ミッション22「72時間首都圏世界一周の旅」

ミッション22
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
Akira Kadota
門田 陽

<まずは>

コロナ時代と呼ばれる日がいつか来るのでしょう。この事態に陥って早半年が過ぎました。ほぼ全ての日本人いや世界中のみんなが物理的に他の国へ行くことができません。外国どころか国内旅行も難しいです。せっかくのGOTOキャンペーンも東京は外されて里帰りするのにも勇気がいります。ただどこか遠くへ行きたいという人間の欲求がなくなったわけではないので(テレビやネットでは盛んに旅番組や世界遺産等の再放送が流れていますもんね)何とか今できる範囲内でまるで世界一周みたいな旅をわずか2泊3日それも東京近郊だけでやってみます。

<ルール>

今回、いくつかの禁止事項があります。中にはコロナ渦ならではのものもありますが、基本は楽しくアイデアで突破するのがこの探検隊のモットーなのでそこだけは守って元気にやろうと思います。
※注意①:東武ワールドスクウェアに行ってしまうと企画が一発で終わるので、施設や公園などに行く場合は入場料が大人1000円以下であること。
※注意②:移動は公共交通機関のみ。ただし通勤通学などの密な時間帯は極力避けてなるべく土日休日を利用すること。また夜間の移動は禁止。
※注意③:フランス料理、中華料理、メキシコ料理、タイ料理などのお店を巡るという安易な企画にしないこと。

<下準備>

さて、どことどこに行けば世界一周になるのでしょうか。物の本によれば「太平洋と大西洋を同一方向にこえてスタート地点に戻ること」が世界一周の定義だそうですがこれだと一般のイメージとは違う地球一周な感じです。 そこで大手旅行代理店を三社ほど巡ったのですがこの時期、世界一周どころか海外旅行のパンフレットもほとんど見当たらない状態。ま、そりゃそうでしょうね、渡航禁止期間ですもん。それで世界一周の豪華な旅で有名なクルーズ船「飛鳥Ⅱ」の2021年行程表を調べたところ107日間で30カ国をまわるスケジュールが組まれていました。しかし細かく見るといずれも北半球の国ばかり。これではやはり世界一周に思えません。少なくともユーラシア、北アメリカ、南アメリカ、オーストラリア、アフリカの五大陸はまわりたい。アジアとヨーロッパは複数の国、さらにロシアは外せません。と、この条件に当てはまる所を本職のほうで30年以上ロケハン・ロケを繰り返すなかで覚えている場所にプラス仲良しのプロデューサーやコーディネーターからの情報を収集して候補地を25箇所選び(※写真①)、上記の注意事項や企画意図にそぐわない場所を外し、さらに何とか2泊3日に嵌る経路を作成。結果、次の13の国と地域を選びました。

写真①

50音順でアマゾン川(ブラジル)、アメリカ、イギリス、イタリア、インド、オーストラリア、韓国、サハラ砂漠(アフリカ)、スペイン、中国、ドイツ、トルコ、ロシアです(※写真②)。この13カ国を3日間で巡るのです。

写真②

一応行程表はできました(※写真③)。ちょっとムチャありそうですが、いざいざ出発です!

写真③

<初日>

体力のあるうちにと、初日は全13カ国(※アフリカと南米はどちらも1カ国ではなく広い地域ですがここでは1カ国として表示します)のうちの過半数になる7カ国をまわります。3日間とも基点となる出発地は日本(東京駅)です。ここから今日はまずロシアへ向かいそこからイギリス→韓国→トルコ→ドイツ→イタリア→インドを巡って日本に戻ります。

〇1カ国目ロシア(千代田区神田駿河台:東京復活大聖堂教会、通称ニコライ堂※写真④⑤⑥)

写真④

写真⑤

写真⑥

僕は実際のロシアには行ったことはありませんが、ここニコライ堂を見るのも初めてでした。御茶ノ水の駅のそばにこんな異国情緒たっぷりのものがあるとは知りませんでした。 本来は中も拝観できるそうですが訪ねたときは新型コロナの影響で入れませんでした(※写真⑦)。外からだけでも十分ロシアの大きさがわかる立派な建物でいきなりド肝を抜かれました。

写真⑦

〇2カ国目イギリス(台東区池之端:旧岩﨑邸庭園※写真⑧⑨⑩)

写真⑧

写真⑨

写真⑩

千代田線の湯島駅から歩いてすぐ(ほんとに3分くらい)にある三菱財閥岩﨑家の本邸だった建物と庭園を公園として整備、一般開放したものです。明治29年にイギリスの建築家ジョサイア・コンドルによって設計されたここも初めて行きましたが、情けない表現力で言うとまさに都会のオアシス(わっ、この言葉も初めて使った)。ずーっと佇んでいられるので入館料400円(大人)は安いと思います。

