長く愛されてきたブランドを、次の世代へ。ビキジャパンがECでひらく新たな挑戦
1972年の設立以来、婦人服やゴルフウェアを中心に、PICONE(ピッコーネ)ブランドを展開してきた大阪の株式会社ビキジャパン。司祭をモチーフにしたキャラクターや鮮やかな色使い、細部までこだわった縫製や素材によって、半世紀以上にわたり愛されるブランドを育ててきました。執行役員の伊藤 弘之(いとう ひろゆき)さんに、ビキジャパンの歩みとブランドの魅力、EC事業を中心とした今後の展望について伺いました。
長く着られる服と、愛され続けるキャラクター。PICONEの魅力
ビキジャパンはどのような経緯で設立されたのでしょうか?
1972年、イタリアのアパレルブランド「BIKI」を日本で展開するため、三井物産とサンフレールの合弁会社として設立されたのが始まりです。その後、親会社の変遷を経て、現在はMSD企業投資株式会社が運営するファンドが株主となっています。創業以降、上品な大人のデイリーカジュアルブランド「STUDIO PICONE(スタジオピッコーネ)」、機能性とデザイン性を兼ね備えたゴルフウェアブランド「PICONE CLUB(ピッコーネクラブ)」、PICONEの派生ブランドで、ポップなカラーリングを前面に出したスポーツファッションブランド「archivio(アルチビオ)」などのブランドを展開してきました。
トレードマークであるキャラクター「アルチビオ」
PICONEブランドのトレードマークであるキャラクターについて教えてください。
このキャラクターは、archivioのブランド名の由来にもなっているアルチビオという名前の司祭なんです。キャラクターの生みの親、ジュゼッペ・ピッコーネはイタリア・ナポリの陶芸家の息子として生まれました。ナポリは敬虔(けいけん)なカトリック信者が多い街。父親の工房にも多くの司祭が出入りしていたそうです。そうした環境から、ジュゼッペは司祭をモチーフとした絵を描くようになりました。
やがて、彼のイラストがプリントされたTシャツがファッション誌「VOGUE(ヴォーグ)」の紙面を飾るなど、広く注目を集めました。
弊社でも、ライセンス契約によってブランドを展開していましたが、現在はライセンスを買い取り、約1,000点に及ぶ原画も保有しています。そのため、原画を活用しながら、新たなデザインを自由につくることができるようになりました。原画を生かして、色や構成を変えたり、新しい商品に取り入れたりと、ビキジャパンならではの発想で、新しいデザインを届けています。
PICONEブランドの魅力についてお聞かせください。
ナポリ発祥のPICONEブランドは、南イタリアの陽気で洗練された空気感と遊び心が融合したデザインが魅力です。上品なリラックスウェアから、機能的なゴルフウェア、タウンカジュアルまで幅広く展開しています。
また、衣服の品質の高さも大きな特長です。素材や縫製、デザインの細部にまでこだわっており、何十年と着続けても生地が傷みにくいです。以前に購入した商品を「繕って、もう一度着たい」と持ち込まれるお客さまもいらっしゃいます。長く愛用できる服であることも、ブランドが支持されてきた理由の一つだと思います。
PICONEの面白いところは、もともと、キャラクターデザインから始まっているため、ファッションブランドであると同時に、キャラクターブランドとしての一面も持っていることです。洋服のデザインを気に入ってくださる方もいれば、キャラクターを好きになってくださる方、絵そのものに魅力を感じてくださる方もいます。かつてノベルティとしてお渡ししていたお皿を、楽しみに集めてくださるお客さまもいらっしゃいました。幅広いお客さまに、長くご愛用いただいていると実感します。
スタジオピッコーネブランド
店舗中心の販売から、ECとの両輪へ
現在の事業内容について教えてください。
婦人既製服、繊維製品、アクセサリー類の製造・販売を行っています。
主力となるのは、「STUDIO PICONE」「PICONE CLUB」「archivio」の3ブランドです。専門店や百貨店、直営店での販売に加え、現在はECサイトでも商品を展開しています。
<ONLINE STORE>
https://www.bikijapan-store.jp/
ECサイト拡充への経緯をお聞かせください。
創業当初は、商店街などにある専門店への販売が中心でした。その後、百貨店や直営店にも販路を広げていきました。長年ブランドを支えてくださっているお客さまとの間には、店舗での会話や接客を通じて築いてきた関係があります。商品を購入するだけでなく、お店へ行き、スタッフと話すこと自体を楽しみにしてくださる方もいます。こうした顔の見えるつながりは、実店舗ならではの大切な価値です。
その一方で、販売を取り巻く環境は時代とともに変化しています。店舗オーナーの後継者不足に加え、百貨店でもフロア構成や販売方針が変わり、ミセス向けの売場が縮小するケースが増えてきました。たとえ店舗の売上が安定していても、百貨店側の方針によって退店しなければならない場合もあります。
周囲の環境に左右されず、お客さまに商品を届け続ける方法を考えた結果、EC事業を本格的に強化することになりました。そうして、約8年前にEC事業を担う部署として「Digital div.」を立ち上げ、現在は5人のチーム体制で取り組んでいます。
EC事業では、どのような点を工夫していますか?
