WEB・モバイル2022.12.14

拠点は日本と中国、多国籍なチームで社会に貢献する 園バス置き去り防止装置も自社開発 

名古屋
余白文化株式会社 代表取締役
Lu Zhaohua
盧 朝華

保育園から絶大な信頼を受けて多数のホームページ制作やデザイン・ITサポートを行う、愛知県名古屋市の「余白文化株式会社」。一方で北京にも拠点がある同社は、「日本企業が世界に羽ばたくためのクリエイティブパートナー」として、企業のインバウンドとアウトバウンド対応、インターネットを介して海外の顧客に商品やサービスを販売する越境ECサイトの構築に強みを持つ。中国から来日し、26歳で起業を果たした代表の盧朝華(ルー・ヂャオファ)さんに、起業までの道のりや多様性あるスタッフを有する強み、新たなツール開発へのチャレンジ、今後のビジョンなどを伺いました。

中国から親戚がいた名古屋へ留学し、クリエイティブ大手に就職

日本で起業するまでのストーリーを教えていただけますか?

中国のハルビンで育ち、高校を卒業して日本に来ました。ちょうど親戚が名古屋で学んでいたので、私も留学先に名古屋を選びました。
はじめの2年は日本語学校で学び、その後はHAL名古屋に入学。興味があったグラフィックデザインやウェブデザイン、プログラミングなどを4年間学びました。そして、デジタルやクリエイティブ領域が強い大手企業にデザイナーとして就職しました。

「今、挑戦しないと後悔する」 デザインと語学力を活かし26歳で起業

大手企業から起業に舵を切ったいきさつをお聞かせください。

就職した会社の仕事は毎日が新鮮でとても有意義だったのですが、デザインだけじゃなく語学力や言葉を活かした仕事にもチャレンジしたいと感じ、1年半で退社して2016年に余白文化を立ち上げました。26歳の時でした。

かなりのスピード感で決断されたんですね。

もう少し経験を積みたい気持ちもありましたが、チャレンジしたい気持ちの方がまさったんです。
ちょうどその頃は中国の若者の間で起業ブームが興り、インターネット動画で見たアリババ創業者のスピーチなどにも触発されました。20代のうちにチャレンジして、万が一うまくいかなかったら就職すればいい。今、挑戦しないと後々きっと後悔すると感じたんです。

展示会への出展でつかんだ会社の軸 スタッフも続々入社

起業してからはどのような道のりでしたか?

何かしらのビジネスモデルを考えて起業したわけではなかったので、はじめは事業の軸がなく苦労しました。起業して半年ほどした頃に、東京に就職していた専門学校の同級生が余白文化に入ってくれて、しばらくは2人で頑張りました。 そして、ある展示会への出展がきっかけで保育園関係者とのつながりが生まれ、そこから事業が上向いて優秀なスタッフも続々入社し、会社が成長してきました。

園児の置き去り事故を回避するツールを開発 多彩なチームでグローバル案件も展開 

現在手掛けている事業を教えてください。

保育園との強いつながりから、ホームページ制作やシステムの提案を数多く行っています。名古屋エリアには約400の園があるのですが、その10%以上のホームページを私たちが制作しています。私たちが提案する保育園の自動予約システムも大好評で、それまでは付箋を使って手書きで予約管理をしていたスタッフの方々の負担が大幅に減ったと喜んでいただいています。
さらに、GPSを活用して園児の安全を見守り、置き去り死亡事故を回避する「Hikids」というサービスがもうすぐリリースされます。「Hikids」のアプリやソフトウェア部分は当社スタッフや北京の開発チームで手掛け、端末(ハード)は医療系メーカーに依頼しています。
また、余白文化には中国人や英語が堪能なスタッフがいるので、インバウンド&アウトバウンド対策や越境ECサイトの開発・コンサルティングにも強みがあります。

越境ECなどの具体的な事例を教えてください。

京都に数百年の歴史を持つ「金箔」の会社があるのですが、2年ほど前に越境ECサイト開発の相談がありました。
大手の制作会社に依頼すると軽く1,000万円を超えてしまう案件です。語学が堪能で多彩なスキルを持つ人材が集まっている私たちの強みを活かしてリーズナブルな価格で開発を請け負いました。ECサイト公開後は順調に売り上げが伸び、投資を1年で回収できたそうです。
そのお客様とは現在も良好な関係を続け、SNSなどコンテンツ面でのサポートも継続して行っています。

