WEB・モバイル2019.01.30

感性を刺激し、人生をアップデート 新たなメディアを切り拓く

東京
株式会社スマートメディア 代表取締役社長 成井 五久実 氏
スマートメディアの成井五久実(なるい いくみ)社長は28歳で株式会社「JION(ジオン)」を設立。1年後に3億円で株式譲渡を果たし、当時の女性起業家として、最年少・最短・最高額という快挙を成し遂げました。さらに、2018年、8媒体のウェブメディアを運営するスマートメディアの社長に就任し、その手腕に注目が集まっています。ウェブメディアが乱立する時代に、どのような戦略を描いているのでしょうか? ご自身の経歴や目標と共に、語ってもらいました。

メディアの新たな役割は感性を刺激すること

スマートメディアの事業について教えて下さい。

一言で言うと、ウェブメディアの運営会社をやっています。私が立ち上げた「JION(ジオン)」の他、「OPENERS(オウプナーズ)」「笑うメディア クレイジー」など全8媒体を運営しています。月間の流入で言うと1億5千万PVにのぼります。弊社が配信するコンテンツは、検索やSNSなど、どこかしかで目に触れる機会があると思います。

この他にも、企業がオウンドメディアを作る際のメディア代行事業や、「Clipkit(クリップキット)」というメディアを運営するシステムのプラットホームもやっています。

社長に就任して、どのような思いでしょうか?

これまでの「JION」という枠組みを超えて、色々な媒体を作っていたメンバーと力を合わせることで、挑戦できることが大幅に増えました。時代と共にメディアも改革の時を迫られていると思います。変化に遅れを取らないように、自社で積極的にやっていくつもりです。

会社が目指しているビジョンについて教えて下さい。

「Update Media, Update Human.(アップデート・メディア、アップデート・ヒューマン)」というビジョンを掲げています。20世紀のメディアの役割は正しい情報を正しく伝えることだと思います。一方で、これからの新しいメディアの役割は、人々の感性を刺激することではないかと私は思っています。

「メディアが感性を刺激する」とは、どういうことですか?

例えば、癒されたいと思ったら、「スリランカでアユルベーダを体験する」という特集記事を読むことで、新しい癒しを発見し、感性がアップデートされると思うんです。AIの進歩で、ただあったことを正しく伝える記事は、ロボットでも書けるようになってきています。じゃあ、人間の私たちは、どんな記事を提供していけばいいのか? それは、人間らしさ、感性を刺激する記事だと思います。

新たな発想ですね。

何をやるにせよ、自分の行動の意思決定をするのに、まずはネットで検索をするという時代になってきています。メディアをアップデートすることで、感性を刺激し、人生もアップデートするお手伝いをしたいと考えています。

20代での起業を目標に、逆算して行動

20代で起業すると決めていたそうですが、いつから起業を考えていたのですか?

父親が起業家だったので、元々起業に興味がありました。福島から上京して東京女子大に入学して、1年目は無茶苦茶遊んでいたんですよ。サークルを何個も掛け持ちして、そこでお酒も覚えて、絵に描いたような遊んでばかりの大学生生活を送っていました。ただ、このまま遊んでいたらすぐに大学生活が終わっちゃうなとも思い、2年生の時に東京大学の起業サークルに入り、自分も起業したいと思うようになりました。

東大京大出身者が半数以上を占める株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に新卒で入社しました。

DeNA創業者の南場智子さんに憧れて入社しました。女性でありながら、時価総額の高い企業を作り活躍している姿に感銘を受けました。また、入社時には絶対に起業しようと決めていたので、起業のために必要なスキルを得ようと思っていました。

入社2年目で、私は大手企業のタイアップ広告を1億円で受注してきました。入社2年目での1億円の受注に、会社中がざわつきました。ところが、私が試算を間違っていて、会社に2000万円の補てんをさせてしまったのです。

その後、トレンダーズ株式会社に転職されました。

20代のうちに起業家になるという目標から逆算した時に、必要なスキルというのは、営業力と新規事業を開発する能力だと思っていました。しかし、DeNAで大失敗をし、新規事業を任されるチャンスが遠のいてしましました。社内には優秀な同期がたくさんいて、このまま信頼回復を待つと、私の20代は終わってしまうと思いました。

そこで、ベンチャー企業のトレンダーズに転職しました。営業でしっかりと成績を残したら新規事業をやらせてもらえるということになりました。とにかく営業を極めることに集中しました。

そして営業で結果を残し、新規事業を任された。

売り上げベースでいくと一人で年間1億円はコンスタントに取れるようになりました。それで、新規事業を任され、「Anny(アニー)」というギフトメディアを立ち上げました。住所を知らなくてもSNSでギフトを送れるサービスです。

