場づくりで、挑戦を後押しする風土を育む。“日本一豊かな里山のまちづくり”に挑む代表の歩み

福島
株式会社オーダーメイドジャパン 代表取締役
Yuto Nakano
中野 友登

福島県を拠点に、広報や採用の支援、研修、コワーキングスペースの運営などを手がける株式会社オーダーメイドジャパン。コワーキングスペース『Fukushima-BASE』や、学生の地域定着を促進する『Aizu-BASE』などの運営も手がけています。しかし、代表取締役の中野 友登(なかの ゆうと)さんの活動は、クリエイティブや場づくりに留まりません。現在は会津若松市湊町に活動の軸を移し、民間主導で「世界に誇れる、日本一豊かな里山のまち」を目指すまちづくりにも取り組んでいます。その原点と同社の事業、現在進めるMIZUOTOプロジェクトの構想を伺いました。

「人がプラスに変わる」きっかけが、今の事業判断の軸に

オーダーメイドジャパンを設立されるまでの経緯を教えてください。以前から起業への思いはあったのでしょうか?

学生時代に家庭教師や学習塾、トレーニングの習慣化支援などを個人事業として運営していました。年間50人ほどの学生を担当し、学んでいたコーチングの知見を生かしながら、勉強だけではなく、さまざまな仕事や大人の話を聞く機会をつくったり、内発的な目標設定から逆算した学習習慣づくりを支援したりする事業を行っていました。
そんな中で、担当する生徒やお客さんが、悩んでいた状況から人との出会いをきっかけにプラスの方向へ向かっていく場面に数多く関わりました。その経験から生まれた『人や地域がプラスに変わるきっかけをつくりたい』という想いが、今の事業の判断軸にもなっています。事業として成り立っていたため、就職という選択肢はなかったです。大学3年生から個人事業を2年ほど続け、2018年に法人化して現在に至ります。

現在の事業内容を教えてください。

Fukushima-BASEのほか、Aizu-BASEなど県内にある三つのコワーキングスペースを運営しています。また、人手不足やノウハウ不足に悩む企業に向けて、広報体制の構築から実務の代行までを担うBPOサービスも展開しています。

チャレンジする人を応援するため、コワーキングスペースを立ち上げる

福島駅前の「Fukushima-BASE」をはじめとしたコワーキングスペースも「人がプラスに変わるきっかけ」を生み出すために始められたのですか?

まさに、福島の人々の新たな試みを応援するために始めました。私が学生時代から福島の地で起業してきた中で、「新しいチャレンジに消極的な空気」や「出る杭は打たれる」雰囲気を感じていたんです。
周囲の同世代が挑戦を諦めていく姿を見て、チャレンジを応援する風土を作りたいと思ったことが、Fukushima-BASEの原点でした。

実際にコワーキングスペースを運営してみて、いかがでしたか?

コワーキングスペースをオープンした2020年ごろはコロナ禍でしたが、「何かをやりたい」と手を挙げる人は多かったです。1日に4~6件ほどは、何かをやりたい人や団体の相談に乗っていました。
Fukushima-BASEで多くの挑戦者と向き合うなかで、気づいたことがありました。個人が変わるには、挑戦を応援する空気が必要で、その空気は地域そのもののあり方とも深く結びついている。そう気づいたとき、コワーキングスペースのような「人が変わる場づくり」だけでなく、「地域が変わる仕組みづくり」にも取り組もうと思いました。

「人を応援する場づくり」に加え、「里山の未来づくり」にも挑戦中

今は湊町のほうに移っておられるのですね。どのような経緯で湊町に移られたのですか?

きっかけは大学の先輩の実家が湊町だったからです。私が地域活性化の取り組みをしているのを耳にしたようで、「湊町の土地を何かに使ってくれないか」と言ってくださいました。そうして、「世界に誇れるような、日本一豊かな里山のまちづくり」を目指そうと、30歳の誕生日に移住を決めました。

その湊町ではどのようなプロジェクトを始められたのですか?