忙しい日々の中にも一息つける瞬間を 日中共通の美意識「余白」を社名に

会社名「余白文化」の由来を教えてください。

専門学校で就職活動をしていた時期に、面接の帰りに京都に立ち寄ったのですが、その時に見た光景がとても美しく、感動しました。
もともと「余白」や「間」というのは東洋独自の感性だと思うのですが、日本にはその「余白」や「間」の美意識が特に色濃く浸透しています。デザインを学ぶ中でも「余白」の存在がものすごく重要だと気づき、ぜひ会社の名前に使いたいなと思っていました。
はじめは「余白」という社名にしようかと考えていたのですが、より広い意味を持たせ、日本人にも中国人にも理解できる「余白文化」という名前に決めました。余白というのは時間の中にもあって、忙しい毎日でも「ホッ」と一息つける時間を設けることに、すごく意味があると思うんですよね。

多彩な人材が生み出すスピード感 新領域への鋭さ

「余白文化」の強みはどこにあるのでしょうか?

ユニークなスタッフが当社の強みだと思います。中国人やフィリピンと日本のハーフなど多国籍の人材が集まっているという特徴に加え、それぞれのスタッフが複数のスキルを持っているのも強み。たとえば、カメラとデザインの両方をこなしたり、コピーライティングと翻訳を同時進行で行ったり、デザインからコーディングまでを担ったりと、他社にはないスピード感で仕事を進めることができます。
20代前半のスタッフがほとんどなので新領域への感性も鋭いと思っています。

日本の“普通”は、海外では驚きのクオリティ

日本で起業してみて、感じたことがあれば教えてください。

「丁寧さ」とか「責任感」が日本の素晴らしいところだと感じます。日本の“普通”は、海外では考えられないほどのクオリティの高さなんです。同じ金額の仕事でも、ここまでのきめ細やかさで行えるのは日本しかないですね。日本ならではの良さを大事にしたいです。

世界を相手にする企業を支え、ともに成長

これからのビジョンや目標を教えてください。

リリースを控える「Hikids」の成功が、直近の目標です。「Hikids」が広がれば、痛ましい置き去り死亡事故など、社会問題の解決につながります。保育園の先生方も親御さんも安心できますし、社会貢献につながるプロジェクトなのでやりがいも大きいです。
あとは、インバウンドとアウトバウンドのサポートもさらに広げ、お客様の事業拡大に貢献していきたいですね。中小企業のサポートに力を入れて、笑顔が広がっていくとうれしいです。
現在は日本と中国(北京)の2拠点でビジネスを行っていますが、グローバルな視点も大切に、世界に向けて勝負するお客様を支援し、私たちも大きくなっていければと思います。

チャレンジが「未来をつくる」 世界にも目を向けて

盧さんが日々大切にしていることはどんなことですか?

私が日々大切にしているのが「課題解決」という視点です。デザインも、お客様が抱く何らかの課題を解決するためにあるものです。課題や目標をクリアするために本当に必要なものを提案できるチームであることを重視します。また、技術も大事ですが、それ以上に“心のありよう”が大事だと思っています。

最後に、クリエイターの方々にメッセージをお願いします。

これからの時代は、自分の母国ではない国々で働くのがあたりまえになると思いますし、すでになってきていると感じています。言葉の壁も、さまざまなITツールで軽々とクリアできるようになってきました。
クリエイターとして活躍するには、日本のクリエイティブだけでなく世界の動向にも目を向けるべきだと思います。また、若いうちは自ら制約を設けずに、どんどんチャレンジすべきです。チャレンジから学んだ経験が、未来をつくると信じています。一度しかない人生ですから、ぜひ楽しく、悔いがないものにしましょう!

取材日:2022年10月28日

余白文化株式会社

  • 代表者名:盧 朝華
  • 設立年月:2016年4月
  • 資本金:1700万円
  • 事業内容:WEBサイトの企画・デザイン・制作、WEBサイトの保守・運用、WEBシステムの開発・運営、グラフィックデザイン、海外向けグローバル戦略、SNS運用代行
  • 所在地:〒456-0071 名古屋市熱田区明野町2-10
  • 電話番号:052-265-9585
  • URL:https://yohaku-bunka.com
  • 連絡先:

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