20代で成し遂げた念願の起業

それからトレンダーズを退社し、20代で念願の起業を成し遂げました。

トレンダーズを退社して、ウェブメディア「JION」を立ち上げ、起業しました。「JION」は女性が伝える大人の男性のウェブマガジンというコンセプトで、女性目線で男性にデートやライフスタイルの情報を届けるメディアでした。当時、女性向けのキュレーションメディアは多くありましたが、男性向けのメディアに圧倒的な覇者がいなかった。そこに目を付けました。

持ち前の営業力で、パナソニックやトヨタ自動車など大手企業から広告を取ってくることに成功し、初年度から軌道に乗せました。

しかし、予想もしない展開で、倒産危機に陥ります。

情報の信ぴょう性などが問題となって、キュレーションメディアの閉鎖が相次ぎました。「JION」も広告がストップし、倒産危機に陥りました。何とかして会社を存続したかった私は、M&Aの道を選びました。「JION」は3億円で株式譲渡され、株式会社ベクトルの子会社となり、私は引き続き「JION」の経営に携わることができました。

メディアの強みを生かした新たな戦略 ダイレクト・トゥ・コンシューマー

ジオンの親会社が統合によって株式会社スマートメディアとなり、その社長に就任しました。 スマートメディアの経営者として、ウェブメディア業界で、どのような勝算を描いていますか?

ウェブメディアは世の中に見切れないほどあります。キュレーションメディアの閉鎖が相次いだ時には、情報の正しさや信ぴょう性が注目されましたが、時代はさらに動いています。ただ質の良い情報を提供するだけでは、足りないと思っています。

これからのウェブメディアに必要なものとは?

これからはメディアをただ運営するだけではなく、“別のもの”を掛け合わせた事業が重要だと考えます。今までは企業から広告料をもらうという発想で運営していたんですが、これからは、メディアを持っている強みを生かして、「ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)」に力を入れたいと思っています。

例えば弊社の「JION」では、200万人もの男性ユーザーの登録があります。メンズ向けの商品を作って、自分たちのユーザーに売ることもできる訳です。

具体的にはどのような事業を考えていますか?

来年から、スキンケア事業とジュエリー事業に参入する予定です。 また、「eスポーツ(esports)」のメディアの運営を始めました。弊社のメディアという特性を生かして、成長産業に入っていくという発想もありかなと思っています。

次の誰かの“ストーリー”になるような生き方を

成井社長は、どうしてウェブメディア業界に携わり続けているのでしょうか?

大学生の時の起業サークルで学生が夢を見つけるフリーペーパーに携わっていました。元々メディアが好きだったのだと思います。

それに、私個人としては、コンテンツの受信者よりも発信者という立場のほうが面白いなと思っています。これだけ情報がいっぱいある中で、自分たちが発信したものが、人々の人生の幸福度を上げたり、ライフスタイルの変動をもたらしたりしたら、すごく楽しいなと思っています。

常に時代の先手を読んでいる印象です。どうしたら、そんなに先を読めるのでしょうか?

私が全部考えている訳ではなくて、ボードメンバー(取締役)に多種多様なメンバーを置いています。弊社は取締役が4人いるんですけど、エンジニアの気持ちを知っている人、元プロゲーマーなど、強みは様々です。価値観が異なるボードメンバーと一緒に考えることで、新たな発想が生まれるのだと思います。

そんなボードメンバーの中でも、ご自身の強みは何だと思われますか?

私自身は、決めたことをやり切るコミット力が強みだと思います。

20代で起業も有言実行されました。どうしてそんなにコミット力があるんでしょうか?

個人的な思いですが、私の挑戦が次の誰かの“ストーリー”になるような生き方がしたいと思っています。

現在はスマートメディアをIPO(新規に株式を上場して公開)するという目標があります。現時点ではスキルが足りず、正直難しいとも感じる面もあります。でも、女性でイグジット、M&A、IPOを全て経験した人って、たぶんあまりいないと思うんですよ。だからこそ、やりがいがあるんです。

自分が目標にコミットして達成することで、「できると思ったら、できちゃった!」というメッセージを発信する。そして、次の人たちのキャリアの選択肢を増やすことができればいいなと思っています。

取材日:2018年12月17日 ライター:すずき くみ

株式会社スマートメディア

  • 代表者名:代表取締役社長 成井 五久実
  • 設立年月:2018年7月
  • 資本金:510万円
  • 事業内容:テクノロジーを活用したメディア事業
  • 所在地:〒107-0062 東京都港区南青山2-13-10 ユニマットアネックスビル3F
  • 電話:03-6450-5477
  • URL:http://sma-media.com/

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