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昔の名前で呼ばせてください

とりとめないわ 第33話
とりとめないわ 門田陽

「いやいや、ASはないでしょ!」って、 誰も言わなかったのだろうか。きっと、声の大きな人が決めたんだろうな。それにしても ASというネーミングはひどいと思いませんか。アーティスティックスイミングって、言いにくいし自分で自分の演じることをアートと呼ぶのは選手達もやりにくいはず。せっかく、シンクロナイズドスイミングというここまで慣れ親しんできた名前があるのにもったいないです。「シンクロ」というチャーミングな略称もしっかり市民権を得ています。

世界が決めたことだから仕方ないというのかもしれませんが、日本だけでもシンクロでいいと思うのです。世界中ほとんどの国がフットボールと呼んでいるのに日本はサッカーと言っていますしね。しかし、そのサッカーも意外と優柔不断でロスタイムをインジュアリータイムに変えたかと思ったらすぐさまアディショナルタイムに変えたし、自殺点はオウンゴールになりました。スポーツはわりと頻繁にルールが変わったりもするのでそのせいなのか呼び名が変わることに抵抗がないのかもです。僕は中学三年間バレーボールをやっていましたが、その頃リベロはいませんでした。メジャーリーグは大リーグと言っていましたし、スポーツ選手をアスリートなんて言った覚えは一度もありません。

ミリバールがヘクトパスカルに変わったのは1992年(平成4年)。これも理由は国際基準に合わせてだったと思いますが慣れるまでにかなり時間がかかりましたよね。台風のたびに今でもミリバールを思い出します。その頃コンデショナーはリンスでしたし、パスタはスパゲッティ、パンケーキはホットケーキでネイルはマニキュア、ブルゾンはジャンバー、デニムはジーパンでベストはチョッキでした。ベストはさらに最近はジレとか呼ぶような風潮もあります。何だよジレって?今なら松田優作はデニム刑事で星飛雄馬はメジャーリーグボール1号を投げていたのでしょうか。その名前だとどちらもダメだったかもしれません。あっ!ブルゾンちえみはこれには当てはまらないですね。ジャンバーちえみじゃ売れなかっただろうな(笑)。

さらに、ロシアはソ連、ジョージアはグルジアでミャンマーはビルマ、パナソニックはナショナルでJRは国鉄でソフトバンクは何だっけ?いやいやこの路線は本筋からどんどんそれていくのでやめます。

でも、もうひとつだけ。あえて言います。
僕は今でもCAさんはスチュワーデスさんでいいと思っていますし、女性の看護師さんは看護婦さんでいいと思うのです。もちろんポリティカル・コレクトネスは理解しています。
けれども日本の場合、CAさんも看護師さんもその母数は圧倒的に女性が多いわけです。さらに「スチュワーデスさん」や「看護婦さん」というコトバの響きは温かさを感じると思うのです。以前、男性の看護師(当時は看護士と表記されてました)さんが「男の看護婦さん」と言われることがありました。今はその逆現象があるらしく、患者さんから「女性の看護師さん」と呼ばれたりすると、看護婦さんと言っても構わないのにという話を現役の女性看護師さんから伺いました。何もかも欧米のやり方に右へ倣いする必要はないのです。国民性も違うし、特にコトバについては日本語にしかない温度があると思うのです。
「僕」も「オレ」も「わたし」も「わし」も「わちき」も「おいら」も「あっし」も「おいどん」もぜんぶ「I」という一語でしか言わない国のコトバとはまるで日本語は違うのです。僕は「看護婦さん」というコトバの温度が好きです。ヤクルトレディよりヤクルトおばさんのほうが買いやすい。

ところで、くりぃむしちゅー(元海砂利水魚)やさまぁ~ず(元バカルディ)はともかく、正蔵(※写真)はこぶ平のほうがよかったのにという話はまたの機会に。

Profile of 門田 陽(かどた あきら)

門田陽

電通第5CRプランニング局
クリエーティヴ・ディレクター/コピーライター
1963年福岡市生まれ。
福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。
TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。
趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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