「スポーツ×マーケ」で選手やチームを後押し。資金循環の仕組みづくりで業界の固定観念を打破
「スポーツチームやアスリートが持続可能な形で成長できるよう支援し、業界全体を良くしていくことがわれわれの使命」。そんな思いで、スポーツ支援事業とマーケティング事業を行っているのがSportsEntertainment(スポーツ・エンターテインメント)株式会社です。代表の中川 喜正(なかがわ よしまさ)さんは、20年以上のマーケティング事業の経験と知見を生かし、スポーツ支援ビジネスを行っています。そんな中川さんに、起業したきっかけ、現在の事業内容、展望などについてお話を伺いました。
ワールドカップ観戦と母校サッカー部の全国大会ベスト4を機に起業を決断
立ち上げまでのキャリアを教えてください。
幼少期からサッカーの選抜チームに入り、高校時代まではJリーガーを目指していました。大学進学を機にサッカーを引退し、卒業後は、株式会社光通信で2年間、コールセンター事業を活用したマーケティングに携わりました。
その後、コールセンターのインバウンド・アウトバウンド事業を展開する株式会社カスタマーリレーションテレマーケティングで役員として約10年間従事し、2019年にSportsEntertainment株式会社を立ち上げました。
いずれは会社を立ち上げたいという思いはあったのでしょうか?
大学では遊び中心の生活を送っていましたが、社会人になるタイミングで「このままでは人生が充実しない」と感じ、「サッカーのように上を目指せる環境で仕事したい」と思い始めました。ちょうど周りに起業する人も多く、その頃から「いつか起業したい」という思いがありました。
SportsEntertainment株式会社を設立したきっかけは?
前職では、役員としてストックオプションもいただいていましたが、創業者がファンドに株式を売却し、上場を進める流れになったとき、上場後は未上場時と環境が大きく変わるため、このまま残るか、それとも起業するのかを熟考しました。最終的には、ロシアワールドカップを観戦したこと、母校・東海大学付属仰星高校のサッカー部が全国大会でベスト4に進出したことをきっかけに、企業主導のスポーツ事業を始めようと決断しました。
青森、兵庫でも支店を開設。事業拡大中
なぜ大阪で立ち上げたのでしょうか?青森や兵庫にも支店がありますが、このエリアを選んだ理由は?
自身が大阪出身であることに加え、前職の会社が大阪市内にあったことから、円満退社して協業できる可能性も考慮し、現在の場所(大阪市北区)に本社を構えました。
2023年には、大阪本社の拡大にともない、青森県の八戸支店を開設しました。コールセンターやダイレクトマーケティング事業では、クライアントから業務の一部を外部に委託する経営戦略・BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の形で業務を受託することが多く、個人情報を取り扱う関係で、センターが停止すると業務に大きな影響が出る可能性があります。そんな中、自治体の支援を受けて青森に出店する話をいただきました。
さらに、本年2月からは兵庫県に支店を開設しました。弊社ではスポーツ事業の一環として、岡崎慎司さん(サッカー元日本代表)が運営する「FC BASARA HYOGO」を支援しており、選手の雇用を打診されたことがきっかけです。スタート時には5人を採用し、4月からは新卒社員が加わり徐々に拡大していく予定です。
スポーツを活用したファンマーケティングを取り入れ、企業の売上にも貢献
事業内容と強みについてお話しください。
弊社は、スポーツ支援ビジネスを展開する「スポーツ事業」、コールセンターを活用し、マーケティング、BPO、CRM(顧客関係の管理で収益を上げる経営手法)などの分野で業務を受託する「ダイレクトマーケティング事業」の二本柱で展開しています。現在の売上の約9割はダイレクトマーケティング事業が占めており、スポーツ事業はまだまだ厳しい状況です。
この二つの事業を掛け合わせた独自のビジネスモデルは、弊社の強みであると自負しております。スポーツ業界では、収益の確保が課題となることが多く、企業がチームを支援する際、価値を感じられる仕組みづくりが必要です。単に利益を追求するのではなく、スポーツチームやアスリートが持続可能な形で成長できるよう支援し、業界全体を良くしていくことがわれわれの使命です。
もう一つの強みは「泥臭さ」です。ビジネスの世界では、華やかな戦略や横文字を多用した経営論が語られがちですが、われわれは現場での実践を大切にし、企業やスポーツチームと密接に関わり、着実に成果を出していくスタイルを貫いています。この姿勢に共感いただける企業と連携し、ともに成長できるよう目指しています。
スポーツ支援ビジネスでは、具体的にどんなことをされていますか?
欧米ではスポーツビジネスが発展しているものの、日本のスポーツは教育の一環と見なされがちで、「スポーツで儲けるのは良くない」という意識が根強いです。それゆえ、スポーツ業界を発展させていくには、資金の循環を改善する必要があります。そこで、われわれはマーケティングのノウハウをスポーツ分野に応用し、スポンサー獲得支援やアスリートのセカンドキャリア支援に取り組んでいます。
現在、弊社で支援しているチームは「FC BASARA HYOGO」をはじめとする約50チームです。小・中学生向けのサッカー・野球チームも支援の対象です。小規模チームでは、親御さんの負担が大きく、備品確保やコーチへの報酬支払いが困難な状況が多いため、スポンサー獲得の支援を通じて経営を安定させる取り組みを行っています。
スポンサーが付くとどんなメリットがありますか?
