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その他2026.10.19

「シンギュラリティはすでに訪れている」音楽家・渋谷慶一郎×慶応大・國領二郎名誉教授が対談。AIとテクノロジーの進化はクリエイティビティと人間の本質をどう変えるか【CEATEC 2026 IPA】

東京
独立行政法人情報処理推進機構

2026年10月13日(火)から16日(金)まで幕張メッセで開催された『CEATEC 2026』。その初日、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のメインブースにて、特別企画スペシャルセッション「テクノロジー右脳左脳対談」が開催されました。

日本のデジタル社会・サイバー政策を牽引する慶應義塾大学名誉教授の國領二郎氏と、AIやアンドロイドを用いて音楽の概念を拡張し続ける音楽家の渋谷慶一郎氏が登壇。急速に進化するAI・デジタル社会における人間の本質や、これからの社会に必要な「プロトコル(規約・合意形成)」について、白熱した議論が繰り広げられました。

ツールから「社会を動かすインフラ」へ―IPAが描くAX時代の共創基盤

対談に先立ち、IPA理事長の齊藤裕氏が登壇。2026年に策定した新たな英語名称「Innovation Platform Agency, Japan」としての役割や、背景となる社会構造の変化についてプレゼンテーションが行われました。

齊藤氏は、AIが業務効率化の道具から、社会全体を動かすインフラへと変容する「AX(AI Transformation)時代」の到来を強調。IPA自身も「情報技術の普及」から「AI・デジタル時代の価値共創基盤の構築」を担う「Innovation Platform Agency」へと役割を再定義。制度やルールの可視化(Social System Design)や信頼条件の確立(AI Trust)、共有を前提にしたデータや技術基盤の接続(Digital Commons)、挑戦の育成と変革の支援(Frontier)、人材の育成と循環(Academy)の6つの要素を通じ、多様な主体をつなぐハブとしてイノベーションの社会実装を支える姿勢を示しました。

 

テクノロジーは人間の本質や表現をどう変えるのか?

続いて行われたスペシャルセッションでは、國領氏と渋谷氏による濃密な対話がスタート。

AIの進歩について國領氏は、「近代化以来、約200年ぶりの地殻変動であり、自律性や個のあり方を根本から再考させる局面だ」と指摘。従来の西欧的な「個」の概念を超え、人間を自然の一部とみなす東洋的な思想アプローチが新たな前提になり得ると語りました。

これに対し、アンドロイド・オペラなどの先進的な取り組みを行う渋谷氏は「すでにシンギュラリティは訪れている」と発言。「表現の現場においても、AIのバグや予期せぬ挙動を取り込むことで、従来の感情や枠組みを超えた未開拓の領域が生み出されている」と語り、テクノロジーとの協働によって拡張されるクリエイティビティの可能性を提示しました。

 

AI社会のプロトコルと「人間特有の欲望・衝動」

AIエージェントの普及に伴う代理権や責任の所在など、超具体的な課題に対して「新たなプロトコルの構築が急務である」と訴える國領氏。渋谷氏はグローバルな競争や安全保障の観点から、「単なる保護主義に陥るのではなく、自らの核となる技術や『0から1を生み出す表現』を明確にし、強い意思を持って国際的なルール形成に対峙していくべきだ」と主張しました。

さらに話題は「人材育成」へと展開。渋谷氏は「知識や知性をベースとした内発的な強烈な欲望や衝動を持つ人間を見極めることが重要」と述べ、突出した才能へ集中的にリソースを投入するIPAの「未踏事業」のような仕組みの重要性を強調。また、「近年はAI自体が欲望を持ち得るのかという議論もあるが、人間においてもその強い駆動力をどうAIや未知のテクノロジーと融合できるかが鍵になる」とも言及しました。國領氏も「個人のポテンシャルや初期衝動に賭けるガバナンスと、多様な出会いを生む環境整備がこれからのイノベーション基盤を作る」と同意しました。

会場からの「欲望の定義とは何か」という問いに対し、渋谷氏は「これを達成しなければ自己の存在意義はないと言える決断。しかし自己欲求と利他性は表裏一体であり、それをブリッジする強い意思と原動力」と定義。「もしAIが欲望を持つようになれば社会や表現の前提が根本から変わる」という視点を示しつつ、人間特有の行動の根底にある熱量の重要性を語りました。國領氏は「個人の衝動や欲望を否定するのではなく、いかに肯定して社会の活力やイノベーションへと転化させていくかが問われている」と応じ、質疑応答を含めて高密度な対話が展開されました。

 

【展示紹介】一人ひとりの選択が社会を形づくる「PROTOCOL ENGINE」

ブース内では、IPAが掲げるコンセプトを体感できる参加型インスタレーション「PROTOCOL ENGINE」も展開されました。

来場者が端末からテクノロジーに関するアンケートに回答すると、リアルタイムで「光の線」が立ち上がり、頭上の360°円形LEDにカラフルな図形として灯る仕組み。個人から発せられた声が集積・構造化され、会場全体へ発信されていくプロセスを通じて、「一人ひとりの選択がこれからの社会の仕組みを形づくっていく」というメッセージが視覚的に表現されていました。

AIが社会のインフラとなり、ロジックや効率化を担う時代。だからこそクリエイターやビジネスパーソンに求められるのは、フレームワークを理解した上で、自らの内なる「欲望」や「衝動」に従って意思決定を行い、未知の表現や事業に挑んでいく姿勢なのかもしれません。

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