〇3カ国目韓国(JR新大久保駅周辺※写真⑪⑫⑬)

写真⑪

写真⑫

写真⑬

お隣の国ですから、実際リアルにもそしてこの新大久保にも何度も来たことがありますが、いつ来てもここの人出には驚きます。今回コロナ渦においてもここだけは以前と変わらない活気を感じました。駅前のメインストリートはすっかり韓国色に染められていますが、途中の脇道に入るといきなりイスラムの人が沢山いたりして(※写真⑭)どこでもドア感が味わえます。

写真⑭

〇4カ国目トルコ(渋谷区大山町:東京ジャーミィ※写真⑮⑯⑰)

写真⑮

写真⑯

写真⑰

千代田線代々木上原駅横の交番(ここで場所を聞きました)から坂を200メートルほど上るとそこに唐突に現れる異国文化。歩いている人の姿もすっかりトルコです(※写真⑱)。またもや乏しい語彙力で言えばまさにエキゾチック。建物の中は見学自由で澄んだ空気が流れ心がスッと落ち着きます。売店も充実していて女性が頭に巻くスカーフもありました(※写真⑲)。

写真⑱

写真⑲

〇5カ国目ドイツ(港区高輪4丁目:高輪プリンセスガルデン※写真⑳㉑㉒)

写真⑳

写真㉑

写真㉒

JR品川駅高輪口からほど近い所にあるこの場所は撮影の仕事で何度か来たことがありますが、そのたびに場違いな自分の身なりに劣等感を覚えます。聞くところによればドイツのローデンブルグをモデルにして作られた街並みだそうです。そのせいばかりではないでしょうが、駐車場に止められている車が4台に1台はベンツです。軽自動車は見当たりません。

〇6カ国目イタリア(港区東新橋:通称汐留イタリア街※写真㉓㉔㉕)

写真㉓

写真㉔

写真㉕

この場所は僕の勤務先から徒歩5分圏内にあって何度も来たことあるので多少詳しく知っていますが、この10年でイタリアっぽさは半分もなくなったと思います。何が原因なのでしょうか。やたら空き物件と工事中ばかりでコロナのせいとは違う虚無感漂う街になっています。そのちょっとニヒルな雰囲気はある意味イタリアっぽいですが、きっと当初の狙いはそういうことではなかったはずです。10年後がこわいです。

〇7カ国目インド(中央区築地:築地本願寺※写真㉖㉗㉘)

写真㉖

写真㉗

写真㉘

 

日比谷線築地駅から直結の築地本願寺の凛としたその姿は「美しい」の一言です。以前はここを訪れると必ず漂っていた魚のにおいも市場が移ってからはしなくなり敷地内にはシャレシャレのカフェもあってほんとにどこの国に迷いこんだのかわからなくなります。ここで一服して初日は終了。 総移動距離はリアルに飛行機で行けば36,715km、今日の場合はなんと34kmとコンパクトながら乗り換えと坂道が多くてけっこうな疲労がたまりました。ゆっくり寝て明日に備えます。

<2日目>

昨日の7カ国でだいぶバテましたが2日目は今回行く中で最も遠方地からのスタートです。 その場所は以前ロケバスで行ったことがありますが、そのときはアクアラインを通ってのショートカットにもかかわらず片道1時間半でした。各駅停車のJRの場合は行く前から気も足も重いです。2日目の行程はアフリカ・サハラ砂漠→中国→スペインの3カ国です。

〇8カ国目アフリカ・サハラ砂漠(千葉県御宿町:月の沙漠記念公園※写真㉙㉚㉛)

写真㉙

写真㉚

写真㉛

東京駅から電車を乗り継ぎ乗り継ぎ2時間2分、ようやく着いた炎天下の御宿月の沙漠は本場アフリカに行った(過去3度の経験あり)ときよりも断然暑く感じました。御宿の駅からこの公園まで徒歩12、3分なのですが途中に全く日陰がなく街全体が蒸し風呂状態で自販機のお茶がぬるいまま出てきてクラクラしました。体温よりも気温が高い状態。こんなときに検温したら37.5度を超えたりしないものでしょうか。ところで名曲「月の沙漠」の沙漠はアフリカのサハラ砂漠のことだと勝手に思っていたのですが、ほんとはこの御宿の砂浜が舞台なのだとか。だから「砂漠」ではなく「沙漠」と書くそうですが、らくだに乗った王子様とお姫様の歌はどう考えてもサハラ砂漠のイメージだと思います。

〇九カ国目中国(横浜中華街※写真㉜㉝㉞)