さまざまなセミナーやイベントを開催できます。従来のスポンサーシップでは、ユニフォームに企業名を掲載したり、サッカー・野球教室など選手との触れ合いイベントを開催したりするのが主流ですが、われわれは、子どもの所属チームに対する親御さんの関心の高さに着目し、大人向けに企業のサービスを体験してもらう機会を提供しています。
例えば、金融保険会社やウォーターサーバー会社によるマネーセミナー、NISAやiDeCoに関する勉強会など、スポーツに関連しないテーマでも参加しやすい形を取れば、企業側にとってもターゲット層へ直接アプローチできる機会を得られます。また、チーム側にとっても、スポンサーからの支援金が増えると活動の幅が広がるメリットがあります。
デジタルとアナログを組み合わせたマーケティング事業でアスリートのセカンドキャリア支援
マーケティング事業では、どんな取り組みをされていますか?
マーケティング事業では、電話を活用した新規顧客獲得、既存顧客に対するアップセル・クロスセルの施策を行い、企業の売上向上をサポートしています。クライアントの業界は、通信、保険・金融、不動産、通販、医療など多岐にわたります。中でも医療業界はリピーターの定着が課題であり、電話によるフォローアップの仕組みを提供しています。
デジタル化が進む中、メールやチャットで反応しないユーザーに対しては、電話を活用することでより高い反響率を得られます。特に高齢者は、直接話せるコミュニケーションを好む傾向にあり、デジタルとアナログを組み合わせたマーケティングの必要性を感じています。
人材派遣事業も展開されていますね。
人材派遣事業に関しては、コールセンター業務を受託する際、派遣免許が必要なケースがあるため、対応できる体制を整えています。特にアスリートのセカンドキャリア支援では、業務を通じてマーケティングのノウハウを新たな分野に生かせるよう育成の環境を整えています。
また、クライアントからのニーズを受けて適切な人材を紹介するマッチング事業も視野に入れています。
世の中にインパクトを与える人材を育成できる会社に
この仕事をしていて良かったと思うのはどんなときですか?
まだ「志半ば」の段階なので、これからですね。起業当初5年間の計画を立てた際、「マーケティング事業で売上10億円、営業利益2〜3億円を確保できれば、5千万〜1億円をスポーツビジネスの成長に充てられる」との構想を描いていました。コロナ禍の影響で遅れているものの、2年以内にはその目標に到達できると思っています。これまで多くのスポーツ関係者とつながりを築き、種まきをしてきました。その取り組みが形となり、喜んでくれる人が増えれば、よりいっそう「この仕事をしていて良かった」と実感できると思います。
どんな会社にしたいとお考えですか?
企業は「人」が大事です。特に若い世代が生き生きと働き、成長できる環境を整えていく必要があります。現在の日本経済の状況を考えると、守りに入ろうとする企業が多い中、われわれは積極的にチャレンジしながら現状を打破し、世の中にインパクトを与える人材を育成できる会社に成長していきたい。そのためにも、新たなビジネスにどんどん取り組み続けたいです。
展望についてお聞かせください。
会社としては、まず10億円規模に成長し、スポーツ事業が軌道に乗ったとき、次にどこを目指すのかが重要なポイントになります。会社の規模が大きくなれば、新たなポジションが生まれ、ハッピーになる人も増えていきます。売上100億円を超える企業を目指すのか、それともある程度安定させたうえで、次の展開として起業を希望する社員を支援していくのか、状況に応じて柔軟に判断していきたいと考えています。
個人的な夢としては、いつかサッカーチームを運営したいです。知人それぞれがサッカーチームを持ち、そのチーム同士で試合するとめちゃくちゃ楽しいだろうなと。もし負けるようなことがあれば「ブラジルに行って、良い選手を連れて来よう!」なんて思うかもしれません。そんなことを想像するだけでワクワクしますね。
情熱的な人と一緒にスポーツ業界の未来を築いていきたい
一緒に働くスタッフに求めることは?
「面白そう」「ここで働きたい」と思ってくれる人を積極的に採用したいです。その中で、自分の夢を叶えるために、今の環境で何を学び、何を身に付けるかを考えることが大切です。上昇志向がある人、情熱的な人は大歓迎です。新しいことを始めるとき、最初は泥臭い仕事も必要です。特にチームリーダーになると、さまざまな人を巻き込んでいくため、強い志を持つ人と一緒に働きたいです。
最後に、スポンサーをご検討いただける企業の方へメッセージをお願いします。
大企業になればなるほど、かつてスポーツに打ち込んでいた人も多いと思います。でも、その頃の気持ち、忘れていませんか? われわれは、各企業に合わせた形でスポーツ支援をアレンジし、企業の発展にも貢献できる企画をご提案します。スポーツが好きで、かつての情熱を持ち続けている皆さまとスポーツ業界の未来を築いていきたいです。ご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお話しましょう!
取材日:2025年2月21日 ライター:堀内 優美
SportsEntertainment株式会社
- 代表者名:中川 喜正
- 設立年月:2019年4月
- 資本金:100万円
- 事業内容:スポーツ支援ビジネス、マーケティング、テレマーケティング、ダイレクトマーケティング、Web制作、DX推進事業 等
- 所在地:
【大阪本社】
〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満6丁目3-16 梅田ステートビル10階
【八戸支店】
〒031-0084 青森県八戸市十八日町7番地 ジブラルタ八戸ビル7階B
【兵庫支店】
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