WEB・モバイル2026.09.02

課題解決のためのマニュアルをつくる。技術と人への理解力でAIに対抗

高松
株式会社ジョーソンドキュメンツ 代表取締役
Hirotada Fujisawa
藤澤 広忠

AIによって文章や画像を生成できるようになり、制作のあり方が大きく変わりつつある今、ドキュメント制作における人の価値はどこにあるのでしょうか。
香川県高松市に本社を構える株式会社ジョーソンドキュメンツは、産業機械や製造装置などのマニュアル制作からスタートした会社です。アナログ時代から培ってきたマニュアル制作の技術を土台に、CGやアニメーション、アプリ開発、システム開発へと業務領域を広げてきました。
複雑な技術を理解し、相手に合わせて分かりやすく伝える。その仕事は、AIだけで完結するものではありません。今回は、AI時代だからこそ問われるマニュアル制作の本質と、「伝える」ために大切にしていることを伺いました。

アナログ時代から積み重ねてきた「複雑な技術を理解し、分かりやすく伝える」ドキュメント事業

なぜドキュメント事業を立ち上げられたのですか。

高松市は大手建設機械メーカーの拠点があり、複雑な製品構造を深く理解し正確に伝えるマニュアル制作のプロフェッショナルが多数集まる、非常に恵まれた技術的土壌を持っています。弊社がこの地で事業を始めたのも、こうした環境と人材の厚みに確かな可能性を感じたからです。私たちはこの高松の地で培われた確かな技術力をバックボーンにしながら、常に「どうすればもっと現場に伝わるか」を追求してきました。創業からの伝統である正確なドキュメント制作技術を核としつつ、お客様からのご依頼を受け、「マニュアル・パーツカタログ制作」「eラーニング・コンテンツ・動画制作」「アプリ・システム開発」「XR制作(安全教育)」「安全教育体感機制作」など、他言語制作を含めて行っています。

事業を立ち上げられた後、どのような苦労がありましたか。

実は創業時、本社は高松、東京は立川、そして今は閉じていますが九州熊本にも事務所を作り、3事業所同時に立ち上げました。
高松では、建機メーカーを中心としたマニュアル作りや電力事業者へのeラーニング教材制作、東京の立川では航空機関連メーカーのパーツリストマニュアル、熊本では半導体製造装置のマニュアル制作と、少人数スタートではありますが、お客様に支えられスタートできました。
苦労は数えきれないほどありますが、どの苦労も今の糧となっており、良い経験をさせていただきました。

ドキュメント制作のアレコレ

取材はどのように行っているのですか?

はい。どのようなドキュメント制作であっても、事前の徹底した取材と理解は不可欠です。
弊社がお客様からご評価いただいている大きな強みのひとつに「製品や技術に対する圧倒的な理解力」があります。マニュアルや教育動画を制作する際、最初からお客様(ご担当者)に一から質問攻めにするようなことはいたしません。まずは仕様書やCAD図面、各種開発資料を読み込み、構造や仕様を自分たちの力で理解した上で原稿作成や企画構成に入ります。その後、お客様に不明点を確認し進めていきます。
お客様が何を求め、何を伝えたいのか。自ら調べ、深く理解した上で形にする——このアプローチはマニュアル制作でもコンテンツ制作でも変わりません。完全に同じ立場になることは難しくとも、お客様と「同じ目線」まで思考を深め、想いをカタチにするのが、私たちの制作における基本スタンスです。

最も伝わる形にするためにどんなことをしているか教えてください。

コンテンツ制作において、弊社が強みとしている領域の一つに、「音声・声」への強いこだわりがあります。弊社はこれまで、数多くのeラーニング教材や企業様向けの動画制作を手掛けてまいりました。
以前、「社員向けの品質不正防止啓発動画」をご依頼いただいた際には、シナリオ作成から構成、撮影、さらには社長様自らご出演いただく演出まで、トータルでのご提案を行いました。現在ではAI音声も品質が良くなりましたが、それでも人の感情が入ったボイスには敵いません。
弊社では、コンテンツ内容に応じて国内トップレベルのナレーターをキャスティングし、プロの声を吹き込むことで、映像の説得力と没入感を飛躍的に高めています。
卓越した「声」に表現力を掛け合わせることで、制作物はさらにもう一段階上のクオリティへと仕上がります。

AI時代だからこそ、コンテンツ制作の実力が問われる

現在、貴社が力を入れているのはどの分野でしょうか。

安全教育です。VRやMR、連動する体感装置を使い、危険を疑似体験できる教材づくりに取り組んでいます。 また安全教育に携わっていく中で、安全と健康が密に関係していることに気が付きました。製造業界や建設業界においても現場で働く方の高齢化が進み、働く人の健康管理が重要なことは言うまでもありません。
労働災害を未然に防ぐためには、設備やルールの見直しだけでなく、現場で働く方々自身が「今の自分の筋力や身体の状態」に気づくことも、実はすごく重要なんです。
そこで私たちは、専門の大学の先生にご協力いただき、『マッスルフレンドリーテスト(筋力年齢テスト)』を開発しました。一番こだわったのは、どのような現場でも手軽に実施でき、かつ体力測定ではなく「筋力測定」という点です。労働災害が起きるときは一瞬の出来事です。回避する、踏ん張る、支えるなど、自分の身を守るのは体力ではなく、一瞬の筋力です。
大掛かりな機材は使わず、最低限の道具を用いた5つのテストを行うことで、その方の『筋力年齢』を算出できるようになっています。
また管理者は、社員の筋力年齢が平均筋力値(弊社計測)と比べて、上回っているのか、またその逆であるのか、分布図が表示されるため、判断することができます。 さらに、次回のバージョンではここにAIを組み込む予定です。お客さまの普段の業務内容と測定データを掛け合わせることで、先生からの専門的なアドバイスはもちろん、AIの総合的な視点から「あなたの強みはここで、ここが弱みですよ」といった客観的なフィードバックをお届けできるようになります。

昨今、AI時代とも言われていますが、マニュアルやコンテンツなどの制作に影響はありますか。

今年に入り、凄まじい勢いでAIが進化・普及していますよね。今後もAIが進化し続けるのは間違いないと思いますし、単純な制作依頼という形では件数が減るかもしれません。
しかし、お客様の求めているドキュメントの品質をもう一つ上のステージへ引き上げていくためには、今後AIを活用することは必須だと考えています。
弊社でも様々なAIを活用していますが、当然ながらAIは「道具」です。その性能を最大限に引き出し、効率よく適切に指示を出すのは「人」にほかなりません。
AIの普及によってドキュメント制作の手法は変わっていくかもしれませんが、根本にある考え方は変わりません。制作を真に支えているのは、技術や知識だけでなく、お客様とのコミュニケーションや細やかなやりとりです。 どんなに時代が変わっても、弊社の根幹にあるのは確かな取材力と理解力、そして人ならではのコミュニケーション能力なのだと感じています。

取材日:2026年6月23日 ライター:安齋 慎平

株式会社ジョーソンドキュメンツ

  • 代表者名:藤澤 広忠
  • 設立年月:2001年12月
  • 資本金:1,000万円
  • 事業内容:産業装置等のマニュアル・パーツカタログの企画制作、企業内オンライン教育・訓練のためのシステム提案および、各種eラーニングコンテンツの制作、VR/MRアプリ開発
  • 所在地:〒761-0301 香川県高松市林町351番地20
  • URL:https://www.jhoson.co.jp/
  • お問い合わせ先:https://www.jhoson.co.jp/contact/
  • 電話番号:087-868-1826

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