WEB・モバイル2022.03.16

クライアントが求める結果をもたらす提案とは何か。クリエイターこそマーケティングの視点を持つべし!

福岡
有限会社ニッコー・ネット 代表取締役
Junichi Furukawa
古川 淳一

オンライン・オフラインの広告・販促支援業務に加え、2021年8月にスタートした「社長取調室」やホームページ改善セミナー、「補助金」「助成金」申請サポートなど、地元中小企業の経営者の悩みに寄り添ってきた有限会社ニッコー・ネット。 代表取締役である古川淳一(ふるかわ じゅんいち)さんは、アナログからデジタルへクリエイティブの手法やニーズが大きく変わった時代に、父親が経営する写真関係の会社を引継ぎました。その後、DTP印刷からWeb制作へと事業を転換、常に挑戦し続けてきました。さらに今後は、どのような新しい取り組みに着手していくのか、お話を伺いました。

写真からDTPへの転換期の波にのまれながらも…

お父様の会社を受け継がれたそうですが?

大学卒業後は、大手化粧品会社で営業と商品開発を担当していました。1992年、30歳の誕生日に退職。商業写真の撮影と、大型看板や車両に貼るような大判の写真の焼き付けを手掛けていた父の会社「有限会社日光フォトスタジオ」に入社しました。 2〜3年後に父と代表を交代する予定で経営の勉強を開始し、会社の数字が理解できるようになった時に「これは大変だ」と思いました。実は、会社には年商以上の借入金があり、「24時間働いても返せない!」という状況でした。 当時は、クライアントが金額を決める下請けや孫請けの仕事ばかりで、これでは大きく売り上げを伸ばすことはできません。この状況を打開するためにも、元請けになれるような仕事をしていく必要がありました。1990年代後半頃は、「DTP元年」と呼ばれ、パソコンを使ってデザインし印刷する時代の到来でした。

DTPの仕事を始められたきっかけは?

以前勤務していた大手化粧品会社とも取引があり、よく「印刷まで依頼したい」と言われていたこともあり、「DTPデザインができて印刷ができれば、仕事が増える」と考え、印刷を手掛けるようになりました。おかげさまで、次第にクライアントと直接の取引が増えていきました。 その頃に考えたのが、他の印刷会社との差別化です。「印刷の意味とは何か?」と考えた時に、単に原稿をもらってデザインして印刷するだけではなく、印刷物はお客様が利益を得るために何らかの目的で作っていることを再認識しました。「お客様がほしい結果のためにどうすることが最善なのか」、印刷物づくりをそう考えるようになりました。

会社は一度、大きな転換期を迎えられ、廃業されたそうですね。

少しずつ父がやっていた写真の仕事から、私が始めた印刷の仕事へとシフトしていたのですが、急激に写真の仕事が落ち込みました。デジタル化の波で、写真の焼き付けの仕事がデジタルプリンターに変わり始めたのです。 最初は画質が悪かったものの、その後どんどんクオリティーが高くなっていったため、思い切って1500万円もするデジタルプリント機を導入しました。ところが導入した半年後にはその半額で、1年後には3分の1の価格でもっとクオリティーの高い機種が次々と登場して、1年もしないいうちに設備が稼働しなくなってしまったんです。 急に資金繰りが悪化して、会社を続けることが難しくなった時に、父が体調を崩し、1999年11月に亡くなりました。「父が存命のうちは会社を潰したくない」という強い思いがありましたが、悲しみに浸る間もなく、「会社を整理して、再スタートを切ろう」と廃業する決断をしました。 同年の年末をもって会社を閉じて、社員の再就職先の世話や債務処理をしながら、再スタートについて考える日々が続きました。知り合いや再生コンサルタントと相談を重ね、半年ほど経った2000年6月、新しい法人設立に漕ぎ着けました。

DTPからWebへ、時代のニーズを的確につかんでいく

 

再スタート後に設立された、社名の由来を教えてください

新しい社名「有限会社ニッコー・ネット」は、父の会社が途中で「有限会社ニッコー」と社名を変更し、そのドメイン名であった「nikko.net」から名付けました。他にも、いろんな思いを込めています。 新しい会社を設立後、印刷関係の仕事はそのまま継続し妻にその仕事を任せ、自分はIT系の会社にニッコー・ネットからの出向という形で就職しました。Webが注目されつつある時期で、この業界に大きな将来性や可能性を感じて勉強をしたかったのです。 1年半ほどして自分の会社に戻り、1人でスタート。IT系の会社では営業的な仕事だったので、「もう少し技術も勉強しとけばよかった」と後になって思っているうちに、ちょうど「ホームページを作りたい」という声があちこちからかかってきて、見様見真似で作っていきました。

ホームページ制作は順調でしたか?