写真㉜

写真㉝

写真㉞

はい、ここは言わずと知れた横浜中華街ですが、やはり新型コロナの影響でしょう。街全体が静かに思えました。ふだんは鬱陶しい団体観光客の姿がないのは寂しいと感じるのはほんとに僕たち人間の気持ちって勝手なんですね。人が少ないと歩きやすくて疲れた足にはよかったです。

〇10カ国目スペイン(渋谷区渋谷スペイン坂※写真㉟㊱㊲)

写真㉟

写真㊱

写真㊲

今回の世界一周の中で最低だったのはここスペイン。もちろんここが悪いわけではなく、選んだ僕のせいでありますが。完全なる名前負け。どこにもスペインらしさは感じられません。あ!この気分は日本三大がっかり名所のひとつ長崎のオランダ坂に行ったときのあの感じ!!それが味わえたのが唯一の収穫だなんて。
二日目の総移動距離はリアルに飛行機だと30,670kmかかるところ今回の旅では232km。おっと昨日の約7倍。長い移動は足腰が辛いです。

 

<最終日>

たった2日歩いただけですが、今年の暑さは堪えます。足は痺れがとれず心は折れかかっています。が、今日も予定では相当な距離を移動してさらにズンズン歩かなければいけないようです。その行程はオーストラリア→アメリカ→アマゾン川の3カ国です。

〇11カ国目オーストラリア(日野市多摩動物公園※写真㊳㊴㊵)

写真㊳

写真㊴

写真㊵

オーストラリアっぽい所はどこか?ずいぶん悩みましたが色んなランキングの資料で「オーストラリアといえば?」の第1位は断トツでコアラとカンガルー。それでは会いにいくしかないでしょう。そのどちらもがいるのが多摩動物公園です。なかなか不便な場所にありましたが、行ってよかった。暑さはともかく何も気にせずボーっとゴロゴロするだけで(※写真㊶㊷)、「キャ~かわいい」と言われる姿にただただ癒されました。入場料600円(大人)の元は取れます。

写真㊶

写真㊷

〇12カ国目アメリカ(福生市横田米軍基地前※写真㊸㊹㊺)

写真㊸

写真㊹

写真㊺

実際のオーストラリア~アメリカの移動であれば飛行機でひとっ飛びですが、多摩動物園から福生への移動はややこしかったです。おかげで生まれて初めて多摩都市モノレール線(※写真㊻)という街を見下ろしながら走る乗り物に乗れて心の中でキャッキャしました。楽しかったです。横田基地前のベースサイドストリートはまさにザ・アメリカです。アメリカのどこ?と問われると特定できないし、いつの時代のアメリカ?と聞かれると答えは難しいですが、それでもここに来れば十二分にアメリカを堪能できます。本場で食べるブルーシールアイスクリームは最高でした(※写真㊼)。

写真㊻

写真㊼

〇13カ国目アマゾン川(江東区夢の島熱帯植物館※写真㊽㊾㊿)

写真㊽

写真㊾

写真㊿

いよいよ今回の旅の最後。目的地は南米大陸のアマゾンです。アマゾンといえば世界最大の熱帯雨林。それならもうあそこしかないでしょう。有楽町線新木場駅から歩いて歩いて15分。入口に着いたときにはまるで雨に打たれたような汗ビショビショのシャツとジーンズ。中は涼しいかと思いきや熱帯雨林の環境を再現してありムンムンしました。想像していたものよりはだいぶ小さかったけど所々にアマゾンっぽさはあったと思います。入館料は大人250円。館を出てふと横にある芝生公園を眺めたら、案外空が気持ちよくて奥のビルがなければその景色はアマゾンやアフリカっぽくも見えるなぁ(※写真(51))、と思いながらこの世界一周の旅の帰途につきました。
最終日の総移動距離はリアルに飛行機だと27,230kmのところを今回は101kmでした。

写真(51)

<ミッションを終えて>

3日間、リアルに飛行機で移動すれば合計94,615km、地球2周以上の距離。マイルがメチャ貯まったはずです。もちろん費用は莫大でしょうが。因みに今回の交通費はぜんぶで8,880円でした。実行したのがこの特別な夏の中でも特に暑かった3日間でしたので、気候のいいときなら快適な旅だったと思います。またもう少し範囲を広げられたらもっといい場所もあったはずです。少なくともスペイン坂はちがったな、と反省もありますがきっとリアルなスペインに行く日がまた来ることを祈りつつ次のミッションに取り掛かろうと思います。

プロフィール
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター / コピーライター
門田 陽
電通第5CRプランニング局 クリエーティブ・ディレクター/コピーライター 1963年福岡市生まれ。 福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。 TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。 趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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