映像2022.05.27

インタビュー動画の注意点

東京某所
映像編集ディレクター
秘密のチュートリアル!
野辺五月

「インタビュー動画」というとどんな印象を受けますか?
色々なパターンがあると思います。
企業の採用担当やプロジェクトの促進役、ショップのオーナー、スポーツ選手やアーティスト……【インタビュー】される人は沢山います。
目的もPRからサクセスストーリーそれ自体のコンテンツまでさまざまなタイプがあると思うのですが、インタビューを扱う動画は「リアル」と「リアル風」との闘いだなぁと毎度思います。
今回はそんなインタビュー動画の準備のお話。

インタビュー動画は、引き受ける段階で被写体との相性がある程度あるなぁと思うことが多いです。インタビューを撮影するのがうまい人、コーディネイターとして上手に場所や状況をセッティングする人、質問の仕方や内容に唸らされる人……インタビュー動画こそ、作り手の良し悪しが隠しきれないものはないと思っています。
私も何本か、撮影コーディネイターや質問者、構成台本で関わっていますが、自分自身のインタビューの勉強の根幹には「ドキュメンタリーの作り方」があります。
前に一度本も紹介したと思うのですが、それよりも直接的に私に教えてくれた人は二人いて、HさんとWさん……どちらもドキュメンタリー監督として、片や映画、片や番組制作で今も活躍しています。
つい最近、私もインタビューを映像の中で扱ったので、
そのときのことも思い出しながら、2人から教わった【インタビュー動画について】共通の極意をちょっとだけ提供できればと思います。

まず大前提――
インタビューを扱う目的は、「現実味」「説得力」であることが多いように思います。
お店の紹介でも、店先の風景や制作現場だけでなく、「気持ち」にフォーカスをあてて質問した方が伝わりやすい部分はやっぱりあります。
ただ、「映像」となった段階で、やっぱり「作られて」いるのです。

とはいえ、作りこみ過ぎてはかえって嘘っぽくなります。
また緊張しすぎていても、見ている側に伝わるものは大きく損なわれます。
例えばお化粧のナチュラルメイクがナチュラル(すっぴん)ではないように、市販の天然水が完全に組み立てではないように(パッケージには入っている&輸送含めてはかかっているように)適度に「コンテンツ」として、加工して(ととのえて)いく必要はあります。

……じゃ、どうすればいい?
どんなことに気を付ければいいの?

第一に考えなければならないことは「被写体の立場」です。
上記にあげたように、インタビューされる側はさまざま。
ここで気にするべきはただ一点……「カメラ慣れしているか」です。

例えばスポーツ選手や、スター、大手企業の経営者も……カメラに慣れている場合が多いと思います。これは、「カメラ前で自然にふるまえる」ということで、撮影する側の障壁はだいぶ下がります。
撮影で一番難しいのは、有名人相手にした時だと間違われることが多いのですが、素人をちゃんととることの方がよっぽど難しいとカメラマンの方からよく言われます。
緊張して変な顔になったり、何かを意識して真似たり……「自然」にならないからです。
じゃあ、インタビュー相手が素人だったらどうするか。

この時重要なのは、リハーサル/事前準備です。

インタビューの撮影者として、素人を困らせない為工夫が必要なシーン……それは「照明」です。マイクや機材が大きく派手であることも、彼らを恐縮させます。
が、やっぱり一番緊張するのは、照明器具なのです。
そこで、可能なかぎり、大きな照明をたかないで済む場所にし、あるいは、インタビューの場所自体も、(場所に意味が関わるため選べない場合も勿論ありますが)なるべく本人の慣れている場所や好きなところでやるといい撮影ができます。

Macrovector – jp.freepik.com によって作成された hand ベクトル

 

次にインタビュー動画は、「聞き手」の裁量がモノをいうこともあります。
台本があっての質問に徹するプロのインタビュアーがいれば、質問する現場はお任せしてしまっていいですが、その際も用意は必要です。

