WEB・モバイル2018.09.19

北海道のIT分野はチャンスの宝庫!

札幌
株式会社エミシ 代表取締役社長 豊島 剛 氏
北海道札幌市と東京都渋谷区に拠点を持ち、Webサイトの制作・運用、広告運用などのWebコンサルティングを柱とする株式会社エミシ。代表の豊島剛(とよしま たけし)さんはWebの知識ゼロ、29歳でIT業界に飛び込込んだそうです。初めてITに触れてから11年。起業当時の失敗談や会社の成長、北海道のIT業界の未来につながる新事業の構想などについてお話を伺いました。

Webサイトの制作から運用、広告を駆使した集客までワンストップで行うデジタルマーケティング

御社の事業内容を教えてください

Webサイトの制作や運用、Web広告も含めたコンサルティング、ECサイトやSNSの運用代行などを行っています。一言で言うと「デジタルマーケティング」ですね。元々はWebマーケティングと呼ばれていた分野ですが、現在ではWebサイトだけではなくモバイルやSNSなど要素が広がってWebだけで完結するものではなくなり、「デジタルマーケティング」という呼ばれ方が浸透してきました。 その中でも弊社はWebサイトの運用、リスティング広告やターゲティング広告などのWeb広告での集客などに力を入れています。札幌にはWeb制作会社はたくさんありますが、広告を含めた運用までワンストップで行って高い成果を出している会社はまだまだ少数だと思います。Web広告では、昨年と一昨年の2年連続でYahoo!北海道エリア新規広告売上部門で1位を獲得しました。ECサイトの運営代行では、月額予算内で一定項目の運営代行をするものと、運営会社と協業の形で利益はもちろんコストも折半して一緒に運営するものがあります。

コストまで折半という形は初めて聞きました。リスクもあるのではないでしょうか

コストの方が大きければ弊社も赤字になるのですからもちろんリスクはあります。ですから、パートナーとなる企業や扱っている商材に対しての見定めがとても重要になります。弊社はサイトへの商品登録やイベント告知、広告などの部分を担当しますが、商品そのものや価格設定に対しても進言させてもらうことがあります。サイト運営のスピード感やビジョンなども共有できていないとうまく機能しませんが、ぴたっとはまればお互いにメリットも大きい、運営代行の最終系だと思います。

GoogleもYahoo!も知らずに飛び込んだIT業界

これまでのキャリアを教えてください

札幌の高校を卒業した後はバーテンダーになりました。20歳の時に営業職に転職、29歳で札幌のIT企業の営業職に転職しました。SEOやリスティング広告などを扱う会社でしたが、その時点ではGoogleも知りませんでしたし、yahoo!はヤホーと読んでいました。まさに知識ゼロの状態で29歳にして初めてIT業界に入ったんです。その後、東京支社立ち上げのために東京に転勤したのですが、3年ほどで退職し、そのまま東京で現在の会社を立ち上げました。

起業のきっかけは何かあったのでしょうか?

起業をしようと思っていたわけではないんです。組織が徐々に大きくなるにつれて、サラリーマンの難しさにぶつかってしまいまして……。仮に別の会社に転職してもまた同じ感情になると思い、自分でやるしかないと決めて、スパッと辞めさせていただき、独立しました。

スタートは東京なのですか?

そうですね、その時点では東京で働いていたので、東京での人脈しかなかったですし、やはりITビジネスは東京の方が案件が多いですから。ただ、すぐに札幌に戻ってくるつもりでした。

札幌に戻ろうと考えていたのはやはり札幌出身だからですか?

もちろんそれもあります。それに現実問題としてやはり東京と札幌を比較すると、まだまだ札幌の方が地代も人件費も安いです。東京は案件も多いですが、その分競合も多く競争も激しいので、札幌の方が高い影響力を持てると思いました。案件受注後の業務自体は顧客と対面する必要もないですし、東京でなければいけないことはありません。起業の半年後には札幌に事務所を構え、本社登記も札幌へ移し、東京事務所は私の東京での営業と情報収集の拠点という形になりました。
最初は全体の売り上げの9割が東京で受注した仕事でしたが、北海道の仕事も増やしていきたいと力を入れ、昨年には増収しながら北海道の売上比率を7割までに伸ばすことができました。

豊島社長は営業畑ご出身なのですね。営業出身ならではの視点や強みなどはありますか?

営業出身で感じる一番の強みは、エンジニアを純粋にリスペクトできることです。これに尽きると思います。お互いのリスペクトは大切ですよね。もちろん日々勉強をして作業の手順や流れ、必要な時間など技術について把握をするようにはしていますが、自分で手を動かして作業をすることはありません。自分が技術者だと、営業や提案の際に、「受注したら面倒だな」とか「やったことないから、ちょっと無理かな」なんて考えてしまい、営業の妨げになってしまいますよね。私は作業が出来ないので、「お任せください!」で受注します。それからどうやるか考えます。それが、社員やパートナー企業のスキルアップにつながると考えています。もちろん、いざとなったら相談できるように各領域のスペシャリストとは事前に繋がっておきますけど。

信頼しているからこそコミュニケーションは大切。設立当時には苦い経験も

印象に残っている仕事はありますか?

