3DCGと共に25年、進化し続けるVR ・AI技術を活用しつつ「人間にしかできない」プロデュース力が強み

金沢
株式会社アトリエほんだしょうこ 代表取締役
Shoko Honda
ほんだ しょうこ

3DCGソフトが世に出回りつつあった1990年代からコンピューターグラフィックスを使った制作に携わり、現在ではVR技術を駆使したコンテンツ制作にも力を入れる株式会社アトリエほんだしょうこ。3DCG業界に25年間身を置き続ける代表のほんだしょうこさんに、会社設立のいきさつやこれからも注目されていくであろう3DCGやVRを使ったホームページやバーチャル展示会について伺います。さらには、急速に変わりゆくITやAIの進化がデザインやコンピューターグラフィックスにどう影響をもたらしていくか予想していただきました。

日本画専攻の美大生が、初めてのパソコンで3DCGキャラを一週間で作成

まずは御社を設立されるまでのいきさつを教えてください。

金沢美術工芸大学を卒業してからアルバイト先で3DCGを学び、小さな制作会社へ入社した後、金沢から東京へ拠点を移しフリーランスとして制作を続けてきました。金沢へ戻ってから、企業案件や自治体からの仕事を受注するにあたって、13年前に株式会社アトリエほんだしょうこを立ち上げました。

美大卒業後にアルバイトとして入った会社で3DCGを学ばれたとのことですが、美大生の時にもコンピューターグラフィックスなどに携わっていたのですか?

いえ、美大生の時は日本画専攻でパソコンに触ったこともありませんでした。アルバイト先の会社がちょうど絵やデザインができる人を探していたところ、大学の教授に紹介されたのが私でした。当時は電源を入れるところから教えてもらったほどのパソコン初心者でしたが、3DCGでのゲームソフトの開発に参加していました。

3DCGの知識がまったくなかった中で、ゲームソフト開発の仕事はどうでしたか?

アルバイト先からはとりあえず一週間で白人・黒人・黄色人種の男性キャラクターを作って喋れるようにしてほしいと言われました。初めてのことばかりでしたがとにかく知らないことを勉強するのが楽しくて、説明書などもすごいスピードで読んでしまい、そのオーダーにもすぐに応えられました。同じ部署の先輩やプログラマーさんもすごく褒めてくれて、どんどん吸収していったんです。

3DCGを使ったビジネスが発展途上だった地方から需要を求めて東京へ

その後アルバイトで勤めていた会社から、制作会社へ移られたのはなぜですか。

3DCGを教えてくれたその会社はゲーム部門が無くなってしまい、その後コマーシャルなどを手掛ける金沢の制作会社に呼ばれて半年ほど正社員として働きました。しかし、まだ3DCGを使ったコマーシャルが普及しておらず、案件が発生しづらかったこともあり、絵コンテを書いたり他の業務をしたりしていました。

当時は3DCGのお仕事があまりなかったのですね。

はい。地元にはまだ3DCGの需要がないと感じ、制作会社を辞めて東京へ拠点を移しました。会社勤めをする前からホームページを作って3DCGのキャラクターを作る方法などを個人的に発信しており、それがきっかけで雑誌「月刊CGWORLD」の連載も担当させてもらっていました。連載がもとで東京のお仕事もいくつか頂けるようになっていたことも拠点を移した大きな理由の一つです。

フリーランス時代から会社設立後の現在まで、主な業務内容などを教えてください。

フリーランスの時も今も業務内容は基本的に変わっていません。3DCGを使い、主に映像制作やキャラクター制作をしています。「株式会社イマデヤ」(徳島県)「株式会社カントビ」(静岡県)などの企業CMや、アーティストのプロモーションビデオを担当させていただいたり、自治体などからの依頼でアニメーションも制作したりしました。そのほか「立山科学グループ」(富山県)などのVRコンテンツや、小説「百万石メモリーズ」の挿絵なども手掛けました。既存のキャラクターを3DCG化してほしいという依頼も多いです。