1つの質問からより濃い答え/リアルな答えを導くためには、裏側で沢山その質問者に対する知識をもっておかないとなりません。インタビューを決めた&頼んだ以上、相手への興味と理解は最低限のマナーでもあると思います。
また「ここを掘り下げると全体のテーマとかみ合うな」というポイントも、本筋から離れたところまで情報をもっていれば自然にみえてきます。
ヒーローインタビュー一つとっても、
「今日は勝ちましたね?」
「いい試合でした。自分としてはどこがうまくいく理由だったと思いますか?」等……
状況を知らずに聞くのと、ルールは勿論本人の拘りや、これまでの戦績、今鍛えている方法などを知ってたずねるのでは、解像度も、相手のノリもガラッと変わります。

もちろん、PR動画の中で、「コダワリのポイントだけコンパクトにインタビュー形式で取りたい」など……撮影の意図もあると思いますが、相手を知って、興味を持った状況で質問する場合と、「これを言って下さい」とお願いして言わせる場合では大分「撮れ高」に響きます。
ただし、尺が決まっている中で、必要なコメントは撮影日数との相談で行ってもらわざるを得ない場合もあります。そういうとき「×××のようなコメントが欲しいのですが、お願いします」は最後の手段だと思います。

聞き手/台本用意の場合は調査が基本ですが、大枠はドキュメンタリーと同じ姿勢でいくとよさそうです。

・イエス・ノーで答えられる質問をなるべくしないこと
・「話す」のではなく、「聞く」ことに徹すること
・話に詰まったら違う話題に切り替えること
・「誘導」は最後の手段にすること

以上はとても大事なポイントです。
すべての素材を使おうとする=すべて質問と応答だけで終えるのではなく、なるべくゆっくり時間を取って、相手からの話を引き出す流れがよいです。
私の場合は、何よりリハーサル/打ち合わせを念入りにすることにしています。
この時可能なら、カメラを回す(チェックのため回していいか出来れば聞いて)とよいです。なぜならリハーサルの方がリラックスしているので、いい絵がとれることがあるからです。
また質問に新鮮味がなくなると、言葉をはしょってしゃべられたり、此方が分かっている前提で質問含めて情報が抜けてしまうことがあります。
これらのミスをなくすために、本筋になるような質問とは関係のない話をします。
人間なので、合う合わないはありますが、こちらが興味を持ち、真摯に接することでインタビューは成功します。それでも、リハーサルで相性があまりよろしくないと感じた場合はどうすればいいか?
色々アドバイスをくれる上記友人たちに聞いたところ、一番いいのはプロのインタビュアーを頼み、自分は制作ディレクターに回ることです。男女や年齢差など、ある特定の条件でないと引き出せない回答や、コミュニケーションがあることもあります。
相手を変えさせることではできません。
その時はきっぱりと諦めて、断るか、手をかえるか――シビアだけれど、此処を見極めた方がいい、その後にもよい影響が出るという話を聞きました。
ちなみに、私の場合、案件によってはディレクターやプロデューサーに専念することも少なくありません。ただその際は挨拶と調査はしっかり行って、なるべく現場に行くようにしています。
また、予算以上に、制作期間・時間差し迫っている場合は構成を作る都合上自分でインタビューします。そういったときの作り方についてはあまりにニッチなので、此処では書きませんが、基本は同じです。
用意・準備・調査……撮影しだしてから追加~というのは、相手がいる仕事では悪手です。しっかりしていれば、省けることもあるので、スタート前をじっくりとって素早く、ちゃんと、お互い納得するインタビューができるといいですね。
少しでも参考になれば幸いです。

写真は、Pressfoto – jp.freepik.com によって作成された business 写真  

プロフィール
映像編集ディレクター
野辺五月
学生時代、研究の片手間、ひょんなことからシナリオライター(ゴースト)へ。 HP告知・雑誌掲載時の対応・外注管理などの制作進行?!も兼ね、ほそぼそと仕事をするうちに、潰れる現場。舞う仕事。消える責任者…… 諸々あって、気づけば、編プロ・広告会社・IT関連などを渡り歩くフリーランス(コピーライター/ディレクター)と化す。 2015年結婚式場の仕事をきっかけに、映像畑へ。プレミア・AE使い。基本はいつでもシナリオ構成!2022年は現場主義へ立ち返り、演出・構成をメインに活動。 「作るために作る」ではなく「伝えるために作る」が目標。早く趣味の飲み歩きができるようになって欲しいと祈る日々。

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