強く印象に残っているのはやはり失敗の経験です。札幌に本社を移した直後の話なのですが、その時は札幌に社員を一人残して、私はまだ東京での営業活動をメインに行っていて、札幌には月に1~2回程度しか顔を出していませんでした。Webサイト制作で立ち上げ時にしてはわりと大きな仕事を受注していたのですが、制作や進捗確認などを含めて全て彼に任せっきりにしてしまっていたんです。「問題ない?」「順調順調!」くらいのやり取りはしていたと思うのですが、ある時気づくと彼が連日徹夜をしている。そこではじめて状況を具体的に確認すると、すでに大炎上状態で。彼も一人でなんとか収集させようと頑張っていたのですが、すでに収集は難しく、最終的にプロジェクトは白紙になってしまいました。Webサイトも完成目前まで仕上がっていたのですがボツになり、前金としてもらっていた分も返金してもちろん報酬もゼロ。何ヶ月もそれにかかりきりになっていたので他の案件の収入もありません。あの時はつらかったですね。

それは大変な経験ですね。それを教訓にその後は社長がしっかり進捗管理をされるようになったのでしょうか?

確かに東京と札幌で離れているのは良くないのかなとは思ったのですが、逐一見ると言っても限界がありますし、永遠に監視しているわけにはいかない。監視はあまり意味がないと思っています。
それよりも何でも言い合える関係性の方が大切ですよね。よく使われる言葉で表すと「風通しの良い人間関係」というやつでしょうか。あの時も、もっと早いタイミングで彼が相談できるような環境を作っておくべきでした。

社内コミュニケーションの問題ということですね。関係性を作るための取り組みなど何か行っていることはあるのでしょうか?

月に1~2回程度〆会として食事会をしたり、福利厚生の一環として希望者で一緒にジムに行ったりなどはありますが、制度として特別なことをしているつもりはありません。
私自身はうるさい上司にならないように気を付けています。顧客に対して損害を与えるようなこと以外は基本的に自由です。縛ったり無理やり従わせたりしても、モチベーションは上がりませんし身に付きませんから。

北海道の強みとITを融合させた事業展開を検討中。北海道の未来を見据えた取り組みも

課題とされていることはありますか?

メイン事業であるWebサイトの運用、特に広告運用に関して他社との差別化をしていかなければならないと思っています。実力はさまざまで、そこに至る手法にも細かな違いがあるのですが、クライアントからは見えづらく、説明も難しい部分です。例えば月次の運用レポートの要素を独自のものにする、広告管理画面のデータとアクセス解析のデータを組み合わせて分析するなど、色々と検討中です。もちろん、クライアントの意向や知識レベルに沿ったものである必要もあります。デジタルマーケティングに対して理論や詳細を詳しく知りたいというクライアントに対しては勉強会も行っています。

現在注力している分野はありますか?

分野でいうと「北海道」です。まだ具体的に形となっているものがあるわけではありませんが、北海道独自の要素や強みとデジタルマーケティングを組み合わせたサービスを確立したいと思っています。わかりやすいところで言うと漁業や農業、酪農などとコラボレーションしたいと考えています。北海道はインバウンドも多いので、そこにもチャンスがありそうです。
過去にチャレンジしたことはあるんです。例えば、「自分の町の野菜や魚が銀座の高級料亭で使われている」ってワクワクしませんか?漁港と組んで漁協に卸す以外の販路をECサイトで展開したり、農家で規格外となった野菜を東京の飲食店へつないだり……。でもあまり上手くいきませんでした。発想は悪くないと思うのですが、やはり現場にITに明るい人材がいないとオペレーションがうまくいかないのです。今後も何か北海道に特化したサービスができないか、常に考えています。農業に関しては現場の情報を集めている最中です。
北海道のIT業界はまだまだ未成熟なので開拓の余地は大きいと思いますが、反面、営業やオペレーションで苦労する部分も大きいです。もっともっと、ITリテラシーの向上をさせていきたいです。

前提として北海道のITリテラシーの底上げが必要なのですね

北海道のITリテラシー向上は業界全体の今後の課題でもあります。弊社のもうひとつ力を入れている分野として、小中学生向けにITリテラシーとプログラムの基礎を教えるITプログラミング塾を運営しています。2020年からは小学校でプログラミングの授業が必修化しますし、子供はもちろん親にとっても興味関心が高い分野です。プログラミング必修化の流れに乗ってITに触れる子供たちを増やし、将来的にはITに強い北海道になれば良いなと考えています。直接プログラミングに関わる職業に就かなくたっていいんです。今や何をするにもITの知識は必要ですし、プログラミングを学ぶことは論理的思考力を養うことにもつながります。小中学生でスマートフォンやタブレットを持っている子も珍しくなくなり、ITリテラシーは身を守るためにも必須です。せっかく北海道で働いているからには、北海道の未来を拓いていくような事業を作れると夢がありますよね。カッコつけすぎでしょうか(笑)。

取材日:2018年8月9日 ライター:小山佐知子

株式会社エミシ

  • 代表者名:代表取締役社長 豊島剛
  • 設立年月:2012年4月
  • 事業内容:WEBサイト制作・運用、インターネット広告、ECサイト制作・運営代行
  • 所在地:札幌本社 北海道札幌市中央区大通西17丁目1-14 旭堂第2ビル3F
  • URL:https://www.emishi.co.jp/
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