世界に誇れる日本一豊かな里山のまちづくりを目指す「MIZUOTOプロジェクト」です。湊の「さんずい」と「奏でる」という字から、「水が奏でる」「水の音」という意味を込めています。
湊町の魅力は、自然観光と歴史・文化観光です。猪苗代湖やキャンプ場、スキー場、ゴルフ場、昭和天皇も訪れた赤井谷地などがあります。食については、日本酒、馬刺しのほか、標高500メートルほどの環境で育つおいしい米があります。
この地で私が構想しているのは、イタリア発祥の観光まちづくり手法「アルベルゴ・ディフーゾ」のように、まち全体を”丸ごとホテル”として活用する分散型宿泊施設です。一つの建物ですべてを完結させるのではなく、地域全体で宿の機能を持ち、地域を回遊しながらサイクリングや収穫体験など、地元の人と関われるモデルを作りたいと思っています。

移住して間もない頃だと、地域の方とのコミュニケーションが重要だと感じますが、中野さんはどのようにして地域に溶け込んでいったのでしょうか?

押し付けのまちづくりにならないように、この地域が何を残したくて、何を大切にしているのか、そもそも地域での生活とは何なのかを知るところから始めました。はじめは手紙とお菓子を持って挨拶回りをするところからスタートし、地域の人足(共同作業)や温泉旅行、新年会に参加したり、お風呂に入らせてもらって一緒にお酒を飲んだり、草餅を一緒に作ったり、アルバムを見せてもらいながら昔の村の話を聞かせてもらったり。除雪や農業なども含めて泥くさく地域に入り、たくさんのことを地域の方に教えてもらいながら、日々を過ごしてきました。
そんな日々の中で、空き家を三つほど譲り受けたんです。そのうち、まずは一棟を簡易的に整え、「一棟貸しの宿 ゆらぎ」として10人ほど泊まれる宿を作りました。

押し付けのまちづくりではなく、地域の方々と丁寧に関係性をつくっていかれたのですね。

そうです。時間をかけながら交流していきました。
実は、湊町にはすでに5人が移住しており、20代、30代の人口は2〜3割ほど増えました。ただ、地域でお互いのことをしっかり理解し合いながら持続していける規模は、ダンバー数のように150人程度ではないかと考えています。老子の『小国寡民』にも通じる、小さくて豊かなモデルが全国に点在することこそ、本当の豊かさではないかと考えるようになりました。

“記憶に残る関わり”を大切に

地域の課題や声を受け止めながら、事業を柔軟に展開されている中野さん。さまざまな人と関わる中で、日々意識されていることはありますか?

私が大切にしているのは、「記憶に残る」関わり方ですね。少ない人数でも人間関係に深く関わり、「彼がいてくれてよかった」「あの会社と関わったから今の自分がある」と思われるような関係を大切にしたいと思っています。
私の会社の社員にも、「この会社に勤めてよかった」と思ってもらえるような、深いつながりを築くことをまずは優先したいです。良いときだけ人が集まるのではなく、ダメなときにも信頼できる人が1人、2人いるような関係を大切にしたいと考えています。
今後の目標ですが、まずはあと数年でなくなると言われている湊町を、世界に誇れる里山のモデルケースにすること。そして、この地を訪れた各地域の人たちが「湊町のようなまちづくりがしたい」と感じ、それぞれの地域が活性化していくことです。これが実現できれば、それ以上の喜びはありません。

取材日:2026年7月3日 ライター:安齋 慎平

株式会社オーダーメイドジャパン

  • 代表者名:中野友登
  • 設立年月:2018年7月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:広報や採用の支援、研修事業、コワーキングスペース『Fukushima-BASE』、学生の地域定着を促進する『Aizu-BASE』などの運営
  • 所在地:〒960-8035  福島県福島市本町2-10 Fukushima-BASE内
  • URL:https://ordermade.jp/
  • お問い合わせ先:https://ordermade.jp/contact/

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