WEB・モバイル2023.05.31

逆境の「コロナ禍」がもたらした好循環。フレグランスも日本酒も自社開発する異色のデザイン企業

東京
株式会社アナイスカンパニー 代表取締役
Yoshihiro Kozuma
上妻 善弘

東京と福岡に拠点をかまえる、株式会社アナイスカンパニー。デザインを軸にブランディングやコンサルティングなどを請け負う一方、スキンケア&ベースメイクブランド、サプリメント、日本酒などのオリジナルプロダクトの開発も手がける他、多岐にわたる事業を展開しています。同社を率いるのは、高校・大学時代にアパレルの世界へ飛び込み、会社員時代の経験も生かして起業した代表取締役の上妻 善弘(こうづま よしひろ)さんです。自分たちの転換期は、「コロナ禍」だったと語る上妻さんに、ご自身の経歴や会社設立の背景、事業のポリシーなどを聞きました。

ルーツは学生時代に経験したアパレル業界、センスを信じて起業へ

御社設立以前のご経歴を教えてください。

高校時代からアパレルのセレクトショップで働き、大学時代には、海外出張にも行くなど授業そっちのけで働いていました。その後もアパレルの道へ進もうと思っていましたが、在学中にかつて憧れていたこと、当時思い描いていたことは一通りやり切ったという達成感もあって、違う業界へ進みました。
就職先では、コンサルティング営業からマーケティング業務まで、幅広い業務を経験させてもらいました。今でもその会社の上司とは交流があり、一緒にお仕事しています。僕のサラリーマン経験は、その2年半のみになります。

その後、独立したのですね。

当時は26歳で今思えば若気の至りとも思えますが、サラリーマンとして外部ともやり取りする中で、「さまざまな経験をしてきた自分ならば、もっとセンスの良い企画や提案ができるのではないか」と考えたことがきっかけでした。
その思いをきっかけに退職した後、1年のフリーランス期間を経て、大手企業でのデザイナー経験者と一緒にクリエイティブエージェンシーをスタートしました。その後、パートナーとは、考え方や方向性の違いから、2012年に新たに現在の、株式会社アナイスカンパニーを設立しました。

オンライン会議が当たり前になり、東京と福岡のオフィスで良い循環が生まれた

2022年12月で、設立から10年を迎えましたね。

そうですね。ブランディングやマーケティングの視点を持ち合わせた企画やクリエイティブを評価していただき、多くのクライアントと継続して良い関係性を築いています。社内に営業担当はおらず、幸いなことにクライアントや周囲の関係者に新規案件をご紹介いただくなどして、ここまで成長することができました。

拠点は、東京と福岡の2か所です。

当初は東京だけで、設立から約2年後に福岡の拠点を設立しました。実は、21年頃までは、福岡オフィスのスタッフは、主に福岡案件を中心に手がけていました。
コロナ禍で急速に進んだテレワークやオンライン会議が当たり前となり、福岡スタッフと話し合って、思い切って東京の案件にシフトさせたことが大きな転機でした。それが功を奏して、東京と福岡のスタッフ同士での交流も盛んになり、良い刺激にもなって感性に磨きがかかり、いい変化が生まれました。

コロナを機に自社発信プロダクト事業を展開。「会社という船を守り切れない・・・」

クライアントワークの一方、自社開発プロダクトも積極的にリリースされています。

そうですね。美容ジャンルを中心に、様々なプロダクトを展開しています。例えば、10年近く続くフレグランス事業では、これまでたくさんのアーティストやブランドとのコラボレーション企画を実現させてきましたが、香りに興味をもつきっかけは、家業がルーツになっています。100年以上続く老舗の呉服屋で、幼いころから毎日お香をたく習慣があり、香道の歴史に興味を持ちました。それが、今思えば結果として現在の事業につながっている気がします。

現状、クライアントワークと自社開発プロダクト事業の比率はいかがでしょうか?

