避妊薬(ピル)をもっと身近なものに!スマホでピルを購入できるアプリ「Nurx」
- Vol.119
- Dig it! NYC 藤井さゆり
コメディアン、女優、フィルムメーカー、人気ユーチューバとして活躍するアンナ・アカナさんをご存知ですか。彼女が作る映像はとても面白いものばかりなのですが、「Take Your Birth Control」という作品を見て、考えさせられることがありました。
Anna Akana:Take Your Birth Control
Youtube
この作品のタイトルは「避妊薬(ピル)を飲んで」というもので、彼女の実体験に基づいた構成となっています。
以前アンナさんは、自分が働いていた映画の現場で、ディックという男性と出会って恋に落ち、お付き合いを始めます。実の姉を自殺で失くしているアンナさんは、ディックも兄弟を失くしており、似た境遇の中で彼をソウルメイトと信じますが、彼は3ヶ月ごとに浮気をする人でした。
付き合って1年半、仕事が多忙でピルを飲み忘れたことにより妊娠が発覚しますが「子供は他の男性と作った方がいい」というディック。結果、アンナさんは堕胎をしましたが、その後もディックは浮気を重ねるにも関わらず、二人はお付き合いを続けます。しかしある時、瞑想リトリートで、自分を大切にすることに気づいたアンナさんはディックと別れます。それ以来、ピルを飲み忘れることなく、妊娠もしていない、というメッセージで終わります。
ここに出てくる「ピル」は、もちろん低用量ピルのこと。毎日飲むことで毎月来る排卵を抑制し、避妊を目的としたものです。
この作品でアンナさんが伝えたかったメッセージは、過去に望まない妊娠、堕胎をして深く傷ついた経験があり、こういう辛い経験を避けるためにも、もし妊娠を望んでいないならば、「ピルを飲んで」=「自分を守って、大切に扱って」と伝えているのだと思います。
ピルを飲んでいる女性は私の周りに結構いるので、アメリカでピルは日本よりも身近なもの、という印象があります。妊娠確率で言うと、コンドームは18%、ピルは0.3%なのだそうです。ピルというのは、女性主体で行える、確実な避妊方法なんですよね。
避妊目的以外にも、ピルを飲むことで生理周期が整い、生理痛や月経量の軽減、PMSの症状が柔らぐといった効果もあるので、そういった症状で悩んでいる方がいらっしゃるなら、一度ピルを検討してみてもいいと思います。(副作用もあるので、医師とご相談の上で)
さて、そんな流れで「ピル」について調べていたら、ピル購入から受け取りまで可能な「Nurx」(ナークス)というアプリを見つけました。
App Store: Nurx - Birth Contorol Pills(NurxのiPhoneアプリ)
Nurxは、2014年にサンフランシスコで設立したヘルスケアスタートアップで、2018年9月現在、ニューヨーク州やカリフォルニ州を含む17州とワシントンDCの居住者のみ、Nurxから購入できます。
購入の流れですが、アプリから3つのステップだけで簡単に購入できます。
1)アプリから購入したいピルのブランドを選ぶ
2)いくつかの質問事項に答え、身分証明書と加入している健康保険証を送信すると、医師による処方箋が発行される
3)健康保険会社による審査後、オーダーが承認され、希望する薬局から配達される
アメリカの健康保険は、日本とシステムが違い、行政が管理する全ての人が加入できる国民健康保険がなく、個人で予算と内容に応じた健康保険会社を選んで加入するものなので、個人の経済状況などにより健康保険に加入していない人もいますが、そういった人でもNurxからピルを購入することは可能。その場合は1パック初回のみ5ドル、次回以降は15ドル〜、だそうです。健康保険に加入している場合には、保険会社が支払うのでほとんどの人が無料で購入できるそうです。
通常アメリカでは、ピルを購入する場合、病院に行って医師から処方箋を書いてもらうというプロセスが必要となりますが、Nurxでは病院に行かずとも、ピルの購入から受け取りまで、自宅で可能です。
アプリ一つでピル購入から受け取りまで出来てしまうNurx。アプリで購入できるという手軽さから、若い女性たちの望まない妊娠を少しでも防ぐことができるかもしれませんし、PMSなどの症状から解放される女性が多くなるといいですよね。
また、先日(2018年8月)、Nurxは、毎日薬を飲むことでHIVが侵入してもウィルスが増殖しない環境を作るPrEP(pre-exposure prophylaxis:暴露前予防投与)を、販売開始。
HIV感染者をこれ以上増やさないためにも、世界を救う薬品であることは間違いないでしょう。
Nurxは、2016年以降、4,140万ドルほどの投資を受けており、主要チームは、設立者の2人を含め計7人、内男性が5名。2018年1月には、理事メンバーには、クリントン元大統領の娘である、チェルシー・クリントンが迎えられたことが発表されています。
現在のところ、「Nurx」での購入は17州とワシントンDC居住者のみですが、近い将来、全国へと広がり、日本でも同様のサービスが行われればいいなと思います。
ちなみに冒頭でご紹介したアンナ・アカナさん。日本、フィリピン、ハワイ、アイルランド、ドイツ、スペイン、フランス、イギリスの血が入った祖先がいるアメリカ人で、スペイン語と日常会話程度の日本語ができるのだそうです。ご興味があったら、ぜひアンナさんのYoutubeチャンネルも見てみてください!
Anna Akana Youtube:youtube.com
NHK:WHOも推奨!知られざるピルの避妊効果・メリット、副作用まとめ
buzzfeed.com:世界で広がる新しいHIV感染予防策「PrEP(プレップ)」日本でも議論へ
Profile of 藤井さゆり
東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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