【リブランディングで成功】アメリカで人気のポップコーンブランド“BOOM CHICKA POP”

Vol.51
FIND IT. LOVE IT.
Sayuri Fujii
藤井さゆり

夏といえば、プール、海水浴、旅行にバーベキュー。そんな夏のレジャーに持っていくおやつと言えば、アメリカではポップコーン!アメリカはとうもろこしの生産量も多いこともあり、ポップコーンの生産量、消費量も世界​第一位なんです。

 

ということで今回は、リブランディングで成功したアメリカで人気のポップコーンAngie’s BOOM CHICKA POP(アンジーズ・ブーンチカポップ)をご紹介します。

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

Angie’s BOOM CHICKA POPは、アメリカのスーパーマーケットでもよく見かけるポップコーン・ケトルコーンブランドで、甘じょっぱいケトルコーン、チェダーチーズポップコーン、シーソルトポップコーン、ダークチョコレートケトルコーンなど8種類のフレーバーがあり、それぞれ味ごとにパッケージカラーが違います。

 

※ポップコーンとケトルコーンは、どちらもとうもろこしの実を熱してはじけさせて作られるお菓子​​のことですが、ケトルコーンは、ケトル(鉄釜)を使い、塩、砂糖、オイルを混ぜて作られているため甘じょっぱい味が特徴です。

 

スカイブルーやエメラルドグリーン、イエロー、オレンジといったカラフルなパッケージカラーに、濃いピンク色の商品名「BOOM CHICKA POP」がインパクトがあり目を引くデザインで、たくさんの他社のポップコーンが陳列棚にあっても見つけやすいんです。

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

ポップコーンやケトルコーンは、クッキーやポテトチップスと比べると低カロリーかつ食物繊維も多いおやつとして、ヘルシー志向の人たちに多く好まれています。

 

その中でも、BOOM CHICKA POPのポップコーン・ケトルコーンは、非遺伝子組み換え認証(non-GMO)、グルテンフリー、ビーガン、高果糖コーンシロップ不使用​​、ゼロコレステロール、100%全粒粉、人口保存料不使用、コーシャ(ユダヤ教徒が食べてもよいとされる食べ物)で、バターやチーズなど全ての原材料は自然のものを使って作られており、安心して食べられることも人気の理由です。

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

さて、冒頭の「リブランディングで成功」の説明に入る前に、まずはAngie’s BOOM CHICKA POPの始まりからご説明しましょう。

 

Angie’s BOOM CHICKA POPは、ミネソタ州に住む、当時看護師をしていたアンジー・バスティアンと、中学校のスペイン語教師であった夫のダン・バスティアンの夫婦が、子供の大学資金の蓄えのため自宅の車庫でケトルコーンを作り、地元のストリートフェアや近所のイベントで、2001年に売り始めたのがきっかけでした。また二人は、子供たちと一緒に楽しみながら働くことも教えたかったのだそうです。

 

そして2002年には、NFLチームであるミネソタバイキングスのスタジアムの外でケトルコーンを販売して大ブレイク。

 

2004年には、作っていたケトルコーンをミネソタ州のミネアポリスにあるスーパーマーケットで売るチャンスを手に入れますが、その時、商品名を付けなくてはならないことに気づきます。

 

そこで、他社のポップコーンブランドの商品名を調べたところ、「ハリー、デイビット、ジャック」など男性の名前が付いた商品がほとんどで、女性の名前が付いたポップコーンがないことを発見します(アメリカでは、スナックや食料品などの商品名に創業者の名前を付けることがあります)。そのことから、夫のダンが「アンジー、君の名前を付けよう!」と提案したことから、商品名をAngie’s Kettle Cornとして売り出し始めます。

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

2010年には、Angie’s Kettle Cornは全国的に販売されるまでになりましたが、小売業者はケトルコーンのみでなく、他のポップコーンフレーバーも望んでいました。

 

その当時、作っている商品はAngie’s Kettle Cornだけだったので、アンジーとダンはブランドに窮屈さを感じており、ブランドを拡大したいとは望んでいましたが、ブランドを変更して現在の売上を失うリスクを取るか、それとも商品名を変えずに将来の大きな売上を逃すか、というジレンマに陥ります。

