映像2023.05.26

久々の個人的?副業的?制作

東京
映像ディレクター
秘密のチュートリアル!
野辺五月

映像の仕事に入る際、「絶対鍛えられるから」と勧められて、一時期ウェディングのエンディングロールをやっていました。
実際に、リアルタイムで進行する中、絶対遅れられない状況下で最高のものを出す仕事は大変だけれど、やりがいもあり……かつ嫌でも手が早くなる仕事でした。
慣れた頃に辞めて、それからだいぶん経ちますが、今回久々に機会があって、後輩の結婚式のプロフィール動画制作のお手伝いをすることになりました。

エンディングロールと違って、プロフィール動画は当日進行ではなく、これまでの写真や動画などを十分に集めたうえで作るものになります。
素材が限定的なものには違いありませんが、【ありもの】+未来やメッセージ部分だけ【撮影】で追加する形になるので比較的時間はあります。

少し前に友人の式まとめ編集は行っていて、そちらはストレスなくやり遂げることが出来たのですが、「イベント即編」と「内容から決める」ものの違いなど含めて、反省がてらちょっとまとめてみたいと思います。
ちなみに今回の前提として、ご祝儀代わりで予算をかけない代わり「なるべくこちらが楽になるように作らせてもらう」調整で作りました。

* * * *
【1に段どり・2に段取り】

何が大変で何が簡単か分からないのが素人。
久々ということもあり、アクシデントもあって&繁忙期と重なりなかなか大変でした。
結果、大事なのは「段取り」だという結論になりました。

段取りといわれても……?となりますが、
要するに、前提条件をしっかり押さえて「絶対変更できない部分」の認識を合わせておくことが問われました。
特に「これくらい簡単だから後で変えられる」という認識は、素人ほど抱きやすいので、徹底的に詰めておかなければならないと思います。知人友人ほど線が曖昧になりがちになるため、ちゃんとするべきだったと反省している部分もしかり。

さて、実際の工程ですが

[ラフを作る] → [合意をとる] → [制作]

と大雑把に描くと上記の段階を経ていくわけですが、
少ない時間の中で、これまで用意したフォーマットがあるわけでもないので、ざっくりベースを作り「合意」をとります。
ここで、それ以前に確認するべきことがいくつかあるわけですが
それが、実際に上映される環境や会場側の条件です。
非常に難しい話ですが、結婚式場の映像屋さんとして働いていたこともあるのでよくわかっていることに……「式場」や「プランナー」からすると、パックセット外で外注ないし素人制作をされると、当然予算が落ちます。
なるべくパックで使ってもらいたいのが本音でしょう。
もちろん相手もプロなので、嫌がらせをしてくるようなことはありませんが、その分「情報の共有」が難しくなります。というか、「いつもの~」で通じる業者相手の確認作業が多い場所ですと、そもそも映像屋さんが欲しい情報一覧を向こうが知らなかったりもします。
しかも、打ち合わせに同席できない場合は新郎新婦が伝書バトをせざるを得ないため難易度が高く、通常の仕事であれば「ディレクションをする人間」や「企画を立てる人間」が最低限出してくる情報も、こちらから積極的に取りに行かねばならないという前提があります。
大袈裟に言うほどか?と思われるかもしれませんし、有能なプランナーさんや外注の多い会社であれば「情報共有リスト」もあるかもしれませんが、今回はそういったものはなく、かつ後出しでプランナーサイドから注文がつき修正ということもありました。

先に確認すべきことは以下です
・上映環境
・フォーマット
・サイズ
・納期
・音の著作権問題(既存のアーティスト曲でも向こうのシステムに入っているものだとOKなどの場合があります)

これに加えて、制作を請け負う際に必要な素材のチェックや締切、アナログ素材をどう処理するかという問題があります。
今回は、アナログのフィルム写真は撮り込んでもらうことにしました。(ここが出来ない場合、誰が請け負うのか、サービスを紹介するのかなどの問題も出てくると思います)
そして【締切】が大事です。子供の頃からの写真一式をかき集めるのは、両親にお願いするなどの必要があって、わりと時間がかかるので、「依頼の依頼」もしましょう。
また、【共有方法】についても決めておきたいところです。
今回スムーズで助かったのはこの辺りで、早めにこういう写真が必要だという一覧を伝えて共有してもらいました。
最終の素材締切だけ決めて、かなり早い段階でGooglePhotoで共有をかけてもらったのでとても楽になりました。
これは大正解でした。(欲を言えば、事前にもう少し細かくフォルダを指定しておくべきだったというところはありますが)
これらの情報の確認は、Google スプレッドシートで行いました。

素材がそろったら、基本コンセプト決めです。
こういうのがいい、といった理想があれば見せてもらう形がいいかなと。
今回は満足のいくものを作ること&締切に間に合うことが大事で、自分の制作の仕事として受けるというより「ディレクション」だと思っていたので、テンプレートを購入して作り変えることや、他のサービスを利用することも視野にいれていました。
が、結果、話を聞けば聞くほど、今ある「雰囲気の良いもの」よりも、少しポップにしたいニュアンス……彼女・彼らしい明るさと、分かりやすさ=ストーリーを敷くべきだとなり、制作から手をつけることにしました。