百万石メモリーズ

近年では、オリジナルバーチャル展示会「VR Show」の提供・運営も行っていらっしゃいますね。

「VR Show」は立体的に仮想空間での展示ができる、企業向けサービスです。VRゴーグルがなくてもスマホやパソコンから参加が可能です。あらかじめ3パターンのデザインが用意されており、展示会場の数やブースの数、オプションを選ぶだけで展示会を開催できます。ある程度パッケージされていることで、納期なども短くなり、気軽にVR展示会をできるようにしました。

VR Show

美しいグラフィックスのバーチャルモール内を回遊して、出店されているクラフト作家さんの作品が見られる「VR作家モール」も素敵です。

「VR作家モール」はきのこなどの植物や風車などをモチーフにしたファンタジーなエリアにクラフト作家さんがテナントとして入居し、それぞれに持っているオンラインショップへ誘導できるサービスです。こちらは利益よりも社会実験的な意味が強く、「こんなことができますよ」という宣伝ツールとしても使っています。

VR作家モール

3DCG制作やバーチャル展示会を使って企業が今求めているものを提供していく

クライアントからの案件を進めるうえで重視していることは何ですか?

弊社ではクライアントの要望やイメージをいかに再現できるかを重視しています。クライアントが「こういうものが欲しい」と頭の中に描いている事は「今まで自社になかったもの」が多いので、その希望をビジュアル化するための企画力や提案力があり、プロデュースできることが弊社の強みだと考えています。
クライアントの要望に合わせてプロデュースした結果、「ちょうどこういうコンテンツを求めていた」と喜んでもらえたり、「もっと早くこの技術に出会いたかった」と言われたりすることも多く、やりがいを感じます。例えば、本来簡単には見られない機械や焼却炉の中などを3DCGアニメーションで表現したり、VRでバーチャル工場見学をしたりすることが可能です。展示会だけでなく施設案内などにも活用していける技術として、広く世の中へアピールしていきたいですね。

3DCG業界の一線で走り続け、現在はVR技術を応用したコンテンツ制作も提供する御社から見て、これからの3DCG市場やVR市場はどうなっていくと予想されますか?

AIによって制作が簡単になったり自動化したりしていくことで、これからのコンテンツはプロのスキルがなくてもできる時代になってくると思います。今、落書きや写真をAIが数秒でイラスト化してくれるアプリが無料で提供されています。文章で指示を出した通りにデザインをしてくれたり、シナリオや設定などもAIが考えてくれたりと、たった数週間でも恐ろしいスピードで技術が進んでいるので、優秀なイラストレーターやグラフィッカーが側にいてくれる感覚になります。しかし、お客さんの要望を汲んで具体化したりブラッシュアップしたり、AIが提案したものを納得のいくものに組み立てていくという作業は人間にしかできないと信じています。

御社のこれからの展望をお教えください。

AIを優秀な助手として大いに活用しながら、3DCGやVRを使ってクライアントが満足できるものを提供することが、会社としての使命だと感じています。たとえスキルを持っていても、動かなかったら知られないままで意味がないので、最近では展示会などに参加したりこれまで付き合いのあった企業に顔を出したりと、営業も積極的に行っていますね。

最後に、一緒に働くクリエイターに対して会社としてどのようなことを求めていらっしゃいますか?

とにかく、人間性ですかね。スキルは得手・不得手など個性もありますし、デザインもプログラミングも全部網羅して完璧にできる人なんていないですから。誠実で人が良ければその人に合った仕事を任せようと思います。あとは営業ができる人、VRや3DCGを使ったコンテンツをうまくアピールできる人がいたら、ぜひ一緒に働きたいです。

取材日:2022年12月5日 ライター:川口 沙織

株式会社アトリエほんだしょうこ

  • 代表者名:ほんだしょうこ
  • 設立年月: 2011年3月
  • 事業内容:3DCGを使った映像・CM・Webサイト・アニメーション制作 VRを使ったコンテンツ制作など
  • 所在地:〒920-0352 石川県金沢市観音堂町イ1−1
  • URL:http://atelier-honda-shoko.com/
  • お問い合わせ先:

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