写真や動画を使って着用時の印象を伝えたり、機能性を分かりやすく表示したりしています。説明文にも力を入れ、実際に手に取ることのできない商品の質感や機能を、できる限り分かりやすく伝えるようにしています。
このほかにも、商品の採寸方法を詳しく説明するページを設けたり、アプリを開発したりしています。こうした工夫を重ねながら、安心して購入いただけるサイトづくりを進めています。
ECであれば、近くに店舗がない地域にお住まいの方でもいつでも商品をご購入いただけます。実店舗とEC、それぞれの良さを生かしながら、お客さまにとって、より身近で利用しやすいサービスにしていきたいと考えています。
長く愛されてきたものを、次の世代へつないでいく

ブランドでの新しい取り組みを教えてください。
「STUDIO PICONE」は、 “家からワンマイル”をコンセプトに、20代女性が気軽に着られる服として始まったブランドでした。その後、お客さまと一緒にブランドも年齢を重ね、現在は60代以上の方が中心となっています。この先、従来のお客さまだけでなく、どのように次の世代へ届けていくかが課題の一つでした。
そこで、4年ほど前から始めたのが、雑貨を扱う「CASA PICONE(カーサピッコーネ)」です。既製服はどうしても価格帯が高く、若い方にとっては手に取りにくい部分があります。ですので、ブランドのモチーフを洋服だけに限定せず、バッグや小物、食器などの雑貨へ展開することで、より身近に知ってもらう機会をつくりました。
これまでは外部デザイナーと共同で商品を制作し、雑貨の直営店も展開していましたが、今年度から体制を見直し、社内でデザインや企画を行う形へ切り替えました。雑貨を独立したブランドとして扱うだけではなく、「STUDIO PICONE」などの既存ブランドの中にも取り入れ、ブランドの世界観をより広く届けていきたいと考えています。
これまでの商品に新たな価値を与える取り組みも構想されているとお聞きしました。
はい。近ごろでは、古い衣類を持参すると、商品やポイントと交換できる取り組みが増えています。そういった場合、引き取ったアイテムの多くは、素材を分解して新しい商品に変え、海外で販売されることもあります。
当社にも、10年以上前につくられた商品が集まることがあります。それらを見直す中で、「今でも十分に販売できるのではないか」という意見が出ました。必要に応じて修繕を施し、再び商品として届けることができれば、長く使えるものづくりの価値も伝えられると考えています。
また、過去の商品が、若い世代の方にとって新鮮な魅力を持つこともあります。これまで大切に受け継がれてきた商品を次の世代へつなぎ、ブランドの新たな可能性を広げていきたいです。
今秋をめどに、ご案内を始められたらと考えています。
失敗を恐れず、新しいことに挑戦できる。「ビキジャパンは楽しそう!」を目指して
一緒に働くクリエイターにどのようなことを求めていますか?
EC事業をさらに強化していくため、現在は中途採用を中心に、Digital div.のEC担当者や営業職を積極的に募集しています。
Digital div.では、メンバー一人ひとりが幅広い業務に携わります。受発注や売上計上、お問い合わせ対応といった業務に加え、商品の撮影、画像編集、サイトへの掲載まで、EC運営に関わる一連の仕事を担当します。デザインや撮影など、特定の業務だけを担う分業制ではありません。
最初は、業務の幅広さに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、先輩社員や上司が日々の仕事を通じて指導するOJTの体制を整えています。少しずつ経験を重ねながら、安心して業務の幅を広げていただければと思います。
ものづくりで大切なのは、固定観念にとらわれないことです。当社が保有している原画は、過去と同じ使い方をしなければならないわけではありません。色や構成を変え、新しい商品へ展開することができます。長く受け継がれてきたものを守るだけでなく、新しい発想によって生かし直していく。その力を、これから入社する方にも発揮していただきたいと思っています。
どのような会社にしていきたいとお考えですか?
当社のモットーは「CCE+A」。変化を受け入れ(Change)、挑戦し(Challenge)、その過程を楽しみ(Enjoy)、行動する(Action)。既存の常識や概念にとらわれず、変化を恐れずに挑戦し、楽しみながら行動するという思いが込められています。
失敗を恐れず、新しいことに挑戦できる。働く人が変化を楽しみながら成長し、周囲から「ビキジャパンは楽しそうだ」と思ってもらえる会社を目指しています。
国内の繊維業界を取り巻く環境は、決してやさしいものではありません。その中で生き残っていくためには、横並びではなく、デザインや素材、キャラクターなど、そのブランドにしかない特徴が必要だと考えています。私自身、入社したときに、社内に飾られていたキャラクターのカレンダーを見て、とても魅力的だと感じたのと同時に、「これはきっと若い世代にも受け入れてもらえる」と思いました。
現在、会社自体も新しく変わろうとしています。その動きを牽引する部署の一つが、Digital div.だと考えています。長年ブランドを支えてきた顧客さまとのつながりを大切にしながら、ECを通じて、新たな世代にもブランドの魅力を届けていきたいと思っています。
取材日:2026年6月10日 ライター:大野 佳子
株式会社ビキジャパン
- 代表者名:佐藤 裕之
- 設立年月:1972年5月
- 資本金:1,000万円
- 事業内容:婦人既製服、繊維製品、アクセサリー類の製造販売
- 所在地:
本社 〒542-0086 大阪市中央区西心斎橋2丁目1番3号 御堂筋ダイヤモンドビル8F
東京店所在地 〒102-0084 東京都千代田区二番町11-19 興和二番町ビル1F - URL:https://biki-japan.co.jp/
- お問い合わせ先:
・代表、経理財務・管理:06-6212-1571
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