詳細は言えないのですが、コンセプトは2人の「共通点」に目をつけて「旅」と「自然」にし、明るい春の芝生をイメージしたベースで動かすことにしました。

結婚式場にエンドロールで入っていたころを思い返すと、プロフィール紹介は大きくは2つあると思っていて「司会がナレーションで入れるタイプのイベントショー」的なものと、「テキストも込みのムービー」です。

最初は工数を考えると、フォント選びや修正の少ないナレーションタイプかなと思っていました。というのも、私の得意ジャンルがイベント台本でもあったから&イベント的にその場のお客様も参加できる仕組みを作ってポップに楽しめれば、その場で交流もできるし人が集まる意義が大きく出ると思ったのですが、これは司会者の力量にもよるため、確認が必要……。
というわけで、一旦検討してみたものの結局シンプルな動画のパターンに決まりました。
その後はもう、台本・絵コンテ・ラフで流れを見てもらって~という、普通の制作工程に入りますが、ここで割と大変なのが「フォント」と「文字数」問題です。
慣れていると、このくらいまでなら視認出来るな……と分かると思うのですが、相手には分かりません。実際にダミーで入れてみる必要がありました。

また、飾りとしては綺麗でも読めないフォントもあるので、文字を扱う動画ではこの辺りの勉強はマストだと思います。
※この辺りは普通の企業の担当者とのやり取りでも同じことだと思います。

幸い元々雑誌編集をしていた時期もあり、フォントとは仲良くなれるタイプだったので……事なきを得ましたが、有料・無料と混在するフォントを選び放題とはいかないので(私の場合ある程度有料フォントを買っていますが)、ここも引き受ける際には注意が必要そうです。

次に大事なのが、音楽です。
動画を引っ張るのは、ストーリーだけではありません。これまでの人生の流れ・出会ってから今・これからを「共通点」で串刺しにした際に、観る側が引っ張られるのはビジュアルと音です。
特にイベント的に盛り上がっている場合、重要なのはテンポ。
これはエンディングロールの仕事でとても感じたのですが、実は一番難易度が高いのは「オルゴール」でした。起伏が少ないというのもあり、「サビ」を作りづらいからです。
次に難しいのは「歌詞」があまりに明確で、関連性がないもの……次いで、曲の長さが長すぎるor短すぎる場合です。
最初にOKをとって、ある程度好きなタイプをチェックしていたので、そのタイプの音で探しました。その際、オーディオはフリー素材にして、著作権をクリアにしたかったので、海外サイトをメインに、ある程度オシャレで、でもテンポが可愛く、明るいもの。4分前後という条件でひたすら漁りました。
決まったらそれにあわせて素材を刻んでいきます。
制作にはアフターエフェクトを使いました。アニメーション的な工夫がしたかったこと、テキストアニメーションのみならばプレミアで十分ですが、本人たちのグリーンバックの写真ももらったので、少し動きを工夫したかったからです。
ちなみに、ここで役に立ったのがiPhone・iPadのアプリです。
切り抜きが一発で終わるので、AEの中でやるより、あるいはPhotoshopよりも楽でした。

逆に最後の最後に本当に失敗したなというのが、久々すぎて抜け落ちていたのも悪いのですが、「忌み言葉」です……。
最近は気にされない方も多いので、うっかりしていましたし、本人たちは気にしていなかったのですが、式場というかプランナーからひたすらチェックがあり、非常に手こずりました。この辺のこともあるので、ウェディングはウェディング専門でやっている方に頼んだ方がいいなという部分もあると思います。調べればわかることではあるのですが、「お作法」は時代で変わったりするので……なかなか。
他はOKだったので、後は納品となりました。
ここでも、どういう形式で渡すかは明確にさせておかないと、相手は素人さんなので、会場に持っていけません。こういう部分は初期段階で確認できていたため、最後がスムーズに済んだのは良かったなと思います。

知人だからこそ、気を遣う部分もあり……けれど実際に厳しいこともあり……
やれる・やれないだけではなく、ここまではセーフ・ここからは有料という風にある程度「無理をしない範囲」を決めておいたことは良かったと思います。
正直、今回は異例のことで、もうご祝儀代わりでもやることは無さそうだなと思いますが(自分にとっては工数がかかり過ぎてしまうので)いい経験でした。

仕事も私事も同じく「段取り」だなと身に染みた&勉強がてらこういう依頼を受ける方がいたら、気を付けてほしいなと思い今回まとめてみました。

最近では、素人や副業的に引き受けるケースは増えていると思いますが、ディレクションが立たない&素人との伝言ゲームになりがちという部分はとても事故が起きやすいところでもあります。
本来そこにこそ、お金が生じている部分もあるので、その前提を忘れないようにして動きたいなと思いました。

 

プロフィール
映像ディレクター
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランス(コピーライター/ディレクター)と化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!2022年は現場主義へ立ち返り、演出・構成をメインに活動。 「作るために作る」ではなく「伝えるために作る」が目標。早く趣味の飲み歩きができるようになって欲しいと祈る日々。

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