コロナ禍をきっかけに、自社開発事業を積極的に増やしました。従来は、クライアントに伴走するかたちでのブランディングやクリエイティブ制作を中心とした仕事が大半でしたが、コロナ禍初期の緊急事態宣言が発令された直後は、案件が一瞬ピタッと止まってしまい、「クライアントワークだよりのビジネスだけでは、会社という船を守りきれなくなるかもしれない」と思いました。そこからは、自分たちで積極的に商品やサービスを生み出していこうと、頭のスイッチを切り替えました。
その当時、新たに取り組み始めた事業の一つが、スキンケア製品ブランド「SINN PURETE(シン ピュルテ)」になります。こちらは、株式会社ジョンマスターオーガニックグループから譲渡され、コンセプトからパッケージデザイン、処方までフルリニューアルして、2020年6月に再ローンチしました。

事業の軸を2つ持つというのは、そうとうな覚悟が必要だと感じられます。

たしかに、そうかもしれませんね。自分で決めたことなのでいずれも全力で取り組んでいます。自社ブランドにもクライアントワークでの経験を生かせますし、その逆もしかりです。全く異なるものとは考えていません。
大切なのはバランスですかね。クライアントワークは、良い時もそうじゃないときも、どれだけ彼らの状況に寄り添えるかが重要です。 仮に、仕事を自社ブランドだけに限定してしまうと、その他の業界のトレンドから遠のくことになるので、いつの間にか感度が鈍り、トレンドを見落としてしまうことにもつながります。

自社プロダクトとクライアントワークをバランス良く、上手く共存できる方法を探しながら、事業を展開しています。僕たちは、幸い何かにとらわれることもないし、制限もないので、「やりたいことは、やれる限りやろう」と考えていますね。

チームで切磋琢磨、2拠点のコミュニケーション活発に。積極的なクリエイター採用も

御社でのクリエイティブ業務には、どのようなものがありますか?

昨今は、広告キャンペーン関連の撮影やWebサイト、プロモーションサイトなどの案件が業種を問わず多いですかね。Eコマースのデザイン構築も手がけていて、ブランディングを重視したサイト構築をベンダーさんとタッグを組んで取り組むことも増えました。また、動画だけではなく、CG制作なども取り組みをスタートしています。常に停滞することなく、新しい風を吹き込んでくれる仲間をこれからも増やしたいという思いから、事業を担うクリエイター、エンジニアの採用も強化しています。

「新しい風」による変化もある中、御社の現況をどうお考えですか?

東京と福岡間のスタッフ交流も盛んになっていて、アットホームでありながらスキルを高め合う良いムードが生まれつつあると感じています。スタッフ個人ではなく、チームで担当する案件も増えています。お互いのアイデアを出し合い、成長できる環境がようやく整ってきたと思っています。

「周囲に敬意を持ちながら対話できる人」を募集。スタッフのために成長

上妻さんご自身の役割もまた、変化しつつある印象を受けました。

そうですね。スタッフがのびのびと、やりたいことを実現できるように、僕の舵取りがこれまで以上に重要になってくると思っています。40歳を超えた僕自身、意識して心がけていても気づかないうちに20代のスタッフの考えとのギャップが生じていると感じることもあります。僕も考え方を寛容にしないと、今以上に会社も成長しません。クライアントワークのプレッシャーを心地よく感じながら、他社との協業で自分たちが主導できる事業も増やしつつ、新しい事業に大きく貢献したスタッフには、正当な対価を返せるような環境を作っていきたいですね。

最後、一緒に働きたい人材の理想像を伺えればと思います。

恋愛と一緒で、理想を求めてしまうとひずみが生まれると思います。だから、求めすぎるのも難しいですよね。ただ、”仲間にも敬意を持ちながら、しっかりと対話できる人”は、理想像の一つかもしれません。協調性がすべてとは言いませんが、周囲ときちんと対話できる力はクリエイターとして、やはり必要だと思いますね。

取材日:2023年4月11日 ライター:カネコ シュウヘイ

株式会社アナイスカンパニー

  • 代表者名:上妻 善弘
  • 設立年月:2012年10月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:Webサイトの設計・作成および運用支援、ECサイトの設計・作成及び運用支援、ブランドデザインの設計、デジタルプロモーションの支援、各種広告制作、自社プロダクトの開発・販売
  • 所在地:
    〒107-0062 東京都港区南青山7-1-7 C-Cube南青山 2階
    〒810-0041 福岡市中央区大名1-2-11 プロテクトIIIビル 1F / 2F
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