WEB・モバイル2026.10.07

探究しながら企業とともに答えをつくる。福島のベンチャー企業が「探究」にこだわる理由

福島
株式会社プレイノベーション 代表取締役
Motoshi Kanke
菅家 元志氏

「答えのない課題」に向き合い、企業とともに新たな答えを探していく――。そんな思いを胸に、DXや生成AIを活用した組織成長・新規事業開発を支援しているのが、福島県の株式会社プレイノベーションです。代表取締役の菅家 元志(かんけ もとし)さんが大切にしているのは、単に新しい技術を導入することではなく、それを生かし、変化し続けられる組織をつくること。企業の土台づくりから伴走しながら、「探究」を軸に企業や地域の未来を切り拓く菅家さんに、原点から展望までを伺いました。

東日本大震災をきっかけに起業へ。当初は教育領域を手がける

菅家さんは、もともと会社経営に興味があったそうですね。

小さい頃から「いつか起業したい」「会社経営に関わる仕事をしたい」と思っていました。その思いが強くなったのが、2011年の東日本大震災です。大地震や原発事故によって、大切な家族や友人と会えなくなるかもしれない。そんな現実を目の当たりにして、「人生は当たり前に続くものではない」と強く感じました。

それをきっかけに、自分自身と向き合い、「何を仕事にするか」だけではなく、「自分は何のために働き、何を残したいのか」を考えるようになったんです。一度きりの人生なら、いつかやりたいと思っていたことに挑戦してみようと。そこで、起業するなら自分が生まれ育った福島県郡山市で、これからの地域を担う子どもたちに関わる仕事がしたいと考え、教育領域のスタートアップを立ち上げることにしました。

教育分野にチャレンジする中で、最初は子どもの遊び場を手がけたと伺っています。

当時は原発事故の影響で、子どもが屋外で遊びにくくなっていました。子どもたちが安心して遊べない環境に、強い問題意識をもったのです。

縁あって、子どもの遊び場「ペップキッズこおりやま」の運営をサポートすることになりました。

教育からDX・AI活用支援へ。企業の土台づくりから伴走

現在は、新規事業開発やDX・AI活用を支援する事業を展開されています。これまでの事業の変遷と、現在の事業内容を教えてください。

教育分野を軸に地元で活動していく中で、地元企業の社長さん方から「ITを使って新規事業をやりたいのだけれども、手伝ってくれないか」と相談を受けるようになりました。試行錯誤の日々ではありましたが、企業や地域に寄り添いながら課題解決へと導く、DXや生成AIを活用したコンサルティングを行うようになっていきました。

現在は、大きく二つの事業を展開しています。一つが、組織成長に向けたDXを支援する「PLAY enablement(プレイ・イネーブルメント)」、もう一つが、企業の新規事業開発を支援する「INNOVATION design(イノベーション・デザイン)」です。

「PLAY enablement」では、企業が抱えている課題を整理しながら、DXや生成AIなどのデジタル技術を活用して、データ分析やコンサルティング、研修による人材育成支援などを行っています。一方の「INNOVATION design」では、新しい事業をつくりたい企業に対して、アイデアを出すところから仮説検証、実行まで一緒に取り組んでいます。

どちらにも共通しているのは、単にツールやノウハウを提供して終わりではなく、その会社の人たちと一緒に考え、試しながら、課題を解決していくことです。

企業と伴走しながら支援していくのですね。

はい。私は、新規事業を軌道に乗せるために最も大切なのは、新しい仕組みを導入することだけではなく、それを継続して活用できる組織をつくることだと思っています。だからこそ私たちは、DXやAIの導入支援だけでなく、企業文化や組織体制などの土台づくりから一緒に伴走していきます。

例えば、いくら便利なAIツールを導入しても、「誰が使うのか」「現場の仕事にどう組み込むのか」「社員がその必要性を理解しているか」が整理されていなければ、結局使われなくなってしまいます。新規事業でも同じで、経営者が意欲的でも、現場の認識と揃っていなければ前に進みません。

