。また、社内報をWeb化するメリットはどこにありますか?

「デジタル社内報とは何か?」という問いに一言で答えるならば、「社内向けのオウンドメディアを持つこと」ですね。社外向けのオウンドメディアと同様に、デジタル社内報もログインすればブログメディアのようなコンテンツが広がっているというイメージです。両者の違いは、社員の方のみ見れるようにセキュリティがかかっているかどうかだけです。
Webだからこそできることは3つあると考えています。 1つ目は「いいね」をつけたりコメントを残したり、個人が発意してアクションできること。
2つ目は、文字や写真による記事だけではなく、動画による情報も提供できること。
3つ目は、社内アンケートを取るなど双方向性のあるコミュニケーションに活用できることです。

近年高まるデジタル社内報のニーズ


WEB社内報(PC版)

WEB社内報(スマートフォン版)
 

glassyさんで提供しているデジタル社内報サービスについて教えてください。

当社では、WEB社内報「WMZ」(WEB MEDIA Z)というサービスを提供しています。iOS、Androidに対応したアプリで、各自にIDを発行するユーザー認証方式でセキュリティ性を高め、人気ランキングや動画公開などニーズに合った機能を標準装備。リモートワークなどで物理的に距離の離れた社員に向けて、会社の最新トピックスや、一緒に働く仲間の情報を共有できます。

今では紙の社内報に比べて、デジタル社内報のニーズが高まっている状況でしょうか。

結論からいうと、まだまだ紙が主流ですね。製造業やサービス業といった大手企業の従業員の方は、工場や店舗などの現場で働いていらっしゃることが多く、会社からスマートフォンやパソコンを貸与されていない場合もあり、安直にデジタル化してしまうと情報が届かなくなってしまうのです。情報の均一性や公平性の問題に加えて、セキュリティ対策の整備も負担となり、紙の社内報の需要がなくならないというわけです。
一方でテレワークが普及して一般的になりつつあることで、一部の社員には、これまでのように紙の社内報を手渡しできなくなりました。郵送すると輸送費コストが高額になりますし、頻度が少ない出社時に手渡しするのは情報のタイムリー性が損なわれます。そこで2020年以降、社内報のWeb化が急速に広がりました。デジタル社内報を導入している企業さんでは、紙と併用して運用しているケースが多い印象ですね。
「速報性が求められる場合はWebで、じっくり読んでもらいたいときは紙で」と使い分けている場合もあれば、すべてのコンテンツをWebに上げて、その中で本当に大事なものだけを抜粋して紙にして届ける場合もあります。重要度の高い記事をプリントアウトして食堂に貼るなど、各企業さんの方針にあわせて運用方法はさまざまです。

「誰に届けたいか」を明確にする

 

デジタル社内報を導入したことで、組織にどのような変化が生まれるのですか?

デジタル社内報はコンテンツを入れる“器”に過ぎません。それ自体に組織を変えられる力があるわけではなく、掲載されているコンテンツにこそ、組織を変える力があるのです。もちろん、双方向性や速報性などのメリットはありますが、それをどう活かすかは、コンテンツやコンテンツを生み出すまでのコンテキスト(文脈)次第ですね。さらに、リアルなコミュニケーションも織り交ぜながらデジタルを活用することで、初めて価値を発揮できるものだと思っています。

あくまでもコンテンツが主役というわけですね。社内報のコンテンツ作りで大切にしていることはありますか?

社内報は基本的に、全世代向けのメディアです。ファッション誌のように特定の世代をターゲットにしたものではなく、下は18歳くらいから上は65歳くらいまで、全世代がターゲットです。しかも、役職も違えば職種も違う。大手企業は、いわば1つの“マス”なのです。それに対して、単純にコンテンツだけ出しても読まれません。「誰に届けたいか」をあえて言語化するのが大事なのです。
例えば、社内報で決算発表を行うとしましょう。読者に会計や経理の知識があるなら、アナリストレポートのような専門用語をそのまま使っても伝わるかもしれません。しかし、これからリーダー層となるやや若い世代を読者に想定した場合、さらに噛み砕いて分かりやすい編集にしなければ伝わりません。さらに、社員のご家族にも読んでもらいたいのであれば、会社の売上がひと目で分かるようなグラフを多用するなど、よりやさしい表現にする必要があります。
つまり、全社員に情報を届けるのは大前提として、その中でも特に読んでほしい読者を決めて企画や編集をすることが大切なのです。

クリエイティブの質を高めるには、ターゲットユーザーを深く理解することが必要なのですね。glassyさんが求めるクリエイター像を教えてください。

企業が抱える課題を発見して整理したうえで、どうしたら改善できるのかをクリエイティブの力を使って作り直す。これが私たちのクリエイティブの定義であり、その「変化を起こせる人」がクリエイターという考えなのです。オーダーに対して意匠としてのデザインを作るだけでなく、私たちは、そうした課題解決の目線を持ったクリエイターと仕事がしたいと思っています。

誰もが公平に情報を得られる世界に貢献したい

今後の展望をお聞かせください。

WEB社内報「WMZ」でいえば、日本で最も使われるエンタープライズ版のサービスに育てていきたいですね。大ざっぱな事業計画でいえば、3年後に100社導入を目指しています。今はまだプロダクトマーケットフィット達成の過程にある段階で、サービスの調整や改善、新機能の実装に取り組んでいるところです。できるだけ早期に、サービスとコンテンツの相乗効果を生み出せる状態まで持っていきたい考えです。

デジタル社内報サービスを通じてどのような貢献をしたいとお考えですか?

人間は、情報を知らされていないというだけで不信感を覚えるものです。それは「自分を大事に扱ってもらえていない」と自尊心が傷つけられるからだと思います。今後の労働環境やエンゲージメントマネジメントなどを考えた場合、働いている人たちが経営者や会社から情報を伝えられていないという事態は、絶対に避けるべきでしょう。
世界的にも、企業は株主や投資家に向けた情報開示だけでなく、従業員を含めあらゆるステークホルダーに情報発信することが求められており、その流れは日本においてもスタンダードになっていくと予想されます。そうした情報の公平性や均一性に貢献できるサービスやプロダクトを展開していきたいですね。

取材日:2022年3月11日 ライター、スチール撮影:小泉 真治

glassy株式会社

  • 代表者名:工藤 太一
  • 設立年月:1996年3月
  • 資本金:10,000,000円
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    FAX:03‐3632‐4826

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    FAX:06‐7635‐5657

プロフィール
glassy株式会社 代表取締役
工藤 太一
1975年東京生まれ。江東区の印刷会社・株式会社明祥の二代目。印刷の価値を見直し、上場・ベンチャーなど100社以上の「広報誌」を作成することでブランディングを支援。インナーブランディングの独自ノウハウを活用し「コーポレート・ブランディング事業」「コミュニケーションTech事業」「イベントプロデュース事業」を展開する。
URL:https://glassy-co.jp

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