最初にホテルのホームページを手掛けました。その時、感じたのが、印刷物は印刷が出来上がればそこで終わりですが、ホームページの仕事には終わりがないということです。一度完成しても、その後、修正があったり、更新があったり、ルールの決め方が定まっていないこともあり、とても悩んだことを覚えています。 一時期は、「今のうちのリソースでは対応できない」とホームページを諦めて、印刷を主流にしようとしましたが、印刷もネットプリントが台頭してきて、価格が落ち込んできました。 以前の勤め先でメインのクライアントであった大手化粧品会社は、キャンペーンや売り出し企画のポスターやDMなど、かなり安定した収入源でした。ところが経営が悪化して、様々な問題が起こり、徐々に予算が減らされ、まったく発注がなくなってしまいました。 そこから「1社依存は良くない」と考えて、7〜8年前ぐらいから、地元の中小企業の方を支援するビジネスにシフトしてきました。

現在の課題は何でしょうか?

今の課題は、自分一人だけの力に頼っている体制からの脱却です。そのためにWebをはじめとする商品のパッケージ化や業務の見直しを取り組んでいるところです。

マーケティングの視点を持ち、企業をサポートする取り組み

「社長取調室」や「ホームページ改善セミナー」とは、どのような取り組みでしょうか?

「社長取調室」とは、中小企業の社長様のお悩みに弊社がとことん向き合うサービスです。課題解決の糸口を見つけるため、まずはご相談ベースでお話を伺っています。 「Webをやりましょう」「印刷物を作りましょう」と提案するよりも、打ち合わせの最初の段階で、どれだけ社長の話を聞くかが重要であることに気づいたんです。「何が不満なのか」「何を望んでいるのか」にウエイトを置いて話を聞くことで、我々がどのようなお手伝いができるのか、それがWebなのか、印刷物なのか、もっと違う何かなのかに落とし込んでいくスタイルに変わってきました。2021年8月にスタートしたばかりですが、一定の評価をいただいています。 相談に来られる方たちは、主に弊社主催の「ホームページ改善セミナー」の参加者です。このセミナーでは、Webで集客するためのノウハウを教えます。「弊社でホームページを作りましょう」ではなく「既存のWeb制作会社で難しい場合には相談してください」と伝えているのですが、こちらからの受注も順調です。

「補助金」「助成金」のサポートもされているそうですね。

はい。小規模事業者持続化補助金といった「補助金」「助成金」の申請支援を行っています。「補助金や助成金をうまく活用しながら、新しい施策を積極的にやっていきましょう」と打ち出しています。「補助金を受けるにはどうしたらいいか」という、直接のご相談もあるのですが、先程の「社長取調室」の中で、「ホームページを作り直したいけど予算がない」「起業したいけど予算が足りない」といった相談があった場合にご提案しています。 補助金の資料を作るとなると、かなり事業についてヒアリングをする必要があります。最近は、コロナ禍で採択率が高くなっているものの、書類作成には専門的な知識が必要でかなりハードルが高い。ノウハウがある弊社が書類作成をサポートすることで、ほぼ100%採択という成果をお届けできており、この制度を活用したホームページのリニューアル、事業改善が実現しています。

クリエイターに求められるものは?

クリエイターこそ、マーケティングを勉強してほしいと思っています。確かにクライアントは良いデザインを求めていますが、本当に求めているのは「作ったホームページで確実に収益をあげていく」こと。このことをクリエイターに伝えるのは、難しいと思っています。 世の中には、かっこいいデザインであっても、売れないものがたくさんあるのです。自分が今作っているものは、マーケティング的にどうなのか。どういう結果を求められているのかを理解できていると、デザインやライティング、コーディングに落とし込む際のポイントが見えてくるのではないでしょうか。これからの時代、マーケティングが理解できるクリエイターは、きっと重宝されると思います。

 

取材日:2022年1月20日

有限会社ニッコー・ネット

  • 代表者名:古川 淳一
  • 設立年月:2000年6月
  • 資本金:300万円
  • 事業内容:オフライン広告支援、オンライン広告支援、補助金・助成金申請支援
  • 所在地:〒812-0882 福岡県福岡市博多区麦野6丁目5-2
  • URL:https://nikko.net/
  • お問い合わせ先:092-402-2093
  • メール:

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