「貝とひまわりの日」

第80話
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

コンビニでソーメンを見つけました。ということは今年も花粉の季節が終わり、そろそろ初夏です。まだまだコロナ禍ではありますが、ゴールデンウィークは各地でにぎわいそうな雰囲気。僕の地元福岡も三年ぶりに博多どんたくが開催されるそうです。やや気が緩んでいるのでしょうか、マスク越しでもよくあくびが出ます。

そんなボーッとした昼下がり。インスタントのしじみ汁を飲みながら、「ヨシ、行ってみよう!」と思い立ちました。善は急げで、すぐに向かいます。目的地はJRの大森駅のそば。京浜東北線で車窓を眺めていると「何だろうアレ?」と前から気になっていた場所です。線路のすぐ脇にまるで電車に向かって「見て見て!」と言っているかのような石碑が立っているのです(※写真①)。

※写真①

調べてみるとそこは大森貝塚。そうです、中学校や高校の歴史の授業で初っ端に習う(今は小学校でも習うそうです)あの大森貝塚です。行ってみました。

僕の住む新富町からドアツードア(妙な使い方ごめんなさい)で約30分。こんなに近くで世紀の発見があったなんて今までぼんやりしていました。百聞は一見に如かずって、誰が言ったのか知りませんがその通りですね。

まるで知らないことだらけでした。この縄文時代を代表する遺跡のひとつである大森貝塚が見つかったのは1877年(明治10年)です。見つけたのは日本人ではありません。発見者はアメリカ人の動物学者エドワード・シルヴェスター・モース博士。主にカタツムリの採集のために日本を訪れていた博士が横浜から新橋へ向かう列車の車窓からたまたま見つけたそうなのです。エーッ!そんなことってありますか。当時はまだ田舎だったとはいえ、前年の明治9年には大森駅が出来ています。つまりそれなりの大きさの町だったはずで、なぜ誰もその貝塚に気が付かなかったのでしょうか。縄文時代から数えると少なくとも二千年以上ほったらかし状態だったのですね。日本人の本質って案外大ざっぱなのかもしれません。同じようなことを思い出しました。1987年ですから昭和の終わり頃。福岡の平和台球場で外野席の改修工事中に鴻臚館遺跡が出てきました。鴻臚館は平安時代の大陸との外交施設で文化財。そのおかげというかそのせいで球場は跡形もなくなり今ではきれいな公園になっています。きっと日本中を掘り返すとひょっこり邪馬台国も出てくるんだろうなぁ。

線路脇の石碑から品川方面へ3分ほど歩くと大森貝塚遺跡庭園があります(※写真②)。広場や遊歩道が整備されていて実際に出土した貝殻や土器片を触れるスペース(※写真③)もありました。

※写真②
※写真③

触ると心なしかひんやりとしました。土器を手に持たされたモース博士の像(※写真④)を見た幼稚園児が「誰このジジイ?」と叫んでいました。

※写真④

 

さて話を飛ばしていましたがなぜ僕が大森貝塚に行きたかったのか。それは僕が貝が好物だからです。大好きなのです。ソーメンほどではありませんが(※とりとめないわ第59話)貝に目がありません(この表現も貝には目があるのでややこしいな、ゴメン)。特にムール貝は好きでバケツ一杯でも苦になりません。なのでその貝の元祖というか原点の地と言っても過言ではない大森貝塚に行きたかったわけです。

それから公園を出て、さてどうしようかと駅前をうろついていたらキネカ大森の看板が目に留まりました(※写真⑤)。

※写真⑤

名画座です。何をやっているのかなと覗いてみると「ひまわり」がありました(※写真⑥)。

※写真⑥

中学時代に見たはずですが内容は覚えていません。ソフィア・ローレンが主演だったことは思い出しました。男優は思い出せません。時間を見ると10分後に上映です。これも縁です。ふらふらっと入りました。広くはない客席ですが半分以上は埋まっています。始まってまもなくして今この時代に「ひまわり」が再映されている意味がわかりました。舞台がイタリアとソ連で戦争がテーマの映画でした。物語の最も印象的なひまわり畑のシーンが撮影されたのは現在のウクライナです。ひまわり畑には石碑が立てられていて現地の人の「このひまわりの下には多くの兵士が眠っている」という印象的な台詞がありました。所々で駅と機関車が登場します。そのたびにさっき大森駅のそばで見た列車や石碑がオーバーラップしてしまいました。フシギな気持ちになった晩春のひとときでした。

ところで、地元福岡の屋台ではそろそろ「あげまき貝」の季節だなという話はまたの機会に。

 

プロフィール
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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