 

これは事業を拡大したい経営者であれば、誰しもが経験する悩ましい問題ですね。

 

アンジーはその後のインタビューで「当時、ポップコーンが置かれているお店の棚を見て、自分のケトルコーンも含めて、他のポップコーンメーカーのパッケージデザインは非常に真面目で男性的に見えた女性をターゲットにした商品だとダイエットと関連したものになる。そんなマーケティング担当者のアプローチのようなブランディングに不満だった。そういうブランドにはしない。女性らしさを祝うような、子供たちや若い人たちにアピールするような、全ての人々がウェルカムで、食べ物の喜びを祝うようなブランドにしたかった。」と話しています。

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

そして2012年、Angie’s Kettle Cornは、ブランド名をAngie’s BOOM CHICKA POPに変更し、大きな文字が入った明るいパステル調のパッケージに変更。フレーバーもだんだんと増えていきます。リブランディング後のデザインは、アンジーが希望するブランドイメージにぴったりですよね。

 

その後、アンジーズ・アーティザン・トリーツという会社名になり、会社はプライベートエクイティ会社が過半数を所有しているため売上高は公表していませんが、市場調査会社によると、2016年のアメリカ国内での売上高は9000万ドルに達し、2011年以来12倍以上に増加したと推定されています。

 

このリブランディング後に、アンジーとダンは会社をアメリカの大手食品メーカー、コナグラ・フーズに2億5000万ドルで売却。現在、Angie’s BOOM CHICKA POPは、アメリカ全土で販売されている他、カナダ、メキシコ、ペルー、韓国でも販売されています。

 

リブランディングが大きく功を成した結果ですね。

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Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

Angie’s BOOM CHICKA POPのインスタを見てみると、アンジーが持つブランドイメージを表現したような投稿が多く、見ていてハッピーな気持ちになります。

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

Angie’s BOOM CHICKA POPを使ったホワイトチョコレートバーのレシピ。

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

Angie’s BOOM CHICKA POP、アイスクリームコーン、フルーツ、チーズを使ったおしゃれでかわいいシャルキュトリーボード​​。

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

Angie’s BOOMCHICKAPOP®@angiesboomchickapop

 

バレンタインデーに合わせて投稿されたもの。それぞれのパッケージカラーに合わせてブランドのイメージを作っているのが素敵ですね。

 

 

創業者で商品名にもなっているアンジー・バスティアン。アメリカ人女性たちが選挙権を持って97年を記念する全米女性平等デーに投稿されたもの。パッケージを開ける瞬間の楽しそうな表情がいいですね。​​

 

いかがでしたでしょうか。

 

すでにある程度うまく行っていたブランドを変更することは、かなりの大きな決断だったにも関わらず、アンジーが自分の信念を貫き、リブランディングを成功に導いたことに感銘を受けずにはいられません。

 

ちなみに「BOOM CHICKA POP」のBOOM CHICKAは、英語のオノマトペで特に意味はなく、ポップコーンのPOPを最後に付けたものです。

 

日本ではコストコで売られているようですので、もし気になる方がいたらぜひトライして見てください!

 

(参考)

USDA National Agricultural Library – POPCORN: INGRAINED IN AMERICA’S AGRICULTURAL HISTORY

Angie’s BOOM CHICKA POP – Angie’s story

NOSH Live Video: How Angie’s Put the BOOMCHICKAPOP into Their Brand

The Wall Street Journal – The Story Behind Why Angie’s Kettle Corn Became Angie’s Boomchickapop

Brit + Co – Angie’s Boomchickapop Started in a Family Garage Before Becoming a Super Snack Brand

プロフィール
FIND IT. LOVE IT.
藤井さゆり
東京生まれ、2008年ニューヨークに移住。 公益法人に勤務の傍ら、仲間内で企画したクラブイベントのフライヤーデザインをしたことから、デザインの面白さに目覚め転職。 転職後は、都内商業施設のウェブサイトの販促用ページ企画と取材、ライティングを経験。 ニューヨーク移住後は、ウェブマーケティングを企業にて経験、ウェブデザインをフリーランスで行う。 現在は、日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」のオーナー兼デザイナーを務める。
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Instagram: @foxylilly

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