私たちも一緒にその会社の人たちと考え、試し、改善する。そうやって伴走することが、私たちの支援だと考えています。

「探究」を社内文化にし、お客さまの課題を解決していく

答えがないものに向き合うというのは、貴社の掲げる「探究経営」につながるものがあると感じています。この「探究経営」について教えてください。

会社経営には答えが用意されていません。特に新規事業や組織づくりは、「これをやれば必ずうまくいく」という方法がありません。だからこそ、私たちは「探究」という姿勢を大切にしています。

まず自分たちなりに仮説を立てて、実際にやってみる。うまくいかなければ、なぜうまくいかなかったのかを振り返って、また別の方法を試してみる。その繰り返しです。

これは、お客さまの課題に向き合うときも同じです。私たちは、最初から「答え」をもってコンサルティングをするのではなく、お客さまと一緒に課題を整理し、仮説を立て、実行しながら答えを探していきます。

そうやって「分からないからこそ考える、やってみる、そこからまた考える」ことを、会社の文化として根付かせたい。それが私たちの考える「探究経営」です。

探究を社内で推進していくために、人材育成の観点から、貴社で取り組んでいることはありますか?

探究するためには、社員一人一人が「自分はこれが気になる」「もっと調べてみたい」と思ったことを、実際の仕事につなげられる環境が必要だと考えています。そのために、例えばチャットツールの「Slack」には、メンバーごとのチャンネルを作りました。その中では、各々が最近探究していること、仕事に生かせそうな情報などを自由に投稿してもらっています。

さらに、知識を座学だけで身につけるのではなく、実際にプロジェクトに入ってもらうOJTを基本にしています。ただ、仕事を任せて終わりにはしません。OJTというとやりっぱなしになりがちですが、私たちはプロジェクトが終わった後に必ず振り返りの時間を設け、「最初に立てた仮説はどうだったか」「何がうまくいかなかったか」「次にやるなら何を変えるか」まで話し合います。

探究は、調べて終わりではなく、実際に試して、振り返って、次の行動につなげるところまでが一つのプロセスです。そのプロセスを日々の仕事の中で経験してもらうことが、人材育成にもつながっていると思います。

手軽なDX・AIを地方企業に。探究を「面白いと考えて取り組んでいける人」とともに

これから取り組んでいきたいことを教えてください。

例えば、私たちは自社専用の「AI社員」をつくり、実際の業務で活用しています。一方で、周囲の地元企業の方々からは、「専門知識がない自分たちには使いこなせないと感じている」という声も多く聞きます。だからこそ、そうしたハードルを取り払い、DXやAIの知見がなくても、経営にうまく結びつけられるような製品を発売していきたいと考えています。

そのため、2026年7月に弊社100%出資の子会社EvoMate株式会社を立ち上げました。9月には、地方企業で社員と一緒に働くAI社員シリーズ「EvoMate」の第一弾製品として、AI営業社員サービス「EvoMate Sales(エボメイト セールス)」の提供を始めています。

「EvoMate Sales」は、商談を録音すると、そのデータをもとに議事録、営業日報、お礼メールの下書き、タスクの整理までを用意します。管理職には部下の日報やタスクの遅延が自動的に一覧になって提供されるほか、社内の課題、蓄積されたノウハウや知見をAIが見つけ出してくれます。

このサービスの中核にあるのは、大阪公立大学 大学院情報学研究科 特任助教の油谷知岐氏との共同研究に基づく「組織メタ認知」という考え方です。そこに、2013年以降に弊社が330社以上の企業に伴走してわかったことを掛け合わせて開発しました。システム開発も弊社で行っています。
一般的には東京の大手企業をメインに展開するのが良いのでしょうけれど、本当に人手不足が深刻なのは、そういった企業ではなく、地方の中小企業ですよね。その社会課題に真正面から向き合っていこうと思っています。

どのようなクリエイターと一緒に働きたいですか?

今後は答えのない課題に、自分なりの答えを出せる人が必要になってくるでしょう。将来的には収益につながりやすい仕事はAIが担っていく一方で、経済合理性だけでは解けない難病や気候変動、環境問題など、重要だけれども収益につながりにくい課題を人間が担っていくのではないかと考えています。

そういった課題を苦行ではなく、面白いと考えて取り組んでいける人がいいですね。そのような探究を楽しめる人たちと働いていきたいと思っています。

取材日:2026年8月5日 ライター:安齋 慎平

株式会社プレイノベーション

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